「街乗りでもビンディングシューズを使いたい」という思いは、日常生活とサイクリングを両方楽しみたい方なら一度は思ったことがあるだろう。
今回ご紹介するのは、そんなシーンにぴったりなオシャレで歩きやすい2穴SPDシューズ「Fizik:Terra Ergolace X2」。気になるサイズ感や街中での使用感、ペダリング性能などをレビューしていきたい。
<目次> 1.製品概要 2.サイズ感とフィッティング 3.本当に歩きやすいのか? 4.ペダリング性能について 5.まとめ
1.製品概要
まずは製品の概要から。
・ソール剛性:3/10 ・サイズ:EU36~45 ・カラー:アンスラサイト/グレープ、ブラック/ブラック、ブルー/ブラック、オリーブ/キャメル ・重量:329g(サイズ42、公称)386g(サイズ44、実測) ・価格:15,000円(税抜き) ・本国サイトはこちら、Wiggleはこちら
Fizkはサイクリングアパレルやパーツの有名ブランド。そのFizikが展開するシリーズの1つである「Terra」は、昨今流行を見せているグラベル・アドベンチャーカテゴリだ。
このTerra X2はTerraの中でもソールがやわらかく歩きやすいシューズで、自転車を降りてからの性能にも妥協のない製品である。
僕が購入したのはブラックのサイズEU44.
見た目はシンプルながらにデザイン性もありかっこいい。さすがはFizikという感じ。
実はこのシューズを購入したもの、決めては見た目だった。同じ類の製品ではGiroのRamble VRなんかが有名だけど、ちょっとイメージが合わなかったし面白みにかけると思ったり。
その点、このTerra X2は履いている人が少ないし、見た目的にも好みだ。
固定はシューレース。Terra X5の特徴の1つはこのシューレースの配置で、足の甲の真上ではなく斜めに配置されていることで、フィット感よく足をホールドしてくれるらしい。
ベロの部分には、シューレースをまとめておけるゴムループがある。クランクに巻き込む心配のない嬉しい仕様。
後ろ側。主張の強くないFizikのロゴもいい感じ。
残念ながら反射材はなしで、個人的には小さくてもいいから、何かしらついていたら嬉しかったなあとか。
ソールは安心のビブラムソールで、やわらかく滑りにくいもの。結構クッション性もあって、スニーカーみたいな感じがする。
クリートは2穴タイプに適合。シマノのSPDや、クランクブラザーズなんかが使えるやつだ。クリート穴カバーは付属しなかったので、クリートをつけないときは穴がむき出しの状態になる。
また、オフロードで安定感を出すためか、クリート穴の位置が外側に寄っていた。
ソールのしなりはこんな感じ。サイクリングシューズにありがちなガチガチ感はまったくなく、わりと自然な感触だ。
それでもペダリング性能も考えて作られていて、つま先側は硬めでクッションも薄く、かかと側が柔らかくクッション性が高い。
実測重量は片足で386g(サイズ44、クリート無し)。余談だけど、公式は大抵サイズ41~42くらいを公表していて、1サイズごと数十g重くなる。
386gはロードシューズの感覚からすると重く見えるけど、この手のシューズにしては割と軽量なほうかと思う。
2.サイズ感とフィッティング
シューズの話題となると、やはり気になるのはサイズ感やフィッティングだろう。
Fizikをはじめヨーロッパブランドのシューズは日本人には幅が狭いことが多く「1サイズ大き目を買ったほうがいい」なんてよく言われる。
このTerra X5もその傾向はあるようで、他のシューズに比べて幅が狭く作られているなあと感じる。
僕自身の足は、日本人として特別幅広ではないけど細くもない。普通か、若干狭いほうに寄っている程度だと思う。普段履く靴は27.5cm、サイクリングシューズは基本EU43で、シマノのEU43が今のところ一番しっくり来る。
購入時にもかなり悩んだが、冬で分厚い靴下を履きたかったのもあってEU44を選択してみた。
結果的には、「分厚い靴下を履くとちょうどいいけど、薄手靴下だと緩い」という感じ。
確かに靴の中の余裕が横幅よりも足先の方が大きいので、幅は狭いつくりなんだろう。普段から足の幅で悩んでらっしゃる方は、確実に1サイズあげないとキツイと思う。
走行時の感触はフィット感が高いほどよいので、純粋に走行性能を考えるとベストはEU43だった気がする。その一方で、真冬の日々のライド(=シューズカバー等を使えない)も考慮に入れると、このサイズ感でもよかったかなあとか。
足幅に関して補足するなら、このFizikのシューズは足先の幅はわりと広いほうで、狭いと感じるのは土踏まずあたりの幅と高さ。サイズ選びの参考になれば幸いだ。
シューズの固定方法は靴紐で、先ほど触れたとおり斜めに配置されているのが特徴。確かにその効果は紐を締めたときから感じられて、足を締めつきすぎず、かといって緩すぎないちょうどいい感触にフィットさせられる。普通の運動靴もこうなればよいのでは?なんて思ったくらいだ。
しかし、この紐がイマイチよくない。結び目が出来にくい素材なのか、しっかり縛ってもだんだん緩んできてしまう。少し大きめを買っているせいもあってか、このだんだん紐が緩んでくるのが気になって耐えられなかった。
対処方法としては、モンベルに売っているコードロック小を追加することで解決。結び目を作る前に一回コードロックで固定し、その上から普通に蝶結びをする。こうすれば紐の調節をしなくても履き続けられるので、もしご購入される方や同様の症状に悩んでいる方がいらっしゃればお試しいただきたい。
3.本当に歩きやすいのか?
さて、前置きが長くなったけど、ここから実際の使用感を。
総じて「2穴SPDシューズは歩きやすい」といわれるけど、実際はSPDシューズにもさまざまなタイプがあって、靴底がしならないカーボンソールから、剛性を落としたナイロンコンポジット、通常のスニーカーのようなモデルなど多岐にわたる。
このTerra X2は通常のスニーカーのようなモデルな訳だけど、中でもかなり歩きやすい部類だと思う。というのも、スニーカーのような見た目でも、ソールの硬さを決める板状のパーツ(シャンク)やミッドソールのクッション性次第で、意外とナイロンコンポジットくらいの硬さのモデルや、ペラペラでクッション性に乏しいモデルもあるからだ。
Terra X2はまさしく「スニーカー的」で、普通の感覚で歩いてもソールがしなって歩きやすいし、クッション性も高いので長時間歩いても足裏が痛くなるようなことがない。
ここはいい意味で期待を裏切られた部分で、もう自転車関係なく普段履きとして使っていいんじゃない?と思う。
ただ1つ注意点として、路面の状況によっては、クリートが地面にあたってガチャガチャうるさいことがある。お店の中など屋内ならまずそういうことはないけど、アスファルトの上なんかだと、表面の凹凸の具合によって結構大きな音が鳴ってしまうのだ。
ともあれ、これも静かな住宅街とかじゃない限りそんなに周囲の気に障るレベルではなく、街中で一緒に歩いた人にも「別に気にならないよ」と言われたので、そこまで気にしなくともよいのかも知れない。
4.ペダリング性能について
最後に、Terra Ergolace X2の走行性能について。残念ながら、こちらは期待していたよりもイマイチな部分だった。
先ほど書いたとおり、Terra Ergolace X2は「所謂スニーカー」のような感触なのでペダリングにダイレクト感がない。フラットペダルにランニングシューズで乗っているような感触で、ふわふわ・ムニムニな感じ。
シャンクがちゃんとしているからペダルが食い込むようなことは無いんだけど、本気で踏んだり引き足を使ったりするとソールが変形している感触が結構する。
歩きやすさを生かしてグラベルライドにも使おうかとも思っていた(というか、本当はそういうシューズだ)けれど、この走行感は長時間使用に耐えないので選択肢から外れてしまったくらい。
変な話だけど、いままで使っていた金属フラットペダル+Fivetenシューズのほうが、踏んでいるときのダイレクト感は強かった。(Fivetenのフリーライダー。レビューはこちら)走り心地を比較するなら、
フラペ+スニーカー<SPD+Terra X2<硬いフラペ+Fiveten<SPD+ナイロンソール<…
という感じ。
「じゃあFiveten履けばいいじゃん」と言いたくなるけど、Fivetenはソールが薄くて街中で長時間歩くと疲れるし、MTB用のピン付きペダルはソールを痛めてしまい、靴がすぐダメになるから普段履きとしてはイマイチだったり。
その辺も加味すると、この柔らかくて歩きやすいSPDシューズという選択肢も、日常的には良いなと思っている。
5.まとめ
以上、僕なりにFizikのSPDシューズ「Terra Ergolace X2」のレビューをしてみた。
公式の説明ほど走行に適したシューズだとは思えないけど、その分歩きやすく普段履きとしても快適なシューズになっている。
デザインもかっこいいし、オシャレに街中ライドを楽しみたい方から、輪行を駆使して観光メインのライドを楽しみたい方などにはお勧めの1足だ。もし足にしっくり来なくても、クリートをつけずに普通にスニーカーとして使う選択肢もありだと思う。
このレビューが、皆様のシューズ選びの参考になれば幸いだ。
おわり
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