ロードバイクやMTBなどでは、ペダルとシューズを固定するビンディングシステムが用いられる。
シマノには2種類のシステムがあって、主にMTBやCXなどのオフロードで用いられる「SPD」と、ロードバイク用の「SPD-SL」。僕はツーリングがメインなので、「SPD」の方を使っている。
SPDシューズは重いモデルが多いが、ロード用シューズ並みの軽量性を誇るSPDシューズ:RX8を購入してみたので、今回はそのレビューをしてみたい。
<目次> 1.購入 2.スペック 3.各部詳細 4.履き心地&サイズ感 5.使用感
1.購入
僕はビンディングデビューしたときからずっとSPDを使っていて、このRX8は2足目にあたる。1足目は昔のモデルなので定かではないが、SIDIの5-FITというMTBレース用のシューズを使っていた。
だいたい3万㎞くらいは走っただろうか。いい加減ソールもボロボロで全体がへたり、ついにはバックルにもガタが…。交換しようにもネジが固着してしまって取れないので、新しいシューズを探すことにした。
僕はもっぱらオンロードのロングライドで、たまにオフロードも行くかな、という感じ。いろいろ総合的に考えて、『軽量』で『ソールが硬め』な2穴SPDシューズをピックアップ。(下の表は購入時点での情報メモ。雑な表ですみません…。価格は当時の実売最安値)
最終的な候補は
・Northwave:Rebel2(サイズ42で実測328g)
・Giro:Cylinder(サイズ43で実測347g)
・Fizik:x5 terra(サイズ43で実測334g)
・Shimano:RX8(サイズ43で実測295g)
カッコ内の重量は、メーカー公称ではなく個人ブログの実測値を記載。カタログスペックでは300gを切るシューズは数あれど、それらはサイズ42の値で、かつちょっと軽めに表記されていることが多い。実測だと数十gも重いことはあるし、僕が使っているサイズ43となると全く違う印象の重量になる。
で、足形やらソールの違いやらBOAダイヤルの違いを考えて、シマノのRX8(SH-RX800)に決定!
2.スペック
カタログスペックをメインに、まとめるとこんな感じ。
・展開サイズ:40~44(ワイドタイプあり)
・重量:265g(サイズ42、片足)
・ソール剛性:10/12(カーボンコンポジット)
・カラー:シルバー、ブラック
・価格:定価28,500円
シマノが『グラベルレース用』を謳う限定モデルで、いつも参考にさせて頂いているブログ「東京大阪キャノンボール計画」さんによればお試し発売の性格がある商品だとか。
価格こそ高いが、作りは確かだろうし圧倒的に軽い。僕は最近グラベル欲が高まっているのもあって、『グラベルレース用』というのがどんなものだか気になったのもあった。
3.各部詳細
僕が購入したのは、ブラックのサイズ43。購入時の写真をメインにご紹介していく。
まずは全体像。織り地のような表現で、薄っすらカモフラ柄が入っている。強く光が当たると目立つけど、それほど主張は強くない。
野暮ったい印象の強いシマノ製品だけど、このシューズは結構カッコいいと思う。かなり僕好み。
SPDシューズなので、クリートを付けた状態でもこの角度で歩行可能。自然なスタイルになるし、クリートがカツカツ鳴ったり滑ったりもしない。
かかと側の点々はリフレクター。昼間は全く目立たないが、夜間には目立ってくれるという嬉しい仕様。
BAOダイヤルは1つ。高グレードのIP1タイプ(逆回転できるやつ)が付いている。
ロードシューズ用BOAダイヤルには2種類があって、逆回転できるIP1と、出来ないLシリーズ(L4,L5,L6)。製品紹介にはたいてい『BAOダイヤル』としか書いていないが、逆回転させ緩ませる方向にも微調整できるIP1か、全開放させもう一度締めこまないと微調整できないLシリーズかという大きな差があるので注意。(BOAの種類は公式サイトのこちらへどうぞ)
つま先側はベルクロ。多少の締め付け感の調整は出来るが、基本的に脱ぎ履きでも閉めっぱなし。足を固定するのは基本的に先ほどのBOAダイヤルだ。
いわゆるフルカーボンのロード用SPD-SLシューズを、2穴SPD用に改造したような感じ。通りで軽い訳だ。
地面と接触する樹脂製の出っ張り部分は、それなりにグリップ感もある。逆に長期使用ですり減りそうな感じも。
インソール裏にはアーチサポートのシム入り。黄色と赤色の2種類が付属していて、購入時には黄色がセットされた状態だった。
僕は本気で踏まないロングライドなら無くていいから外してるけど、短時間にガシガシ踏むときはあった方が足の調子がいいので付けている。
先ほどのシム抜きで、片足実測280g。メーカー公称がサイズ42で265gだから、十分納得できる範囲内だろうか。変に公称値でサバを読まないところが流石シマノだ。
4.履き心地
本当は試し履きして買いたかったものの、東北の田舎でこんなニッチなシューズは見当たらない。シマノのシューズならネット上にサイズ感の情報が沢山あったから、それをもとにダメ元で購入してみた。
僕が以前使っていたSPDシューズはSIDIのサイズ43。以前にFive-TenのMTB用シューズを購入する際にも自分の足をいろいろ測ったが、今回も同じく43で大丈夫と読んだ。因みにFive-Ten(adidas)もEU43。
で、結果はバッチリ。すぐ新古品として売る覚悟もしていたが、これなら問題なさそうだ。
BOAダイヤルを初めて使たけど、確かにアジャスト機能が優秀でちょうどいい締め付け感に出来た。ただ、やっぱりダイヤルが1つだと足の甲の高さや幅の変化に合わせて部分的に締めずらい。例えば「真ん中は緩く、手前はきつく」みたいな締め方が出来ないので、次買うシューズはダイヤルが2つがいいなぁと思ったり。
ともあれ、足形との相性はさほど悪くないらしく履き心地はいい。
今までのSIDIと比較して、足裏から全体を包み込んでくれる感じが強く、心地よいホールド感がある。かかとの部分もカップが深く、BAOを緩めにしても足が浮いたり滑る感じも無し。
ドキドキの第一印象は上々だ。
5.使用感
ロングライドを中心に合計1,000㎞くらい・グラベル込みで走ってみたので、簡単に使用感を書いていきたい。
まず驚いたのが軽さ。今までのシューズと比べて実測で片足87gも軽量化されていて、明らかに違いを感じられた。以前のSIDIもSPDシューズの中では軽い方だけど、このRX8が軽すぎる。
そして、先ほども書いた『足裏から全体を包み込むようなホールド感』が、ペダリング時にも感じられた。今までのSIDIのシューズがかなりへたっていたせいもあるかも知れないけど、こちらのRX8の方が断然走りやすい。踏んだ力がペダルにまんべんなく伝わる感じ。
『ガチガチのカーボンソールはロングライドで足裏が痛くなりやすい』とよく言われるが、400㎞のロングライドも走った感じでは大丈夫だった。BAOがIP1ダイヤルなお陰で、ライド後半に脚がむくんできたとき、走りながら少しずつ締め付けを緩められたお陰だと思う。僕の経験的に、締め付けを出発時のままにしていると足裏に余計なダメージが溜まりやすいのだ。
歩行性能についてはそれなり。ソールはしならないのでスニーカーの様には歩けないが、輪行や食事、ホテル、写真撮影で歩くくらいは僕は全くストレスが無い。ソールの滑り止めも効いているらしく、雨でも滑りにくかったのも嬉しい。
ただし、グラベルを歩くのにはちょっと微妙。やはりソールが硬いのと、カーボン部分に石が当たると滑るからだ。目の細かいダートはOKだけど、ガレた林道なんかには向いていない。ましてや走るのは相当キツイから、シクロクロスとかには不向きというのもうなずける。
そして、カーボン部分は林道の破石で割と傷つく。『グラベルレース用』⇒『SPDシューズで、ステータスを走行性能にガン振り』というイメージで、バイクを担ぐシーンもある走りには向いていない。
細かいところでいえば、上の写真の真ん中やや左に写っているシューズのベロとソールを繋ぐゴム紐が、履く際に毎回ねじれて面倒くさい。「BOAダイヤルは脱ぎ履きが楽」という話も耳にしていたけど、正直ベルクロタイプや3本締め系のシューズの方が、ガバッと履き口が開くので楽だと思う。
実はペダルとの相性もあったらしく、ケージが大きめのPD-A520(画像上)だと足の角度によってはペダリング時にギシギシ音が鳴り、キャッチや可動幅にもちょっと違和感が。先日XTRのペダル(PD-M9100:画像下)に交換したところ、ばっちり調子が良くなったのでこの辺りの相性もありそうだ。
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以上、シマノの軽量SPDシューズ『RX8』をレビューしてみた。最後に気になる点をいくつか書いたけど、総合的にはかなり満足している。
ロングライドやアドベンチャー系ライドがメインで、走り重視のSPDシューズが欲しい方は試してみても良いかもしれない。限定モデルなので入手性が低いのが弱点なので、買えるうちに買っておいた方が良い商品だろう。
おわり