はじめて投稿する登山ネタ。
需要があるか分からないけど、僕の自転車人生にもつながるものがきっとあるから、ここに記していきたいと思う。
大学の山岳部に所属している僕は、GWに富山県の立山へ山行(=登山に行くこと)をした。立山は黒部ダムなどに近い観光地で、標高2700~3000mの山々が連なる。5月の立山は残雪が多く、気温も上がるため(といっても夜間は冬山装備必須だが)バックカントリーを楽しむ人に人気のスポットだ。
僕はスキーが上手くないので、単純に立山を縦走。本当は剱岳に行きたかったけど、いろいろあって今回は見送ることに。難しいルートではなく天気予報も良いから、雪道にしては楽な方だ。といっても、行ってみたら怖い道もちらほら。今回も無事に帰ってこれて良かった。
立山へのアクセスは、3000m級の山とは思えないほどアクセスが良い。立山アルペンルートというのだが、立山駅から専用のケーブルカーと観光バスが出ており、1時間少々乗っているだけで2500mの雪原-「室堂」に到着する。
バスに揺られる道中も観光地らしく、名所の説明アナウンスが流れたりする。15m以上の雪壁で有名な「雪の大谷」も通るルートだ。乗車客も私服の観光客が多い。
あっさりと登山口に到着。観光客が多いおかげでアクセスがいい反面、雪面にたくさんの人が歩いていて、美しさのかけらもない。しばらくコースも平坦。淡々とBC(ベースキャンプ)へと歩みを進めた。
ベースキャンプ(BC)に到着。山岳部のテントはひと際大きいから、かなり込み合っているテント場でも目立つ。今回はOBさんも参加しての大パーティーだ。
雪上訓練などをして、パーティーで打ち上げをする。みんなでワイワイってのも悪くないなあと思う。
日没と同時に、東の空から満月が顔を覗かせる。その明るさに驚く。
月明りが照らす稜線と立山の雪面。西の空を見ると、夕焼けに宵の明星が輝いている。ああ、なんて綺麗なんだろう。
多くのパーティーが就寝し、辺りが静かになってきた。僕はたまらず、一人で散歩をする。
流石は山で、ちょっと離れると人っ気が全くなくなる。沢の地形に降りていくと、どこを見ても人工物がないのだ。
そこで一息。冷え切った夜風で凍り付いた雪面に、大の字に横たわる。
美しい…。
地面に寝転がるなんて、普通は大人になってからはまずしない。だから、その気持ちよさを忘れている人は、一度横になってみてほしい。空がこんなに広かったんだって、ビックリするはずだから。
寝転がると、夕焼けと満月が一度に見られた。視界の左端には夕焼けが、右端には満月が。両方同時に楽しめるなんて、最高の贅沢だ。
しばらくすると、夕焼けが消え月明りが支配する世界になった。珍しく風もない穏やかな夜で、月の影になる稜線がまた美しい。登山では危険だから暗くなる前に行動を終了するのが鉄則なんだけど、その雪面を見て僕は、MTBにスパイクタイヤを履かせてあそこを駆け下りたいと思った。この景色の中のダウンヒル。絶対気持ちがいいんだろうなあ…。
2日目。
今日は三山縦走だ。凍り付いた雪面を、アイゼンを使ってテンポよく登っていく。このときのリズム感は、ロードバイクのヒルクライムに似ている。息が上がらずダレない程度に、程よいテンポで単調に。
登山道になっている稜線上はすでに夏道(=雪のない道)になっていて、アイゼンも必要ない場所が殆どだった。にしても、昨日に引き続き天気が良くて気持ちが良い。その分紫外線がきつくて、サングラスをしているのに裸眼で見ているかのような感覚になるほどだ。
ちょっと遠回りして、龍王岳や浄土岳にも上ってBCへ帰還。特に危険な場所もなく、パーティーに問題もなく無事に終えることが出来た。BCに戻ってからは、早速酒盛りをする。
山での楽しみの一つは、雪で冷やしたビールだったりする。これはもう、文句なしに美味い。ガス直火で焼いた厚切りベーコンをつまみにしてやれば、もはや言葉は必要あるまい。
最終日の3日目。
立山駅へ帰らなくてはならないから、行動は午前中のみになる。雷鳥沢BCから奥大日岳、大日岳のピストンをした。
登山地図にはコースタイムというものが記載されていて、そのルートの目安時間を表している。コースタイムでは9時間-完全に遅刻の道のりだったが、体力のあるメンバーだけで歩くからいけるとみて、リミットタイムとポイントだけ決めてスタートした。あらかじめ「○○の時は~する」と決めておくのは自転車でも大事。重要な判断だけは事前に決めておかないと、疲労し興奮している当時には正しい判断が出来なくなるから危ない。
途中雪庇(=雪が尾根にせり出して積もったもの)がたくさんあって、歩く場所に気を付けないといけなかった。雪庇は遠くから見ると明らかだけど、いざ雪面で対峙するとどこからが雪庇になっているのかが分からない。誤って雪庇を踏み抜いてしまったら、崖下まで滑落するのは確実だ。
たとえトレース(=足跡)があったとしても、盲目的にそれに従っていては雪庇や割れ(雪面が溶けて数センチ~数メートルの裂け目になっているところ)にはまる可能性がある。雪面は日々変化して、すっと雪が降っていないからいつのトレースか分からないのだ。
注意して歩き、大日岳へ登頂。コースタイムの半分のペースで歩けているから、時間的にはかなり余裕だった。こちら側のルートは人気でないのか、殆ど他の登山者も居なかった。山頂からは日本海と富山の市街地が一望でき、振り返れば剱岳。文句なしの景色だった。
後はサクサク下山し、横浜へ帰宅。今回は天候にも恵まれて、綺麗な景色を眺めて酒を飲む楽しい山行だった。
山に登りだしてまだ2年そこそこだけど、祖父が命を懸けた意味がなんとなく分かってきた気がする。危険なのは確かだけど、そんなこと言ったら家の前の道を歩いてたって事故に遭って死ぬかもしれない。大事なのは自分が死ぬまでに何が見たいかと、死なないために最善を尽くせるかってことだ。
本記事を投稿した折、登山家の栗城さんがエベレストで亡くなった。それでも、見たい景色があるのも確かだ。自転車も山も、命を大切に楽しんでいきたいと思う。
おわり
[…] 以前の立山登山記に続く登山ネタ。 […]