前回まではこちら
真っ暗な中目が覚めた。
時刻は04:00。左腕につけている、Luminoxが教えてくれる。この時計の針のやわらかい明かりは、いつも僕に元気をくれる。
山ではないとはいえ、気温は氷点下。シュラフの中で、もぞもぞしながらご飯を食べる。ボトルの水は相変わらず霧が峰から凍ったままだ。
さっさと撤収し、高岡を目指す。
が、途中でVolt800の台座部分がぽっきり。ああ、ここライドは損失が多い。サイコンは吹っ飛ぶし、テントに穴あけるし、スマホもライトも壊れかけた。(実は昨晩テントをポールで貫通し、スマホは充電端子が曲がってしまった)
壊れたものは仕方がないと、気を取り直して進む。自転車に乗っていれば、その時間と距離が解決してくれる。
さっさと走り終え、156号線へ到着。あとはこの道をまっすぐ走るのみだ…。
ここまでの疲労がたまってか、アップダウンが多いこの道に、じわじわと脚が削られていく。交通量が少ないのが幸いで、マイペースにゆっくりと走っていった。脚はパンパンだけど、天気も良くて気持ちがいい。
そして…到着!
しかし、そこにあったのは夢に見ていた雪景色の白川郷ではなく、綺麗なアスファルトに覆われた白川郷だった。泣
ああ、残念。
期待に胸を膨らませてここまで走ってきただけに、ショックも大きい。でもこればかりはどうしようもない。モバイルバッテリーも尽きてしまっていたので、ネットカフェに行くために、山菜そばを頂いてさっさと金沢へ向かうことにした。
途中写真を撮ってもらいながら、少し話をした女子大生2人組。
「どこから来たんですか?」
「横浜からです」
「え?すごいですね!(引きつった笑顔)
日本一周してるとかですか?」
「いえ、来たかったから来ただけですよ。」
「あ…そうなんですね!(ドン引き)」
…うん、別にいいさ、理解されなくたって。中国人観光客にまみれたバスの窓からじゃ見られないものを、僕は見て、感じてきたんだ。
久しぶりに屋根と壁があるところで寝れるという期待に身を任せ、金沢へ走った。ああそうだ、寝る前に温泉にでも入ろうか。気づけばずっとお風呂にも入っていなかった。
18:00ちょうどに、金沢駅到着。自転車で来るのは2度目だ。
調べておいた温泉に入り、服を洗濯してさっぱりしてから、ネットカフェへ。暖かい場所で寝られるって、本当に幸せだ。
ネットカフェの中で、天気予報とにらめっこしながら考えた。どうもこの後気温が急上昇するらしく、雪ではなく雨が降るらしい。雪は濡れないからいいけれど、この時期の雨は最悪だ。
この後の予定としては、残していた能登半島を一周するか、日本海側を走り九州まで行くか。雪景色の能登半島を走りたかったんだけど、それはここまでの道で無理なのは明らかだった。そして九州まで行くにしても、ウェアが濡れて着替えもないまま、5℃の夜を耐え抜く自信はない。
別に濡れて着替えがなくたって、走り続けられれば寒くないから問題ないんだけど、僕にその脚力はなかった。
…帰るか。
そう決めて翌朝は市内をふらふらし、ラッシュ時が過ぎるのを待って東京まで輪行。
あそこで「とりあえず1000km走りまーす!」なんて言える脚力が欲しいもんだ。帰ったらまたトレーニングしよう。
なにはともあれ、当初の目的だった霧が峰、美ヶ原、白川郷はクリアした。雪景色の中も走れたし、またひとつ、愛車との思い出を作ることが出来た。
ああ、疲れた。終わりと決まると、どっと疲れが出てくる。
次はどこへ行こうかな?スパイクタイヤを脱げば、もっと遠くへ走れるはずだ。そうだな、紀伊半島あたりへでも行ってみようか…?
そう考えながら、僕は新幹線で眠りに着いた。
・走行距離:760km
・獲得標高:8877m
おわり(ロードバイク雪上ライドの記事一覧はこちら)