ロードバイク用のサドルメーカーで、Specialized(スペシャライズド)はそのラインナップの多様さや品質から一定の地位を築いている。そのサドルの中で完成車にもよく用いられる汎用サドルがToupe(トゥーペ)サドルだ。
今回は、Toupeで最も安価なサドルに当たる「Toupe Sport(トゥーペ スポーツ)」を購入してみたので、インプレ・レビューを書いていきたい。
<目次>
0.購入動機
1.Toupe Sportのスペック
2.インプレ
3.これからの運用
0.購入動機
僕はロードバイクをロングライド用、ローラー用、街乗り用とそれぞれ別のバイクを用意している。当然それぞれにサドルが必要になる訳だが、全てを高価なサドルで揃えるのは金銭的に現実的ではない。ロングライド用のバイクには最高のサドルを付けるとして、ローラー用と街乗り用は消耗品と割り切ってなるべく安価なモデルを使用したかった。
ちょうど街乗り用とローラー用のサドルを交換したい折、興味を持ったのがこのToupe Sportサドルだ。
ロングライド用の方でToupe Sportのもう1つ上のグレードに当たる「Toupe Comp GEL」を購入し、使用感が悪くなかったのでその下位グレードが気になった。多少スペックダウンしても使用感に問題がなければそれで良いので、スペシャライズドのサドルの中でも最安価なこれが最適に思われたのだ。
Toupe Comp GELのインプレ記事はこちら(↓)
Toupe Sportはスペシャライズドのサドルの中で圧倒的に安く、15,000円~25,000円くらいのラインナップの中で約5,000円と破格になっている。スペシャライズドの完成車に多く用いられるのもあってか、状態の良い中古も頻繁に出回っている。価格も出所不明の中華サドルと同じくらいなので、その安さも決め手となって新古品を購入した。
1.Toupe Sportのスペック
さて、まずはカタログスペックの部分からご紹介。
サイズは2種類の展開となっていて、僕が購入したのは143㎜の方。サドル幅は坐骨幅を測ることで決められる。坐骨幅の測り方は、こちらのスペシャライズドのページを参考にどうぞ。
スペシャライズドのオンラインストアには『レベル2パッディング:中密度のフォーム(発泡素材)。クッション性がプラスされた乗り味。』との記載があり、確かにクッション性がありそうな厚みのあるパッドだ。
『レベル2パッディング』というのは、僕が他に使っているPhenomやToupe Comp GEL、Power ARCとも同じパッドの厚みを指す。しかし、実物を見た感触では明らかに厚みとフワフワ感のあるパッドが使用されている。
Toupe Sport(↑)
Toupe Comp GEL(↓)
形状もToupe Comp GELとはかなり違う。座面は曲線の強い仕上がりになっているし、中央に掘られている溝も浅い。特にサドル先端部分の溝は殆どなくなっていて、使用感にも差がありそうだ。
同じ「Toupe」の名を冠してはいるけれど、全くの別物のサドルだと考えてよいと思う。
レールは「スチールレール」と記載されている。他のサドルはグレードの高い順にカーボン、中空チタン、中空クロモリなので、最安価故のスペック。
座面は防水シートで覆われているものの、裏面でビス止められている。他のサドルは側面で圧着?のようにピッタリと成型されているから、この辺りもかなり異なるところ。
サドル裏面のSWATマウント用のネジもない。使う予定はないので特別困りはしないけど、こういうところでもコストダウンが図られているのだろうか?
2.インプレ
さて、バイクに取り付けたら早速実走を。
ローラーや街乗り用とはいえ、性能が気になるのでロングライド用のRoubaixに取り付けて150㎞くらい走ってみた。
結果は微妙……。
サドルがふかふかして気持ち悪いし、サドル先端も溝が浅くせり上がっているので前傾をきつくするとしっくりこない。サドルが柔らかいことは、ロードバイクに乗り慣れていない方や、クロスバイクくらいの緩い前傾姿勢でサドルに体重がかかる使い方なら、逆に丁度良いかも知れないと思う。ただ、それなりにロードバイクに乗った人が使うと違和感が強そうだ。
サドル自体のクッション性が高いお陰か、DHバー使用時の尿道の圧迫感は形状から想像する程強くはないものの、快適とは言えない感触。それなりにアップライドな乗り方をした方が合うサドルなのかなと思う。
今になってオンラインストアの商品ページを見返すと、『まる一日のフィットネスライド、カジュアルなライド、通勤通学などに好適です。』と書いてあり、なるほどその通りの設計だなと納得。
僕には相性が良くないらしく、どうにも気持ちの良い走りは出来なかった。
スペシャライズドのサドルらしく穴あき設計になってはいるので、『特許取得のBody Geometry設計。ラボのテストで、敏感な部分の動脈血流を確保することが実証済み。』(スペシャライズドオンラインストアより引用)という部分については、確かに効果はあるかなと思う。
サドル中央にしっかり座る様な乗り方をすれば安定はするし、その時の尿道への圧迫感は確かに少ない。個人的な感触としては走りへの違和感が前面に出てはしまったけど、純粋な身体への負担を考えれば、この価格でこの性能は悪くはないはず。
結局、Toupe Sportはすぐにローラー行きとなった。
僕はローラーではパッド無しで乗ることが多いので、多少はサドルにクッション性があった方が嬉しいし、乗ってもせいぜい1~2時間なのであまり快適性も気にしない。ガシガシ踏むときは、サドルには触れている程度で体重をかけないから気にしないというのもある。
ローラーで使っても違和感は残るものの、まあローラーならいいかな……というくらい。
3.これからの運用
価格ありきで製品のあれこれを語るのは嫌なんだけど、こうして記事に起こしながら細部を観察していくと、価格が3倍以上もするハイグレードサドルとの違いがより明確になった。サドルの形状、各部の素材、仕上げ、何をとっても別物だ。
実走で本格的に使用する気にはならなかったので、今後もローラーで使うか誰かに譲るかの2択になりそう。
例えばロードバイク初心者で(サドルの純粋な圧迫感ではなく)尿道の痛みに悩んでいる人が居たら、このToupe Sportは安価に解決できる手段かもしれない。その点においてはきちんと作られていると思うので、身近に悩んでいる人が居たら譲って試してもらおうかなぁと思っている。
おわり