自転車乗りの天敵「空気抵抗」。上り坂を除いて、一生懸命ペダルを回し続けなくてはならない理由の殆どは空気抵抗だ。
その空気抵抗を削減してくれるアイテムが「DHバー(エアロバーともいう)」だが、重量増やサイズといった問題があり気軽に取り付けられるものでない。
そんな中に登場したアイテムが、Ridefarrが発売する『カーボンエアロボルトオン』。小型・超軽量なエアロバーとして、ウルトラディスタンス系から注目を集めている。その実力やいかに?
<目次>
0.今回のご提供について
1.商品スペック
2.各部詳細
3.使用感
3-1.確かにエアロ
3-2.DHバーというよりハンドルの一種
3-3.あくまで「サブ」のポジション
4.僕が使っている理由
4-1.グラベルバイクのエアロ化に良い
*なぜグラベルバイクか?
4-2.手のひらの疲労防止
5.まとめ
0.この製品の提供について
本題に入る前に1つだけお断りを。それは、この製品はAlternative Bicycles様よりご提供を受けているという点。それでも、僕のブログは『いちユーザー目線で、良いこと悪いことを正直に書く』というのをモットーにしているので、この記事でも自費購入の製品と変わらない視点で正直なレビューをしていく。
1.商品スペック
早速商品のスペックからご紹介。僕の持っているのはスタンダードなブラックではなく限定の「オイルスリックカラー」という方。
Ridefarrはウルトラディスタンス系のライダーを主なターゲットとする新しいブランド。このカーボンエアロボルトオンで一気に有名になった感じがする。
ちなみに、これは現在(2021/04)では旧製品にあたるVer.2で、現行品のVer.3は手のひらが当たる部分に滑り止め加工が施されているみたい。Ver.2でも使用していて滑ると感じたことはないけど、少なくとも改悪ではないだろう。重量も変わらず公称98g。
2.各部詳細
では、カーボンエアロボルトオンの各部を詳しく見ていこう。
ボール紙のパッケージに入った状態で到着。とても軽いので、あれ?本当に中身はいってる?とちょっと思った。(笑)
本体はフルカーボンで、クランプに使うパーツはアルミ製。
実測重量は108g(クランプ・ボルト込み)。公称より10g重いけど、これは塗装分の重量だろうか?
ねじはカーボン側に切ってあって、締め付けトルクは3Nmと小さいので注意。また、付属するねじはT25のトルクスなので、六角しか持っていない方は工具を購入する必要がある。
全体の仕上げはかなり綺麗で、所有欲的にも結構いい。
このオイルスリックカラー、通常料金に+1,000円ほどなんだけど、それでこの塗装はすごいと思う。限定モデルらしいので、Ver.3でも再販されるかは分からないけど……。
微妙にうねった特殊な形状をしていて、この平べったかったり丸かったりするのが、いい感じに手にフィットする。見た目以上に握ったときの感触は上々だ。
バーテープの切れ端を貼って滑り止めもしてみたけど、別になくて良かったなという感じだった(↓)
先端は円筒形になっていて、ここにライトやサイコンをマウントできる。幅が狭いので複数マウントするのは不可能だけど、ライトやサイコンのスペースを奪ってしまうこの手の製品には嬉しい機能。
3.使用感
続いては、気になる使用感をいろいろと。
3-1.確かにエアロ
手持ちのバイクに取り付けたら、早速ライドに出かけた。果たしてこいつの実力やいかに?という期待に胸を膨らませ、いつもの平坦な河川敷TTを走ってみる。
カーボンエアロボルトオンを使ってみての第一印象は、「おお、確かにこれはエアロバーだ!」という感触。ハンドルを持ち替えるとスッとスピードが伸びるのを感じるし、実際にサイコンを見ると2km/h位は上がっている。
(↑)ブラケットとRidefarrの比較。前から見ると違いが分かりやすい。
手のポジションが変わっただけなので乗車姿勢に大きな変化はないけど、それでも腕とお腹が受ける空気抵抗を削減できる効果は大きいらしい。
普通のブラケットや下ハンだと、前から見ると上半身で空気を抱え込むような姿勢になっているのに対し、カーボンエアロボルトオンを使うと空気を両手で切り裂くような姿勢になる。
また、これはあくまで僕個人の感覚ではあるけど、DHバーを使っているときのように体幹に力をいれやすくなり、ペダルにより体重が乗って出力が上がるというのがある。同じペースで踏んでいるつもりでも、知らず知らずのうちにパワーが出ているらしい。
実際の速度の変化については、東京大阪キャノンボール研究のばるさんが、パワメで一定出力を出した状態での速度変化を実験してくださっているので、よろしければご参考いただきたい。
3-2.DHバーというよりハンドルの一種
「100g以下の超軽量エアロバーだ!」というのが第一印象ではあったものの、次第にその見立ては変わっていった。
というのも、Ridefarrのカーボンエアロボルトオンはその短さゆえ、調節できるポジションの幅に限界があるし、腕に負担がかかるので長時間連続して使用することができないのだ。
DHバーは(もちろん製品によるけど)アームレストの位置からバーの突き出し長や角度など、ポジションを細かく調節できる。それにより、自分のバイクの元のポジションを変更せずに適切なTTポジションを追加できるし、長時間使用に耐えうるフィッティングをすることもできる。
その点、Ridefarrのカーボンエアロボルトオンにできるのは角度調節くらい。当然ベストな位置にコントロールするのは容易ではない(ハンドルやステムの変更をして、ハンドルクランプの位置を変える他ない)し、ベストな位置じゃないと永遠にしっくりも来ない。
(↑)カーボンエアロボルトオンを握っている。特別に前傾姿勢をとらなくてもエアロ効果はある。
さらに深刻なのは「腕が疲れる問題」。前傾姿勢を手で支える場合、両腕を広げるほどに負荷は胸にかかり、逆に狭めるほどに腕に負荷が集中する。
通常のハンドルは胸と腕両方の筋肉を使って体を支えられるが、カーボンエアロボルトオンは腕の力だけで上半身を支える格好になるのだ。ブラケットを持つのに比べてもこの差は歴然で、僕がカーボンエアロボルトオンを連続して使用できるのは数km程度にとどまってしまう。
*まだ日本では発売されていない?みたいだけど、Ridefarrから専用の軽量アームレストも開発されている。これを使用すれば状況は変わるかも知れないけど、依然としてポジション調節の問題は残る。個人的には、ステム横にアームレストが突き出るのはひざに当たらないか気になる。
(画像はRidefarr本国HPのスクリーンショット)
DHバーはアームレスト(ひじ置き)がついているので、上半身の加重を支えるのは手ではなく腕。アームレストをひじ付近に調節すれば、腕に力を入れることなく、かなりリラックスした状態でも姿勢をキープできる。この点も、長時間使用を視野に入れるなら大きな差になってくるはずだ。
商品名から「DHバー(エアロバー)」という印象を抱きがちな当製品だけど、実際に使い込んだ印象としては「ハンドルをちょっと変わった形にできる」という感じの、いわば「ハンドルの一種」である。
3-3.あくまで「サブ」のポジション
長時間の連続使用ができない以上、このカーボンエアロボルトオンは「サブ」の位置づけになる。ブラケットや下ハン、DHバーがメインのポジションになりうるのに対し、あくまで補助的な機能にとどまるだろう。
「平坦区間が長い(数十km~)から、そこはカーボンエアロボルトオンに任せよう」とか「これでDHバーがなくても完璧だ!」みたいな製品ではないと僕は思う。
「既存のハンドルポジションだけだと物足りない。。。」というとき、選択肢の1つを提供してくれるのが、このカーボンエアロボルトオンなのだ。
少し蛇足かも知れないけど、世の中には、同じく補助的なサイズのショートDHバー(250g前後の短いやつ)が存在する。
Ridefarrのカーボンエアロボルトオンは、いわばそれらを「ハンドル」に近い形に変形させたもの。それによりDHバーとしての機能性は落ちたが、手のひらにフィットして体重をかけられるというハンドルとしての側面が強くなり、大幅な軽量化も実現している……というのが僕の解釈。
DHバーとして使用するならそういった「ショートDHバー」がいいのでは?と思った方もいらっしゃると思うけど、僕は1度使ってみて、逆に中途半端すぎて要らないと感じてしまった。
ミニDHバーは軽量化にこだわって作られているせいでアームレストの安定感に欠けるし、調節が効かず腕も疲れやすく、それなのに200g以上もハンドルが重くなる。これは僕にとってはRidefarrの方が向いていた。
4.僕が使っている理由
ここまでやや否定的な記載が多くなってしまった気がするけど、かく言う僕はグラベルバイクにほとんど付けっ放しで使用しているし、外す予定もない。
ここからは、カーボンエアロボルトオンが役立っている場面と、その理由を書いていきたい。
4-1.グラベルバイクのエアロ化によい
僕が使っている一番の理由は、グラベルバイクとの相性が非常によいと感じているからだ。
僕の乗っているバイクはBombtrackのHook EXTというモデルで、多くのグラベルロードと同じくアップライトなポジションに、幅広なフレアハンドルをつけている。この組み合わせは未舗装路を走るときには好都合だけど、舗装路では空気抵抗が大きくて使いにくい。特にグラベルに向かう河川敷の平坦や国道のなだらかなアップダウンは、ストレスが大きいのだ。
そこにRidefarrのカーボンエアロボルトオンがあると、気持ちよくその区間を走ることができるし、脚も温存できる。はじめは軽量なDHバーを使用することも考えたけど、アップダウンの多い山間部でDHバーは重いうえ、ハンドリングが悪くなるからオフロードでは邪魔になる。そんなDHバーの欠点をRidefarrは見事に解決していて、グラベルライドにぴったりという訳だ。
また、ギア比によるトップスピードの低下をカバーできる場面もある。
僕のバイクはフロントシングルの40×11-42T。下りは簡単に回しきってしまうけど、そこからの加速をエアロポジションを取ることで補えたりする。下りこそ空気抵抗が物をいうので効果が現れやすいし、しっかり握れてブレーキ位置も近いから危険も比較的小さい。
*なぜ「グラベルバイク」か?
少し補足するなら、僕が相性が良いと感じたバイクは「グラベルロード(的な乗り方・ポジションのバイク)」であって、MTBやロードバイク(的な乗り方・ポジションのバイク)だと、またちょっと話が変わってくるとも思っている。
というのも、MTBだとハンドルがより高く近くなる為にポジションが窮屈だし、エアロ化の効果は速度が遅いほど小さくなるからだ。一般的なMTBの速度域においてRidefarrがもたらすエアロ効果は小さいはずで、それよりもブロックタイヤの転がり抵抗や車体重量などを気にしたほうが効果があると思う。
ロードバイクだと、上ハンに腕や手首を乗せるポジション(↑ 画像)のほうが楽だと感じてしまった。ただし、走行の安定性の観点から、何かしらバーを握っていたほうがとっさの対応はしやすいし、その意味でのカーボンエアロボルトオンの導入はアリだと思う。
グラベルロードでもハンドルに腕を載せればよいのでは?とも思ったけど、ハンドル位置(落差と距離)の問題で逆に走りにくく、Ridefarrの方が楽で安定した。また、走行場所が山奥になることが多く、路面が比較的悪くなりがちというのもある。
4-2.手のひらの疲労防止
もうひとつ、役に立っているのが「手のひらの疲労・痛み防止の為のマルチポジション化」。
連日のロングライドや超長距離走行の時には、どうしてもブラケットを握るときにあたる場所が疲労し痛みが出てしまうことがある。ガッタガタの振動を受け止め続けるグラベルライドのときもそうだ。
そんなライドでは、もち手が追加されて手の違った場所に負荷を分散できるのが非常にありがたい。別にエアロポジションを取ろうとか、そのポジションを長時間キープしようとか思って使用するのではなく、あくまで蓄積する負荷を抜くためのもの。
この使い方は、冬季北海道ライド600kmで活きた。この冬の北海道では新たにR250のハンドルカバーを使用したが、それが暖かくてよい反面、ブラケットの握り方を制限してしまって手の疲労感が普段よりも大きくなってしまった。
そんなとき、活躍したのがこのRidefarrのカーボンエアロボルトオン。そもそも寒くて手が冷えてしまうのであまり長時間の連続使用はできなかったけど、それでも手の疲労感を抜くことができた。
まだロードバイクでのロングライド使用はしていないけど、同様の効果を発揮してくれる場面はあるはずだと思う。
5.まとめ
以上、僕なりにRidefarrのカーボンエアロボルトオンをレビューしてみた。
かなりニッチで相性の良し悪しが別れるアイテムだと思うけど、この重量と機能のバランスは一考に価する価値があると思う。
僕が思うカーボンエアロボルトオンの活用シーンは
①グラベルロードの舗装路走行
②連日のロングライドor超ロングライド向けのマルチポジション化
の2つ。特に①の使用方法には気に入っていて、これからも①の用途で使い続ける予定だ。
もちろん違った場面でも活用できる可能性は大いに残っていると思うので、その開拓は読者の方にお任せしたい。情報の少ないアイテムなので、興味を持った方の参考になれば幸いだ。
最後に、製品を提供してくださったAlternative Bicycles様にお礼を述べ、このレビューを終わりたい。
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おわり