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05:30ごろ目が覚めた。
不快感からではなく、自然な目覚め。朝まで寒さにうなされることが無いという幸せを噛み締めながら、朝ごはんのスティックパンを頬張る。
ここでようやく失敗に気づいた。ボトルの水が完全に凍っている。道の駅近くの、温度計を見て納得。気温はー10℃らしい。ああ、登山用の水筒を持ってくるんだったなあ…。
だんだんと、東の空が明るくなってきた。朝日を浴びる瞬間が、一番幸せな瞬間かもしれない。今日もまた、朝が来た。
「ああ、美しい…。」
遠くに見えるアルプスの稜線が、美しく、かっこいい。今までこんなこと、微塵も思わなかった。登山をするようになってから、気がつけばそう思うようになっていた。
思わずiPhoneで写真を撮る。しかし寒さでやられたか、100%あったはずのiPhoneの充電が一瞬で0になってしまった。ああ、もっと綺麗な景色が、そこにはあったのになぁ…。
仕方がないから、朝日に照らされるビーナスラインは、僕の心の中だけのものにしておこう。その景色に、僕はただ一人、つい口元がにやけるのを堪えきれず走っていた。

朝焼けに心を打たれるのもつかの間、ボトルが凍ったせいで飲み水がないという現実を突きつけられる。
冬というのがせめてもの救いだ。夏に比べてのどが渇かない分、辛くない。(実は冬でもかなり水分を失っているので、のどの感覚より多めに補給しないと簡単に脱水症状になってしまうから危険なんだけど。)
幸いなことに道中スキー場があるので、そこでたらふく水を飲んでおくことにした。余裕を持って携行したいけど、結局凍ってしまうので諦めた。携帯の充電も少し出来たので、また出発。
冬季通行止め区間迂回のため、いったん白樺湖の下=標高800mまで下って、また美ヶ原=標高2000mまで登り返す。うん、楽しいルートじゃないか。
残念ながら太陽が昇ってから天気は曇り。薄暗い道をひたすら登った。

途中から日陰が完全な凍結路となり、スパイクタイヤの本領発揮となった。タイヤの空気圧を下げるために一旦下車したら、立っているのがやっとなくらいツルツル。
この道をちゃんと走れるんだから、スパイクタイヤ流石の性能。嫌になるほど重たいこいつをはいて来てよかったと、はじめて思えた。

スパイクタイヤが氷に刺さる感覚を楽しみつつ、シャーベット区間に苦戦してやっと山頂へ。この感覚は癖になりそうだ。オフロードの扉が微かに開き、その先に広がる世界を垣間見た気がした。
道中、観光客の声援と驚きの声に背中を押された。そりゃ、この時期にロードバイクで自走で来る人なんて、ほとんどいないんだろうなぁ。笑
この雪原感、たまらないっ…!!
適度に圧雪された路面は、本当に快適に走ることが出来た。今までのライドにはなかった感覚。なんておもしろいんだろう。
一通り雪道を堪能した後は、上田まで一気に下山。少し膝の調子が怪しかったので、ルートを変更し走りやすい上田ルートへと切り替えた。標高差1500mくらいひたすら下るだけだら、なんてことはない。雪原の景色を胸に、寝床まで上機嫌で走っていった。
つづく(ロードバイク雪上ライドの記事一覧はこちら)
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