秋の風が吹き始めた9月下旬。東北の名峰「栗駒山」山域へ、1泊2日のバイクパッキングへと出かけた。
初日の今日は仙台~山形~秋田と経由し、登山口に至る200㎞。友人と共にグラベルも駆けながら、トラブルと笑いの絶えない1日となった。
<目次> 1.ルートとパッキング 2.集合地点へ 3.相次ぐパンク 4.最高のグラベル 5.焚火を囲んで夜を更かす
1.ルートとパッキング
今回のライドは、栗駒山の登山とキャンプを中心とした1泊2日350㎞の予定で出発。結果的には、諸々のトラブルで後半のライドを短縮し250㎞の走行となった。
実走したルートはこんな感じ。(↓)
本当はゴールを一関ではなく、仙台の自宅まで自走するつもりだった。残念ながらそうはいかなかったんだけど、そのいきさつはブログを読み進めて頂くことにしよう。
全体の流れは、Youtubeチャンネルにもアップしているので合わせでどうぞ。
山形県の新庄駅から、度々ご一緒しているりっけいさんと合流して、2日間を共ににしている。
続いては装備のご紹介を。バイク装備はラックレスで、いわゆる「バイクパッキング」という形。
<使用機材> ・バイク:Bombtrack/Hook EXT ・ホイール:Alexrims/RXD2 ・タイヤ:Panaracer/Gravel King SS 700*40c ・サドルバッグ:Apidura/Expedition Saddle Pack(9L) ・フレームバッグ:Apidura/Racing Flame Pack(2.4L) ・トップチューブバッグ:Apidura/Racing Long Toptube Pack(2L) ・ハンドルバッグ:Sea To Summit/Ultra Sil(8L) + Black Diamond/Ski Strap ・ダウンチューブバッグ:Apidura/Backcountry Downtube Pack(1.8L) ・フォーク横:Daigo Gear/Front Fork Holder + Sea To Summit/Ultra Sil(4L)
Apidura(アピデュラ)のバッグを基本に、各所に装備を分散させてバイクの重量バランスを良くしてみた。平坦路から、グラベルや山岳といったコースも含む今回は、オールラウンドに使いやすいパッキングを意識。
バッグの中身は、オールシーズン用のテントやシュラフ、自炊器具、軽食、トレラン用具一式、着替えなどフル装備だ。
背中には、
・バックパック:Salomon/Sence Pro 5 Set ・ハイドレーション:Source/Wide Pack 1.5L ・フラスク:Solomon/Soft Flask 500ml ・一眼レフ:Olympus/om-d e-m5 mark ii
という感じ。バックパックは登山の際にも使用するもので、トレイルランニング用のもの。フィット感と拡張性に優れ、ライド中もとても便利なバックパックだ。
背中のものも全て合わせて、総重量は18.5㎏。バイクだけでも11㎏くらいなので、良いラインに収まっていると思う。
2.集合地点へ
さて、当日。
りっけいさんとの集合地点である新庄駅までは、自宅から約100㎞ある。輪行でも良かったんだけど、乗り換えが面倒だし大した距離でないので自走していくことにした。
朝焼けを拝みながらの出発。
嬉しいことに快晴で、東の空のグラデーションが美しい。この空のもと走るだけで、自走する甲斐があるというものだ。
この日は北西の風が吹いていて、僕の進行方向に対してちょうど向かい風だった。ハンドルバッグ+フォーク横×2と空気抵抗マシマシの装備だけに、結構しんどい。県境をまたぐと濃霧に覆われ、ウェアが濡れて不快感が増す。
それが山形市を通過すると、びしょ濡れになるほどの濃霧が晴れ、田園地帯に青白い世界と無数の虹が広がった。
こういう景色こそ、深夜から自走してきた者の特権と思う。せいぜい十数分しかないこの刹那の絶景を、淡々とクランクを回し駆け抜ける快感ったらない。
新庄駅まで、105㎞/4時間10分。途中コンビニに寄っていることも考えると、思いのほかいいペースで走っていた。今回のパッキングのバランスが良くて、気持ちよかったのも要因だろう。
ほどなくして、りっけいさんと合流。
りっけいさん`sバイクは僕と対照的に、無線変速フルカーボンのレーシングバイクに50万の決戦用ホイールという仕様。そこにバイクパッキングしているのがまた面白い。(笑)
……と、初っ端からりっけいさんパンク。チューブラーだから修理も大変なんだけど、ひとまず修理は出来たらしく一安心。
3.相次ぐパンク
スタートまで随分と長くかかったけど、いざ、栗駒へ。
良いペースで回していくりっけいさん。無理な走りをしないから後ろに付いていても安心感があるし、それでいて速いから凄く楽をさせてもらえる。
序盤の50㎞をサクッと抜けて、この先ラストのコンビニへピットインした。キャンプと登山を含めて、今後24時間ほどは自販機以外まったくの無補給となる。
……と、コンビニ手前の段差でりっけいさんのバイクから「バシュッ」と不穏な音がした。本日2度目のパンクだ(本当は穴が空いたんじゃなく、多分エクステンションバルブが緩んでたんだと思う)。
チューブラータイヤの予備は2本持ってきたらしいけど、既に1本消費しているので残りは1本。穴らしい穴も見当たらなかったため、クイックショット(エアとシーラントを同時に注入できるやつ)を試してみた。
バルブを緩めて、アタッチメントを取り付け、缶をさかさまに差し込むだけ。シューっとエアが入っていき、良い感じに見える。お互い初めてつかう道具なので、「おお~~」とちょっと感動。
さて、あとは缶とアタッチメントを取り外せば終わりなんだけど……
……って、え!?
この顔である。(笑)
アタッチメントを外す際にエクステンションバルブごと外れてしまい、クイックショットの中身があふれ出して泡まみれになる惨事。まぁ結果的には穴が空いていた訳じゃなかったから、空気を入れなおせばOKだったのが不幸中の幸い。最高に面白い瞬間だった。(笑)
そして、「なんか空気圧下げすぎたかな?」と思っていたら、僕のバイクも後輪もちょっとマズイ状態に。
実は今朝の時点でパンクしてしまったものの、シーラントを入れているからそれで止まるはずだった。しかし、どうもその穴を塞ぎ切れていないらしく、2Barを越えたあたりから空気が漏れてきて圧を上げられない。
穴のサイズ的に修理具を詰めるのも難しいし、シーラントでべたべたなタイヤを外してチューブ入れるのも面倒だし……。
空気を継ぎ足すも、あっという間に空気圧が下がってしまい常にポヨンポヨンの走行感。(笑)
舗装路では走行抵抗が大きいだけだし、積載量を考えると下げすぎだ。凄く走りにくいけど、時間も押していたしまあいいやと諦めて走る。お互いタイヤに不安を抱えたまま無人区間に突入していった。
4.最高のグラベル
今回のコース、実は個人的には最も楽しみにしていた区間があった。視界の開けた気持ちのいいグラベルだ。
そう、この解放感……っ!!
青空×グラベルっていう、日本じゃなかなかレアな組み合わせ。
この道を思いっきり駆け抜けられるんだから、嫌でもテンションがあがる。
凄く整った路面なので、ロードバイクのりっけいさんも楽しめているみたい。良かった良かった。
お互いの装備を記念撮影してみたり。
僕は完全にグラベル仕様。こういう道でこそ装備が映える。
りっけいさんのロードバイク×バイクパッキングも決まってる。
僕に比べて、自炊道具やウェア関連を削減しているので更に身軽な装備だ。それでもちゃんとキャンプ泊できて、山にも登れるんだからこれもいい形。
グラベルはまだまだ続く。
雰囲気のある写真を、さらりと残してくれるりっけいさん。
毎度毎度、本当にありがたいし嬉しい。
登りは厳しく、脚と水がみるみる消耗していく。
想定以上に気温が高く、また自販機を期待していたポイントにも自販機は無かった。山に入ってからというもの、携帯の電波もずっと圏外なので外部情報からも遮断されている。限られたリソースを切り詰めて、2人して時に笑い、大抵はヒイヒイ言いながら先へ進む。
足元から頭上まで、全てを『非日常』が包み込む。
辛いか楽かで言ったらそりゃ辛いんだけど、それでもこれが面白くて仕方ない。
5.焚火を囲んで夜を更かす
グラベル区間やその周りの山岳を抜けると、既に日は西に傾いている。ふう、暗くなる前にはキャンプ場に付けそうだ。
どこまでも続く山並み。長いヒルクライムの先のご褒美だ。
キャンプ場にチェックインしたら、ちゃっちゃと設営。りっけいさんも相当疲れているみたいで、淡々と設営が進み早くも寝るモード。僕もお腹が空いていたし、満載バイクで200㎞/3,000mを走ってきてる。回復に努めたい。
正直、エネルギー補給=インスタント食品とタンパク質補給=ジャンボ魚肉ソーセージにかじりついて、1秒でも早く寝る事しか頭になかった。(笑)
手短に明日の行程を確認し、じゃあおやすみと言いかけたところだった。
「良かったらこれ、食べません?」
なんと、炭火焼の焼き鳥を差されている。お隣のキャンパーさんからお声がけ頂いたのだ。
「全然気遣わなくていいですから。ほら、よかったらお酒も」
「っありがとうございます!ぜひ!」
身体は正直だ。テントに籠る気満々だったくせに、目の前に差し出された焼き鳥の誘惑に1秒ともたなかった。
だって、もう絶対に旨い。旨くないはずがない。身体中の細胞が食えと言っている。
とくとく……。
そこに注がれる日本酒。
焼き鳥を一口、旨い。炭火の香りと肉のうまみが口いっぱいに広がる。そして、身体の欲している「肉」が胃袋に収まる感覚が脳に突き抜ける。
日本酒を流す、美味い。大吟醸のさわやかな口当たりが疲れた身体にもくどくなく、ほのかな香りが焼き鳥の味わいに重なり合う。
はぁ……幸せだ。
ひとしきり味わい理性を取り戻したところで、キャンパーさんとのお話に移る。このキャンパーさんがまた面白い方で、意外なあんな話やそんな話が飛び出してきた。
ちょっと予定は狂ってしまったけど、まあ良しとしよう。こういう唯一無二の夜も、キャンプの醍醐味というものじゃないか。
日本酒にワインを飲みあかしてお開きに。テントに戻り、小窓から満月を除きながら、持参したバーボンで締めた。今日だけでも盛だくさん過ぎたけど、明日の登山も思い切り楽しもうじゃないか。
つづく
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