装備レビュー

グラベルライドを快適に!サスペンションサドル『Bikeyoke:SAGMA』レビュー

悪路で度々悩まされる「お尻への突き上げ」。今回は、それを緩和してくれる、軽量でどんなバイクにも導入しやすいアイテムをご紹介したい。

それが、Bike Yoke(バイクヨーク)のSAGMA(サグマ)サドル。バイクの振動によって座面が動くサスペンションのような仕組みのある、ユニークな製品だ。グラベルライドを通じで使ってみたインプレやレビューをしていこうと思う。

<目次>
1.スペック
2.各部詳細
3.いいところ
3-1.登りでトラクションロスしない
3-2.お尻に吸い付く感触
3-3.ショートノーズで使いやすい
4.残念なところ
4-1.サドル形状との相性問題
4-2.レールが特殊かつ調整幅が小さい
5.まとめ

1.スペック

このサドルを手がけるBike Yokeは、MTB系の比較的新しいブランド。高品質なドロッパーシートポストで一躍ヒットしたらしく、僕はこのサドルを知るまで聞いた事のないブランドだった。

そのBike Yokeが新たに発売したのが、サスペンション機能付きのこのサドル『SAGMA』サドルというわけだ。

 

スペック

サイズ:幅130㎜/142㎜
・重量:公称227g(142㎜実測225g)
・カラー:ブラック
・価格:16,500円(税込み)
公式サイトはこちら

 

サイズは130㎜と142㎜があるけど、僕が持っているのは142㎜。ちなみにスペシャライズドのサドルは142㎜か155㎜を使っている(ブランドが異なるので一概に数値として比較は出来ないけど、ラインナップの中では真ん中~幅広を使っている)。

先ほども書いたとおり、このSAGMAサドルはサスペンション機構のついたパーツにしては非常に軽量であるというのが1つの特徴。

「お尻にサスペンションを追加するアイテム」にサスペンションシートポストがあるが、500g越えとかなり重量が増してしまい、走行感に影響が出やすい。しかも、シートポストのカットが出来ないため、そもそも使用が出来ない方もいる(僕がそうだった)。

その点、このSAGMAは通常のサドルとさほど変わらない重量で、さらに多くのバイクにフィットすることが出来る。

 

 

2.各部詳細

各部を詳しく見ていこう。

全体は黒でシンプルなデザイン。Bike Yokeのロゴが入っている。初回ロットには無いっていなかったようなので、マイナーチェンジがあったみたい。

一見すると普通のサドルだが、特殊な機構はこのサドルレールと座面の間にある。レールがエラストマーを介して座面と繋がっていて、このエラストマーが変形することによりサスペンションのような機能を果たすわけだ。

パッケージには、硬さの異なるエラストマーが2つ(1つはソフト、もうひとつはハード)が入っていて、好みの硬さに調節できる仕組みらしい。

購入時にサドルに付属しているのは両方ともミディアム。前後ともにソフト又はハードで揃えたい場合は、別売のエラストマーを購入して数を増やす必要がある。

レールは断面がHの形状をしていて、よくある丸断面のものとは異なる。

座面のベースとなる樹脂プレートも特殊一般的なスポーツ用サドルに比べ、非常に柔らかく出来ているのだ。

手で押し込んでも、グニャグニャと曲がるほど。この柔らかさも、路面からの衝撃を吸収してくれる機構の1つである。

クッションも分厚い。全体的に均一な厚みで、ざっと1cmくらいはあるんじゃないだろうか。

表面は凹凸がありグリップ感の高い素材。

 

 

3.実走インプレ

「サスペンションサドル」というのがかなりレアな製品なので、そもそもどんな感じか?というのを先にご紹介したい。

このSAGMAサドルは「サスペンション付き」とはいうものの、そのトラベル量はかなり小さい。構造的に、エラストマーが最大まで潰れて稼動したとしても、数mm単位での違いでしかないのだ。

だから、実際に走っていて「サドルが上下に動く」という、サスペンションシートポストのような感触は無かった。所謂サスペンションの「段差が無くなる」みたいな感触はそもそも無く、段差やその感触はお尻に伝わる。

ただ、その感触が少しマイルドに。衝撃自体は普通にあるんだけど、その角が丸まると言えばよいだろうか。

また、サドル全体としてみると樹脂のケーシングがかなり柔らかいし、クッションも分厚いので衝撃や振動の吸収性能はかなりのもの。

乗っていての感触は、「サドル座面が斜め上方向にずれて衝撃が逃げる」というイメージ。上下方向にしか動かないサスペンションシートポストとは全く異なる挙動である。

サスペンションシートポストが上下にしか動かない1軸の変化なのに対し、SAGMAサドルは前後左右の動きも組み合わさった立体的な変化をする。

サドルそのものの座った感触は、前後に細長い棒の上にまたがっているような感じ。坐骨を支える樹脂部分が柔らかいので、坐骨で安定させる感じではなく中央のラインに乗っかるイメージになる。

座面が柔らかくクッション性が高いので尿道の圧迫感などは小さいけど、やはり穴あき系のサドルのそれには及ばない。また、坐骨が動くのでロードバイクのように坐骨の位置をバシッと決めてペダリングをしたいときにはイマイチだと感じた。ここは好みが分かれるところだろう。

座面の素材はかなり滑り止めが効いていて、お尻に吸い付くような感触がある。雨や汗で濡れてもサドルの上で滑らないので、お尻が変に暴れてしまうことが無い。

 

3.いいところ

で、それが実際に使ってみてどうかを、いいところと残念なところに分けて書いていこう。まずはいいところを3つ。

3-1.登りでトラクションロスしない

このサドルを導入したきっかけは、グラベルでエベレスティングに挑戦したことだった。獲得標高9,000mものグラベルを走らなくてはならないので、少しでも疲労と負担を軽減できるアイテムを探していた。

試走を繰り返しながら改善したいと思っていたポイントのひとつが『登りでお尻が跳ねてしまうこと』

下りはサドルに座らないからまったく問題なかったものの、登りではリアにトラクションをかけるためにサドルに座って体重をかけて走る。そのとき、大き目の石やギャップがあるとお尻がはねてしまい、トラクションロスしタイヤが空転したりお尻への負担になったりするのだ。

そこでショップの方から紹介されたのがこのSAGMAサドルで、「快適だしお尻が跳ねにくいから走りやすくなるよ」とのこと。

気になって早速購入し試してみたが、確かにお尻の跳ね上がりが大幅に抑えられたのだ。もちろんコースも空気圧も同じ条件で試しているので、間違いなくサドルの効果だろう。

 

これによる疲労軽減は大きく、エベレスティングを無事に達成できたのも、SAGMAサドルの効果があるのは間違いないだろう。

また、柔らかさのおかげで、純粋にお尻への衝撃を和らげ続けてくれたのも感じた。最後までお尻が痛くなることなく走りきれたのも、SAGMAサドルのお陰かも知れない。

 

3-2.お尻に吸い付く感触

SAGMAサドルの効果は、なんというか「オフロードでもサドルがお尻にくっつき続ける」ことだと思う。

もちろん悪路で振動を吸収もしてくれるんだけど、直接的に振動吸収をしてくれると言うよりは、バイクが暴れても常にサドルがお尻に吸い付いてくれるという感覚が強い。その結果、衝撃も和らいでお尻が痛くならないというか。

先ほど語った「お尻が跳ねにくい」というのも、結局はそういうことである。振動を消してくれるから跳ねないのではなく、三次元的に柔軟に動いて、バイクとの接点を維持してくれるパーツだから跳ねない。

これには、滑りにくく柔らかい素材の座面もかなり影響していると思う。エラストマーのサスペンション機構にこの座面が組み合わさって初めて、この性能が生まれるのではないだろうか。

 

3-3.ショートノーズで使いやすい

サドル自体の形状に着目すると、最近流行の?ショートノーズで短い。

短いほうがバイクに乗り降りしやすいし、前乗り気味でパワーをかける乗り方にも適している。これは好みかなとも思うけど、僕はオフロードではそれらの理由からショートノーズが良くて、この仕様も気に入っている。

 

4.残念なところ

次に、残念なところを2つ。

4-1.サドル形状との相性問題

たとえばサスペンションシートポストはサドルを自由に選べるので、自分の好みのサドルを使用することが出来る。

しかし、SAGMAサドルはサドルそのものなので、この形状が合うかは迷いどころだと思う。僕はショップさんで試乗させてもらってから購入できたけど、オンラインの方には困るポイントだろう。

先ほども書いたとおり座面は結構柔らかくて動くし、形状的にも一般的・普遍的なので、割と多くの方に合いやすいんじゃないかなあとは思うけど……こればかりは何とも言えない。

僕自身はどうかというと、「普通に悪くない」というくらい。グラベルエベレスティングで20時間以上の走行をしても相性的にも問題なかったけど、じゃあ形状が完璧に合うか?と言われるとそこまで完璧でもない。

やっぱりオンロードで純粋に走ることを考えるならいつものサドル(スペシャのRomin ↑)の方が合うし、でもグラベル走るならこのサドルの方が楽で速いし。。。という感じである。

骨盤の角度的には一般的なグラベル系のアップライトな姿勢(MTBでいうとアグレッシブ寄り?)に合っていて、ドロハンで深く前傾をとるのにはちょっと辛い。

 

4-2.レールが特殊かつ調整幅が小さい

SAGMAサドルのレールはH字型のため、丸型レールにフィットするように作られたシートポストには取り付けが出来ない。せっかくならスペシャライズドのCG-Rに使おうと思っていたのに、残念ながら叶わなかった。

また、レールが短めなのに加えてサスペンション機構の部分が張り出しており、前後の調節幅が普通のサドルに比べて短い。

ポジションとお手持ちのシートポストによっては、理想のポジションを作れずシートポストの購入が必要になるかもしれないので、その点も少し考慮しておいたほうが良いと思う。

更に、サドルバックの取り付けにも制約が出る。

僕の持っているブラックバーンのシートバックは、残念ながらSAGMAサドルには取り付けできなかった。せっかくグラベルバイクでメインに使いたいのに、惜しいところである。

 

5.まとめ

以上、BikeYokeのサスペンションサドルSAGMAサドルをレビューしてみた。

かなり特殊な製品だと思うけど、グラベルライドでお尻の痛みや跳ね上がりに悩んでいる方には、救世主的な存在になるかもしれない。また、「お尻が跳ねずに安定して走りやすくなる」というのは間違いないと思うので、グラベルでの走行性能を上げたい方にもおすすめ。

この記事が、サドル選びの参考になれば幸いだ。

おわり

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