ツーリング記

星空キャンプで締めくくり。600㎞の旅路も終了へー2021冬北⑤

北海道で最も高い峠をクリアし、最も寒い夜も越えた。冬の北海道ツーリング、残すところは湖畔のキャンプと駅までの帰宅走のみとなった。

最後の夜も、非常に楽しい時間となった。

<目次>
1.星空撮影で遊ぶ
2.深夜の快走
3.輪行とフェリーで帰宅
4.最後に

1.星空撮影で遊ぶ

夜ご飯を食べた後は、仮眠をとってのんびりした。暖かいご飯を食べてお腹がいっぱいだし、気温も下がって-15℃程度なのでシュラフに包まるには心地よい気温だ。

が、快適な眠りの時間もほどなくして不快感から目が覚める。顔に何やら冷たいものが当たるのだ。

ヘッドライトを付けて辺りを見ると、普段よりも圧倒的に多い量の結露が凍っているではないか。多分、テント内でお湯を沢山作って水蒸気を出しすぎたせいだろう。

一晩過ごすとテント内が真っ白になるのは日常茶飯事だが、今日はそれが更に毛の様に発達し僕の寝息でプラプラと揺れ、しまいには顔に降り注ぐ始末。シングルウォールの簡易シェルター故仕方のないことながら、流石にちょっとこれは耐えられない。

折角いい気分で眠っていたのに台無しだ、ため息をつきながら霜を払いのける。作業がひと段落すると、いつもの様に寝転がりながらジッパーを開けて空を見上げた。シェルターの出入り口は頭のすぐ横にあって、シェルター自体が狭いのでここを開ければ寝たままでも空が見えるのだ。

……そこには満天の星空が広がっていた。

(ちょっとボケしててすみません……)

思わず再びため息をつく。今度は感嘆の方のため息を。

こうしてシェルターから頭だけ出して、一人で空を見上げるのが好きだ。

冷え切った空気を吸い込んで、ゆっくり深呼吸をする。ミノムシみたいなシュラフの中だから「大の字」とはいかないけど……雪面に横たわって空を見て、白く凍っていく吐息を眺める時間は、何ものにも代えがたい気持ちよさがある。

折角なので、一眼片手にのそのそシェルターを出て星空撮影も頑張ってみたり。

雪面が明るすぎて星が十分に写らなかったのは残念だけど、こうして撮影という遊びが出来るのだから、一眼を持ってきてよかったと思う。厳しい環境向きでないエントリー機ゆえ、すぐに電源が落ちてしまうのはご愛敬だ。(笑)

 

 

2.深夜の快走

さて、今日の予定は帯広駅まで70㎞程走り、苫小牧まで輪行ののち、フェリーで仙台に帰宅すること。

お決まりの「霜で凍り付いたバイク」の霜を払いのけつつ、パッキングしていく。

「これはそこで、あれはあそこで……」と、装備ごとに仕舞う場所が決まっている。自分なりに一番使いやすく・走りやすいバランスになる組み合わせがあって、そのルールに忠実にバイクを完成させていくのだ。こうして初めて、気持ちの良い走りが出来る。

最期に、ガーミンGPSの電源を入れてスタート。

まだ日の出まで4~5時間はあるけれど、今日は都市へ向かう主要道も走るのでそのくらいが良い。天気も悪くなる予報だから、交通量の多い時間に走る訳にはいかないのだ。

真っ暗な湖畔を抜け、温泉街とトンネルを通過し、士幌の酪農地帯を通り……と昨年も走った道のなつかしさを感じつつ、エアロバーを握って淡々と回す。下り基調で信号が少ないのもあり、ペースはスパイクタイヤとは思えないほど良い。

深夜に多いんだけど、ロングライドでは無心で淡々とペダルを回している時間がある。このときもそれで、道中の記憶が殆ど無いが、淡々とペースを刻み続けていた。

気が付けば星々は分厚い雲に覆われて、夜明けもどんよりとした灰色で迎えられた。雪もちらついてきて視界がやや悪いが、既に60㎞以上走っているので余裕はある。最悪歩道を歩いても間に合うので、安全に最大限の配慮をした走行を心掛ける。これから交通量も増えるころあいだ、早い時間の出発をしておいてよかった。

帯広市街に入ると、最後の難所であろう凹凸のアイスバーンのお出迎え。この凸凹に凍った塊が幅の細いマラソンウィンターと相性が悪く、タイヤをとれらそうで怖いので慎重にラインどりをする。

この危険な路面とも、もうすぐおさらばとなる。ここで事故を起こしてしまっては元も子も無いので、焦らず安全にラストスパートを……。

そして、ゴール!

釧路を出発してから約600㎞、獲得標高6,700mの旅路が終了した。過去2回の冬季北海道ライドに比べれば距離的にも日数的にも短かったが、やはりこの土地のロングライドにはいろいろドラマがあったなあと思う。

何はともあれ、ここまで無事故で走り続けることが出来て良かった。

ふと見れば、ホイールが凍ってディープリムになっていたり(笑)

バイクに凍り付いた雪を落し、さっさと輪行準備を。積載が多いと輪行袋に入れるのも一苦労なので、電車を逃さない様にさっさと作業を進めた。

 

 

3.輪行とフェリーで帰宅

特急列車に乗り込み腰を下ろすと、いよいよ「終わったのだ」ということが実感される。

昨晩は睡眠時間が短かったので列車に揺られて微睡みつつも、ここまでの旅路をひとつずつ振り返ったりした。

『快適で楽しい走りをしよう。』

過去の厳しさが前面に出ていた冬季北海道ライドとは違い、今回はそんな目標でライドに出かけた。Bombtrackのアンバサダーという立場も加わり、サポートして頂けた理想的な装備での走りが出来た。

距離やスピードではなく内容として、今までの自分の構想が正しかったことを証明できるシーンが沢山あり、満足と納得のいく6日間だった。

(↑)苫小牧でほっきご膳を頂いた。

これだけのサポートを受けられたこと、応援をして頂けたことを、いちサイクリストとして誇りに思う。まさが自分がこんな風になるなんて、思ってもいなかった。

そして、サポートを受けての初めてのライドを無事に終えることが出来て、安堵している自分もどこかにいた。

ほどなくしてフェリーに乗り込み、仙台へ帰宅。またここでも、あれこれと考える。

今回は快適で楽しみながらの走りが出来た訳だけど、それは裏を返せば「冒険度合いが低い」ということでもあるかなぁなんて。いや、一般的なツーリング観から言えばかなりアドベンチャー寄りだとは思うけど、それでも僕にとっておおよそチャレンジングな内容ではなかったのも確かだと思う。

翌朝、潮風に当たりながら、宮城の街並みを眺めふと思う。僕のこの先のライドはどこへ向かうのだろう?と。

国内で最も厳しいロングライド環境は冬の北海道だと思っていたけど、その中でも割と普通にキャンプで自活ロングライドが出来るのだ。いや、まだまだそんな自惚れを言えた立場でないのは重々分かっているのだけど、僕自身の主観的な感覚として険しさが一段消えたのも事実。

次は何をして遊ぼうか……。着艦のメロディーが流れ、いよいよこの旅は終わりを迎えた。

 

 

4.最後に

この冬季北海道ライドの連載を最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。なかなかブログ執筆が進められず、完成まで時間がかかってしまい申し訳ありません。

もし僕のブログをご覧になって冬の北海道ライドに興味が沸いた方がいらっしゃれば、こちらのまとめ記事内のリンクや、過去の冬季北海道ライドの記事で注意点やノウハウについて書いているので、何か参考になれば幸いです。

厳しくもあり、美しくもある……そんな世界を少しでもお届けできたなら、そしてそれが皆様の「楽しい」に繋がってくれたなら、とても嬉しく思います。

 

今回のライドのまとめ記事はこちら(↓)

 

おわり

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