バイクパッキングブランド大手のApidura(アピデュラ)。その特徴的な製品の1つに、「ロングトップチューブパック」がある。その名の通り通常のトップチューブバッグよりも長いのが特徴で、デッドスペースを活用したパッキングが可能となる。
今回、Apiduraの最新作「バックカントリーシリーズ」のロングトップチューブパックをレビューしていきたい。
<目次> 1.スペック 2.各部詳細 3.使用感 *ロングトップチューブバッグは超便利 3-1.若干膨らむ 3-2.根元まで高いのが良い 3-3.インナーポケットが便利 3-4.他のバッグとのマッチングも良好 3-5.防水性はそれなり 4.まとめ
1.スペック
では、スペックを見ていこう。
Apiduraのバッグは大きく分けて3つのシリーズに分かれており、ロード用で小型軽量な「レーシング」、バイクパッキングの汎用タイプ「エクスペディション」、オフロード系の「バックカントリー」。
この製品は、バックカントリーシリーズから出ているロングトップチューブパックだ。もう一つ「レーシング」シリーズからもロングトップチューブパックは出ていて、僕はそちらも愛用している。(レビューはこちら)
・サイズ:L37×H10×W4.5cm ・重量:200g(1.8L) ・価格:11,880円(税込み)
レーシングシリーズのロングトップチューブパックが凄く良かったので、バックカントリーシリーズも気になっていた。
レーシングとバックカントリーを並べるとこんな感じ。
レーシングに比べて、バックカントリーの方がやや短く、容量も2.0L→1.8Lとやや控えめになっている。
詳細のサイズはこんな感じ。トップチューブの長さや、股下のスペースによって取り付けの可否が決まるので、その点は購入前に要チェックだ。
実測重量は、191.5g。ベルト類もすべて込み・未カットの状態だ。公称200gなので、それより5%ほど軽量。Apiduraはサバを読まないので好感が持てる。
2.各部詳細
さて、各部を詳しく見ていこう。
実はデザインが新しくなっており、前後でグレーと黒の2色を使い分けたものになっている。僕の手元に来たのは新型のデザイン。旧型のデザインが好きだったけど、新型もなかなか良さげ。
グレーの部分は防水素材として名高いX-PAC、黒い部分はApiduraが独自開発したヘキサロンという防水素材。黄色いアクセントは、反射素材となっている。
ベルトは合計5つ。すべて取り外し可能で、必要な部分にだけつけることができる。
また、ベルトの長さも元々かなり長めの設計。「不要な部分は切ってね」というタグが付いていて、フレーム形状が多様なオフロードバイクに配慮した作りだ。
ロングトップチューブパックは、トップチューブとシートポストの両側からバッグを引っ張ることができ、それによってバッグのズレを防いでいる。僕はボルトオン加工をしているけど、通常使用でも固定力が高いことで定評がある。
ジッパーは前後両方から操作可能。荷物に素早くアクセスできる。
内部は黄色で、視認性が高い。レーシングでは白だったけど、僕的にはこちらの方がより見やすくて好み。
着脱可能な中仕切りがついているので、荷室を前後でわけれられる。これが結構便利で、例えば前にバッテリー、後ろに補給食といった使い分けができる。
前側側面には、メッシュのポケットも配置されている。これもレーシングにはなかった機能。
前側にはバッテリーのケーブルを通せる穴が開いている。スマホやサイコン、ライトなどの充電に使用しという方にはうれしい設計だろう。
本体・ジッパーともに防水性の高い素材なので、雨への耐性もそれなりにあるバッグだ。
<ボルトオン加工について>
気になっていた理由の1つは、ボルトオン仕様にカスタムした際の使い勝手。
僕は自分で穴あけ加工をしてボルトオン化していて、その時レーシングだとサイドのベルトが邪魔になった。バックカントリーならベルトが着脱可能になっていたので、よりスッキリ取り付けできるのではと期待して導入を決定。
加工の仕方についてはこちらの記事に詳しくまとめていて、構造も同じだったのでほぼ同じ手順で作業した。
1つだけ改良した点は、ハトメを取り付ける際に干渉していた内部の骨組みを、若干ナイフでえぐった点。それによりハトメの位置もまっすぐに揃える事ができて、見た目も使い勝手もいい感じになった。
当初の狙いどおり、トップチューブへの固定ベルトを全て抜いて使用できるので、スッキリして良い感じになった。見た目に良いのはもちろん、フレームバッグのベルトと干渉しないし、着脱の際にも手間が減ってかなり良い。
気になる固定力に関しても、ボルトオンを確実にしたうえで、前後からしっかり縛れば問題なく使用できている。このバックカントリーシリーズを使って、装備構成のモヤモヤが一気に減ったのが嬉しいところ。
3.使用感
では、さっそく使用感をいろいろと書いていこう。
なお、「長いトップチューブバッグ」の便利さについては、こちらのレビューで詳しくご紹介しているので、ぜひ併せてごらんいただきたい。基本的に僕は、Apiduraのロングトップチューブバッグを凄く気に入っているので、そこを語っていると文字数がいくらあっても足りないので、記事を分けた形だ。笑
この記事は、そういったロングトップチューブパックの使い勝手の良さを踏まえたうえで、レーシングとバックカントリーの比較をメインに書いていきたい。
3-1.若干膨らむ
いきなりネガティブな内容だけど、このバックカントリーが若干イメージと異なり、唯一にして最大の欠点だったのはここ。
製品の寸法では「横幅45mm」となっているものの、実際に荷物を入れて膨らんだ状態では55㎜くらいになる。たかが10mmと思われるかもしれないが、トップチューブバッグにおける横幅はかなりシビアだ。それは、この微妙な横幅によって、膝に当たったり当たらなかったりするから。
レーシングのロングトップチューブパックは、この横幅も完璧で、お気に入りのポイントの1つだった。それが若干ではあるものの、製品スペックと異なるサイズ感になってしまっているのは、個人的にはいただけない。
もちろん、世の中にあるトップチューブバッグと比べれば、依然として幅が狭いモデルなのは間違いないだろう。MTBでQファクターが広いとか、ペダリングの仕方で膝当たりが気にならないという方には、特にネガにならないと思う。
おそらくこうなった原因は、使用している素材の違いにある。レーシングは全面がヘキサロンなのに対し、バックカントリーはX-PACも使用している。このX-PACがヘキサロンよりも柔らかく、悪く言えば型崩れを引き起こしやすい。
内部には、レーシングと同様の補強材が入っていて、軽量ながらに型崩れを防止するつくりになっている。しかし、表面や底面の素材の特性上、もう少しここを補強してもよかったのかも?と素人ながらに思ったり。
凄く細かい点だけど、僕的にはグラベルロードでギリギリOK、特にQファクターが狭いロードバイクでは使いにくいかな…という感じだ。
3-2.根元まで高いのが良い
レーシングとの比較でよいと感じたのは、バッグの後ろ側まで高さが確保されている点。ここも微々たる差だけど、レーシングが全体的にスローピングしているのに比べて、バックカントリーは途中まで一定の高さで、ある部分から折れ曲がって低くなっている。
これにより、バッグ全体として高さが確保でき、荷物を入れやすくなった。容量的には、レーシングが2Lに対してバックカントリーが1.8Lと少なくなっているものの、体感としては変わらないし、むしろバックカントリーの方が荷物の出し入れはしやすい。
視点を変えて話すと、バイクをまたいだ際の股下に余裕がない方は、レーシングの方が収まりがよいかも知れない。同じくApiduraのレーシングロングトップチューブパックを愛用している友人は、自分はレーシングの形状の方が良いと話していた。乗っているバイクや自分の体格に応じて、よりフィットする方を選んでいただければと思う。
3-3.インナーポケットが便利
個人的にヒットしたのが、新しく追加されたメッシュのインナーポケット。僕は鍵や一眼レフの予備バッテリーを入れるのに使っていて、このサイズ感と仕組みが重宝している。
トップチューブバッグは構造的に、バッグ容量に余裕がある状態では、振動で荷物がフレームにぶつかってしまう。もちろんそれを軽減するために、このバッグには5mmくらいの厚みのスポンジが入っているんだけど…それでもグラベルをガンガン走るとなるとやはり気になるものだ。
特に一眼レフの予備バッテリーは、なるべく負担のないように運搬したいと感じていた。
このメッシュポケットなら、そういった小物が中で暴れる心配がなく、出し入れも簡単で、いつも同じ場所にあるからストレスもない。ほかのバッグにも付けたくなる使い勝手の良さだった。
3-4.他のバッグとのマッチングも良好
Apiduraのバッグは、そのデザインの統一感も魅力だと僕は思っている。バイクパッキングで使うバッグをApiduraでそろえれば、それだけでなんだか様になってくる感じがあって、かっこよくキマるのだ。
デザインが変わってその辺りはどうだろうと思っていたけれど、まったく問題なさそうだ。むしろ他のシリーズのバッグとも相性がよさそうで、これからも色々なスタイルで遊んでいくのが楽しみだ。
3-5.防水性はそれなり
トップチューブバッグ全般の問題として、防水性が低いというものがある。これはブランド・製品問わず、バッグの開閉口が上を向いている都合上、どうしても雨水が侵入しやすいためだ。
Apiduraのバッグは完全防水を謳っているし、実際このバックカントリー ロングトップチューブパックも防水性が高い。
しかし、雨の中を走り続ければ、バッグの中は濡れてしまうものだ。残念ながら、僕の経験上トップチューブバッグが浸水しなかったことはないし、この製品も例外ではない。
バッテリーなど、どうしても濡らしたくないものを持ち運ぶときは、他のバッグを活用することをお勧めしたい。
4.まとめ
以上、僕なりにApiduraのバックカントリー・ロングトップチューブパックをレビューしてみた。前作のレーシングシリーズとの比較をメインにしてみたけど、全体としてApidura製品の作りの良さや、ロングトップチューブパックというものの使い勝手の良さは健在だ。
「ロングライドで荷物を効率的に運びたい」「デッドスペースを生かしたパッキングがしたい」
等の思いがある方なら、きっと気に入って頂けると思う。
そのうえで、一見デザイン程度の違いに見えるレーシングシリーズとバックカントリーシリーズで、意外と異なる点も多いことが発見だった。良し悪しは使い手によって変わってくるだろうから、ぜひご自身の使用環境や好みに応じて選んでいただければと思う。
この記事が、皆様のお役に立てば幸いだ。
おわり