バイクパッキングで使用するキャンプ道具は、サイズや重量といった制約が大きく、選ぶのが難しい。特にテントやマット、シュラフ、クッカーといった嵩張る系のものは、何を選ぶか次第でライドやキャンプの快適性が大きく変わる。
今回は、僕がいつものバイクパッキング・ツーリングで使用している、テント・マット・シュラフ・クッカーといった、キャンプの代表的な装備をご紹介したい。
<目次> 1.僕のスタイル 2.テント 2-1.モンベル/U.L.ドームシェルター1型 2-2.モンベル/ステラリッジテント2型 3.マット 3-1.Sea to summit/U.L.マット レギュラー 4.シュラフ 4-1.モンベル/ダウンハガー800 #5 4-2.モンベル/ダウンハガー800 #3 5.火器・クッカー 5-1.JETBOIL 5-2.RBS/BT3000 5-3.Snow Peak/シングルチタンマグ450 5-4.TOAKS/PAN-115 6. 自転車にどう積む?バイクパッキングの例
1.僕のスタイル
まず初めに、『僕がどんなスタイルでバイクパッキングを楽しんでいるか?』に少し触れておきたい。というのも、ツーリングの趣向によって、ギア選択の仕方も変わってくるからだ。
僕は「キャンプを含むライド」が目的で、基本的に「自転車を用いたキャンプ」は目的にしていない。つまり、自転車に乗る遊びがベースにあって、それを更に冒険的で深く楽しいものにするために、キャンプという手段を追加している。
だから、快適で豪華なキャンプとは似つかないものだと思うけど、そんな中でもより快適に楽しくキャンプするために工夫を凝らしている。
これからご紹介するギアは、主にアピデュラのサドルバッグ(9Lの一番コンパクトなモデル)に収まるギア達。
テント泊から自炊まで可能で、快適性もそこそこ確保しつつ、バイクパッキング・自転車キャンプを楽しめる装備だと思う。
2.テント
では、早速テントからご紹介しよう。
僕がメインで使用しているのは2種類。どちらもモンベル製だ。
2-1.モンベル/U.L.ドームシェルター1型
長らく愛用しているシングルウォールテントで、超軽量なのがウリ。自転車キャンプと組み合わせるなら、かなりおススメできるテントの1つだ。
・ウォール数:シングル ・ポールの本数:2本 ・展開時サイズ:W90×D210×H95㎝ ・収納時サイズ:本体Φ10×25㎝、ポールΦ5×43㎝ ・重量:742g(ポール含む。+スタッフバックで775g) ・耐水圧:本体600mm、フロア1,500mm ・価格:39,600円(税込み) ・モンベル公式サイトはこちら
通常「軽量テント」と言えば1.5㎏前後のところ、その半分の重量・容積でパッキング出来る。自転車キャンプとは最高の相性だと思っている。
しかし、耐風性や耐水圧といったスペックは低く、悪天候での使用はほぼ不可能。天気の悪くない日、または木々や雪壁といった自然のバリケードを見つけて使用するのが望ましい。
また、内部は狭いので居住性は低い。「テントでゆっくりくつろぎたい」という方には向かない仕様だろう。
それでも、長期の自転車旅でない限りそんな環境に設営せざるを得ない状況はレアなので、それよりも軽さを優先させた方が満足度が高いというのが僕の考え。
パニアを使用しないバイクパッキングで使用するなら、とにかく軽量・コンパクト性は正義となる。延べ2か月以上は使っている計算だけど、まだまだお気に入りで現役のテントだ。
レビュー記事はこちら。
2-2.モンベル/ステラリッジテント2型
もう1つが、ダブルウォールで対候性・居住性を高めた軽量テント。
・ウォール数:ダブル ・ポールの本数:2本(一体型) ・展開時サイズ:W130×D210×H130㎝ ・収納時サイズ:本体Φ14.5×30㎝、ポールΦ5×41㎝ ・重量:1.23kg(+スタッフバック、ペグ、貼り綱で1.43kg) ・価格:46,970円(税込み。レインフライ込) ・モンベル公式サイトはこちら
登山界隈では、定番中の定番テント。スペックも価格も評判も、どれをとっても優等生。
2人が就寝出来るサイズ感ながら、1.5kgをゆうに切る軽量性。更に、山岳の雨風にも十分に対応できる信頼性も備えている。
僕はソロがメインだけど、あえて1人用ではなく2人用を選んでいる。それは、1人用との重量差が100gしかなく、2人用は内部がかなり広くなるから。
このテントを使用するときは、天候が悪かったり、テント場でゆっくりしたい時だ。となると、中で大の字になって寝たいし、雨風を避けて中で食事もしたいし、荷物もなるべくテント内に持ち込みたい。(テント内での火器使用は、一酸化炭素中毒や火災といった重大事故に繋がる危険があるので、基本NGですが。)
そんな用途には、このサイズ感がピッタリで、厳しいライドでも悠々自適なテント生活が出来ている。
雪、雨、風ともに今のところ不満無し。
しいて言えば、ベンチレーションがもっと働いてくれたら、夏場での使用で快適だったのにと感じるくらい。
3.マット
お次はマット。空気を入れるエアマット1つと、折り畳み式のクローズドセルマット1つずつご紹介。
3-1.Sea To Summit/U.L.マット
最も出番が多いのが、Sea to summitのU.L.マット。サイズは「スモール」を使用している。
・カタログ重量:382g(本体345+袋37g) ・実測重量:392g(本体385+袋7g) ・展開サイズ:168×55×5㎝(実測も同じ) ・収納サイズ:直径9×18cm(実測も同じ) ・R値:0.7 ・実売:12,000円ほど *スモールサイズの値
このU.L.マットは、特に軽量性がウリ。一般的なエアマットの相場が500g台~なところ、300g台で概ね頭から足までをカバーできるのは素晴らしい。
僕は身長177㎝だけど、着替え等を適当に枕にするので、168㎝のSサイズで全身をカバーできている。もっと軽量性を突き詰めるなら、脚部分は無視して、128cmのXSサイズというのもアリだろう。これなら200g台だ。
軽量なエアマットは「断熱性=R値」や「寝心地」が問題視されることが多いけど、僕の場合はどちらも気にならない。
-20℃で使用しても寝れるし、寝心地は十分に良いと思って使っているくらい。この辺りは感じ方に個人差があるだろうけど、下手に中途半端な性能のマットを買うより、このくらい軽量性に振り切ったマットの方がバイクパッキングには向いていると僕は思う。
Mozambique(モザンビーク)/キャンプマット
クローズドセルマットが、このモザンピークのマット。Amazonで売ってる格安系?なマットだけど、割と性能はいいんじゃないかと思っている。
・カタログ重量:500g ・実測重量:392g(本体385+袋7g) ・展開サイズ:183×56×2cm(実測も同じ) ・収納サイズ:直径9×18cm(実測も同じ) ・R値:不明(2~3程度と推測) ・実売:4,500円ほど ・Amazonはこちら
このマットは折りたたみ式ので、収納サイズが大きく、一般的にバイクパッキングには向かないとされている。実際、大型サドルバッグ等にも収納はまず無理だし、僕のその意見に同感だ。
しかし、パンクのリスクがない点や、設営や撤収が早くて楽な点など、エアマットにはないメリットもある。
折りたたんで椅子としても使えるし、靴のまま踏んでも良くて、必要なサイズにカットして持ち運んでもいい。そういう気楽さが長期ツーリングと相性が良く、根強い人気があるタイプだ。
僕は主に冬季北海道ライドの時に使用して、その使い勝手の良さも再確認した。
このときは軽量キャリアの上にドライサックと共にパッキングしたけど、MTBなどのフラットバーバイクなら、ハンドルバーに固定すると収まりが良いだろう。
4.シュラフ
続いてはシュラフ。シュラフには
・形状:封筒型orマミー型 ・中綿:化繊orダウン ⇒ダウンなら何FPか
といった選び方がある。バイクパッキングで使用するなら、「マミー型」「800FP以上のダウン」が僕的なおススメ。「FP:フィルパワー」というのはダウンのふくらみを表していて、数値が高いほど軽量で暖かいシュラフが作れる。
例えば、上の画像には800FPのダウンシュラフと、Apiduraの9Lのサドルバッグを並べている。
800FPというと結構高価でグレードの高い(=軽量でコンパクトになる)ものだけど、それでもサドルバッグ等に収納するなら、結構な容積を取ってしまうのが分かると思う。
左から10℃前後で使う夏用シュラフ(モンベル:ダウンハガー800 #5)、5℃前後の3シーズンシュラフ(モンベル:ダウンハガー800 #3)、氷点下でも快適な冬用シュラフ(モンベル:ダウンハガー800 #1)。
3-1.モンベル/ダウンハガー800 #5
先程の画像で、左端にあったシュラフ。
・重量:441g(スタッフバッグ込み462g) ・収納サイズ:∅12×24cm(2.4L) ・快適温度(コンフォート):8℃ ・使用可能温度(リミット):3℃ ・価格:28,600円 ・公式サイトはこちら
「リミット」の気温は着込んでギリギリ寝られるかどうか……という気温なので、注目すべきは「コンフォート」。10℃前後がちょうどいいシュラフだ。*僕が使用しているのは、1世代前のモデルなので少し使用温度帯が違う。
標高が高くなければ春先~秋口まで対応できるシュラフで、コンパクトなのでバイクパッキングで使用しやすい。寒い時期はキャンプしないとか、ダウンジャケット等と組み合わせるからとにかく小さく……という方にはおススメ。
3-2.モンベル/ダウンハガー800 #3
こちらは、先ほどの#5よりもう一段階暖かいモデル。
・重量:531g(スタッフバッグ込み555g) ・収納サイズ:∅13×26cm(3L) ・快適温度(コンフォート):4℃ ・使用可能温度(リミット):-1℃ ・価格:33,000円 ・公式サイトはこちら
3シーズン用と言われるシュラフで、関東以南の平地であれば1年中使用できると考えても良いだろう。
山間部や東北の冬で単体使用はかなり厳しいけど、ダウンジャケット等と組み合わせれば使えなくもない。一般的な自転車キャンパ―が想定する気温でいえば、このシュラフが「最初の1つ」として最適だろうし、「一番長く使えるモデル」でもある。
5.火器・クッカー
最後に、火器やクッカー類を。
僕は調理をそんなに重視しておらず、インスタント系やコンビニ総菜を組み合わせて簡単な調理をすることが多い。
そのため、ここでご紹介しているギアは、パラメータを軽量性に全振りしたイメージの物ばかり。恐らく調理器具としての使い勝手は劣っている点を、初めにお断りしておきたい。
最近の定番セットは、燃料を除いて、ガスバーナーと調理器具一式で154g。アルミクッカー1つより軽い位なので、かなり攻めたセットだと思う。
5-1.RBS/BT3000
ODガス缶にセットして使用するシングルバーナーは、チタン製の超軽量バーナー。
重量はなんと26gで、軽量でも90gほどのシングルバーナーから考えると恐ろしいほどの軽量性。
しかし、マイクロレギュレーター(低温に強い機構)や風防、イグナイター(点火装置)といった機能は一切なく、中国製の規格外品のため万が一の事故でも保証などが受けられない。
広く皆様におススメできるものではないけど、お湯を沸かす・おつまみを焼く程度の使い方なら、それなりに活躍してくれている。
5-2.Snow Peak/シングルチタンマグ450
キャンプ・アウトドア業界で人気の高いチタンマグ。
スノーピークからは、2重構造で保温性が高い「ダブルマグ」と、チタンの1枚板から出来る軽量な「シングルマグ」が出ている。これは軽量な「シングルマグ」の方。
元は「マグカップ」としての製品だけど、シングルマグであれば直火にかけて湯沸かし用としても使用できる。
450mlの容量があれば、アルファ米やインスタント麺といった大抵の主食は作れるし、普通にコーヒーやお酒を飲むときのカップとしても良いサイズ。冬はホットワインや熱燗にして飲めるのがまた素晴らしい。笑
お湯を沸かすなら蓋もあった方が便利で、社外品の『EPIgas:シングルチタンマグカバー』がピッタリはまる。チタンマグが70g、蓋が14g、合計でも84g。
5-3.TOAKS/PAN-115
本格的な調理はしないけど、お酒を飲みながら夜をゆっくり過ごすなら、やっぱり暖かいおつまみが欲しくなる。笑
そんな時の為に僕が持ち歩いているのが、チタンのミニフライパン。なんと46g。
直径が120mmほどとかなり小さいけど、ソーセージやベーコン、ホルモン系といったおつまみを焼くのには十分だ。
チタンは熱伝導率が低いため、調理に使用すると食材がくっつきやすいという欠点がある。実際のところ、そのまま使用すると料理にならないくらいダメだ。それを補うため、くっつかないアルミホイルを敷いておき、油無しでも簡単な焼き料理くらいは出来る様にしている。
5-4.JETBOIL/ZIP
最近出番が減ってはいるけど、もう少しちゃんと食事もするならJETBOIL(ジェットボイル)。
ジェットボイルは「とにかくお湯が速く沸く」という機材で、容器底の特殊な形状により熱伝導率を高めたもの。
基本は湯沸かし専用だけど、普通にクッカーとしても使用できるし、サイズ的に袋ラーメンなんかを作るのにもちょうどいい。コーヒーを飲みたい時やインスタント料理を食べたいときはサッとお湯が沸くし、それ以外にもそこそこ使えると、結構気にいっている道具の1つだ。
これは最も安価な「ZIP(ジップ)」で407gだけど、最近は「スタッシュ」という200gと超軽量なモデルも発売された。
6.自転車にどう積む?
ここまで僕が使用しているキャンプ装備をご紹介してきたけど、『じゃあ自転車にはどう積むの?』という話は、別の記事にあれこれまとめている。
こちらの記事には、僕が今年(2021年)に使用したバイクパッキング・スタイルをライド概要と共にまとめているので、どんなライドでどんなパッキングをしたのか、参考になれば幸いだ。
おわり