バイクパッキングブランドとして世界的な人気を誇る『Apidura (アピデュラ)』。自転車用のバッグを調べると、まず最初に目につくであろうハイブランドだ。
この記事では、アピデュラ公式サポートライダーである僕が、アピデュラのバッグの特徴や、「レーシング」「バックカントリー」などのシリーズの違い、おススメの使用シーンなどを解説。
多彩なラインナップの中から、皆様にピッタリのバッグを見つけて頂ければと思う。
<目次>
1.Apidura(アピデュラ)って?
2.シリーズの違いを解説
2-1.エクスペディション(Expedition)=旧ドライ
2-2.レーシング(Racing)
2-3.バックカントリー(Backcountry)
2-4.その他いろいろ
2-5.番外:元祖アピデュラ
3.シーン別おススメバッグ
3-1.ロングライドやブルべ
3-2.基本のバイクパッキング・キャンプ
3-3.グラベル向けのバイクパッキング
4.まとめ
1.Apidura(アピデュラ)って?
まずは、アピデュラというブランドについて簡単にご紹介をしていきたい。僕個人の見立ても少し含むけれど、ブランド理解の役に立てば幸いだ。
アピデュラはイギリス・ロンドンを拠点とする自転車用バッグのブランドで、現在のラックレススタイル(自転車にキャリア=ラックを取り付けず、バッグを直接バイクに取り付けるスタイル)での「バイクパッキング」人気を決定づけたメーカーである。
世界中を駆け回るバイクパッカーや、超長距離を走るウルトラレーサーなど、サポート無しで過酷な環境を走りぬくサイクリスト達に絶大な支持を受けていて、今やバイクパッキングシーンで蜂のロゴを見ない方が珍しいほど。日本国内でもユーザーは多く、ブルべ等ロングライド界隈や、キャンプツーリング系の界隈でよく目にする。
アピデュラを人気たらしめた背景には、ライダー目線で高品質・高機能のバッグを作り続けている実力と、美しく統一されたデザインがある。
アピデュラのバッグは、他のバイクパッキングブランドと比較し総じて軽量でありながら、防水性能やポケットなどの配置、バイクへのフィッティングなど、実際に使用するうえで欠かせない機能も網羅している。もちろん他のブランドにも素晴らしいバッグは沢山あるけれど、いろいろ使うほどにアピデュラのバッグは「なるほどこれは凄いな」と納得させられる構造をしていることが多い。
そんなバッグを、特徴的でありながら美しいデザインで作成するのだから、流行るべくして流行ったのだとすら思う。バイクパッキングはバイクを飾るファッション的な要素も少なからずあるので、自分のバイクをカッコよく仕上げられるアイテム性も求められているのだろう。
次に紹介する通り、今や多種多様なバッグをラインナップしていて様々なサイクリストのニーズに応えている。ロードバイクでのロングライドからグラベルロードでの旅、MTBツーリング、もちろん日常的なライドに至るまで、ほぼ全てがアピデュラで揃うといっても過言ではない。
日本での取り扱いは「Alternative Bicycles(オルタナティブバイシクルズ)」さんが代理店となっていて、ネット通販で購入が可能。アピデュラについて更に詳しい情報は、本国サイトをご覧頂きたい。
2.シリーズの違いを解説
続いては、アピデュラのバッグ類のシリーズについてご紹介したい。
いきなり「シリーズ」と言われてもピンと来ないかも知れないけど、アピデュラはライドの趣向に応じてバッグをシリーズ展開しており、シリーズごとにサドルバッグからフレームバッグ、フロントバッグ、ポーチ……と一式のバッグを取りそろえる。現行のシリーズは主に3つ。
以下で特徴を書いていくけど、どれも「防水」で「軽量」なのをウリにしているのは共通している。
*以下の画像はApidura本国サイトのスクリーンショットを引用。
2-1.エクスペディション(Expedition)=旧ドライ
⇒『長距離ツアーから日常使いまで、万能にこなすロングセラー』
まずはエクスペディション・シリーズ。以前は『ドライ(Dry)』という名称で販売されていて、国内ではまだその名称を引き継いでいるので、ドライと呼んだ方が馴染みがあるかもしれない。
こちらはアピデュラのロングセラーシリーズで、グレーの生地に黄色の六角形マークが印象的。
シリーズの特徴は
・高い耐久性 ・大容量にも対応 ・多様な種類とサイズのラインナップ
旅仕様で沢山荷物を積みたい方や、基本装備を充実させたいときにはおススメのシリーズだ。サドルバッグは9/14/17Lのラインナップで、バイクパッキングと聞いてよくイメージする大型サドルバッグはこれにあたる。
2-2.レーシング(Racing)
⇒『スピード重視のロングライダーやミニマリスト向けの、小型軽量シリーズ』
200~600㎞(時には1,000㎞以上)を制限時間内に走るブルべや、数千㎞にわたる超長距離レースの為に開発されたのがレーシング・シリーズ。
速さを念頭に置いた設計で、バッグは総じて小型、バイクの走行性能を損なわない構造となっている。アピデュラの独自素材であるヘキサロンを使用し、真っ黒な生地に黄色とシルバーのデザイン。
特徴は
・小型&超軽量 ・反射素材で視認性が高い ・ファストライドに適した構造
ロードバイクでのロングライドや、ブルべを楽しむ方へおススメのシリーズだ。逆に、バッグは最大でも5L程度と小さいので、キャンプ旅をしたい方にはちょっと容量不足で使いにくいと思う。
2-3.バックカントリー(Backcountry)
⇒『オフロード走行やMTBユーザーに向けた、高耐久シリーズ』
昨今流行りのグラベルツーリングから更に過酷なトレイルライドまで対応するのが、このバックカントリー・シリーズ。
様々な天候と地形での使用を想定し、耐久性とバイクの操作性に焦点を当てて作られている。グレー+黒をベースに、黄色いアクセントが入る。
特徴は
・超高耐久 ・オフロードバイクにフィット ・中型バッグで操作性も重視
スローピングの強いフレームやドロッパーポストに対応するなど、MTBで使用するなら最もおススメなのがこのシリーズ。容量もバイクの操作性を重視しているので、エクスペディションほどの大容量を求めないU.L.を極めた方や、泊りがけロングライドにも良いと思う。
2-4.その他いろいろ
以上の3つのシリーズが基本だけど、アピデュラは他にもバッグをリリースしている。そんないろいろもご紹介していきたい。
例えば、こんなコラボレーションモデル。バイクブランドのCanyon(キャニオン)やBombtrack(ボムトラック)、アパレルブランドのRapha(ラファ)とコラボし独自の設計・デザインのバッグを発売している。
他にも、日常使い用のバックパック、パッキング可能なザックやサコッシュ等々。自転車に取り付けるバッグだけでなく、実はこんなものまでリリースしているのである。
2-5.番外:元祖アピデュラ
既に廃盤になっているシリーズだけど、アピデュラが最初にリリースしたシリーズがある。今でもネット上で画像を見かけたり、中古で販売されていたりするので一応記載をしておきたい。
見た目はグレーでエクスペディションに凄く似ているけど、生地と縫製が違って防水ではない。生地表面に格子状の線が入っていて、生地に光沢がない(布っぽい)のが見分け方だ。ユーザー側が間違って「エクスペディション(ドライ)シリーズだ」と紹介しているのを散見するので、どうぞ皆様は間違わない様に……。
3.シーン別おススメバッグ
では、続いては僕なりに「こんな方には、こんなバッグの組み合わせがおススメ」というのをチョイス。個人的な意見なのであくまで参考程度にだけど、具体的なイメージが沸けば幸いだ。
3-1.ロングライドやブルべ
ロングライドやブルべを楽しむ方には、軽量でコンパクトなレーシング・シリーズを基本とした構成がおススメ。上の画像で使用しているバッグは
・レーシング:サドルバッグ 5L(税込み18,910円) ・レーシング:フレームバッグ 2.4L(税込み13,610円) ・レーシング:ロングトップチューブバッグ 2L(税込み11,600円) ・バックカントリー:フードポーチプラス 1.2L(税込み6,470円)
これは僕がエベレスティングROAM(400㎞・10,000mUP・グロス20時間半)を走ったときのパッキングで、レインウェア上下や着替え、防寒具、輪行袋、150㎞走れる補給食が詰め込まれている。例えば1泊2日でホテルやネカフェに泊まるロングライドでも、これと同じ構成でOKだ。
もっと軽装にするなら、サドルバッグとトップチューブバッグを外すと良いと思う。
3-2.基本のU.L.系バイクパッキング・キャンプ
グラベルバイクだけでなく、ロードバイクでもキャンプに行ける構成ならこれ。エクスペディションとレーシングの組み合わせが基本だ。
使用しているバッグは
・エクスペディション:サドルバッグ コンパクト 9L(税込み18,750円) ・エクスペディション:フレームバッグ Mサイズ 4.5L(税込み13,040円) ・レーシング:ロングトップチューブバッグ 2L(税込み11,600円) ・バックカントリー:ダウンチューブバッグ 1.8L(税込み8,400円) ・レーシング:ハンドルバーバッグ 5L(税込み17,000円)
U.L.系のテントやマット等で揃えれば、これだけスッキリと装備をまとめることが出来る(テントやマット等は、こちらの記事にまとめている)。もし容量が足りないようなら、サドルバッグを大きいサイズのミディアム(14L)や、レギュラー(17L)に変更すると良いだろう。
ハンドルバーバッグはあえてロールクロージャ―のエクスペディション(↓)ではなく、前と上から取り出せるレーシング・シリーズを使用していて、それはハンドル幅が狭いロードバイクでも快適に使用するため。(詳しくはレビュー記事へ)
もちろん積載力重視でエクスペディションを使用するのもアリだけど、下ハンが邪魔して荷物が出し入れしにくいし、STIと干渉してシフト操作がしにくくなりやすいので個人的にはおススメはしない。
逆に、もしMTB等のフラットバーならそれらのデメリットは無くなるのでおススメだ。
3-3.グラベル向けのバイクパッキング
ロードバイクにも使える一般的な構成は先ほど挙げたものだけど、グラベルバイクでかつフレームサイズの大きい方なら、こんな構成も可能だ。
・バックカントリー:サドルバッグ 6L(税込み18,350円)
・エクスペディション:フルフレームバッグ Mサイズ 12L(税込み23,430円)
・レーシング:ロングトップチューブバッグ 2L(税込み11,600円)
・バックカントリー:ダウンチューブバッグ 1.8L(税込み8,400円)
・レーシング:ハンドルバーバッグ 5L(税込み17,000円)
先ほどに比べ、サドルバッグを小さくしフレームバッグに荷物を移動させた格好。全体での容量は、バッグで4.5Lと左右フォーク横のボトル分増えている。
サドルバッグが大きいと重心が高く後ろに偏って走りにくいので、バイクの操作性を重視しあえて小さめのバックカントリーから選択(このサイズ感がとてもGood)。その分の容量を補うためフルフレームバックを使用し、ボトルケージはフォーク横へ移設した。重心がバイクの中央下に寄るので、抜重やジャンプ、クイックなハンドル操作がし易くなる。
もちろんオンロードでも走りやすいけど、特にオフロードも楽しんだり、操舵性や走行性を重視したりする方にはこんなパッキングがおススメだ。
注意:大は小を兼ねない
バッグ選びについて一つ注意を書くなら、バイクパッキングのバッグは「大は小を兼ねない」ということ。
ついつい「大きい方が荷物が沢山入っていいかな?」なんて思ってしまいがちだけど、それは間違いであり落とし穴だ。大きすぎるバッグはフィッティングが悪化し、荷物が暴れて傷つき、無駄な重量にもなる。バッグはジャストサイズを選ぶように心がけよう。
4.まとめ
以上、アピデュラのバッグの特徴や各シリーズの解説、おススメのパッキング例をご紹介してきた。
アピデュラのバッグはどれも軽量かつ高機能で、品質も高いのが凄い。値段は少々張ってしまうけど、それだけの価値がある製品たちだと僕は思っている。バッグ選びは各々のバイクや装備との相性が大事なので、最終的にはそういった自分の使っているギアを見比べて、使いやすそうなバッグを選んでいただきたい。
この記事が、皆様のバッグ選びの参考になれば幸いだ。
おわり