装備レビュー

【レビュー】FLR:ディフェンダーMTB/防寒・耐水SPDシューズ

冬のサイクリングでは、冷たい空気とウェットな路面が襲い掛かる。そんな時、防寒・防水のシューズがあれば、足元がグンと快適になるものだ。

今回は、高コスパのサイクリング・シューズブランド「FLR」の冬用SPDシューズ『ディフェンダーMTB(Defender MTB)』をレビューしていきたい。防寒性と防水性に優れるという本製品だが、その性能やいかに?

<目次>
1.スペック
2.各部詳細
3.使用感
3-1.サイズ感・フィット感は?
3-2.脱ぎ履きがしやすい
3-3.シューズカバー要らずの保温性
3-4.防水性は高いが、足首に注意
4.ツーリング・街乗り系に良さげ

1.スペック・導入経緯

では、スペックを見ていこう。

スペック

・カラー:ブラック
・サイズ
:EU38~45(1刻み)
・2穴SPDナイロンソール
防寒/防水 ・重量:505g(サイズ44片足実測) ・価格:18,480円(税込み) 公式ページはこちら

FLRは、プロにも製品提供をする性能を、低価格で取りそろえるイスラエルのブランドだ。日本人に合いやすい足型なのも特徴の1つで、僕も同社のシューズはいろいろ愛用している。

このシューズは、防寒性や防水性を高めた冬用シリーズ。僕が使用しているのは2穴SPD用の「MTB」だけど、SPD-SLなどで使用する3穴クリート用の「ROAD」のラインナップもある。

価格は1万円台と、ウィンターブーツにしてはお手頃価格。NorthwaveやShimano、LAKEなどは3万円~という価格設定なので、手を出しやすい製品だろう。

僕は2年前から冬用のSPDシューズを導入していて、その使い勝手の良さの虜になっている。冬用シューズのメリットは次の通り。

・汚れたシューズカバーの着脱が不要
・足裏が寒くない
・冬用に分厚いソックスに合わせたサイズを選べる
・防水モデルなら、雨の日やウェット路面の日でも浸水しない

僕の中では、特に最後の「雨やウェット路面でも浸水しない」というのが大切。住んでいる地域柄(東北在住)、朝夕には路面が凍結するため、一度降った雪や雨が乾かず、ずっとウェットな環境が続く。冬の不安定な天気も相まって、足元は基本的に悪い。

そんな環境では、シューズカバーは無力で、いつも指先が濡れて辛い思いをする羽目になる。そこで活躍するのが、防寒・防水の冬用SPDシューズという訳だ。

今まで僕が愛用してきたのは、NorthwaveのRaptor Arctic GTX。防寒素材とGore-Texが全面に入った、-10℃対応のSPDシューズだレビューはこちら

この手のシューズはロングライドでも大活躍で、輪行や宿泊地で歩くシーンが多かったり、脱ぎ履きがあったりでも快適。今まで様々なライドで僕を支えてくれた。

今回、FLRの代理店であるライトウェイプロダクツジャパンさんから、「使ってみた感想が聞きたいです!」と提供を頂いた。NorthwaveのRaptor Arctic GTXとの比較がメインになるけど、いろいろ素直に書いていきたい。

2.各部詳細

では、各部を詳しく見ていこう。画像のサイズはEU44。

カラーはブラックのみで、シンプルな見た目。全体に反射素材が散りばめられている。

特にかかと側にはしっかり配置されていて、日の入りが早い冬でも安心だ。

防寒シューズらしく、分厚く防水性も高そうな素材が使われている。何層にもなっていて、表面から以下の様な組み合わせらしい。

・人工皮革と防水コーデュラ生地
・DryS-Tex耐水メンブレン
・3Mシンサレート
・ゴム引きシェル
・起毛フリース

DryS-Texという素材は詳細不明だけど、保温剤として3Mのシンサレートが入っているみたい。毛足の長いフリースも相まって、保温力はかなり高そうだ。

靴の中のフリースはかなりモコモコで、暖かそうな感じがする。

フリースが入っているのは踝の下くらいまでで、ネオプレンカフの部分は裏地も普通にネオプレンだ。

ベルクロのカバーをめくると、シューレースが出てくる。シューレースは結ぶ必要がなく、ストッパーで簡単に調整できるタイプ。スピーディーな脱ぎ履きに対応している。

靴紐の先端には、革の持ち手が付いていて、冬用グローブをしていても扱いやすい設計。

カバーの内側にも毛足の長い起毛素材が用いられている。前方からの風を受けやすい足の甲のあたりは、2重の保温素材で守られる仕組みだ。

足首はネオプレンカフが付いていて、冷気の侵入を防ぐ。カフもベルクロで開閉でき、多少のフィッティング調整も可能だ。

カフの裏地には起毛素材が用いられていないので、足首部分は厚手のシューズカバーをしているイメージだろうか。

ソールは剛性感のあるナイロンソール。

FLRの剛性指数では、7/14となっている。手ではびくともしない硬さなので、剛性指数のイメージよりもしっかりしたソールだと考えて頂いた方が良さそうだ。

インソールにも、本体と同様の起毛フリースが付いている。手触りもかなりモコモコ。

ただし、断熱素材が入っている訳ではなさそうなので、そこは価格なりな感じがする。画像2枚目・3枚目は他のウィンターブーツとの比較で、NorthwaveのRaptorとLAKEのMXZ304のインソールだ。

重量は、サイズ44を実測で、片足平均505g。サイズ43は平均481gだった。

この数字だけを見ると重たい気がするけど、この位のサイズのナイロンソールSPDシューズは大体350gくらい、同等の保温性のシューズカバーは150gくらいなので、シューズカバー使用時とほぼ変わらないだろう。

補足として、NorthwaveのRaptor Arctic GTXは、サイズ43で片足平均が453gだった。FLRの方がタンの部分が強化されているので、納得感のある重量だ。

3.使用感

続いては、使用感をいろいろと。東京⇔仙台のロングライドやグラベルライドなど、とりあえず計800kmくらい使ってみた。

3-1.サイズ感やフィット感は?

このFLR:ディフェンダーに関して、最も注意していただきたい&強調しておきたいのが、このサイズ感とフィット感。

FLRは「甲高・幅広な日本人の足型にフィットしやすい」というのが、ウリ文句の1つだった。僕自身、そのフィット感が気に入ってロード・グラベル問わず何足も愛用している。

その点、このディフェンダーは、他のFLRシューズとフィット感が異なるのだ。

結論から言って、相対的に「つま先が幅狭・かかと側が幅広」な形状になっていると僕は思う。

僕はいつもサイズ43を選んでいて、FLRも43が丁度いいか若干大きいくらいだった。それが、母指球あたりの圧迫感から、ディフェンダーはサイズ44を選んでいる(43と44を履き比べて、43では小さかったので44を選んだ)。

冬用シューズは分厚い靴下にも対応させるため、また血行を阻害しないため、大き目を選ぶのがセオリー。だからサイズアップ自体は普通なんだけど…それにより、土踏まず~かかとの幅や、足首周りのフィッティングが緩い問題がさらに増大してしまうのが残念に思う。

踏み込んだ時に、側面の生地が余っているのが上の画像でお分かりいただけると思う。シューレースの配置がもっと斜め外側で幅広だったり、足首のカフの調整幅がもっとタイトに固定できる感じだったら…と惜しいところ。

あまりパワーを掛けないライドや、テクニカルなペダル操作を必要としない走り方なら選択肢の1つとは思う。その一方で、シクロクロスの様なシビアな環境や、レース系シューズのフィッティングが好みの方には、合わないかも知れない。残念ながら僕は、パワーの強くかかるようなライドでは使用しないと思う。

もちろん、これは個人の足型との相性次第なので、この形が合う方もいらっしゃるだろう。今FLRのシューズを使っている方も、必ずフィッティングしたうえでの購入をお勧めする。

参考までに、他のFLRのシューズとインソールを比較。

左から、ディフェンダーの44、ディフェンダーの43、F-95Xの43、カスタムインソールの43。形状が異なるほか、同じ43で比較しても、ディフェンダーがやや小さいのがお分かりいただけるだろう。右の2つは履いているものなので、若干反りあがって小さく見えているので、その点も考慮していただきたい。

3-2.脱ぎ履きがしやすい

FLRのディフェンダーは、ベルクロ&シューレースでの固定なので、脱ぎ履きはとても楽ちんだ。片手でさっと完了するし、ましてや椅子などに腰掛ける必要もない。

今まで使っていたNorthwaveのシューズは、足首のカフが固定で脱ぎ履きしにくかった。その点においては、圧倒的にFLRの勝利だ。

FLRとNorthwave。

厚手靴下を履いていると、BOA系のダイヤルでは緩める量が大きくなる。そのため、緩めるのはもちろん、履くときにダイヤルを締め込む量が多くて面倒臭かった。その点このシューズは、片手でさっと脱ぎ履きできる。

このスムーズさは、お店に入って脱ぎ履きをしたり、通勤通学で毎朝忙しかったり…というシーンで役立つだろう。

3-3.シューズカバー要らずの保温性

肝心の保温性に関しては、必要十分だし優秀だと感じた。

冬の東北でテストしているので、最低気温は少なくとも-3℃になっている。それでも夏用薄手靴下で耐えられるし、厚手靴下を合わせれば快適だった。冬北海道など特殊な環境を除いて、一般的なサイクリストが走る環境なら、足の寒さと決別できる保温性だろう。

ボトルが凍るナイトライドでも平気だった

細かい点で注文を付けるなら、インソールの断熱性だろうか。

僕が他に所有しているNorthwaveやLAKEのシューズは、インソールに熱反射材を仕込んでいる。FLRはそういった機構がないせいか、氷点下では足裏がやや冷たい感じがした。大きな問題ではないし、価格から考えて納得の保温性だけど、もう一工夫あると尚良かったなというポイントだ。

3-4.防水性は高いが、足首に注意

防水性については、シューズのどの部分について語るかで話が変わってくる。

シューズの下側(ネオプレンではない部分)は、十分に高い防水性だと思う。その一方で、足首のネオプレンカフは防水ではないので、雨天でハードに使うとそこから靴下に水がしみてくるのに注意が必要だ。

テストとして、気温5℃・降水量2~3mmの雨のなか、約1時間走ってみた。積極的に水たまりにも突っ込み、多少のグラベルにも入って、通常のライドよりもハードな状況にしている。

その結果、足首のネオプレンカフのあたりから浸水しており、靴下は新聞紙の上を歩くと足跡が付くくらいの塗れ具合となった。レインパンツの部分は靴下もタイツも乾いたままだったので、やはり足首のネオプレンカフからの浸水が濃厚だ。

「浸水」というとマイナスな印象だけど、実際に走っているとき足は暖かく保たれており、気温5℃の雨とは思えない快適さではあった。同様の状況をシューズカバーで走ったこともあるけど、あの時の地獄と比べれば天国である。つま先側からは浸水しないお陰で、相当浸水を遅らせることが出来るし、防寒性も相まって冷たさを感じにくいのだろう。

少し補足すると、他社のウィンターブーツも、基本的に足首は防水ではない(唯一Northwaveだけは、ネオプレンカフに「Gore-Tex Ratter」という防水メンブレンを挟んでいる)。また、僕の経験上、そのNorthwaveでもまる1日雨の中を走っていると普通に靴下は濡れる。

FLRのディフェンダーは、「1日中雨の中を走るロングライド」等ではちょっと厳しいと思うけど、街乗りやツーリングで1~2時間の雨をしのぐとか、冬の冷たい雨から足を守りたいという場合には、十分に使う価値があると思う。

4.ツーリング・街乗り系に良さげ

以上、FLRの冬用SPDシューズ「ディフェンダーMTB」をレビューしてみた。

ディフェンダーを使いながら感じたのは、「ライトな冬ツーリングや、通勤など街乗り系のライドなら良さそうだな」ということ。

前述の通り、フィッティング的にシビアなライドには使いにくいけれど、脱ぎ履きのしやすさや価格面ではかなり優位性がある。「冬も走るし、靴の脱ぎ履き・シューズカバーの着脱が多くて面倒だなぁ…」という悩みを抱えている方には、きっと刺さるだろう。防寒性は優秀だし、冷たい雨にもある程度対抗できる。

他社のレース系ウィンターブーツとは設計が異なるので、その辺りの使い分けを意識しつつ、ぜひ一度試し履きをしてから選んでいただきたい。フィッティングが上手くいけば、きっと冬用シューズの入門として有力候補となるだろう。

この記事が、冬用シューズを探している方のお役に立てば幸いだ。

おわり

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