「グラベルやロングライドで、手や腕への振動疲労を軽減したい」という思いをもっていらっしゃる方は多いだろう。しかし、MTBのようなサスペンションは装着が難しいうえ、重量や走行性能的にもデメリットが大きい。
そこに登場した便利アイテムが、今回ご紹介するRedshiftのショックストップステム。ステム自体にサスペンション機能を搭載しており、ロードバイクやグラベルバイクに気軽に装着できる。しかも重量増加も抑えられるときた。
この記事では、サスペンションステムのスペックから実際の使用感をまとめていきたい。
<目次>
1、はじめに
2.スペック
3.各部詳細&取り付け方法
4.いいところ
4-1.振動吸収性がすごい
4-2.硬さの調節が可能
4-3.オンロードでも邪魔にならない
5.残念なところ
5-1.調節がしにくい
5-2.ハンドルの角度が変わる
5-3.動くのが気になる(かも)
6.まとめ
1、はじめに
本題に入る前に1つだけお断りを。それは、この製品はAlternative Bicyclesの北澤さんよりご提供を受けているという点。
それでも、僕のブログは『いちユーザー目線で、良いこと悪いことを正直に書く』というのをモットーにしているので、この記事でも正直なレビューをしていく。この記事はチェックや編集を一切されていない事を、あらかじめお断りしておきたい。
2.スペック
Redshiftのショックストップステムは、サスペンション機構を備えたステム。大きな振動は最大70%カットし、20㎜相当のトラベルを提供してくれるらしい。
どんな動きをするものかは、公式YouTubeをご覧いただければすぐわかると思う。
この製品は「ロード・グラベル用」という位置づけを強調していて、MTBでの激しいトレイルライドに用いるものではない。その構造的に、エラストマーの衝撃吸収能力を超える力が加わってしまうと、パーツの破損と事故を招く危険があるからだ。
・サイズ:80,90,100,110㎜(6°)、100㎜(30°)
・重量:256g(80㎜)~302g(110㎜)
・クランプ径:コラム28.6㎜、ハンドル31.8㎜
・価格:20,320円(税込み)
サイズ展開は80~110mmで、僕は最も短い80mmを選択した。Alternative Bicyclesさんのサイトでは90mm~のラインナップになっているけど、80mmでも取り寄せ可能らしい。
付属品は 5種類のエラストマーと、エラストマー交換の際に使用する専用パーツ、説明書。説明書は英語だけど、わかりやすい図が付いているし簡単な文章なので、英語が苦手な僕でも特に困ることはなかった。
3.各部詳細&取り付け方法
さて、続いては各部の詳細と、取り付け方法について簡単に。
見た目は「ちょっと太目のステム」で、ごつさはあるものの特別目立つものでもない。たとえばロードバイクに付いていても、ぱっと見で目を引くパーツではないと思う。
中には2つのエラストマーがはいっていて、これが潰れることで衝撃を吸収してくれる仕組みだ。エラストマーを交換することでサスペンションの硬さを変更することが出来て、体重に合わせてベストな動作をさせることが出来る。
説明書の中に体重ごとのエラストマーの組み合わせが書いてあって、僕は体重67kgくらいなので購入時に入っていた組み合わせをそのまま使用。
実測重量は80㎜で260g。公称256gなので、誤差の範囲だろうか。
ステムの取り付けサイズは一般的で、コラムが28.6mm、ハンドルが31.8mm。相当昔のバイクとかじゃない限りどのバイクにも適合するはず。エラストマーの交換がちょっと特殊なのをのぞけば、取り付け作業は普通のステムとなんら変わりない。非常に簡単だ。
ただし、「エラストマーの位置で上下の使用方向が決まっている」というのに注意が必要。
エラストマーがステムの上側になるようにバイクに取り付けないといけないので、普通のステムのように角度を変えたいときに「ただひっくり返す」という手法ではなく、「一度エラストマーの位置を上下変更してからひっくり返す」という手順が必要になる。
エラストマーの交換や位置変更には、付属の樹脂製ツールとボルトを使用。
エラストマーを押さえ込んでいる銀色のプレートがステム内に圧入されている格好なので、プレートを固定しているボルトを外した後に、樹脂製ツールを使用してプレートを引き抜く(戻すときは圧入する)。
こちらで用意するツールは4mmの六角レンチのみだし、特別難しい作業でもなかったので問題ないと思う。ただ、ツールをなくすとちょっと面倒くさそうなので、その点は気をつけないといけない。
4.いいところ
続いては、実際に使用してみて感じたいいところを書いていきたい。
使用しているバイクは、BombtrackのHook EXTというグラベルロード。普段のグラベルライドから、グラベルでのエベレスティングなど長時間に及ぶ使用もしてみた。
……と、その前に、ちょっと面白い動画が撮れたので最初にこちらをご覧頂きたい。
面白いのが撮れた。
Redshiftのショックストップステムの効果がよく分かるかなと。バイクや装備の揺れに対して、ハンドルだけ滑らかな動き。 pic.twitter.com/7ooQfQCZ0O
— S.K. (@r0adbike_sk) May 5, 2021
かなり凸凹の道を走っているんだけど、こんな風にハンドルは非常になめらかになる。 ではこの効果について、もう少し詳しく書いていこう。
4-1.振動吸収性がすごい
なんといっても驚き、また僕が気に入っているのはサスペンションによる振動吸収効果。
リジットフォークのグラベルロードで長距離のガレた下りを走るとどうしても手がしんどくなってくるんだけど、このステムを使用しているとその辛さが一気に解消された。
グラベルエベレスティングでは未舗装路を標高差9,000m以上下ったわけだけど、それでもほぼ全てをパッド無しのグローブでこなすことが出来、手の平もまったく痛くなることはなかった。
今までの普通のステムだとその10分の1も持たなかったので、かなり大きな進歩である。ここまで振動による疲労を軽減できるのかと、感動したし虜になってしまったのは言うまでもない。
ここで僕が「振動吸収」と表現をしたのは、岩や木の根など段差などの大きな衝撃よりも、砂利道のような連続し身体では避けようのない疲労への効果が大きいと感じているからだ。
というか、そもそもショックストップステムは「手への衝撃緩和」をする製品であって、MTBのサスペンションの様に「バイクの挙動を安定させる」ものではない。大きなギャップやコーナーに突っ込んだ時にバイクをどうこうしてくれるモノではなく、単純に「手が楽になる」モノなのだ。
そういう意味で、もちろん「段差を楽にしたい」という考えでショックストップステムを使うのも十分効果はあるのだけど、このアイテムが本領を発揮できるのは「グラベルや石畳のような連続した大小の動から手や腕を守る」という使い方だと思う。
*他のブログのインプレでは、基本的に舗装路かつロードバイクでの使用を想定した「段差」とか「振動吸収」という言葉を使っているけど、僕はオフロードでの「段差」とか「振動吸収」を指して書いている。つまり、恐らく他のインプレの云う「段差」の連続をいなすのが僕の云う「振動吸収」で、僕のいう「段差」は意図的に走らない限り舗装路にはないものだろう。
「ロードバイクのロングライドに使うか?」と聞かれたら、一般的な道を走る限り、僕の答えは「No」。
舗装路における凹凸や落下物などの衝撃もかなり和らげてくれるけど、それらはバイクコントロールで結構対応が出来るし、ステムのサスペンションに頼り切って突っ込むと手元以外の部分でバイクと身体全体がギャップに揺さぶられてしまうから。
ただ、DHバーを使用する平坦ロングライドでは、前輪の抜重が大変なのでちょっと興味はある。
4-2.硬さの調節が可能
サスペンション機構を使うなら、いかに自分好みに調節できるかも大切になる。たとえば体重50kgと100kgのライダーが同じ硬さのサスを使うのはいくらなんでも無理があるし、乗り手の好みやコースにあわせても細かく調節できると尚良いだろう。
ショックストップステムは 5種類のエラストマーが付属しその中から2つの組み合わせを選べるので、かなり細かく調節が出来る。これだけの選択肢が用意されているのは、ユーザーとして非常に有難い設計だ。
4-3.オンロードでも邪魔にならない
グラベルライドやロングライドでの使用をするなら、当然綺麗な舗装路を走行するシーンもあるだろう。そんなとき、通常のサスペンションフォークの様に邪魔にならないのが、このショックストップステムの凄いところ。
まず重量が260~300gと比較的軽量であること。もちろん100g+αの通常のステムに比べれば重いのだけど、500gくらいだった従来のサスペンションステムに比べればかなり軽いし、サスペンションフォーク等とは比べるまでもなく超軽量である。
しかもトラベル量(サスペンションにより動く距離)が小さく、またそもそもバイク本体はまったく動いていない(ハンドルが動くだけなので、ペダル~前後輪~サドルの中でロスが無い)ため、通常走行の範囲では走りへの違和感がかなり小さいのだ。
サスペンションフォークでは結構ボヨンボヨンとパワーがロスされるのを感じるし、オンロード走行で余計な疲労を蓄積してしまう原因でもあった。
トレイル用のMTBではなくグラベル・ロング用のバイクに開発されたサスペンション機構だからこそ、綺麗なオンロードでも走行時の快適性を確保してくれているのが素晴らしいと思う。
5.残念なところ
最後に、使っていて感じる残念なところを3つ。
5-1.調節がしにくい
先ほどいいところで「サスペンションの調節が細かく出来る」と書いたけど、エラストマーの交換は専用工具が必要なうえ、ちょっと面倒くさい。
ハンドルを外し、圧入パーツを外し、エラストマーを入れ替えて…と手順が多いので頻繁に交換する気にならないし、屋外のグラベルで細かく調整して試すのはちょっと無理がある。
MTBのエアサスペンションのように、屋外でも手軽にポンプやダイヤルで硬さやリバウンドの調節が出来ればいいのに……と思う。
5-2.ハンドルの角度が変わる
ショックストップステムは、その構造上サスペンションが効くとき、ハンドルの角度が数度前のめりになる。
これがどれくらい気になるかは人によると思うけど、特にブラケットを持っていると結構その変化を感じるし、どうしても慣れない方もいらっしゃるだろうなと思う。
僕の場合は慣れたしもう気にならないけど、独特な感触なので慣れるまでは恐らく違和感が付きまとうだろう。また、バイクのセッティングもそれを考慮してややハンドルをしゃくった方が良いかも知れない。
5-3.動くのが気になるかも?
トラベル量が小さく、そもそもハンドルに力を加えない限り稼動しないので普通に走る分には「動いて気持ち悪い」みたいには感じないけど、ハンドルに力を加える様なダンシングをすると流石に動くのが気になる。
僕は基本そういう走りをしないので特に問題を感じてはいないもの、スプリント的な走り方をする方にはちょっとイマイチだろうし、ましてやレースの様なシーンでは明らかに不向きだろう。(まあ、そういう方は興味を持っていないと思うけど……)
6.まとめ
以上、僕なりにRedshiftのショックストップステムのレビューを書いてみた。
長距離の悪路やグラベル走行において、手や腕の疲労軽減に大きく貢献してくれるアイテムで、僕は非常に気に入って使っている。サスペンションフォークには無い軽量性や走行性といったメリットも魅力的だ。
一方、その裏返しとしてMTBのサスペンションフォークとは根本的に異なるパーツであり、また純粋なロードバイクでの走行にはデメリットもある。メリットを大きく感じられる走行シーンはやや限定的だろう。
個人的には、グラベルロードでの使用をおススメしたい。悪路での手の疲労を感じている方には、ぜひ試していただきたいアイテムだ。
おわり