自転車の積載力を一気にUPしてくれる『サドルバッグ』。バイクパッキングブームで一気に広まり、ロングライドからキャンプツーリングまで、利用している方は多いのではないだろうか。
しかし、サドルバッグには「揺れる」という大きな欠点がある。特にダンシングでの走行感がひどくなるので、それ故に敬遠している方もいらっしゃるだろう。
実はこの「揺れ問題」、バッグの固定方法一つで大きく改善することが出来るのは、あまり知られていない事実ではなかろうか?今回は、僕があれこれ試して得たサドルバッグの揺れ改善ノウハウをまとめていご紹介したい。
<目次>
1.サドルバッグの構造
2.まず荷物を詰め込み、ベルトは締めろ!
3.ノウハウを4つご紹介
3-1.ノウハウ①レール巻き
3-2.ノウハウ②シートポストに滑り止め
3-3.ノウハウ③スタビライザー
3-4.ノウハウ④ボルトオン加工
4.実用上のあれこれ
5.まとめ
1.サドルバッグの構造
サドルバッグの揺れを抑えるためには、まずバッグの構造をきちんと考えておく必要がある。
手っ取り早く結論だけ……という方はすっ飛ばしていただいても構わないけど、一番大事なポイントはここだと僕は思う。
基本的に大型サドルバッグは、サドルレールに2本のベルトを通し垂直方向に、シートポストに1本又は2本のベルトを巻いて水平方向にバッグを支えている。
このとき、上の画像で『手前⇔奥の方向(バイクを左右に振る方向)に対して固定力が弱い』というのが一番の問題だ。
*逆に、この構造でないもの(ブラックバーンの新型エリートシリーズや、オルトリーブのアタッチメントで固定するもの等)は、そもそも揺れることが無い。
サドルレール部分は、ベルトとレールが固定できていないからベルトがレールの上をすべるように動く。
シートポスト部分は、シートポストを軸とした回転運動をしてしまう。
この2つの動きにより、ダンシング等の際にぶらぶらと振り子のようにバッグが揺れてしまうのである。
*上の画像は撮影のためにベルトを緩めている。正しくはここをしっかり締めて、サドル裏とバッグが密着する様にする必要がある。
揺れを防止するためには、サドルレールかシートポスト部分(あるいはその両方)で、摩擦力を増して少しでも動きにくくするか、バッグが動かない様に固定具を追加するか、というアプローチが必要だ。
2.まず荷物を詰め込み、ベルトは締めろ!
バッグの揺れを抑えるうえで、もう一つ非常に重要なポイントは『荷物をパンパンに詰めて、ベルトは可能な限り締めること』。
というのも、殆どの大型サドルバッグは、それ自体が柔らかく自力では構造を保てない設計だからだ。
どんなにバイクにしっかり固定したところで、バッグ自体がふにゃふにゃで荷物が揺れるような状態ではバイクが振られる感覚を消すことは永遠に出来ない。それを避けるためには、前提として荷物をパンパンに詰めておく必要がある。
少し補足すると、大型サドルバッグはある程度容量の増減に対応できるけれど、あくまで「ある程度」。極端な話、17Lのバッグに5Lの荷物だけを入れてパンパンにしようと思っても無理なので、積載したい荷物の量に合わせたバッグ選びが求められる。この話はブロガーのばるさんが詳しくまとめているので、そちらの記事も合わせてご覧頂きたい。
そして、「ストラップは可能な限り締める」というのも重要。バッグに荷物を積めて構造体として硬くしたうえで、更にベルトをしっかり締めてバイクに密着させるのが重要だ。
先ほど書いた通り、サドルバッグの揺れ対策にはサドルレールとシートポストとの摩擦力を高めるのが大事で、その為にはベルトを締めるのが第一歩となる。すべてのベルトをしっかりと締め、バッグをバイクに密着させて、それでもなお揺れてしまう場合の対策がこれから僕が書いていくノウハウだ。
3.ノウハウを4つご紹介
前置き(というか、それが一番大事なんだけど)が長くなったけど、いよいよノウハウをご紹介したい。あくまで僕が使ってきたバッグとバイクに置いて有効だったものなので、皆様にどれだけ効果があるかは分からないけれど、試していただく価値はあるはずだ。
①レールを巻く
②シートポストに滑り止め
③スタビライザー
④ボルトオン加工
以上、4つを順を追ってご紹介していく。
3-1.ノウハウ①レールを巻く
まずは、サドルレールにとめるベルトを巻く方法。
普通はレールには1度くぐらせて終わりだと思うけど、これだとベルトがレールの上を滑るようにして動き、バッグが左右に揺れてしまう。
そこで、ベルトとレールの位置関係が動かない様に、ベルトをレールに巻き付けてからバッグを固定するのだ。
取り付けにちょっとひと手間かかるけど、これをすることでサドルバッグとレール2点をかなり強固に固定できるようになる。バッグに付属するベルトの長さや、サドルの種類によっては出来ない可能性もあるけれど、慣れると結構簡単に巻けるので練習する価値もある。(笑)
全くお金もかからず、重量も増加しない手法だけど、僕の経験的に効果はかなり高い。
例えばアピデュラのレーシングサドルバッグは、普通に付けるとかなり揺れてしまったけど、この方法でほぼ全くと言っていいほど揺れなくなった。
3-2.ノウハウ②シートポストに滑り止め
続いては、シートポスト側の摩擦力を高めて揺れを軽減する方法。
こちらはいろいろやり方があると思うけど、僕は廃チューブを切り裂き、シートポストに巻き付ける方法をとっている。チューブの固定はベルクロのマジックバンドで行っていて、もう少しスッキリさせるならシートポストを抜いて輪ゴム状に切ったチューブで巻くのも良さそうだ。
他には薄手のゴムシートでも良いだろうし、耐震ゴムみたいな粘着性のあるものもひょっとすると良いかも知れない。
こちらもお金をかけずに出来るカスタムだけど、バッグがシートポストを軸に回転してしまうのを軽減できるので効果ありだ。
僕の環境では①のレール巻きだけで解決できることが多いので出番は少ないけれど、揺れがひどくなりやすい10L以上のサイズの時はこれもセットで行う。①だけだと揺れが収まらない場合も、この②を組み合わせることでかなり揺れは軽減できるだろう。
ものによって可否がわかれるけど、このシートポストのベルトも巻き付けて使用することで固定力を上げることもできる。ベルトが長く、シートポストが丸型(かつ27.2㎜など細めのやつ)なら、こんな方法もある。
3-3.ノウハウ③スタビライザー
こちらは外部的に揺れを防止する部材を追加する方法で、市販の「サドルバッグスタビライザー」を利用する。
価格もそこまで高くないし、左右からガッチリとサドルバッグを固定できるので全く揺れなくなる。手っ取り早く解決したいならこれも十分アリだろう。
僕もこれを使ってそれなりの距離ツーリングをしたけれど、安定感は抜群に高くなった。ミノウラのやつは左右にボトルケージ用のダボ穴もあるので、ストレージ追加にも一躍買ってくれる。
しかしながら、かなり重量が増加してしまう点や、幅が合わずパッキングに支障をきたしてしまうリスク、輪行でいちいち着脱しなくてはならない手間(いや、結局家でやるにしてもかなり面倒くさい)といったデメリットもある。
また、バイクによっては固定力が強すぎるために横剛性に問題が生まれる可能性もある。僕のロードバイクは振動吸収性を高めたロングライドモデルで、シートポストもかなり柔らかい。
そんなバイクのサドル部分に重りをガッチリ固定してしまうと、スタビライザーの重量も相まってバイクがぐにゃぐにゃとよじれてしまった。快適に走行するためにサドルバッグを固定したはずなのに、逆に走行感が滅茶苦茶になってしまうパラドックスに陥ってしまったのだ。
ネットでは異様に絶賛されているように見受けられるけど、万能な道具ではないので注意されたし。
3-4.ノウハウ④ボルトオン加工
最後に、サドルバッグ自体に加工を施し、サドルとサドルバッグを固定する方法をご紹介したい。
一般的な袋状のサドルバッグだとやりづらいと思うし、穴をあけることになるので後戻りできないけれど、かなり満足度の高い加工になった。
加工したバッグはブラックバーンのアウトポスト シートパックで、バイクに固定するケージ部分と荷物を入れるドライバッグが別々になっているタイプ。このケージ側に穴を空けてボトルケージマウントと合体させ、そのマウントをサドルに固定するという方法だ。
加工と言ってもそんなに大層なものではなくて、普通にキリで穴をあけて付属のボルトで止めるだけ。
重量増加は100g以内に抑えられるのでスタビライザーより軽いし、パッキングへの影響もなく、バッグは微妙に動くのでスタビライザーの様な走行感の崩壊は避けられた。
もちろん、ボトルケージアダプターにサドルバッグ全体の重量を支える強度はないので、ストラップでしっかりと支える必要はある。あくまで「左右方向への揺れを防ぐ」というだけのものだ。
まだ数百㎞しか試していないので耐久性も何とも言えないけれど、グラベルツーリングでも耐えてくれたので結構良いかも知れない。
4.実用上のあれこれ
ここまで「バイクやバッグに工夫を施す」という目線で書いてきたけど、ここからは「自分が運用でなんとかする」という目線で少しだけ補足したい。
サドルバッグに重積載をする場合、ダンシングではバイクを振るのではなく自分が振れる走り方をした方が楽で速かったりする。
普通、ダンシングはバイクを左右に振って自分の重心の位置は大きく動かさない。それを逆に、バイクを左右に動かさず、自分が左右のペダルの上に飛び移っていくようにダンシングをするのだ。言葉で説明するのがちょっと難しいけど、重たくて扱いにくいバイクを頑張って振るよりは、身軽な自分が積極的に動いてペダリングした方が楽……という発想。
これが出来ると、そもそもサドルバッグがあまり揺れないので、対策もガチガチにする必要性が低くなる。
他にも、そもそもサドルバッグに重量物を入れないパッキングをする方法も有効だ。
何も荷物を積む方法はサドルバッグだけではないので、走行性能に影響の出にくいフレームバッグ等に重たいものを入れ、ウェア等軽くて振れても良いものをサドルバッグに入れればよい。
どんなバッグにもメリットとデメリットがあるので、それを理解して使い分けるのが、パッキングにおいては肝要だと思う。
5.まとめ
以上、僕なりのサドルバッグの揺れ対策について、あれこれとまとめてみた。
サドルバッグはとても便利なアイテムだけど、使い方にちょっとした工夫をするかどうかで、使用時の快適性に大きな差が出でしまう。この記事が少しでも快適にサドルバッグを使用する助けになれば幸いだ。
おわり
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