ツーリング記

快晴の太平洋シーサイドライン!冬の道東170㎞ー2021冬北①

騒がしくて、よく眠れない夜だった。

シェルターを揺らす強風は壁をバンバン叩くかのようだし、鹿が付近をうろうろしていたらしく時折雪を踏みしめる足音もした。

うなされる様に携帯のアラームで目を覚ます。どうやら起きる時間らしい。冬の北海道ライド初日は、今一つな目覚めから始まった。

<目次>
1.一日のはじまり
2.太平洋シーサイドライン
3.乱れる氷とFDの凍結
4.温泉で一息

1.一日のはじまり

シュラフの紐を緩めて身動きが取れるようにし、もぞもぞと腕を引っ張り出す。買っておいた朝食を食べるためだが、こうしてシュラフに包まったまま冷たいパンを頬張るのも、どこか懐かしさすら感じるのが不思議だ。(笑)

天気予報をチェックし、行程を確認し、シュラフを袋に詰め込み……と撤収作業をすすめていく。できることならずっとシュラフでぬくぬくしていたいけど、それじゃ走りたい場所を走れない。こんなツーリング中にも『お布団峠』が存在する。(笑)

季節がら、また緯度が高いため日の出は遅く、真っ暗な中での作業になる。ヘッドライトの明かりを頼りに1つずつパッキング。忘れ物チェックを済ませたら出発だ。

海沿いのアップダウンをこなすうち、暗闇だった空がだんだんと色づき始めた。

待ちわびた日の出の瞬間……。寝不足気味の身体が一気に目覚め、さあ今日も頑張ろうという気になる。ツーリング中の太陽の偉大さったらない。

あぁ……美しい。

この辺りは海沿いでも木々が少なく、『草原×海』という、天国のような景色が広がる場所。

それがこの季節は、『雪原×海』に変わるのだ。そこに朝焼けも加えると、もう要素がカンストして表現が追い付かない。

 

 

2.太平洋シーサイドライン

すっかり明るくなったところで、太平洋シーサイドラインの本番が始まる。今回のライドの外せないポイントの1つで、夏の北海道一周のときにも最高の道だった場所だ。

緩いアップダウンをいなし、海を眺めたり森を抜けたりと、景色の移ろいが激しい。

装備を一新しバイクを軽量にしたお陰か、アップダウンがある道でも軽快に走っていける。気温も上がってきて、融雪剤がまかれているであろう場所は雪が解け始めていた。

川が湾に流れ込む汽水域では、表層が凍りかけていた。日光を反射する無数の薄い氷が、ゆっくりと眼下を流れていく。

この時期でもウミネコは元気なようで、あの鳴き声を響かせていた。

霧多布の辺りに差し掛かると、突如としてt草原の先に断崖絶壁が現れる。その景色の目まぐるしさとスケール感に驚く。

海の反対側には、霧多布湿原。当然、この時期は凍っている湿原であるけど。

展望台からパシャリ。うん、これもまた綺麗だ。

道東は「雪に覆われた世界」というより「凍り付いた世界」という方が合っていて、薄っすらと青い光を放つ氷と、海川の水の青さと空の青さ……いろんな「青」が混ざり合う。

海面と雪面からの照り返しが眩しい。感度を下げても、知らぬ間に写真が明るくなり、逆光のバイクは陰になってしまう。

折角近くまで来たので、霧多布岬も回収。特に何がある訳じゃないけど、何となく、こういうランドマークは回収したくなるのはサイクリストの性だろうか。

さて、ここからは北上し、弟子屈を目指す。余裕があればこの先の道(特に道道142と988が交わるあたり)も走りたかったんだけど、晴天は明日の午前までらしいので先を急ぐことにした。

 

3.乱れる氷とFDの凍結

内陸部に入り、牧草地帯をひたすらに走る。ここからは距離を稼ぐ走りになる。

が、そう上手くは事は運ばず、路面の悪さに苦しめられた。

昨日は気温が異常なくらい高かったらしく、路面の雪がかなり解けた様子。そして溶け切らなかったシャーベット状の凸凹が、そのまま凍り付いた路面になっていた。

写真だと伝わりにくいかも知れないけど、大きな砂利がゴロゴロ落ちているような路面で、しかもその砂利がガッチガチに凍っている。

40c程度のタイヤじゃとても走るのは無理だし、かといって凍っていて滑るから歩くのも難しい。ゆっくり走っては脚をついて……という地道な作業を繰り返して何とか先へ進んでいく。

と、ここでフロントディレイラーが凍結。太平洋シーサイドラインで雪解け水を跳ね上げていたせいだろうか。アウターに入ったまま凍り付いているので、レバーをいくら操作してもインナーに落ちない。

現状の平坦路であればそれでも問題ないけど、明日からは必ずフロントの変速が必要になる。ここで問題なのは、一度凍ってしまうと回復が難しいという点。お湯で溶かすことは出来ても乾く前に凍ってしまうから意味がないし、かといって溶かさないと力ずくで動かすのも無理がある。

いつの間にか、氷の泥除けも生成されていたり。(笑)

なかなか順調にはいかせてくれないけど、自然は至ってマイペースで、やはり嬉しいサプライズも残してくれていた。

苦しかったので心を無にして走っていると、道路わきに居た2羽の大きな鳥が飛び立つ。

—―タンチョウだ。

白と黒の大きな翼が広がり、遠くの丘へと降り立った。道東にしか生息していない、一度は絶滅したとさえ思われていた鳥。雪景色の中見るのは初めてで、なるほどこれは絵になるなと思った。夏の湿原にたたずむ姿も綺麗だったけど、雪景色の中は一層映える。

どこまでも続くかの様な直線。このスケール感を走るのが、僕は好きだ。

凍ってしまったFDも、お湯をかけて溶かしトイレットペーパーでなるべく綺麗にふき取ってみた。それでも走ると凍ってはしまったけど、右足でつつけばインナーに落とすことは出来る様になった。うん、これなら明日からも大丈夫そう。

 

4.弟子屈で一息

薄暗くなるころ、今日のゴール地点の弟子屈へと到着。夜ご飯を食べる。

夜ごはんといっても豪華なものではなく、ー10℃の寒空で食べるコンビニ飯。カツカレーを熱々に温めてもらって店を出たのに、凍り付いたフリースを着込んだりなんだりしているうち冷やごはんになってしまった。

悲しい気持ちを冷たいカレーと共に飲み込んで、日帰り入浴で温泉へ。今日もいい1日だったと振り返りながら、身体を温めて再び街を出た。

今日は、しめて170㎞/1,400mUP。一部辛い区間もあったけど、全体としては装備の構成がうまく刺さってくれたので、脚に疲労感はなく明日も問題ないだろう。

さて、明日は去年のリベンジコース。どんあ景色が見られるか楽しみだ。

つづく

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About the author

S.K.

ロングライド&グラベル系自転車乗り。その他キャンプ、登山など。
・身長177㎝/体重68㎏
・北海道一周2,400㎞/8日2時間
・国道4号(536㎞)/21時間37分
・グラベルエベレスティング達成
・冬季北海道1,000㎞……...etc.