大型サドルバッグの定番Apidura(アピデュラ)のサドルバッグ。Apiduraはサドルバッグだけでも現行7つもの種類を展開するが、今回はそのなかでもベストセラー的な立ち位置にある「エクスペディション」シリーズをレビューしたい。
バイクパッキングの超人気ブランドの手掛けるサドルバッグの実力はいかに?
<目次> 1.スペック 2.各部詳細 *取り付けについて 3.使用感 3-1.実は揺れやすい? 3-2.防水かつ大容量 3-3.細部の機能性がGood 3-4.大容量でキャンプの見方に 4.まとめ
1.スペック
では、大まかなスペックからご紹介。
・容量:9L(14,17Lの展開もあり)
・重量:325g(14L/350g、17L/400g)(9Lの実測281g)
・価格:18,590円
・Alternative Bicycles公式サイトはこちら
Apiduraはバイクパッキング用のバッグを手掛けるイギリスのブランドで、防水性と軽量性を実現させたことやスタイリッシュなデザインから人気が高まった。
Apiduraの大型サドルバッグは大きく分けて「エクスペディション」「レーシング」「バックカントリー」と3つのシリーズでラインナップされており、今回レビューするのは最もオーソドックスで歴史のながい「エクスペディション」。(発売当初は「Dry:ドライ」という名称だった)
このエクスペディションにも容量が17L、14L、9Lと3種類あって、僕が使っているのは最も小さい9Lのタイプ。
Apiduraのバッグのシリーズや展開については、こちらの記事にまとめているので合わせてどうぞ。
実測重量はなんと281g(公称325g)と、公称値よりも44gも軽い結果となった。
もちろん机にバッグが付いたりはしていないし、念のため測り方を変えても何度測っても281gだった。個人的には嬉しい誤算。
2.各部詳細
では各部を詳しく見ていこう。
全体は濃いグレーの防水生地で、黄色いラインのアクセントが入っている。エクスペディションシリーズ共通のデザインだ。
上部にはドローコードがあり、ジャケット等を外付け出来るようになっている。
ここはスリットになっていて、クリップ式のリアライトを挟むことが可能。
収納スペースはロールアップして固定する。
左右1つずつ計2つのバックルを用いて固定し、締め込み具合はベルトを引くことで調節可能。末端がピラピラしない様に、樹脂製のパーツで止められているのも好印象。
内部は奥の補強版が黄色くなっている。
全部が見やすい訳ではないものの、奥に入れた荷物も見つけやすいカラーリングだ。
隠れた位置に空気抜き穴を備える。(画面中央の3つの穴がそれ)
*取り付けについて
サドルへの固定方法は一般的なレールとシートポストにベルトを巻くタイプ。
取り付けの際にまず注意が必要なのは、サドル下~リアタイヤまでのクリアランス。ここの距離が空いていないと、サドルバッグがタイヤに擦ってしまうので要チェックだ。
そして、バッグの揺れを抑える取り付けをするのもポイント。ダンシング等でバッグが揺れると、バイクが大きく揺さぶられるようになり走行感が悪化してしまうからだ。
大切なのは「荷物をパンパンに詰める」「ベルトを強く締めてバッグをサドル裏に密着させる」こと。ちょっとしたコツなんだけど、それが出来るかどうかで使用感がかなり異なってくるのでお忘れ無きよう…。
大型サドルバッグの揺れ対策につては、こちらの記事に詳しく書いているのでぜひ合わせてご覧頂きたい。
3.使用感
では、実際の使用感をいろいろと。基本的にはグラベルロードでのキャンプツーリングで使用している。
3-1.大容量でキャンプの見方に
何といっても、このエクスペディションサドルバッグの特徴は「大容量」であること。最も小さいサイズでも9Lもの容量があるので、U.L.系でまとめればキャンプ装備一式を詰め込むことが出来る。
例えばこんな感じ。
・モンベル:U.L.ドームシェルター ・モンベル:グランドシート ・モンベル:ダウンハガー800#3 ・Sea To Summit:U.L.マット180㎝ ・JetBoil:ZIP一式 ・スノーピーク:チタンマグ450 ・その他(カトラリー、ティッシュ、インスタント食等)
ガッチリ詰め込んでるけど、9Lでもこれだけ入る。
「サドルバッグ1つで旅に出られる」という手軽さは革命的だし、Apiduraのサドルバッグはそんな装備を運搬するのにピッタリだ。ここに着替えを追加したい方や、装備がかさみやすい初心者の方は大きめの14Lあたりが良いかも知れない。
3-2.高い防水性
世の中バッグには、「防水」を謳いながらも実際には雨が染みてくる製品が結構ある。
Apiduraのエクスペディションサドルバッグは、その点は心配無用。雨天走行もそれなりにしてみたけど、中の衣類も濡れることなくドライな状態を保つことが出来た。
1つ注意点を書くと、ロールアップするときに下向きに2~3回は巻くこと。上向きに巻くと雨が溜まってしまうし、巻く回数が少ないと密閉性が下がってしまう。巻くほど容量が小さくなってはしまうけど、防水性を確保したいときは最低3回巻くというのが、僕の経験則だ。
逆に、防水性を気にしないなら1回だけ巻いてギリギリ止めることもできる。ウェア1~2着分くらいは容量が増えるので、そういう使い方もアリだと思う。
3-3.細部の機能がGood
上部のドローコードはとても便利で、ジレやウィンドブレーカー等脱いだウェアを簡単に固定しておける。いちいち降車してバッグを開け閉めするのは面倒なので、この機能は個人的にとても重宝している。
また、空気抜き穴が備えられているのも実はとても重要。防水のバッグは空気抜き穴がないとパッキングの時空気が入ってしまって詰め込みにくいし、ロールアップするときも巻き込みにくくなるためだ。
バルブ式の空気抜き穴を採用する製品(トピークやオルトリーブ)もあるけど、僕的にはいちいち操作が必要無い方が楽だし破損のリスクも低いのでアピデュラのが好き。
ロールアップを固定するベルトも長さ調節がしやすい設計で使い勝手が良く、末端処理(余った紐がピロピロしない様にすること)も行き届いている。
高級感のある質感も使っていて気持ちが良いし、製品としてレベルが高いと感じさせる仕様である。
3-4.実は揺れやすい?
大型サドルバッグの問題点として、やはり気になるのは「揺れ」。それを防ぐノウハウも先述の通りあるんだけど、やはりバッグによって揺れやすいものと揺れにくいものが存在する。
このApiduraのエクスペディション・サドルバッグは、残念ながら揺れやすい部類に属するというのが僕の考えだ。(もちろん、きちんと取り付ければ揺れを無くすこともできる)
(↑)揺れにくいバックカントリーシリーズ
(↑)このレーシングシリーズも揺れにくい
例えば、Apiduraの後発シリーズであるレーシングやバックカントリーのサドルバッグは、形状が異なるので揺れを抑えるのが簡単だ。それらに比べて、このエクスペディションは頑張っても揺れが発生しやすいのが事実。
更に、サドルレールのベルトが走行振動でやや緩みやすいこと、バッグのサイズが大きく積載重量が重くなりがちなことが相まって、一度完璧に取り付けてもだんだん揺れてくることがある。
どうしてもバッグが大型なので(荷物込みの)重量がかさむのは分かるけど、もっと緩みにくいベルトを採用しても良い気がする。サドルレールを縛るベルトのバックルは、負担が大きいので少なくともストッパーのついたものの、出来れば穴に通すタイプが望ましいはずだ。
長々と書いてしまったけど、「別に揺れても気にならないよ」という方もそれなりの割合でいらっしゃる様だし、取り付け方次第で揺れを無くすこともできる。だからサドルバッグの性能として致命的な欠点というレベルではなく、またそれはこのバッグの人気が物語っていると思う。
その一方で、個人的にはこのサドルバッグの唯一にして最大の欠点だ感じている。
4.まとめ
以上、Apiduraの大型サドルバッグ「エクスペディションサドルバッグ9L」のレビューをしてみた。
揺れやすいのが玉に瑕だけど、この容量と機能性はサイクリングの可能性をグッと広げてくれること間違いなしだ。「キャンプツーリングを始めてみたい」「ロードバイクにも荷物を沢山積みたい」という方には良いだろう。一般的には14Lが汎用的かなとは思う。
もしロングライド重視で軽快さも両立させたい方なら、レーシングやバックカントリーシリーズをお勧めしたい。こちらの方が揺れにくいのもあるし、容量的にも大きすぎるバッグは逆に性能が悪化し使いにくくなってしまうからだ。
この記事が、皆様のサドルバッグ選びに役立てば幸いだ。
おわり