自転車に荷物を積むとき、フレームバッグはとても有用だ。使勝手が良く、バイクの走行性能も低下しにくい。
そんなフレームバッグは様々な製品があり、価格もピンからキリまで。今回は、Amazonで3,000円以下という非常に低価格で販売されている「ROCKBROS(ロックブロス)」のバッグを購入してみた。
普段使用しているアピデュラ(価格は4倍くらい)のバッグとも比較しつつ、どんな製品なのか簡単にレビューしていこうと思う。
<目次> 1.スペック 2.各部詳細 3.高級バッグとの違い 3-1.ベルトの位置が謎 3-2.ベルトが微妙 3-3.細部の作り込みが甘い 3-4.全般的な使いやすさ 3-5.「コスパが良い」と言えるのか? 4.まとめ
1.スペック
今回僕が購入したのは、恐らく最も新しいであろうモデルで「フレームバッグ 新型S」というやつ。
この手の製品にありがちな「正式名称が何なのか分からない(そいうかそもそも無い?)」やつなんだけど、とりあえずこれだ。(笑)
・サイズ:41.8 x 16.1 x 9.cm
・重量:実測192g(公称270 g?190g?)
・価格:実売3,000円前後
・Amazonはこちら、楽天市場はこちら
ネットショップのみの販売の様で、僕はAmazonで2,800円ほどで購入。
フレームバッグの相場は安くても5,000円~、高価なものは1万円以上することを考えると、破格の値段だ。
スペックの部分に書いた数値はAmazonの商品ページから引用したけど、実測重量は192gと記載よりかなり軽量だった。海外サイトのスペック表を見ると190gと書いているものが多数だったので、恐らくAmazonの出品情報が誤っていて、ほぼ公称通りの重量だと思われる。
ROCKBROSって何者?
そもそもROCKBROS(ロックブロス)というブランド自体、何なのかかなり謎だった。
タグに付いていた会社名は「Yiwu Rock Sporting Goods Co., Ltd.」。中国浙江省の会社らしく、従業員300人超、年商1億ドル以上と、結構な規模の会社らしい。自転車用品を中心に、スポーツ用品も諸々展開しているみたいだ。
2.各部詳細
では、フレームバッグの各部を詳しく見ていこう。
シンプルなデザインで、全体がブラック。両サイドに「ROCKBROS」のロゴが入って、反射素材になっている。
防水を謳う製品らしく、防水仕様の生地を縫い目のない圧着加工で成形している。ジッパーも止水タイプ。
バイクへ取り付けるベルクロのベルトが5本付属する。長さは約25.5㎝。
かなり安っぽい質感で、ベルクロのギザギザ部分がぽろぽろと落ちてきた。縫製も甘く、新品状態でほつれが多々。
商品には保証カードが付属していて、不良品への対応が書いてあった。実際にどこまでのサポートが受けられるかはさておき、内容としてはきちんとしているようだ。
バッグの荷室は左右に2か所で、右がメイン荷室。左側はマチのない小物入れだ。左右を仕切る壁がオレンジ色になっていて、内部の視認性を高めてくれる。この配慮は良いと思う。
バッグの底部には形状を保つプレートが入っているんだけど、なぜかベルクロのふわふわな面が付いていた。
バイクへの固定は、こんな風にベルクロのベルトをスリットに通して、フレームに巻き付ける。
バッグ側面にはスリットが沢山あり、バイクに合わせて任意の位置に取り付け可能。
幅は6㎝。実際はバッグ中央が少し膨らむのでこれより幅広になるけど、殆どの方は膝に当たることを気にせずに済む幅だと思う。
商品ページでも幅が狭いことをアピールしていて、それには納得。
ロードバイクに取り付けてみた。
フレームサイズは54で、通常のボトルケージの位置でも600mlボトルならギリギリ2ボトルに出来そう。必要に応じてウルフトゥースのB-RADなどを用いれば、サイクルボトルとの共用も難しくない範囲だと思う。
(↓)こんな風に、シートチューブのボトルケージにもボトルが入る。
数十㎞使用してみた感じだと、フレームバッグとしてちゃんと成立しているし、荷物を運搬するだけならこれといって問題は感じなかった。前述の通り幅も膝当たりがしにくいし、固定力も問題なさそう。
安いバッグはたいてい耐久性に難があることが多いものの、それはまだ分からないし、正直「え、3,000円弱でコレ買えるの?」と思う製品だった。
3.高級バッグと何が違うか?
では、ここからが本題。僕が気に入っているApiduraのフレームバッグと比較しつつ、違いをあれこれと書いていきたい。
3-1.ベルト位置が謎
ベルトを通すスリットはバイク側面に沢山あるんだけど、どうもこれが「狙ってその位置につけた」のではなく、「とりあえず作ったらこうなった」ように思えてならない。
トップチューブ以外の固定箇所は、上の画像の通り。特に意味不明なのは左上の箇所で、絶対に必要ないでしょという場所に付いている。また、右下の斜めの部分も、どうも収まり悪い。
こうなってしまったのは、スリットを形成する生地を1枚で作り貼り付けるだけにした、コスト削減の結果だと思う。
こんな風に一定の感覚でぐるっと生地が張り付いている。
本来ベルトの位置はバッグの取り付けに最適な場所にするべきで、この構造にするならスリットの位置がちょうどよくなるように調整して間隔を変えるべきだ。しかし、そういう作り込みをせずに張り付けている。
例えばアピデュラのバッグは、必要な位置にだけスリットを設けている。この方がバイクに取り付けやすいのはもちろんの事、生地を減らして軽量化も出来る。
3-2.ベルトが良くない
先ほどもちらっと触れたけど、付属するベルクロのベルトが良くない。かなり安っぽいし、ほつれや崩壊が起きている。
そういう品質もさることながら、この構造のベルトはフレームバッグに向いていない。
上の画像で、左上がROCKBROSのもの、右下がApiduraのもの。ここで注目して欲しいのは「ギザギザ部分の長さ」で、Apiduraの方がかなり短いのが分かる。
実はベルクロでバッグを固定するとき、厄介になるのがこのギザギザの面なのだ。フレームに当たってしまうとフレームの塗装にかなり傷が付くし、側面に飛び出るとウェアの内股に擦れてウェアがボロボロになる。バッグを固定するだけなら問題なくとも、他の部分にかなり支障をきたしてしまう訳だ。
「フレーム内側にギザギザが出る」というのは、下の画像をご覧いただければよくわかると思う。
更に、ベルクロの厚みも違う。ROCKBROSが左で、Apiduraが右。
僕がApiduraが好きな理由の1つでもあるのがこのベルクロで、こちらは非常に薄く密着度合いが高い。対してROCKBROSは分厚いのが分かる。分厚くフワフワなベルクロは、繰り返し使用すると段々ほつれて固定力が落ちるし、末端が飛び出てきてこれまたウェアを傷つける。
3-3.細部の作り込み
結構細かいところだけど、作り込みが甘いなあと思う部分もある。
例えばジッパーを閉じた部分のカバー。
そもそもこのカバーは、ジッパーを最後まで閉めても「どうしても空いてしまう若干の隙間」を覆うことを目的としてつけられている。しかし、ただカバーを付けただけでは、ジッパーを最後まで閉めにくくなるので、結局隙間が空いて意味がない。
じゃあどうすれば良いかというと、(↑)の様に切込みを入れる。これによりジッパーを最後まで閉めやすくなり、かつカバーが効果を発揮して防水性が高まるという訳だ。
ジッパーが安っぽいことは仕方ないし、指をかけやすいジッパータブを付けていることも素晴らしい。でも、この「せっかくやったのに意味がない」のが残念だ。
ダウンチューブ側のベルトがベルクロになっているのも残念。
昨今のバイクはアルミでもカーボンでもダウンチューブは太いものが多いので、長さに対応し易いナイロンテープとラダーロックを使った方が合理的なのだ。更に、ここはフロントタイヤからの泥はねがあるので、ベルクロだと泥が噛んで固定力が落ち、劣化が早くなるというデメリットもある。
3-4.使いにくい
「バイクに荷物を積んで運搬する」という事だけを考えれば、特別問題と思うことは無かった。
しかし、フレームバッグに求められる性能はそれだけではないと僕は思う。ライド中に手が届きやすい特性を生かして、補給食やウィンドブレーカーをサッと取り出したり、邪魔になったウェアや小物をサッと仕舞ったりするのも、フレームバッグに必要な機能だと僕は思っている。
そのうえで言いたいのが、「片手でファスナーが閉められない」という問題。上の画像は真上から撮影していて、片手でファスナーを引っ張るとこんな風にバッグ本体がよれてしまって閉められなくなるのだ。
これは、先ほど書いた「適当なベルクロの位置」にも起因していて、もっとバッグの後ろ端を固定出来たり、シートポストとも固定出来たりするなら結果は変わったはず。この面倒くささがあるので、僕がこのフレームバッグを使うことは目下なさそうである。
3-5.「コスパが良い」と言えるか?
さて、あれこれと書いてきたけど、このバッグを「コスパがいい」と言えるのか?という疑問がある。
何故か「安くてとりあえず使えるもの」をコスパが良いという方もいるみたいだけど、コスパはパフォーマンスをコストで割った比率のこと。つまり、いくら安かろうが性能が悪いものはコスパが良い訳ではなく、ただ安いだけだ。
上を見ず、安易に安いものにコスパが良いと飛びつくのはちょっと違うんじゃない?と思う。ここまで書いてきた通り、ROCKBROSのフレームバッグは残念なポイントも多々ある製品だ。
仕事で利益を出すならさておき、楽しみを求める趣味なのに、コスパ云々と目線を下げるのは面白いんだろうか?
そのうえで僕が思うのは、作り込みが甘くて残念な箇所が沢山あって満足ならないんだけど、それでも客観的には「確かにこれでも、そこそこ使えちゃうもんなぁ」という感想も持っているということ。
例えば、Apiduraのレーシングフレームバッグは僕が「こうして欲しい」と思ったポイントを網羅しているバッグだ。使っていて凄く気持ちよいし、スペックも性能も申し分ない。でも、こいつは13,000円する。ROCKBROSよりも1万円高いのである。
Apiduraのバッグは自信を持っておススメできるけれど、お金が無くて半額食パンをそのまま食べていた学生の頃もある。お金がないのに高級装備をそろえるのに躍起になって、肝心のライドを楽しむ余裕がなくなってしまうのも、また違うよねと僕は思っている。
正直、作り込み具合を考えると「妥当」と言えるかなと僕は思う。機能は果たすし、3,000円と考えると十分な製品だ。
これは何に価値観を置くかによるだろうけれど、客観的に価格と性能を天秤にかけるとそれなりかなぁと。ブランドのアンバサダーやサポートライダーとなっている僕だけど、ここは正直に書かせていただきたい。
4.まとめ
以上、Amazonで激安販売されているフレームバッグ「ROCKBROS:フレームバッグ新型S」をレビューしてみた。
ここまで書いてきた通り、高価な製品にはそれだけの作り込みがあるし、そもそも先鋭的に研究してきた歴史がある。その研究開発費たるや計り知れない。それを知らないふりして、ただ安いものを「コスパ最高!」とかいうのは僕は嫌いだ。
それを踏まえたうえで、残念ポイントも沢山あるけれど、とりあえず使えるし「5,000円を払うのもキツイよ……」という方がロングライドやバイクパッキングを楽しみたいと考えるなら、アリな選択肢だと思えた。この記事が、皆様の参考になれば幸いだ。
おわり