登山やサイクリング(特にロングライド)が好きな僕にとって、熊との遭遇は無視できないリスクだ。現に去年の北海道一周では山道でヒグマとばったり…なんてことがあった。
そこで、対策に熊用スプレーを買ってみたので、簡単にレビューをしていきたい。
<目次> 1.熊スプレーの必要性と種類 ー熊鈴の限界 ーツキノワグマ用orヒグマ用 2.サイズ、各部紹介 3.持ち歩きの実際
1.熊スプレーの必要性と種類
熊鈴の限界
熊対策として一般的なのは「鈴」だろう。安価で持ち歩きも容易、ほぼ劣化しないし入手性も高い。
しかし、これは人を恐れるクマに対する道具であって、人を恐れないor攻撃性の高い個体にはまるで意味がない。去年自転車で北海道一周をした際ヒグマに遭遇したのだが、車通りも多く人の気配が十分にある道だった。
あれほど人を恐れないクマに対し、あんなチリンチリンという音が効くとは思えない。実際、北海道でヒグマにあった時も熊鈴は鳴らしていた。
それから熊被害について調べてみると、本州にいるツキノワグマに関わる事故があった。3年前、秋田県十和田で4名の方がツキノワグマに襲われ死亡し、その遺体はクマに「食べられて」いる。(秋田「人食いグマ」3頭生存か 他の5地域も警戒を)
体重100kgにもなる肉塊が爪と牙で襲ってきた場合、素手で格闘してもまず勝ち目はない。状況次第では逃げられるかも知れないが、相手がその気になったらまあ瞬殺だろう。
↑ハンドルバーの端に鈴を下げている
もちろん、鈴に全く効果がないとか、不要だと言っているんじゃない。「鈴が効かないクマや、鈴では守れない状況が存在する」ということだ。クマに対する最終手段として、何かしらの備えが必要だ。
【2020/07/04:追記】
サイクリング中に山道でツキノワグマと遭遇し、数分に渡って対峙し続けた動画。最終的には車が通りかかり熊は逃げたようだが、誰も来なかったらどうなっていただろうか。いつ熊が向かってくるかも分からないし、刺激してしまうから背を向けて走り出すこともできない。
熊さんこっちにこないで!
そう僕たちは友達じゃないか!
第一君の方が強いんだ!
僕は怖くないよ!(ハイエースに助けられました。) pic.twitter.com/BZaDeR5oBg
— 松尾祐弥@凍結ユーコン川の徒歩冒険計画中 (@AlaskanBooy) July 2, 2020
ツキノワグマ用orヒグマ用
熊スプレーには、本州に住むツキノワグマ用と、北海道に住むヒグマ用の2種類がある。ツキノワグマとヒグマでは体格に3倍近い差があるので、ヒグマ用の方が圧倒的に強力だ。
←ツキノワグマ ヒグマ→
「どうせなら強い方を」とヒグマ用を買いたくなるが、ツキノワグマに使用すると刺激が強すぎてかえって危険なうえ、誤作動時のリスクも高いらしい。当面北海道に行く予定はないので、今回はツキノワグマ用を購入。僕はクマを制圧したいのではなく、襲うのを諦めてくれればそれでいい。
2.サイズ、各部紹介
購入したのはpolice magnum OC-17。容量によって缶のサイズが異なるが、今回は中型を選んだ。
缶の裏にも説明が書いてあった。0.5秒×4〜5回、連続だと約2.5秒噴射可能らしい。完全に想像だが、熊を想定すると1.2回で使い切ってしまいそう。。
噴射距離は5.5mとあるが、3mで半径1mに広がるらしいので引きつけて発射しないと効果が薄そう…。
遠距離の攻撃と言うよりも、至近距離での最終手段という性格のものだろうか。
重量は実測で179g。このくらいなら常に持ち歩いてもいいと思える。商品紹介には160gと書いてあったから安全装置分を加味してもちょっと重いかな?
サイズ感は思っていたより小さく、そして軽い。重量が気になる自転車や登山にも嬉しい。
ボールペンや各種ギアと比較してもこのくらい。手の小さい人でも扱いに困ることはなさそう。
片手で簡単に取り回しができる。
上部に安全装置が付いていて、誤動作を防ぐ仕組み。安全装置にタイラップが取り付けられているので、この状態では安全装置を外す事もできない。森の中を移動する際はタイラップを切っておいて、安全圏ではタイラップを締める、という運用が現実的かな?ハサミを持ち歩くのが面倒なので、違う固定方法を模索したい。
試しに安全装置を外してみたが、平行にスライドさせようとしても固い。せり上がっている部分に指をひっかけ、手前に引っ張り上げながらスライドさせるとうまく外れる。難しくはないが、とっさに出来るように何度か練習しておいた方がよさそう。
使うときはこんな感じに持つらしい。缶が軽いので取り回しはいい。ホルスターやバックから取り出すときも人差し指を輪に引っ掛けて簡単に抜けるし、そのまま親指で安全装置を取る⇒発射とができる。
発射時は的確に顔面に当てる必要があるので、扱いやすさは大事。とはいえ、実際にあの素早いクマの顔面にヒットさせるエイムが僕にあるのか絶対の自信はないが…。
持ち手のあたりにはストラップ用の穴もあった。歩行・走行中に落ちてしまっては意味がないし、転倒や落車で襲われることも考えられる。ストラップは絶対必要。
缶の底には使用期限が書いてある。2022年11月15日までで、Amazonの商品ページには「使用期限3年以上を販売」とあったので説明通り。
もとは暴漢鎮圧用の対人スプレーらしく「police magnum」で検索するとそれらしい記事がヒットする。その名の通り警察なんかにも配備されているらしい?要するに体重50〜100kgの生物に効果あり、といったところか。
野犬やイノシシ、悪意の人間に襲われた時にも十分使えそう。僕は野宿やテント泊スタイルでのツーリングや登山が多いから、クマに限らず使えるのはありがたい。
3.持ち歩きの実際
当然のことながら、いざという時にすぐ取り出せる場所に携帯しないと意味がない。
今のところ、登山の際はザックのサイドポケットに、ロングライドではサイクルジャージのバックポケットに入れようかと思っている。

サイズ的には自転車のフレームバックやステムポーチにもすっぽり入るが、走行可能なら走って逃げるので多分意味がない。しかも走りながら熊の顔にスプレーをヒットさせるのはかなり難しそうだ。

使用を想定するのは、「正面で遭遇→バイクを降りて後ずさり→襲われる」「側面or後ろから遭遇→逃げきれず落車→襲われる」という場面。つまり“至近距離で使う最終手段”なので、身につけているのが一番だろう。
どんな備えをしたって、最終的にどうなるかなんてわからない。もしクマが命がけで僕を殺しに来たとすれば、スプレーがあっても相当な確率で僕は死ぬと思う。それでもないよりはマシだし死んでも後悔しなくて済む。
出番が来ない事を祈ってはいるけど、もしもの時はいつ来るか分からない。何があっても後悔しないように、出来る限りの備えをして、登山もライドも楽しみたい。
おわり