2020年1月、僕は冬の北海道を約9日間キャンプツーリングした。時には気温は-20℃になり冬雪がふきあれる厳しい環境だが、走行を重視する為バイクパッキング装備で挑んだ。
この記事では、その装備を羅列してく形でご紹介。量が膨大な為、使用感や詳細は別記事にまとめている。基本的に商品名にはAmazonなどのリンクを、「レビュー記事へ」には僕の書いた詳細記事のリンクを貼っておいたので是非ご活用を。
<目次> 1.全体像 2.バイクに付いているもの ーバイクパッキング用品 ー小物系 3.テント泊用具 4.ライド中着ていたもの 5.最後に
1.全体像
まずは全体像から。ベースのバイクはGTのアバランチェというハードテイルMTBを、冬季北海道用にドロハン化したもの。
その様子はこちらの記事へどうぞ↓
で、何をどうパッキングしたかというと…
これが
こう。
皆さんいろいろと気になる部分は多いと思うが、まずはベースとなっているバイクからご紹介。中身やバイクバッキング用品の紹介は次項から。
ホイールサイズは27.5、タイヤはシュワルベのアイススパイカープロ27.5×2.25″というスパイクタイヤ。圧接路やアイスバーンは得意で、全く滑らずに走行が可能。普通の靴で歩くよりも寧ろ安全なくらいだ。新雪はファットバイクほどの走破性はなく、5㎝くらいまでならそこそこ走れる程度。
コンポはシマノ11速でロード用とMTB用のミックス。歯数は32T×11-46T。ウルフトゥースのタンパンを使ってMTB用RDをSTIで操作している。詳しくはこちらの記事へ↓
ギア比は2.90~0.695。実際に走ってみて、46Tを使う場面は少なくトップ側が足りないことが多かった。また、DHバー運用時はギア比を細かく調整したいので、やはりツーリングならフロントダブルにしたいところ。ただしFDは凍りやすいことで有名なので、フロントシングルのワイドレンジが無難かもしれない。因みにリアディレイラーは9日間で1度も凍ることはなかった。
ハンドルはリッチーのVentureMaxに、プロファイルデザインのT3+というDHバーを付けている。
雪道はガタガタな凍結区間からタイヤの埋まる新雪、真っ平なアイスバーン、舗装が露出したオンロードまで多様な路面環境が現れる。それらに対応するため、ブラケットポジションはロードバイクと同じに、下ハンはフレアハンドルを活かして幅広に、DHバーで快走路のスピードを確保している。
末広がりなフレアハンドルはこちらの記事にまとめている↓
バイクパッキング用品を付けない状態で、重量は約15kg(パッキング込みで約25㎏)。ベースのMTBが重量級で、ホイール等も激重の完成車付属の鉄下駄のままなのが影響している。正直登りが本当に辛かった。(笑)
ポジションはロードバイクとほぼ同じにしている。乗車時はフロントサスのサグ分2㎝弱沈むので、写真で見るより実際は前傾のキツイポジションだ。
ブレーキはシマノの油圧ディスク。ミネラルオイルは-30℃位の超低温で凍る可能性があるが、実走気温は-15℃前後までしか下がらなかったので問題なかった。凍らずとも引きが重くなるなどの話は聞くが、僕はSTIに硬いMTB用ホースをつないでブレーキの効きを異常に上げているお陰か不満に感じることはなかった。
サスペンションの有無については、総合的にみるとない方がいいと僕は思う。確かにガタガタに凍った路面はサスペンションが威力を発揮するが、登りの重さやドロップハンドルとの相性を考えるとトータルではサス無しの方が速くて楽な気がする。
2.バイクに付いているもの
続いてバイクに付いているバック類や小物系をご紹介。こちらもコメントは簡単な使用感やポイントのみに絞って書くので、詳しくは各装備のレビュー記事へどうぞ。
*写真が凍り付いていて申し訳ないが、使用環境を思い量っていただければと思う。
バイクパッキング用品
フロントバックはトピークのフロントローダー。ドロハンで幅が制限されるので、実質容量4Lくらい。中身は冬用シュラフのみで、ドライバックに空気抜き用のバルブがあるお陰で嵩張るシュラフを小さくすることが出来た。また、ハンドルへの固定を、付属のベルトではなくマジックバンドでDHバーに固定する方式に変更している。これにより荷物の素早い着脱が可能。(詳しいレビュー記事はこちら)
フロントポーチはR250のレギュラーサイズ。容量0.8L。バー系の補給食入れに使っている。僕のお気に入りは凍ったスニッカーズとメントスで、いつも5本くらいはこの中に突っ込んでいる。(レビュー記事はこちら)
トップチューブバックはブラックバーンのトップローダー。容量1L。主に補給食&ライト・サイコンのバッテリー入れだ。他にはすぐに使いたい手元用小型ヘッドライトなども入れ、上部のメッシュ部分にはライド中の補給食のゴミを突っ込む。この位置に大容量のストレージがあると何かと便利だ。
フレームバックはブラックバーンのMサイズ。少し凹ませて使っているので、実質容量約3.5L。モバイルバッテリーやヘッドライト、メインで使う水筒等を入れている。かなりゴツイ作りだが、その分耐久性があり酷使してもOK。長らく僕のツーリングを支えてくれている。(レビュー記事はこちら)
チューブ・ツール缶・予備水筒はフレームにベルトで直接固定。取り付け前にフレーム等の養生と滑り止めを兼ねて、MTB用の廃チューブを巻いている。予備水筒のみ、ダウンチューブ下にミノウラのマルチゲージをブラックバーンのカーゴケージ付属のベルトで縛りつけ、その上に水筒を固定。ダウンチューブ下の場合、余計なダボ穴増設用具を使うより、確実に縛れるベルトで直接縛った方がトラブルがなく軽量で、他の場所へ流用するなど出先での潰しも効く。
実はこのオレンジのベルトが超優秀で、チューブを固定しているのがVoile(ボレー)ストラップ、それ以外がブラックダイヤモンドのスキーストラップだ。
どちらも登山系でスキー板などを固定する為のベルトだが、バイクパッキングでも最強のギアとなる。Voileの方がすべすべで扱いが楽、ブラックダイヤモンドの方が滑らず固定力は高い。
これらのベルトは固定/開放が早くて簡単な上、固定力抜群で緩まず、耐久性もある。バイクパッキングにおいて理想的なベルトだ。僕がようやく辿り着いた正解で、とにかく超オススメなので買って損はないはず。(レビュー記事はこちら)
サドルバックはブラックバーンのシートバック。容量11L。主にテント泊用具一式と着替えが入っている。(レビュー記事はこちら)ここにもオレンジのベルトを巻いているが、予備的なもので特に意味はない。スマホ用三脚やワイヤー錠を適当に挟んで固定したりしていた。↑の写真で緑色の棒はテントのポール、バック上にワイヤー錠、後部にはおにぎりリフレクター。
サイドのドライバッグは、どちらもAmazonで買った適当なもの。容量5L×2個。この位置はバイクを立てかける際に傷つくので、耐久性があるのが望ましい。このバックは生地が分厚く重たいが、防水性があり簡単には穴が開かない分厚さなので安心して使っている。
固定方法は左がこれを改造して2個付し、そこにブラックバーンのカーゴケージをつけたもの。右がトピークのベルサゲージにベルトのみブラックバーンのカーゴケージ付属のベルトを使ったもの。(ブラックバーンのカーゴケージのレビューはこちら)試しに左右異なるものを使ってみたが、どちらも不満無く必要十分な性能だった。
フォークへの固定具はこちらの記事を参考にして欲しい↓
小物系
DHバーへの固定のため、Volt50という昔のリアライト用ブラケットを流用している。
DHバーとライト、サイコン、フロントバックの併用の工夫はこの記事にまとめているので、詳しくはこちらをどうぞ↓
Voltシリーズについては-15℃でもきっちり動いたので、極寒ライドをする方にもおススメできる。当然バッテリーの消耗は激しいが、カードリッジ式ですぐに交換できるのもGood。一体型だと数時間温めながら充電という超面倒な作業をしなくてはならない。
サイコンはGarminのetrex30xをメインに、サブでキャットアイ のものを。残念ながら-10℃以下だとキャットアイのものは正常に動かなくなったので、基本Garminのみで運用した。Garminの方は電池の消耗が激しいが、動作はほぼ正常だった。
リアライトはomni5とomni3。そしてバーエンドに赤セロハンで改造したVolt400XCをつけている。降雪時は視界不良になるので、なるべく光量を確保する工夫だ。これらも超低温下でも動作はOK。
また、車体左側やホイールの赤/黄色のテープは全て反射テープ。スポークにはこの反射材も追加で取り付けてある。ヘルメットにも尾灯、自分は反射ベストを着ていた。冬の北海道に自転車がいるなんて思っているドライバーは居ないので、とにかく目立つ様にした。
バッテリーはAnkerのモバイルバッテリーを合計で50,000mA、Volt用の予備カードリッジを3本、乾電池単3/4/CR2032を4つ程度。スマホは予備と合わせて2台持ち。
寒冷地ではバッテリーの消耗がとにかく早いので、なるべく余裕を持って用意する。また、スマホの充電ケーブルは各種2本ずつ持つ。これはスマホ/バッテリーをポケットやシュラフに入れて暖めながら充電するので、ケーブルが無理に曲がって断線するリスクが高いからだ。
補給用のボトルはサーモスの水筒2つ。(↑を1本ずつ)メインが750mlのもので、サブに500ml。基本750mlの方だけを使うが、補給の間隔が空く時は500mlの方にも適量補充した。当然、普通のボトルでは凍ってしまい使い物にならないので保温力の高い水筒が必須。温かいものを飲んだ方が体力を温存できるので、コンビニ補給の時にお願いしてお湯を頂いて、それを飲みながら走った。
携帯工具などは通常の六角等やタイヤレバー、パンク修理、タイヤブート、携帯ポンプ等。特別なものはない。
ただし、チェーンオイルは通常の走行距離以上に気を遣って補充する。それは融雪剤の影響でギア周りが錆びやすいからで、雪道は心なしかチェーンがギシギシになるのが早い。ロングライドのチェーン管理についてはこちらの記事をどうぞ↓
3.テント泊装備
ここからはバイクパッキングしてあるテント泊用具のご紹介。こちらも詳しくはレビュー記事へ飛んでいただきたい。
シェルターはモンベルのU.L.ドームシェルター1型。とにかく軽量コンパクトな自立型シェルターだ。モンベル的には「過酷な使用は想定していない」らしいが、僕は夏から冬までこいつを愛用している。積雪と風よけ、ファスナーの凍結に注意すれば問題なく使える。
因みにこれは旧製品で、現行品は僕が感じている問題点を克服している様なのでかなり良さそう。詳しくはレビュー記事を執筆中、近日公開予定。
シェルターの下にはモンベルのグランドシート。専用品は売られていないので、ステラリッジ1型用のものを流用。シェルターの底が凍りつくのを防いでくれる。
マットはSeaToSummitのウルトラライトマット。サイズはレギュラー。恐らくこの手のマットの中で最小&最軽量で、バイクバッキングとの相性は最高だと思う。ただし、断熱性は低い。僕は無理やり冬でも使っているが、断熱性に乏しいのでオススメはしない。(レビュー記事はこちら)
シュラフはモンベルのダウンハガー800#1(もう売っていないらしくリンクは900FP)。コンフォートが-4℃、リミット-11℃。これにモンベルのゴアテックスULシュラフカバー(もう売っていないらしくリンクは同等品)を併用している。
外気温は時に-20℃位になったので、その時は寒さを感じ夜中に目が覚めた。本当はより暖かい#0のシュラフが良いが、自分がダウンジャケットを着込む事等で対応している。体力回復のためもっと暖かいシュラフをおススメしたところだが、厳冬期用シュラフなど単純にサイズの大きいものはバイクバッキングにおいてネックになるので注意。同じ保温力なら、装備を分散させた方が自由度の高いパッキングが可能になる。
ダウンジャケットはモンベルのアルパイン用。800FPのダウンモデル。これがかなり暖かく、日常生活では出番がないほどだ。これのお陰で寒い夜も寝られていると思う。
テントシューズはマジックマウンテンのもの。650FPのダウンモデル。テントシューズは自転車界隈の方には馴染みがないかも知れないが、真冬のテント泊では防寒の為に欠かせない存在だ。雪の上もそのまま歩けるので便利。
火器はジェットボイルZIP。ジェットボイルは湯沸かし専用機だが、500mlを1分40秒で沸かせる上にガスの消費も少ない。僕はインスタント系の食事がメインなのでこの方が都合がいいし、雪を溶かして水を作るのも早い。
その他ライターやトイレットペーパー、ヘッドライト、歯ブラシ、テントやマットのリペア用品、簡易タオル、救急キット、非常食、インスタントコーヒーなども持っていた。
4.ライド中のウエア
続いて行動中に着ていたウエア関連を。僕はかなり汗っかきなので、とにかく汗をかかないことに気を遣った装備構成になっている。行動着は「寒くない」もの、就寝着は「暖かい」ものというのが基本。下の写真が基本系のすべて。(寝るときも同じもの+上記ダウンやテントシューズ等を併用している)
インナーは上がモンベルのジオラインM.W.、下がジオラインEXP。汗の排除を優先させてウールではなくジオラインを選んでいる。とにかく汗冷えが深刻な問題になるので、インナーにはこだわった方がいい。また、ジオラインは長期使用でも臭くなりにくいという特徴もある。3,4日着っぱなしでも臭くはならなかったのが驚き。
中間着は上のみで、モンベルのクリマエアフリースジャケット。厚手のフリースなので暖かく、ヒルクライムや0℃近い日中は脱いでいた。
アウターは上がモンベルのフレネイパーカ、下がモンベルのアルパインパンツ。どちらもいわゆる「ハードシェル」で、保温材は入っていないが防風/断熱性に優れる。ゴアテックスなので汗抜けもgood。また、フレネイパーカはポケットの収納力が凄まじく、500mlのペットボトルも余裕で入る。補給食や脱いだ帽子・ネックウォーマー・ゴーグルなどを収納しておくのにもってこいだった。
帽子はカステリの冬用キャップとモンベルのフリースキャップを使い分け。汗をかく登りはカステリで、寒い下りはモンベルという具合だ。
ネックウォーマーはメリノウールのBuffを常用しつつ、オレンジの厚手のネックウォーマー(釣り用具のメガバスのもの)を状況に応じて併用した。Buffはバラクラバ的な使い方で、下りでは吐息で凍るが走りながら体温で溶かし乾かす運用をした。
アイウェアは基本OGKの調光モデル。(レビュー記事はこちら)寒い時やダウンヒルのみスキー用のゴーグルに切り替えた(メーカー不明の家にあったやつ)。
グローブは常に3枚重ね。インナーグローブはモンベルのトレールアクショングローブで、これを脱ぐことは1日を通してまず無い。素手で金属に触れると皮膚が凍って張り付いてしまうし、凍傷が怖い指先を少しでも冷やさない為だ。グローブを取らない癖をつけておいた方がいい。
ミドル・アウターはモンベルのアルパイングローブ。ミドルはウール製で分厚く、アウターは内側がレザーで外側がゴアテックス 。たまたまレザー部分はスマホ操作が可能だったので、食事で箸を使う時以外これも脱ぐ事はほぼなかった。(練習して、このまま靴紐を結んだりテントを設営したりもする)
シューズはAsoloの登山靴(多分もう売っていないモデル)。厳冬期登山用にはさらに分厚いモデルもあるので、冬でも使える登山靴の中ではライトなモデルだ。靴下はモンベルのメリノウールの超厚手。靴がライトな分靴下は分厚くする必要があった。
足元の青いやつはスパッツという登山用具。雨や雪が靴へ侵入するのを防ぐもので、モンベルのアルパインモデル、ゴアテックス製。冬季北海道ライドでも、路肩移動やテント設営では足が雪に埋まるシーンも多いし、裾の保温性も上がるのであると便利。
因みに下着のパンツは夏のスポーツ用のものを使っていて、自転車用のパッドの類は無し。パッドは汗抜けが悪くなるし、朝晩に脱ぎ履きで寒い思いをしたくないからだ。走っても1日200km程度までの計画なので、僕はその位なら無くても大丈夫。
その他、R250の反射ベストを常に着用し、カペルミュールのサコッシュを併用する事が多かった。サコッシュは中間着のフリースを脱いだ時に入れたり、補給食を沢山買い込んだ時に入れたりした。
5.最後に
以上、僕が冬季北海道ライドで使ったバイクパッキングギア/ウエアを一覧にしてみた。バイクパッキングなので、装備はとにかく絞る事を念頭に選んでいる。容量は全体で約30L程度、重量10kg強に抑えた。
これは自論だが、「念のため〜」と言って余計に装備を追加するのは良くない。装備は一つ一つ明確な使用場面と役割を与えて選ぶべきで、それが無いものはただの重りで足枷。無い方がむしろ安全だ。
それに、こういう基準で装備を選ぶと想定環境が明瞭になって、自分がどんな環境までなら耐えられるかがハッキリする。大丈夫な時に自信を持って「大丈夫」と言えるし、そうで無い時は悔いなくスッパリと「撤退」の判断が出来るのだ。これが安全の為に超重要。
とはいえ未体験の世界に挑む時は、なかなか想定を明確にするのが難しい。だから、過去の自分の装備を記録して他人と比較したり、余裕を持った予行演習でチェックして本番に挑むのをお勧めする。この記事もあくまで僕の場合の一例に過ぎない。皆さんの挑戦の参考の一つにして頂ければ幸いだ。
おわり