多くのロードバイクで採用されているSTI。機能面では凄く便利なんだけど、自分の手やポジションに合わないと逆にライド中の大きなストレスになってしまう。
僕にとって、街乗りロードで使っている3500系SORAのSTIが全く手になじまず、握り心地が悪い/手が痛くなる/ブレーキもシフトも操作し辛いと散々だったので、思い切ってパテ盛りして根本的な形状から改造してみた。
<目次> 1.使ったもの 2.計画 3.いざパテ盛り! 4.完成と実走テスト
1.使ったもの
まずはどんなパテや道具を使ったのかご紹介。
・エポキシパテ(30gくらい?)
・紙やすり(番手不明、少し粗目)
・水を入れたコップ
・ダイソーのゴム手袋
・ナイフ(最初にパテを切るもの。カッターでOK)
「パテ」と言っても種類がいろいろあって、適切なものを選ぶ必要がある。STIにパテ盛りしている人を見たことがないし僕は素人なので、正直なところ正解が何かは知らない…が、ググった感じだと厚塗りや立体成型が得意な「エポキシパテ」といわれる種類が適しているらしかった。
で、価格や性能を見て選んだのがこれ。
エポキシパテにもいろいろ種類があって、土台となるものの素材や硬化するまでの時間等に違いがある。STIは樹脂パーツが多いので樹脂に使えるもので、初めての作業で不安だったので硬化時間が60分と比較的長いものを選んだ。
他のものは特別書くほどのものでも無いけど、パテは素手で触らない方がいいらしいのでいつもバイクのメンテナンスで使っている100均の手袋を使用(パテにもポリ手袋が付いてくるけど、ピタッとしたやつの方が作業性がいい)。水はパテが手やナイフにくっつかないようにするため。成型で表面をならすのにも使える。下敷きは一応用意したけど、別に無くても良かったかな?という感じ。
2.計画
さて、続いてはパテ盛りの計画を。パテは硬化までの作業時間が限られるので、あらかじめどんな風にパテ盛りをするか見当をつけておく必要がある。
僕が気に入らなかった部分は
①手のひら部分の幅/面
②ブレーキレバーの形状
③シフトアップレバーの大きさ
の3つ。①は根本付近の幅をもっと広くして、平らな面の部分を増やす。今のままだと細すぎて手に食い込んで痛いからだ。
②は外側に角を付けるようにパテ盛りする。これは、レバーの外側がラウンド形状になっているせいで指の掛かりが悪く、ブレーキングが大変だから。11速化したSTI(6800系~)からはブレーキレバーの幅が広がっているお陰で問題ないんだけど、特に旧世代の下位グレードはほぼ円形の断面で悲惨な現状。ただでさえ下位グレードはブレーキが効きにくいのに、なんでこんな握りにくいレバー形状にしたのか疑問なくらい。
③は単純にレバーの押し込み面を広くする。冬で厚手のグローブを付けたり、握り方をいろいろ変えたりしてもシフト操作がしやすいようにしたい。
3.いざパテ盛り!
大体イメージが固まったら、いよいよ作業に移る。
⑴下処理
パテをつける前に下処理としてやすり掛けと、パーツクリーナーでの脱脂をしておく。この方がパテの乗りが良くなって取れにくくなるらしい。
レバーのパテをつけていく部分を重点的にやすり掛け。正解は良く分からないけど、とりあえず表面の塗装面が剥がれるくらいやってみた。
削った粉を払って、パーツクリーナーで綺麗にしておく。これでSTI側の準備は完了。
⑵パテ盛り
続いていよいよパテを取り出し、適量を混ぜ合わせていく。
量は目分量だけど、だいたい1/3~1/4くらいづつ切り取ってみた。足りなければまたつぎ足すつもりでやってみたら、意外にもぴったりの量だった。
A材とB材を同量混ぜ合わせることで、パテが硬化していく仕組み。パテの硬化は化学反応だから、ピッタリ同量な程良い。慎重にナイフで切り出して、手袋をした手で混ぜ合わせていく。
混ぜるとこんな感じ。感触は子供の頃遊んだ粘土の感触そのままで、童心に帰ったようだ。(笑)
ここから60分で硬化してしまうので、なるべく手早く作業を進めていく。手袋にパテがこびり付きやすくて、水を少し手袋に付けながら作業すると楽だった。
イメージしたとおりに、まずは大雑把にパテをつけていく。案外簡単にくっつくし、これと言って難しい感じはしない。本当に粘土遊びをしているみたい。
各所にパテを付けた後は、水を付けた手で表面をならしつつ細かい成型をしていく。こういうのは完璧なものを作ろうとしてもかえって失敗するので、ある程度の適当さをもって作業を進める。硬化した後にやすりで削って整えることもできるし、大枠を作るくらいの気持ちで。
ただし、やすりで削るのも楽ではないし基礎はここで作られるので、手は抜かずにしっかりと。。
パテ盛り作業は両方のSTIを含めて15分程で終わった。60分硬化のパテを使ってみたけど、もう少し時間の短いものでも良かったかも知れない。やすり掛けできる硬度になるまで6時間くらいかかるので、ここから先は一晩経ってから。
⑶やすりで仕上げ
翌朝、作業を再開。硬化を確認すると、全部しっかりとSTIに付いているし形状も良い感じ。ここからやすり掛けで表面を整えつつ、形状を微修正していく。
意外とサクサク削れてくれるので、削って1から形を作るとかは相当大変だが、形状を微修正をするくらいなら容易かった。当然削ると粉がたくさん出るので、マスクか何かをしておくのがおススメ。
表面を滑らかにしつつ、左右のレバーでも若干形状を変えてみた。
右はシフト兼ブレーキなのでブレーキレバー部分のエッジを緩めにしてシフトダウンもしやすく、左はフロントシングルでブレーキのみなので、よりエッジを出してブレーキングが楽なように。
ここからは時間をかけてもOKなので、手を置いたりレバーを操作したりして細かくチェック。うんうん、イメージ通りで凄く良い感じ!
やすり掛けして出た削りカスを掃除して、バーテープを巻き仕上げていく。
冒頭で紹介した①のブラケット根元部分は、5㎜ほどのスポンジゴムとバーテープの切れ端も使って形を整える。パテ盛りだけで作るよりも、この方が柔らかくて更にフィット感が上がるのだ。
4.完成形と実走テスト
⑴完成Before&After
①ブラケットの根元の幅は、僕の好みのサイズ感に。ブラケットは小さい方がいいという人が多いらしいが、大事なのは漠然としたサイズじゃなく「手にフィットするかどうか」だと思う。細い方がいい部分もあれば、太い方がいい部分もある。
Before↑ After↓
元と比べると最大1.3倍くらいの幅に。掌が当たる部分はこのくらいの幅があった方が楽だし圧力が分散されて手が痛くならない。また、パテ盛りで平面も広くしたのでリラックスして手を置ける。
②ブレーキレバーの方もエッジが効いていい感じ。
Before↑ After↓
ちょっとした違いにしか見えないけど、実際に手を置いてみると別物の握り感。
こんな感じ ↓ でエッジ部分に丁度指の関節がかかるので、凄く使いやすい。下ハンでもブラケットでもGood。
③シフトレバーも、押し面が延長されて操作性がUPした。指の大きさ的にこのくらいの方が扱いやすい。
シフトレバーについては、普通に操作しやすいのに加えて、STIの角の部分を持ったときに小指でシフトアップも出来るようになっている。こんな感じ↓
平坦や向かい風の時はこの角を持つと走りやすいんだけど、そのままシフト操作がしづらいのが欠点だった。パテ盛りしたおかげでその欠点も改善。いえい。
⑵いざ実走!
さあ、概ね完成したの早速実走へ!いつもの通学ライドでいろいろな握りを試して使ってみた。
で、どうだったかというと…凄く良い!!
実際に乗車したときの握り感や操作性は室内での感覚と若干異なるので、再度やすりで1㎜弱の微調整を繰り返し完成。写真で見比べても違いが分からないけど、STIはかなり繊細なのでこの微調整がものをいう。
自分の手と握り方にピッタリの形状にしたことで、快適性が数段上がった。もう控えめに言って最高だ。(笑)
今回のパテ盛りで特に良かったと思うのはブレーキのし易さを改善できたことで、レバーのエッジを強調したことでブレーキングが楽になったし、心なしかレバーの剛性が上がってブレーキの効きが良くなった。
快適性だけでなく安全性の向上も出来たので、今回のSTI改造は大満足。パテ自体の本格的な耐久性テストはこれからだが、グラベル込みで約1カ月、合計600㎞くらい走っているけど現状問題ない。STIの形状に不満がある方は、数百円と低予算でお試しできるのでパテ盛りしてみてもいいかも知れない。
おわり