旅先でも三脚を使いたいけど、荷物になるから持っていくのが面倒…。そんな悩みは、きっと多くのカメラ趣味人が持っていることだろう。サイクリングや登山も趣味としつつ、旅の途中で撮影をすることが多い僕は、まさに「軽くて高さの出せる三脚」を渇望していた。
そんな僕が見つけたのが、「AOKA」というブランドの超軽量カーボン三脚「CMP163CL」だった。500g程度で約1.2mの高さを出し、耐荷重も2.5㎏を誇るハイスペックぶり。実際にフィールドで使用してみての感想を踏まえ、レビューしていきたい。
<目次> 1.スペック 2.各部詳細 3.使用感 3-1.軽くて速い 3-2.安定感はそこそこ 3-3.ミニ三脚との比較 3-4.収納時の長さが微妙 3-5.雲台の固定が甘い 4.まとめ
1.スペック
まずは、AOKA:CMP163CLのスペックからご紹介していこう。
・展開サイズ:高さ120mm~715mm、付属延長ポールで1,290mm ・収納サイズ:長さ305mm×幅50mm(本体のみ) ・耐荷重:2.5㎏ ・実測重量:本体350g、雲台込み485g、延長ポール込み562g ・価格:15,000円?(税込み) ・商品ページはこちら
旅先での使用を想定する三脚は「トラベル三脚」とも言われ、各社が軽量なモデルを展開している。
しかし、高さが1m以上出せる三脚は、軽量なモデルでも1kgを切る程度が相場だ。軽量トラベル三脚で有名な『Velbon:ULTREK UT-3AR』でも1,355mmで786g、『SLIK:エアリーM100』でも1,241mmで895g。
そこを、『AOKA:CMP163CL』は1,290mmで実測562gをたたき出している。
本体+雲台で485g、延長ポールで77g。
高さが1,290mm出るのは延長ポールを使用したときで、本体+雲台なら715mmほどになる。いずれにせよ、とにかく高さと軽さのバランスが他社製品と一線を画している。
2.各部詳細
では、AOKA:CMP163CLの各部を詳しく見ていこう。
パッケージを開封するとこんな感じ。中身は
・本体(CMP163CL) ・延長ポール ・雲台(KB20) ・アルカスイスシュー ・スマホ用アダプタ ・カラビナ ・収納袋
だった。製品はもちろん、パッケージ自体もしっかりしており、高級感もある作りだと感じた。
脚を伸ばさず、雲台をセットした状態。
脚の開く角度は変更可能なので、もっと低く地面スレスレでも使用できる。
三脚本体はカーボン柄の透けるデザインで、見た目もいい感じ。表面の柄もきれいだ。
脚の直径は、最も太い部分でΦ16mm、細い部分で9.9mm。
脚を伸ばすには、このネジでロックを解除する。
ネジ部分は金属製(たぶんアルミ?)で、滑り止めのセレーションが加工されている。
先端のキャップを外すと、石突が出てくる。軽量三脚ではあるけれど、この辺りの機能も充実している。
脚の最大開閉角は、AOKAの刻印のあるパーツを引っ張ると変更可能。
見た目的にも、カラーアクセントになっていていい感じ?
細部の加工も悪くない(というか良い)。
脚の固定力も六角レンチで変更可能なように見える。また、諸々のアタッチメントの取り付けも出来るらしい。付属のカラビナは脚の付け根の中央にネジで固定する形。
雲台は「AOKA:KB20」が付属する。
KB20雲台は公称150gで、アルカスイスシューに対応する。全方位へ調節可能なボールヘッドのほか、水平方向への回転が調節できる機能もある。
ちなみに三脚と雲台を繋ぐ部分は一般的なカメラ用凸ネジになっているため、雲台を使わず三脚単体でも使用可能だ。三脚だけなら350gと更に軽量に出来る。
KB20雲台も、細かいところまでしっかり作られている印象。個人的に欲しい機能は全て揃っていた。
3.使用感
では、実際にフィールドで使用してみての感想を。
使用シーンは、主にサイクリングでの屋外使用。ソロライドが多いため、自撮りで使用することが多いほか、夜間などの長時間露光時に使用している。以下の画像もすべて自撮りだ。
3-1.軽くて速い
常に人力移動なので、とにかく軽さは欠かせない。自転車趣味は「機材を100g軽くするのに数万円をかけるのが当たり前」という狂った世界だが、それだけ軽量化が大切ということを物語っている。
僕は毎日200km以上移動するようなライドも多いため、装備は厳選せざるを得ない環境でもある。
超軽量と好評な『Velbon:ULTREK UT-3AR』でも、量販店で実物を手に取ると「この重さはキツイな…」と諦めてしまった。我儘すぎる要望だけど、やっぱり三脚には500g程度しかかけられない。
そこに現れた『AOKA:CMP163CL』は正に救世主であり、僕の「自転車×カメラ遊び」を支えてくれる存在となった。
重量が気になる山岳ライドでも臆せず三脚を持っていけるようになり、残したい瞬間を・思い描いた構図で撮れるようになったのが、楽しくて仕方ない。
ツーリングで使用するなら、いちいち三脚を立てる手間も気になるところだ。
太陽が雲で隠れる前の数秒、車の往来が途切れる一瞬、三脚をしまって100m先に現れた絶景…。そんな隙間でもシャッターチャンスを逃さないために、心理的なハードルが低く、かつ実際の設営時間も短くなくてはならない。
その点、三脚を展開する際には「脚のネジを2つ同時に回す」ことが出来るし、「雲台の調節機能」もしっかりしてストレスが無い。ただ持ち運びやすいだけでなく、現場でも使いやすいと感じている。
3-2.安定感はそこそこ
三脚の運搬や展開が簡単なのは前述のとおりだが、一眼レフを載せたときの安定感は「そこそこ」だろうか。
「三脚+雲台」での使用はガッチリしているけど、「延長ポール」を使用した状態だと不安がある。いちおう、現状では屋外使用で大きな問題はないけど、かといって完璧に安定するかと言えば、そうでもない。
僕が使用しているカメラは「Olympus:OM-D E-M5 markⅡ」で、レンズと合わせて約850g。一眼レフの中ではかなり軽量な部類だ。それでも、延長ポールを使用すると揺れる。
恐らくメーカーのいう「耐荷重2.5㎏」というのは延長ポールを使用しない状態での話であって、1,290mmの高さを出した状態では1㎏以下のカメラでも結構怖い。僕は延長ポールを使用しないことが多いから問題視していないけど、製品スペックを語るうでは何とも言えないと思うポイントだ。
付属するカラビナを利用して、三脚を安定させるための重りを吊るすことも出来るけど、この問題は「延長ポールの剛性」なので意味がない。
延長ポールを使わないならガッチリ固定できるけど、延長ポールも込みの運用を想定するなら、カメラ重量は少なくとも1㎏以内がいいだろう。
雲台のボールヘッドの固定力はしっかりしていて、かなり使い心地が良い。欲しい角度でばっちり止まるので、激安三脚のストレスは全くない。
3-3.ミニ三脚との比較
僕はこれまで、高さ200mmほどのミニ三脚を使用していた。
それでも撮影はそこそこ出来たものの、やはり画角の制約が大きく、思い通りの撮影ができず歯がゆい思いをすることも多かった。
AOKAのCMP163CLなら、ミニ三脚と同じくらいの重量ながら、理想的な画角での撮影が出来る。
僕は基本的に延長ポールを使用せず、本体+雲台のみで運用しているけど、それでも自分の腰くらいまでの高さを出せるのは大きなメリットと感じている。
画角の選択肢は多ければ多いほど良くて、旅先で綺麗な背景を入れたいときは三脚の長さは絶対条件だ。
例えばこの写真だって、雪壁に加えて伸ばした三脚の高さを加えて、初めて背景の雪景色の山肌を撮影出来ている。「トラベル三脚」か「ミニ三脚」かは悩むポイントでもあるけど、せっかく持っていくならある程度は高さを出せた方が良いと思う。
3-4.収納時の長さがイマイチ
軽量性に関しては申し分ないのだけど、収納時のサイズについては一言いいたかったりする。最短にしても350mmあるので、自転車での運搬は簡単ではないのがネックなのだ。
恐らくリュックを背負う旅や登山なら関係ないけれど、自転車に積載するとなると話は別だ。
基本的に僕はフレームバッグに三脚を入れているけど、大きめのバッグでないと収納できないので、ちょっと運用の幅が狭くなる。カメラに付けっぱなしにするにも長くて邪魔だし、難しいところ…。
収納時の長さが250mmほどで、Φが60mm以下なら完璧だったのに…と思わなくもない。
3-5.雲台の固定が甘い
通常使用で個人的にもやもやするのは、三脚本体と雲台の固定力。
強く締めたつもりでも、雲台の水平回転機構のせいで強く締めこむことが難しく、「雲台と本体の間」が使っているうちに緩んで水平に回転し出す。
そんなに悪影響もないのだけど、稀にそれが原因で画角がずれてイライラするので、ちょっと付け加えておきたかった。
4.まとめ
以上、AOKAのカーボン三脚「CMP163CL」をレビューしてみた。
最大で1,200mm以上の高さを出しつつも、500g台という軽量性を実現しているのは本当に凄い三脚だと思う。価格もべらぼうに高い訳ではなく、少なくとも僕は買って大満足している。
おススメするうえで唯一気になるのは、やはり延長ポールの耐荷重。重たい一眼レフを使用するなら、延長ポールはちょっと怖い。
延長ポールはおまけ程度にとらえ、「400g台で715mmの三脚」としてなら、皆様におススメ出来る製品だ。
おわり