ロングライドの便利装備として、またキャンプツーリングの積載確保として、ハンドルバーバッグは使いやすいギアだ。
ハンドルバーバッグは各社から様々な商品が発売されているが、Apidura(アピデュラ)からも面白いハンドルバーバッグが出ている。それが、今回ご紹介するバッグ『Apidura(アピデュラ):レーシング ハンドルバーバッグ』だ。
長らく欲しいと思ってきて、遂に手に入れ使うことが出来たので、実際の使い勝手をまとめていきたい。
<目次>
1.商品スペック
2.各部詳細
3.いいころ
3-1.軽量かつ大容量
3-2.DHバー対応・ライトを邪魔しない
3-3.上部からのアクセス性◎
3-4.カッコいい
4.残念なところ
4-1.「防水」とは言えない
4-2.空気抵抗になる
4-3.値段が高い
5.まとめ
1.商品スペック
まずは商品の概要から。
・容量:5L ・重量:265g ・カラー:ブラック ・その他機能:防水、反射素材、DHバー対応 ・価格:17,000円(税込み) ・商品ページはこちら
バイクパッキングギアで有名なApiduraが、2019年ごろ発表したシリーズ『Racing(レーシング)』。従来のX-PAC生地を独自素材のヘキサロンに改め、より小型軽量なファストライド向けバックをラインナップしている。
従来のバックがグレー基調だったのと比べ、レーシングシリーズはブラックがメインカラーになっているので見分けがつきやすい。
(↑)AlternativeBicyclesさんHPから引用
レーシングシリーズのハンドルバーバッグには5Lと2.5Lの2種類が展開されているが、今回ご紹介するのは大きい方の5L。より積載量の多いライダー向けの商品だ。
実は僕は、いくつかのハンドルバーバッグを使い「こんな設計のバックが欲しいなあ……」と自作も考えていた。そんなとき、ドンピシャで思いを形にしてくれたのが、このApiduraのレーシングハンドルバーバッグでもある。
Apiduraのシリーズ展開については、こちらの記事で詳しくご紹介しているのでどうぞ。
2.各部詳細
では、続いてApidura レーシング ハンドルバーバッグの詳細を見ていこう。日頃からグラベルで使用しているものなのでちょっと汚れも目立つけど、どうか悪しからず。*この後詳しく書いているけど、このヘキサロンという素材がまた汚れが落ちにくい……。
ブラックのヘキサロン生地に、黄色とシルバーのラインが入っている。シルバー部分は反射素材。
荷室へのアクセスは前方からジッパーにて行う。ジッパーは止水タイプが用いられている。
このレーシング ハンドルバーバッグには、上部からアクセス可能なユニークなポケットがある。側面に芯の入った蓋でカバーしてあり、手で横に引っ張れば開く仕組みだ。
大きさはサイクルボトルがピッタリ入るくらい。内部にはメッシュの袋が付いているので、前方からアクセスする方の荷室とは隔てられている。
バイクへの取り付けは手前のベルクロで2か所をハンドルにとめ、下部のナイロンベルトをトップチューブに回す形。
一般的な取り付け方法だが、ベルクロは薄く幅も狭めなので、ハンドル周りがごちゃつくロングライド仕様のバイクにも取り付けやすいだろう。
取り付け面から最下部までの長さは約16㎝。
ハンドルバーから前輪までの距離がこれ以上ないとタイヤにバックが擦ってしまうので注意。
また、レーシング ハンドルバーバッグはDHバーにも対応している。DHバーに対応しているハンドルバーバックは珍しく、また対応しているものでないとバックの収まりが良くないことが多いのでありがたい。
なお、同シリーズの2.5L版はハンドルバーのみ。
3.いいころ
では、続いては使用してみて感じたいいところを。
3-1.軽量かつ大容量
ハンドルバーバッグは他社からも多様なラインナップがあるが、走行中に荷物が取り出せるタイプでかつ大容量となると、選択肢はかなり絞られる。
ロールクロージャ―で左右から出し入れするタイプは大容量なものが沢山あるけど、あれはドロップバーではあまりにも使いにくい。
例えばこんなのもあるけど、ドロハンだとどんどん使用場面が減ってしまっている。
そして、このタイプで軽量性も実現している製品は更に少ない。このスペックを兼ね備えているだけで、このハンドルバーバッグは価値があると思う。
3-2.DHバー対応・ライトを邪魔しない
ハンドルバーバッグは往々にして、ロードバイクのコックピットとの相性が悪い。ライトの光軸を遮ってしまい共存が難しかったり、サイコンのアタッチメントが干渉したり、エアロバーとの併用が出来なかったり……。金具の様な固定具でガッチリハンドルに付けるタイプのバックだと、どうしても問題が発生する。
このApiduraのレーシングハンドルバーバッグの素晴らしいところは、これらの問題をクリアしていることだ。
取り付けた際にハンドル上面よりも下にバックが付くので、ライトの光軸と干渉しない。また、取り付けるベルクロも幅が狭めだから、サイコンなどのアタッチメントとも共存がしやすいだろう。
更に、DHバーに取り付けで使用することもできる。DHバーはまだ馴染みのない方も多いかも知れないけど、ロングライド(特に距離の長いウルトラディスタンス系)をするなら非常に有効な装備だ。
DHバー専用のループが設計されていて取り付けでき、バックの前面からメイン荷室にアクセスし、しかも上からは左右の小スペースにアクセスする仕組み……。そんな多機能バック、僕が知る限り他にない。
「一応併用できる」という製品と「併用する前提の設計」という製品の大きな違いがここにある。
3-3.上部からのアクセス性◎
上部からものを取り出すときには、左右の独立したポケットに手を入れる。
ポケットの蓋は片手で簡単に開閉が出来るので、例えばジッパー式のバックの様なわずらわしさがない。
このポケット、ぱっと見で小さい様にも見えるけど、実際にはサイクルボトルがすっぽり入るくらいのサイズはある。僕はここには補給食を大量に突っ込んでおくことが多くて、200㎞を無補給で走る程度ならこのポケットで十分事足りる。
あとは補給食のごみを突っ込んでいったり、脱いだグローブやウィンドブレーカー等をしまっておいたり。手を伸ばせばすぐ届く位置にポケットがあるのは便利だ。
この使い勝手は、ステムポーチに非常に似ている。僕はR250の製品を使っているけど、いわばこのステムポーチ2つとフロントバックを合体させたようなものが、このApiduraレーシングハンドルバーバッグだ。
しかも、ステムポーチの欠点である蓋問題も解決している。
3-4.カッコいい
見た目がカッコいいというのも、実はバイクパッキング用品に欠かせない要素な気もする。結構目立つし、せっかくならカッコいいバックを使いたい。
そこも流石Apiduraで、様々なバイクに合わせやすく、バックの統一感も出せるデザイン。まあ最終的にここは好みだろうけど、僕は結構好きだ。
4.残念なところ
べた褒めしているこのバックだけど、残念なところもいくつかある。このバックに限った話ではない項目もあるけど、無視できない問題でもある。
4-1.「防水」とは言えない
まずは何といっても、公式が謳うような「防水」ではないという事。
確かに本体生地は防水のヘキサロンだし、縫い目のない接着で組み立てられているから防水性は高い。しかし、ポケットの上部は防水性に乏しい生地で、雨の中で使用すると内部が濡れるのだ。
何か僕の使い方が間違っているなら申し訳ないんだけど……路面からの跳ね上げにはかなり強い反面、普通の雨には弱い。
1つ補足するなら、上部に開閉口のあるバックは、雨天時に開け閉めすると少しずつ濡れていくというのがある。これは当然開けたときに雨が入り込むせいでもあるし、バック表面に溜まった水が一気に入り込みやすいというのもある。ある程度の浸水は、アクセス性とのトレードオフ関係にあるのだ。
とはいえ、この程度の防水性で「防水バックです!」と言い張るのは無理があるので、「跳ね上げから守ってくれる」くらいの認識が正しいと思う。
4-2.空気抵抗になる
フロントバッグ全般に言えることだけど、ハンドル周りに大きな荷物を付けると空気抵抗が一気に増す。
バイクやライダーの陰になる真ん中~後ろの積載とは異なり、前方は風の影響をもろに受けるので少なからずファストライドにはマイナスだ。
このApiduraのバッグが特別悪い訳じゃなく、普遍的にフロントバッグは抵抗になる。
パッキング全体の容量の都合や、重量バランスによる走行感の調整など、総合的に評価するとフロントバックは必ずしも悪でないと僕は思うけど、ファストライドを目指す方は無視できない影響ではなかろうか。
もちろん補給食スペースの確保による停車削減など、速さに繋がる部分もあるから、僕はヒルクライムの多いコースなら積極的にハンドルバーバックを用いることが多い。
4-3.値段が高い
最後に、値段について。Apiduraというブランドが全体としてそうだけど、やっぱり値段が高い。
バックは使えば汚れ、摩耗し、いずれ穴が開いてしまうものだ。耐久性は十分な製品だと思っているものの、使い倒すにはちょっと高価なのが痛い。本当に間違いなくいい製品だと思うので、もっと気軽に手を出せるバックなら良いのに……と思う。
5.まとめ
以上、Apiduraのレーシングハンドルバーバッグをレビューしてみた。
積載性と軽量性、荷物へのアクセス性を高いレベルで実現している素晴らしいバッグだと思う。買う前から凄く良いだろうと思っていたけど、やはり期待通りかそれ以上に気に入った。
唯一製品として欠けていると思うのが防水性。浸水のスピードがもう少し遅ければ完璧だったと思う。
これはあくまで僕の使用環境におけるレビューなので異なる意見の方もいると思うけど、ハンドルバーバッグ選びに悩む方の参考になれば幸いだ。
おわり