サイクリングの便利アイテム「フレームバッグ」。バイクパッキングが流行し、現在では様々な製品が発売されている。選択肢が多いのは嬉しいけれど、ブランドやサイズが沢山ありすぎて、逆に選びにくくなっていたり。
そこで今回は、僕が実際に使ってきた経験をもとに、フレームバッグの選び方とおススメ商品をご紹介していきたい。ちょっと長文ではあるけれど、気になる部分だけでも参考にして頂けたら幸いだ。
<目次> 0.フレームバッグってこんなやつ 1.フレームバッグの種類 1-1.小型タイプ(コーナーバッグ) 1-2.中型タイプ(ロングバッグ) 1-3.大型タイプ(フルフレームバッグ) 2.フレームのサイズを確認! 2-1.サイズの測り方 2-2.パイプの太さも確認 2-3.ボトルケージとの干渉はどうする? 3.機能をチェック! 3-1.防水or非防水 3-2.荷物へのアクセス性 3-3.拡張や連結 3-4.その他の機能 4.おススメフレームバッグ 4-1.Fairweather:コーナーバッグ 4-2.Apidura:Dryフレームバッグ 4-4.Apidura:Dryフルフレームバッグ 4-5.Oltrieb、R250など 5.さいごに
0.フレームバッグってこんなやつ
まず初めに、フレームバッグの特徴とメリット・デメリットを簡単にご説明したい。
フレームバッグとは、上の画像でフレームの前三角の中に取り付けるバッグのこと。(↑)の画像だと、真ん中のグレーのバッグがそうだ。
メリットとデメリットをざっと並べると、
◎メリット ・走行中に荷物を出し入れしやすい ・バイクの重心近くに積載できるので走行感への悪影響が少ない ・空気抵抗が小さい
×デメリット ・ボトルと干渉する可能性が高い ・フレーム形状との相性がある ・フレームに傷や跡が付きやすい ・膨らむと脚に当たる可能性がある
という感じ。
「自転車に荷物を積もう」と考えるとき、きっとサドルバッグも候補に挙がると思うけど……僕は利便性で圧倒的にフレームバッグが勝っていると思う。バイクに跨ったまま荷物を出し入れできるのは凄く楽だし、サドルバッグの様にダンシングがしにくくならず、空気抵抗的にも理想的だ。
一方で、ボトルとの干渉問題や選びにくさから導入のハードルが高く、満足いくものを手に入れずらい現状があると思う。そんなハードルを、この記事で少しでも下げられたらと思っている。
「フレームバッグ」と一括りに言っても、サイズや形状が様々だし、それぞれ用途が異なる。
つい荷物が沢山はいりそうな大きいやつを買いたくなるけど、ボトルやペダリングと干渉する恐れが高まるうえ、中で荷物が暴れてしまうので「用途に合わせたジャストサイズを選ぶ」のが凄く重要だ。
まずはそんな「サイズ」の話から進めていこう。
1.フレームバッグの種類
先ほども書いた通り、フレームバッグはサイズによって用途がかなり変わってくる。
あまりこういう風に分類して話す人が居ないので、一般的な分類の仕方かは分からないけど……ここではサイズ別に3つに分類したい。
1-1.小型タイプ(コーナーバッグ)
1つ目が小型タイプ。大体2Lくらいの容量で、三角形のはコーナーバッグなんて呼ばれていたりもする。
ライドに必要な小物や補給食を収納するのに便利で、日帰りのサイクリング等「軽装で走るときにちょっとした荷物を入れておきたい」というときにピッタリだ。また、ボトルケージとの干渉をなるべく避けたいときや、フレームサイズの小さいバイクやMTB等スペースに余裕のない方にもおすすめ。
1-2.中型タイプ(ロングバッグ)
2つ目が中型のタイプで、よく「フレームバッグ」と言われたときに出てくるやつ。トップチューブ全体を使う細長い形状が一般的で、容量は3~5Lくらい。
小物や補給食のほか、輪行袋やレインウェアなど、少しかさばる荷物も収納できる。日帰りライドから輪行ロングライド、バイクパッキングキャンプまで幅広く活躍する。
「輪行ライドやバイクパッキング旅まで多用途に使いたい」「ボトルが使えて、なるべく大きいのが欲しい」という方はこのタイプになる。
1-3.大型タイプ(フルフレームバッグ)
最後に、フレーム全体を覆う大型タイプ。「フルフレームバッグ」なんて言われたりするやつで、とにかく容量があるのが特徴。バイクのフレームサイズ次第で容量は大きく変わるけど、大体6~15Lくらい(僕のサイズ54のバイクだと12L)。
こちらは「バイクパッキングでキャンプツーリングしたい」という方におススメで、U.L.系の野営道具なら一式を詰め込めるほどの収納力を持つ。大型サドルバッグが10~15L 程度の容量なので、それとほぼ同じだ。大型サドルバッグに比べバイクコントロールがし易く走行感が良いので、僕個人的にはこちらの方がおススメ。
2.フレームのサイズを確認!
フレームバックを選ぶにあたって、とても重要になってくるのが「自分のバイクのフレームサイズ」。せっかく調べて欲しいものが見つかっても、そもそも装着できなかった……なんてことになりかねないので、特にフレームサイズの小さい方はおおよそのサイズは最初に抑えておいたほうが良い。
逆に、サイズ56以上の大きな方は何も気にせず選んでも大抵は大丈夫だろう。
2-1.サイズの測り方
サイズを測るとき、ポイントとなるのが「フレームの内側三角のスペース」。トップチューブの長さを基本に、ヘッド、ダウンチューブ、シートチューブの長さを軽く抑えておく。
サイズ測定で注意する点は、必ずフレームの内側の一番狭いところを実測すること。パイプの太いカーボンフレームのバイクは意外とスペースが狭いことが多いので、バイクのジオメトリ表などを参考にしてしまうとかなりの誤差が出てしまう。
また、ヘッドの長さも盲点になりやすい。フレームバックにはヘッド部分のカッティングがいろいろあって、サイズは合っていてもフレームへのフィッティングがイマイチになってしまったりするので注意。
2-2.パイプの太さも確認
そして、フレームのパイプの太さも大体把握しておくと良い。というのも、太いパイプのカーボンフレームなんかは、フレームバックのベルトが足りずに装着できなかったりするからだ。
例えば僕のバイクは、ダウンチューブ部分のベルトが20㎝以上ないと取り付け出来ない。(↓)
意外とそのあたりが作りこまれていないバックも多くて、せっかく買ったのに使えないという残念なことになりかねない。
製品ページに記載のない場合も多いので、不安なときは「ベルトがバック本体と別々のもの」を選んでおくと良い。ベルトが本体から取り外せるなら、最悪ベルトだけを市販のものに交換して取り付けることが可能だ。
(↑)ブラックバーンのフレームバッグ。ベルトが本体のループと別々なので代用が効く。
バック本体と一体型の場合でも継ぎ足して使えないこともないけど、ベルトの幅を合わせたりフレームへの傷を注意したりと、面倒が増える。
2-3.ボトルケージとの干渉はどうする?
中型タイプのフレームバックを使うときに、ほぼ必ず問題になるのが「ボトルケージとの干渉をどうするか?」という問題。フレームが小さい方や大きいボトルを使用したいときは、小型タイプでも干渉してしまうかも知れない。
(↑)ボトルケージ台座の穴をずらしたり増設したり出来る。画像は増設も兼ねて長いタイプを使用しているけど、もっと短くコンパクトなものもある。
バックとボトルが干渉してしまうときは、「アダプタを使ってボトルケージを下げる」のが一般的。そのアダプタも各社から販売されていて、僕が使っているのはWolftppthのB-RAD。好きな位置にボトルを調節できるし、加工が綺麗で使いやすいので気に入っている。下げたい長さによるけど、B-RAD2かB-RAD3が良いだろう。
あるいは、「ボトルケージを左右にずらす」というのも手。フレームバックの左右に配置するようになるのでボトルを手に取りやすく、夏場のダブルボトルにも対応できる。僕は脚に当たる懸念から使っていないけど、当たらない人も多いみたいだし、評判も結構良い。
3.機能をチェック!
さて、欲しいバックのサイズが見えてきたら、細かな機能の違いにも着目していく。大まかなポイントとしては、①防水性、②荷物へのアクセス性、③拡張や連結の機能、④その他。
3-1.防水or非防水
まず気になるのは、バックが防水かどうか。
大抵のフレームバックは「防水生地を使用!」とか書いているけど、縫い目やファスナーの処理がされていない防水生地を使っただけの製品は、雨の中で使用すると普通に浸水する。
(↑)例えばブラックバーンのこれフェアウェザーのは 、生地は防水だけど縫い目から容易に浸水する。雨ライドだと逆に中に水が溜まるので使い方に要注意だ。
それに対して「防水」と呼べるものは、防水生地を縫い目のない形で作り(圧着が多い)、止水ファスナーやロールトップを使用している。こちらならかなり高いレベルで浸水を防げる。
晴れの日しか乗らない方や、補給食など濡れてもいいものしか入れないなら、防水性は重視しなくて良いだろう。使い方的には、小型のフレームバックなら別に防水にこだわらなくても良いと思う。
雨天ライドもする方や旅人、ブルベライダーなどはいつか必ず防水でないことを後悔するときが来ると思うので、個人的には絶対に防水のバックがおススメ。
また、ウェア系や電子機器を入れるなら防水が無いと意味を成さない可能性も高いので、中型バック~大型バックの場合は出来れば防水を選んでおいたほうが無難だと思う。
「ジップロックに入れておけば非防水でも大丈夫!」という方もいらっしゃるけれど、僕の経験的には、袋は面倒なうえ穴が開くしバック容量を狭めるので全くおススメできない。
3-2.荷物へのアクセス性
使ってみないと選びにくい部分でもあるけど、荷室にどうやってアクセスするのかも確認しておいた方が良い。
・開け閉めはジッパー?ロールトップ? ・メインの荷室は右?左? ・小物入れや仕切りはあるのか?
例えば、ライド中に取り出したいもの(補給食やバッテリーなど)を入れる場合は、開け閉めしやすいジッパータイプで、メインの収納スペースが利き手側にあるものが良い、という具合。
一方で、キャンプ用品など停車してから取り出すものが多かったり、耐久性や防水性を重視したかったりするときは、ロールトップも選択肢に入り、仕切りや小分けの収納スペースがあったほうが便利だったりする。
初めて購入するときはあまりイメージがわかないかもしれないけど、どんな使い方をするのか想像をしたうえで、自分に合ったタイプを選んでいただきたい。
3-3.拡張や連結
バッグによっては、大小のフレームバッグを連結させたり、バック自体を拡張させたりできるものもある。
様々なライドに対応できるのがメリットな一方で、重量の増加や無駄なスペースなど、シンプルなものに比べると最適とは言えない節がある。
(↑)例えばブラックバーンのフレームバッグは、ファスナーで拡張できる機能がある。バックを連結させられるタイプとしては、フェアウェザーのフレームバッグが有名。
イメージだけど、ロードバイクでスピーディーに走りたい!みたいな方はシンプルで軽量なものが合っているだろうし、バイクパッキングでカスタムするのが好きとか、ゆっくりキャンプしたいという方は、拡張や連結の機能があると楽しみの幅が広がってよいと思う。
3-4.その他の機能
そのほかの機能として、ケーブルやハイドレーションのチューブをバックから出すことが出来る穴付きモデルや、荷物を探しやすいように内部が明るい色になっているモデルがある。
フレームバッグは電子機器を取り付けるハンドル周りには少し遠いし、ハイドレーションの使用もレアだと思うから、そんなに重視しなくてもいいんじゃ?というのが個人的な感想。
内部の色は地味に重要で、小物を入れたりするときに「あれ?あれ??」と探すときは結構ある。バックの中は暗いので、なるべく明るい色(白か黄色)があると、個人的にはすごく嬉しい。
4.おススメフレームバック
最後に、実際に僕が使っているフレームバックで、おススメしたいモデルをご紹介。レビュー記事のリンクも貼っているので、詳しくはそちらへどうぞ。
4-1.Apidura:レーシング フレームバッグ2.4L
小型バッグで、最近一番気に入っているのがこのバッグ。非常に高い防水性と、2.4Lで145g という軽量性を実現している。
ボトル2本を楽々使用できるサイズ感だし、細かな作りや機能性において、次にご紹介するFairweatherのコーナーバッグの完全に上位互換だと僕は思っている。雨天ライドも多い方や、ロングライド派の方、ボトルと併用してバイクパッキング旅をしたい方など、ハードユースかつ走りも犠牲にしたくない方にはおススメだ。
約14,000円と値が張るのが唯一のデメリットだろうか。
4-2.Fairweather:コーナーバック
小型バックなら、フェアウェザーのコーナーバックが使いやすい。1.7Lで100gと小型軽量。
取り付け位置の自由度が高いのでフレームの前三角を有効活用できるし、バッグ自体の重量も軽い。ちょっとした荷物を入れるのに絶妙なサイズ感で、本格的ライドより日常的に使いたいバッグだ。フレームサイズの小さい方でも、ボトルとの併用がし易いだろう。
デメリットは非防水なのと、ベルクロが短いのでカーボンやアルミフレームのダウンチューブには取り付けにくい(というか多分出来ない)こと。このデメリットがちょっと致命的なので、個人的には先ほどのpiduraのをお勧めしたいけど、フレームサイズやレイアウトによっては形状的にコーナーバッグの方が良いこともあるはずと、おススメに加えてみた。
4-3.Apidura:Dryフレームバック
中型バックなら、有名なApiduraの防水バック。Mサイズで容量4.5L、重量170g。
人気なだけあって確かな品質と考え抜かれた仕様で、ほぼ完璧に近いフレームバックだと思う。後継のレーシングシリーズと比較して、中が黄色で視認性が高いのもポイント。価格は約13,000円と高価だけどその価値はある。
4-4.Apidura:Dryフルフレームバック
大型バックも同じくApiduraから。Mサイズで容量12L、重量330g。
フルフレームバックは製品数が少なく、他の選択肢はBlackburn、Reveleitdesign、SALSAあたりだろうか。とはいえ、防水性の高いモデルはApiduraかBlackburn(真っ黒のやつじゃなく、グレーの新型のアウトポスト・エリート)の2択だろうし、重量的にApiduraが良いんじゃ?と思う。
中仕切りつきで使いやすく防水、そしてこのサイズにしては軽量と、こちらも非常に使いやすく気に入っている。専用のハイドレーションパックの使用も可能。
4-5.Oltrieb、R250など
僕が本当におススメと言えるのは実際に使ったことのあるものに限られるけど、ブランドの信頼性や現物を見た感触、見聞きした情報をもとに、まだ使ってはいないけど「これは良さそう」と思えるものを、他にもピックアップしてみた。
・Oltrieb(オルトリーブ):フレームパックRC
オルトリーブは、質実剛健なバッグを作ることで旅人などハードユーザーから高い評価を受けるブランド。僕もパニアを持っているけど、かなり気に入っている。
このフレームパックRCは、ジッパーではなくロールトップで開け閉めする防水性の高いタイプ。止水ジッパーでも少しずつ浸水するし、微妙な締め忘れからの浸水も良くあるので、その心配がないのが良い。素早い開け閉めには向かないけれど、ジッパーの破損のリスクも減らせるメリットもある。パッキングへの信頼性重視の方へおすすめ。
・R250:防水フレームインナーバッグ
価格を抑えたい方やフレームサイズの小さい方におススメなのは、日本の通販サイト「ワールドサイクル」のプライベートブランド「R250」のバッグ。
こちらは「フレームサイズの小さい日本人のバイクにフィットする様に」というコンセプトで作られていて、ヘッド部分の角度もスローピングが強くなっている。フレームサイズが50以下の方は海外ブランドよりこちらを選んだ方が良さそうだし、逆に54より大きい方はフィット感が落ちるし容量も少なくなるのであえて選ばずとも良いだろう。
基本性能ももちろん高く、僕が使っている同ブランドのトップチューブバッグも良かったので、R250への信頼もある。防水で、ベルトの作りも良く、コード用の穴やポケットの数など機能性も高い。個人的な懸念点はジッパーの耐久性のみ。
5.さいごに
以上、僕なりにフレームバッグの選び方と、おススメのモデルをご紹介してみた。
かなり長文になってはしまったけれど、それだけフレームバッグ選びも沼であり難しいものだと思う。
この記事が、皆様のフレームバッグ選びの参考になれば幸いだ。
おわり