高品質・高性能なホイールを安価で提供することで知られるブランド「Alexrims(アレックスリムズ)」。
その新作ディスクロード用ホイールが「RXD2」だ。バランスの良い30㎜ハイト、エアロスポークを使用しつつ、1,475gと軽量で価格は驚きの79,200円……。そんなハイコスパ・ホイールが我が家にやってきたので、そのご紹介をしていきたい。
<目次> 0.はじめに 1.スペック 2.各部詳細 3.インプレ 3-1.ロード仕様 3-2.グラベル仕様 4.まとめ
0.はじめに
本題に入る前にお断りしておきたいのが、この製品はライトウェイさんから提供を頂いているということ。
それでも、自分で購入したものと同じく良い面と悪い面を素直に評価していくし、その点をライトウェイさんにも了承して頂いていることを、明記しておきたい。
1.スペック
さて、まずはRXD2のスペックのご紹介から。
・重量:1,475g(実測1,491g) ・リム幅:内幅19㎜、外幅22.6㎜ ・リムハイト:30㎜ ・スポーク:0.95㎜厚エアロスポーク ・対応アクスル:(F)12×100、(R)12×142 *別売のキットで(F)9×100、15×100、(R)10×135も対応 ・対応カセット:シマノ/スラム8~11s *別売のキットでXDR、Microsplineも対応 ・対応ブレーキ:ディスク(6ボルト) ・価格:79,200円(税込み)
Alexrims(アレックスリムズ)は長年自転車ホイールのリムを手掛けてきた台湾のブランド。特にアルミ製リムの技術力が高く、長い歴史と一貫して自社製造するほどのこだわりを持っている。OEM生産も結構しているみたい。
このRXD2もアレックスリムズらしくアルミリムを採用したホイールで、そのリムは30㎜のミドルハイトながらに420gという驚きの重量を実現(高級カーボンホイールと同等か更に軽量)。自社でリム専用の合金を作成するところから始めているからこそ、アルミでこのスペックのホイールを作り上げられるのだ。
実測重量は、フロントが690g、リアが801g、前後合計で1,491g(純正リムテープ込み、12㎜TA仕様)。カタログ重量の1,475gよりは若干重いけど、16gなら誤差の範囲かな?
2.各部詳細
RXD2の各部を詳しく見ていこう。
本体はマットブラックで、グレーのロゴが大きめに入る。
カラーのワンポイントは意外と小さくて控えめな感じ。
リムの仕上がりは綺麗で、しっかりと作られている感じがする。手にとった感触も好印象。
リムハイトは30㎜とオールラウンドに使いやすいミドルハイトで、空力と重量のバランスの良い設計だ。
リム内幅は19㎜と今どきのロード用規格にバッチリ対応している。というのも、昨年(2020年)から、タイヤとリムの基準を定める規格「ETRTO」のタイヤ幅とリム幅の基準が変更されていて、ロードバイクで一般的な25~28cのタイヤに対応するリム幅は「内幅19㎜」となっている。(対応表はこちら)
昔はリム内幅15㎜や17㎜が対応するとされていたし未だにそんな記事もネット上には多いけど、その情報はもう古く、幅の狭いリムだとタイヤが設計通りの性能を発揮できない可能性が高い。
ホイール自体はチューブレスレディだけど、その為には別売のチューブレス用のリムテープとバルブが必要だ。手元に届いた状態だとクリンチャー仕様。
リアのカセットはシマノ/スラムの一般的なやつ。11sに対応し、スペーサーを挟めば8~10sでもOK。組み替えればXDRやマイクロスプラインも使えるらしい。フリーボディのノッチ数は36Tなので、細かなノッチでホイールを空転させてからの踏み直しがダイレクト。
アクスルは12㎜のスルーアクスルで、こちらも別売のキットでQRや15㎜TAにも対応する。
ローターは軽量性を重視して6ボルトを採用。
ベアリングは、シールドベアリングがフロント2個、リア4個入っている。手で回した感じも滑らか。
実はこのハブ、「ハイローフランジ」と呼ばれる左右非対称の高さのハブフランジ(ハブのスポークを受ける部分)を採用している。これはドライブ・ノンドライブ側や、ローター有・無側のスポークテンション差を是正する効果を持つ構造で、ホイールの加速感や剛性感を確保するのに役立つ。
ディスクロードだとリアはエンド幅が広がって左右のスポークテンション差による問題は小さくなったと聞くけど、逆にフロントはローターが入って左右差が出やすい構造になったはず。その辺りも加味して、リア・フロントともにハイローフランジ仕様のようだ。
スポークは0.95㎜厚のエアロスポーク。この薄さのスポークも、軽量化と空力の向上のため拘ったポイントらしい。
リムハイトはもちろんのこと、スポークも空力性能に大きな影響を及ぼすので無視できない。同社製のディスクロード用ホイール『RXD3』も実はRXD2と同じリムを採用しているみたいだけど、スポークは普通の丸スポーク。価格的には57,200円(税込み)と安価にはなるけど、いろいろ差があるみたいだ。
クリンチャー運用で、タイヤの装着は難なくできた。コンチネンタルのGP5000もパナレーサーのグラベルキングSSも、普通に手で嵌められるくらい。
3.インプレ
さて、続いてはインプレを。
僕はグラベルロードの『Bombtrack:Hook EXT』で使用していて、ロード用タイヤのコンチネンタル:GP5000(25c)と、グラベル用タイヤのパナレーサー:グラベルキングSS(38c)を試した。
バイクはクロモリのグラベル用だけど、オンロードも快適にこなせる良く走るフレーム。詳しくはこちらからインプレをご覧いただきたい。
3-1.ロード仕様
まずは、ロード用フレームらしくロードバイク用でいつも使っているタイヤ「コンチネンタル:GP5000」の25cを使用。
足回りは完全にロード仕様なので、ぱっと見「これは何のバイク??」となってしまう感じ(笑)
ロゴが大きいから目を引くけど、個人的には見た目も結構気に入っている。写真で見るほど、グレーの部分は目立たないと思う。
で、肝心の走行。これが、家を出た瞬間に笑ってしまった。
『なにこれ、軽い。速い。超走る……っ!』
今までグラベル仕様の650bホイールに乗っていたのだからその感想は当然と思われるかも知れないが、実はこのRXD2を履く前に、ロードバイクで使っている3Tのカーボンホイール『Discus C35 Team Stealth』を同じ仕様で試していた。
3Tのホイールも32㎜ハイトで重量は約1,550gと、RXD2と似たスペックのホイールだ(とはいえ定価は前後で25万円近いので、3倍くらいの値段だけど)。
これを履かせたときも、もちろん軽くて速いことやエアロ性能が上がっていることを十分に感じられたんだけど、特にダンシングで何故かリズムがとれないもどかしさと、ホイールの硬さが気になって気持ちよく走れなかった。
それが、AlexrimsのRXD2だと気持ち悪さを感じずスーッと進む。3Tで気になったダンシングでの感触が軽く、乗り心地も良い。
スペック的に似通っているだけに、こんなにも乗り味に差があるのかと驚いた。エアロの感触や平坦・下りの速度感はかなり近いけど、登りの軽さやダンシングのし易さは全くの別物。スッと進むしクルクル回る。
乗り味や気持ち良さみたいな感覚は、バイクとの相性や乗り手の好みにも依存するから良し悪しを語りにくいけど……実は峠のタイム差にもかなりの差が生まれていた。
両方のホイールで、いつもタイムを計っている登り(2.5㎞/137mUP)を走ってみたけど、
・3T Discus C35 Team Stealth:6分41秒
・Alexrims RXD2:6分20秒
と、予想していたより遥かに大きな差をつけていた。(なんだか疑われても仕方ないくらいのタイム差だけど、もちろん毎回全力で走っている)
RXD2は「リムが軽いですよ」と言われていたけれど、やっぱりそのリム重量の差なんだろうか?あるいは、RXD2はフロントもハイローフランジなのに対し、3Tは普通のハブなのも影響があるんだろうか? 明らかに軽く進みやすい感触は、文字通り走っていて翼が生えたかのように気持ちよかった。
先ほどサラッと書いた平坦や下りについても、もちろん非常に感触がいい。40㎞/h前後で30㎜のミドルハイト・リムはホイールの回りがかなり良いし、拘ったという1㎜未満の薄さのエアロスポークも効いているんだろう。登りであれだけ軽さを感じつつも、エアロ効果もこれだけあるのだから、かなり完成されたバランスなんじゃないだろうか。
乗り心地に関しても、「アルミのエアロホイールは硬い」と言われていたのとは裏腹に、結構いいんじゃないかなと思った。
この感想は、僕が今まで試してきたホイールの種類が少なく、硬かった3Tのカーボンホイールの印象が強かったからかも知れない。ただ、少なくとも僕にとっては、これでロングライドも全然問題なく出来ると思う感触だった。
先日、何度かご一緒しているりっけいさんにロードバイクに乗ってもらい、一緒に300㎞くらいのツーリングもしてみた。結果、グラベルフレームでも引けを取らない走りが難なくできて、本当に魔法の様に感じるホイールである。
りっけいさんに試乗してもらったけど、「何これ?超進むんだけど……」と困惑させてしまったので、やっぱり良く走るんだと思う。
3-2.グラベル仕様
続いては、太いタイヤを履かせてグラベル仕様にしたインプレを。
始めに断っておきたいのは、このホイールはもともと「オンロード用」で設計されたものなので、ガンガントレイルに突っ込んでいくようなホイールではないということ。
シクロクロスに導入する方も多いほどリム強度は高いらしく、攻めた走りをしなければ……とのことだったので僕はこのホイールでグラベル走行もしているけど、いちおう設計外の走りをしているのはお断りしておきたい。
使用したタイヤはパナレーサーのグラベルキングSS、700×38c(40-622)。
リムの対応タイヤ幅は最大44cまでらしいので、ギリギリOKというラインだろうか。素人目でだけど、リムへの収まり感に違和感はない。ただ、先ほどもご紹介した新ETRTOだとリム内幅が23㎜必要になるので、内幅19㎜のRXD2は最適とは言えないだろう。
さて、走行感だけど、グラベル用のタイヤを付けてもホイールの軽さはよくわかった。グラベル路に至るまでヒルクライムがいくつかあるんだけど、その快適性が今までとは違う。というか下手なロードバイクより早いので、登坂能力は十分以上だ。
平坦も速い。河川敷を流しているときなんかは、太いタイヤの乗り心地の良さも相まって快適&快速走行が出来る。グラベルロードだからってエアロ効果もばかに出来なくて、今までのホイールより速度域が高いときに楽(舗装路で35㎞/h、軽いグラベルで30㎞/h前後で使用)。なんていうか、手持ちのバイクを1台に集約するならこの仕様にしたい。(笑)
グラベルにガシガシ突っ込んでいっても、これといって問題なし(ガシガシ……といっても、僕のレベルでの話だけど)。強度的な不満は感じないし、壊れそうな感じもしていない。
僕はチューブレスレディで運用していて、空気圧は1.8Bar~3.5Bar。リム打ちしない様に走ってはいるものの、偶にガツっと当ててしまうことも。それでも現状は強度的にも大丈夫そうだ。
ただ、リムには早々に多数の傷が入ってしまった。オフロード走行用のホイールではないためか、リムハイトが高くて飛び石が当たりやすいためか……完成車付属のWTBのリムよりも明らかに傷が多い。オフロードで使用する方は注意されたし。
また、チューブレス化をお願いしたショップさん曰く「リムの形状とタイヤの相性的に、普通の方法じゃビードが上がらないよ」とのこと。タイヤがリムに対して緩いのと(チューブド運用の時は、素手でも脱着できるくらい)、リムのフック部分がクリンチャー用リムの様な形状になっているのが原因らしい。
タイヤとの相性や個体差が影響する話ではあるけれど、チューブレスレディで運用する予定の方は注意が必要かも知れない。
4.まとめ
以上、Alexrimsのディスクロード用ホイール『RXD2』のインプレを書いてみた。
僕が今まで試してきたホイールは少ないけれど、今までで一番感動したし、それがタイムにも明確に表れたのが面白かった。軽さ、空力、乗り心地、反応性……。どれも高いレベルでバランスよく、非常に使いやすいホイールなんじゃないだろうか。
このスペックで定価7万円台という価格設定も驚きで、コスパは相当いいはず。早々に代理店在庫がなくなってしまったというのも納得だ。
低価格で良いホイールが欲しい方、激しいレースや普段からガシガシ使いたい方、オンロード~林道でマルチにバイクを運用したい方など、ディスクブレーキのロード・グラベルロードをお使いの方に幅広くおススメできるホイールだ。
おわり