数あるBBの規格の中で、比較的新しいものに『T47』がある。少しずつ採用例が増えているものの、まだまだマイナーなBBだろう。
僕の所有するBombtrackのグラベルロードもT47のBBを採用しているが、情報が少なく困っていた。そこで、T47に関する話や適合するBB、必要工具などを、僕の調べられる範囲でまとめていきたい。
<目次> 1.T47ってどんな規格? 2.インターナルorエクスターナル 3.対応クランク 4.主な製品&工具 5.工具は何を買えばいい?
1.T47ってどんな規格?
T47とは、簡単に言うと『フレーム内径が47mmで、スレッド式のBB』だろう。
クリスキングをはじめとする北米のパーツブランドが、共同で発表した規格らしい。「圧入式BBのサイズで使える、スレッド式BB」とでも言おうか。
T47のメリットは、メンテナンス性の高さとクランクの選択肢の広さ。スレッド式なのでBBの着脱が用意かつフレームへのダメージが少なく、24mm~30mmまで、様々なクランクに対応していて大抵なんでも使える。
BB規格は基本的に、①フレーム内径、②フレームシェル幅、③スレッド(ねじ切り)式orプレスフィット(圧入)式、の3つの組み合わせで決まる。T47はフレーム内径が47mmで、フレーム側にネジが切られているスレッド式。
フレームのシェル幅は、ロード用が2種類(68mm/86.5mm)という展開。Trekが数年前に提唱した独自BBは、このT47を用いつつも、シェル幅を85.5mmにしたものらしい。大抵は86.5mm用のBBが流用できるみたいだけど…もう本当に、面倒くさいことは辞めてほしいもんだ。
他にも、MTB用で3種類(73mm/83mm/92.5mm)、ファットバイク用で2種類(100mm/120mm)など、かなりバリエーションは多いらしい。
メジャーなブランドでの採用はまだ少ないものの、グラベル系や個人ビルダーのバイクを中心に普及してきている様に思う。フレームにネジを切る都合上か、クロモリのフレームに多い。僕のバイク『Bombtrack:HOOK EXT』もT47を用いており、初めてこの規格に出会った。
ちょっと詳しい方向けに書くと、サイズはPF30(内径46mm/シェル幅68mm)にネジを切ったやつ。実際に、ネジピッチ1mm/深さ13mmのネジを切ると、T47として使えるんだとか。
2.インターナルorエクスターナル
T47のBBには、ざっくり分けて2つの種類がある。『インターナル(Internal)』と『エクスターナル(External)』だ。
違いは「ベアリングが、フレームの中or外」。その名の通り、インターナルはフレームの内側にベアリングが来る構造で、エクスターナルは外側に来る。
フレームのシェル幅が異なり、ロード用なら86.5mmがインターナル用、68mmがエクスターナル用となる。当然ながらBBの形状が異なり互換性はないので、BBを購入する際には間違いのないように注意が必要だ。
3.対応クランク
T47が対応するクランクは幅広く、一般的なものであればすべてOKだ。
シマノ等の24mmスピンドル、スラムが開発したDUBの28.99mm、サードパーティーに多い30mmスピンドル(386 Evo系)。どれも対応したBBを使えば、使用可能である。
一応現在はどのサイズでもBBは販売されているみたいだから、好みのクランクがあればそれに合わせて変更できる。
30mmスピンドルの場合、多くのT47のBBは、恐らく386 Evo用の幅で制作されている(BB30用のクランクは、386 Evo用に比べてシャフト幅が短い)。386 Evo用のBBでも、内部のスリーブを加工したりスペーサーで調整したりして、インターナルの30mmモデルを68mmのフレームに使えば、BB30で使用できるのかも知れないけど…ちょっとその辺りは不明。一部ブランドでは、BB30用のT47のBBも出しているので、もし必要な場合はお間違いなく。
4.主な製品&工具
では、主な製品をご紹介。実のところ、『いま日本で買えるT47のBB』はかなり選択肢が少なく、数えるくらいしかないと思う。
それぞれ、以下の4点の項目を挙げていきたい。
⑴インターナルorエクスターナル ≒ 86.5mm or 68mm ⑵対応クランク ⇒ 24mm / GXP / DUB / 386 / BB30 ⑶ベアリング ⇒スチール/セラミック ⑷価格 ⇒税込み定価 ⑸専用ツール
なるべく公式サイトの情報を頼りに羅列しているけれど…何か漏れや間違いがあるかも知れないし、価格は参考なので悪しからず。
◎Token(トーケン)
⑴ インターナル / エクスターナル ⑵ 24mm / DUB / 386 / BB30 ⑶ スチール / セラミック ⑷ 6,600円(スチール)/17,050円(セラミック) ⑸ PARKTOOL BBT-27.2 / TF4630-3SPA-2(24mm) TF4630-3SP(30mm) ・公式サイト(インターナル) ・公式サイト(インターナル)
恐らく、最も低価格で、様々なバリエーションをラインナップしているのが『Token(トーケン)』。専用の工具もまだリーズナブルで、とにかく安く抑えたい方には筆頭の候補だと思う。
Tokenは、対応する規格ごとに型番を割り振っている。例えば『T47V24』といった具合。T47の後に続く「V」はエクスターナルのこと、インターナルの場合は「R」が付与される。その後ろの数字はクランクで、「24」はシマノのホローテックⅡの様な24mmスピンドル、他にBB30用の「30」や、386 Evo用の「386」もある。
ベアリングは、通常の「プレミアム」と、セラミックの「TBT」が選択可能。
*下リンクは、386Evoクランク用のインターナル。
◎Chris King(クリスキング)
⑴ インターナル / エクスターナル ⑵ 24mm / GXP / DUB / 386 ⑶ スチール / セラミック ⑷ 30,800円(スチール)/47,300円(セラミック) ⑸ BB Cup Tool ThreadFit T47 24i/30i ・公式サイト
T47の規格創設にも関わっているChris Kingも、もちろんT47のBBを製造している。
Chris Kingについては、今さら僕の口から説明する必要はないだろう。それだけ信頼と実績があり、世界的に人気な自転車パーツブランドだ。高精度なパーツ加工と、豊富なカラーラインナップ(なんと9色!)が魅力である。難点は価格が高価なことだろうか。
クランクにも多様なコンバージョンキットで対応し、スラムが昔使っていたGXPクランク(22-24mm)にも対応するのが珍しい。
*下リンクは、シマノ24mm用インターナル。
◎Seido(セイド)
⑴ インターナル / エクスターナル ⑵ 386(アタッチメントで24mm、DUB対応) ⑶ スチール ⑷ 10,450円(スチール) ⑸ 12/16ノッチ(4,400円) ・公式サイト(BBのページは見つけられず)
Seido(セイド)は、ドイツのバイクブランド「Bombtrack(ボムトラック)」が始めたパーツブランド。リム、フォーク、ハンドル、サドル、ラック等を取りそろえる。
その中で、同社のバイクに用いられているT47のBBやツールも販売しており、日本ではライトウェイプロダクツジャパンさんが代理店となった。Bombtrackのバイクのスペアパーツ的な向きが強いけれど、もちろん規格が合えば他のバイクでも使用可能だ。
日本の通販サイトでは見つからなかったけど、ライトウェイさんはかなり販路の広い代理店(GTやFELT、BBB、Garminなど)で、それらを取り扱っているショップさんなら注文可能なはず。
◎Praxis Works(プラクシスワークス)
⑴ インターナル / エクスターナル ⑵ 24mm / 386 ⑶ スチール ⑷ 8,030円(スチール) ⑸ ソケットツールorレンチツール ・公式サイト(トライスポーツ) ・公式サイト(本国サイト)
Praxis Worksは、アメリカと台湾に拠点を構えるコンポーネントブランド。スペシャライズドの完成車によく使われているので、目にしたことがある方も多いだろう。
T47のBBも製造しており、24mmと30mmのスピンドルに対応している。専用ツールはあるらしいけど、商品を見つけられなかった。
*下リンクはシマノ24mmエクスターナル
◎TNI(ティーエヌアイ)
⑴ インターナル / エクスターナル ⑵ 24mm / DUB ⑶ セラミック ⑷ 15,400~16,720円 ⑸ 専用工具付属? ・公式サイト
痒い所に手が届く、高コスパなコンポーネントブランド「TNI」。日本の代理店「トライスポーツ」さんのプライベートブランドだ。
そのコスパの良さは健在で、セラミックベアリングながらに15,000円ほどの価格と、考えられないくらいの低価格である。また、ワールドサイクルさんの商品サイトには「専用工具付属」の文言があったので、工具も付いてくるのかも知れない。
30mmスピンドルクランク用のBBは販売がなさそうなのが残念なところ。
*リンクは24mmシマノ用エクスターナル
◎Rotor(ローター)
⑴ インターナル / エクスターナル ⑵ 24mm / 386 ⑶ スチール / セラミック ⑷ 8,976円(スチール)/27,280円(セラミック) ⑸ ROTOR UBB TOOL(?) ・公式サイト(インターナル)
コンポーネントブランドのRotorからも、T47のBBが出ている。ベアリングによって色分けされていて、黒いのがノーマル、赤いのがセラミックベアリングらしい。
ツールに関しては、残念ながら詳細が不明。ネットで見つけた「UBB TOOL」はPF30等で用いられているらしく、誤植ではなく共通で本当に大丈夫かは不明…。
*下のリンクは、30mm用インターナル
◎SRAM(スラム)
⑴ インターナル / エクスターナル ⑵ DUB ⑶ スチール / セラミック ⑷ 7,000円くらい? ⑸なし?(画像は16ノッチ) ・公式サイト
SRAMは独自規格のクランク『DUB』に対応させるため、様々なシェル規格のBBを作っている。
T47もラインナップされていて、DUBのクランクを使用しているならSRAMから探してみるのも良いかも知れない。
*下のリンクはDUBのインターナル
◎Ceramic Speed(セラミックスピード)
⑴ インターナル / エクスターナル ⑵ 24mm / DUB / 386 ⑶ セラミック ⑷ 48,950円 / 69,850円 ⑸ BBT-47(16ノッチ?) ・公式サイト
Ceramic Speedは、セラミック製の高回転ベアリングで有名。ロード乗りの方ならなじみのあるブランドでななかろうか。
日本での入手性もそこそこだが、価格はBB1つとは思えない域にまで達している…(笑)
*下のリンクは、24mmシマノ用インターナル。
5.工具は何を買えばいい?
先ほどの項目でも工具をセットで紹介したけど、なるべくBB専用の工具を買っておくのが安心だと思う。もし違うBBに変更するなら、旧BBを外すものと、新BBを付けるものの2つ、という意味だ。
普通は、BBは工具がかかる部分の寸法も共通だから、「T47用」の工具なら使えるはず。T47はノッチ数(工具がかかるギザギザの数)が12か16だから、それさえ合わせれば使えそうに思える。
しかし、僕の手元にあるBBで試してみると、ブランドごとに外径が若干異なり、ノッチ数が同じでも使用できない例があった。
正直なところ、T47はまだ採用例や情報が少なく、よくわからない部分が多い。フレーム寸法やクランク径など、様々なサイズに対応しているのは良いけれど…その反面、BBも工具も製品の種類が増えすぎて、困惑する事態となっている気がする。
同じ「T47」と言っても色々あるので、その辺りに注意しつつ、BBや工具を選んでいただきたいと思う。情報を整理しきれていない記事かも知れないけど、少しでも同じ悩みを抱える方の参考になれば幸いだ。
おわり