快晴の太平洋シーサイドラインを堪能した昨日。
今日はいよいよ、今回の冬北遠征のメインディッシュである摩周湖&屈斜路湖エリアを走る。ここは去年のツーリングでも走る予定だったけど、膝の激痛のため泣く泣く断念した場所でもある。
さて、期待十分な道やいかに。
<目次> 1.夜明けの摩周湖 2.川湯と藻琴峠 3.小清水スノーハイク 4.北見の快活へ
1.夜明けの摩周湖
例によって暗い中の撤収と朝食を済ませ、摩周湖へとバイクを進める。今朝はー18℃まで下がったらしいけど、過去のライドよりもシュラフやマットを強化したお陰か、とても快適な目覚めだった。
薄曇りの中で夜が明けた。やや気温が上がってきたところだけど、今だ-16℃らしい。もちろん冬の北海道ならこの位の気温は特別でもなんでもないけど、電光掲示板でこの数字を見たのは初めてだった。
摩周湖を目指し、じわりじわりと標高を上げていく。斜度が緩やかなお陰で足に負担は少なく、また綺麗な圧雪路になっていて走りやすい。
薄い氷が張った路面。スパイクのピンが良く効くので、自転車にとって得意な道だ。よく「自転車滑って危なくないの?」と聞かれるけど、実際はおりて足をついた方が滑るから危ない。写真を撮ろうと降車して、何度転びそうになったことか……(笑)
軽快な足取りで、テンポよく回していく。身体を温めるのに、朝一番のヒルクライムはピッタリだ。
標高を上げ木々を抜けると、このエリアの山々が一望出来た。
雲と湖からの靄が合わさって、幻想的な景色を作り出していた。太陽に照らされてぼんやりと大きな山々が浮かび上がるけど、距離がつかめず感覚がバグってしまいそう。遠くを眺めて思わず息をのんだ。
そして頂上へ!
ちょうど雲が晴れてきたタイミングで、真っ白だった視界が一気に青空と湖へと変わった。思わずため息がこぼれる。
木々も綺麗に白く色づいていて、青空とのコントラストが美しい。うん、来てよかったな。
朝早いからか、ここまで誰にも会わず独り占め。といっても頂上は風があって寒く、あまり長居できる状況じゃなかったのでさっさと退散する。
頂上を目指していたのにさっさと帰るのは、どうも冬山登山のそれに似ている気がする。
路面状況は良かったので、快走ダウンヒル。
靴の防寒が不足していてスピードを出すと寒かったのが残念だけど、良い眺めのなか気持ちよく下ることが出来た。
2.川湯と藻琴峠
続いては、屈斜路湖沿いへと移動して川湯と藻琴峠を。川湯は去年も走ったけど、あの煙をもくもくと上げる硫黄岳が印象的で、もう一度走りたいと思っていた。
それが、これ。
バーンと開けた道路に、ごつごつした岩山が印象的。その岩山の麓から、絶えず大量の湯気が噴き出している。
なんというか、この異世界感というか特殊さが、どうも僕は好きだ。
あぁ、やっぱり気持ちいいや。
写真を撮ったりなんだりしながら、何往復かして堪能し次の藻琴峠へと向かった。
摩周湖~藻琴峠の道も良い圧雪路で、主要道を避けて走ると最高の道が続いた。朝方頭上を覆っていた雲は綺麗に晴れ、気持ちのいい天気に。気温もー10℃+αとちょうどいい。
良好な雪面状況は藻琴峠も健在で、程よく雪があって楽しい。アスファルトとは違う、柔らさのある感触を受け止めつつ、テンポよく登っていく。
だんだんと視界が開けてきて、屈斜路湖が見えてきた。うんうん、良い感じ。
この藻琴峠、お隣の美幌峠が有名で陰に隠れている感じがするけど、個人的には走っている楽しさはこちらの方が上だと思う。視界が開けてからの景色もいいし、森の中の雰囲気も走っていて楽しい。しかも交通量が少ない。
くぅ……堪んない。
リアホイールが空転しない様にトラクションに気を付けながら、体重をかけつつダンシングする。ゆっくりと流れていく雪景色を見つつ、青空に近づいていく感覚を得る。
そうそう、僕はこんな道が走りたかったんだ……!!
展望駐車場にて。
ここからの眺めも良い。美幌峠からの眺望(↓)もいいけど、こっちもまた違った良さがある。写真映えは美幌峠かも知れないけど、走って楽しいのはこっちかな、というか。
藻琴峠の気持ちよい部分はまだ続く。
峠の先には藻琴山という山があり、その登山口に小清水キャンプ場とハイランド小清水というロッジがある。冬季は閉鎖しているけど、人気なスポットである。
その藻琴山を一望しながらの高原ライド。気持ちよくないはずがない。
晴れの日を狙って来た甲斐があったなと、そして去年のリベンジを果たせて良かったなと、1ち年前の思いをかみしめながら走った。
3.小清水スノーハイク
お昼過ぎに小清水高原へ到着。今日は走行距離が短いのもあって、まだ時間に余裕があった。
登山口にもなっている駐車場で会ったおじさんと話をしていると、この上からの景色もすごくいいらしい。
上の状況を聞くと今の装備でも歩けそうだったので、せっかくならとスノーハイクもすることにした。実はウェアも持ちものも冬山登山具を流用して走っているので、装備的には問題なし。むしろ本来的な使い方だ。
サコッシュに必要装備を詰め込んで、いざ出発。
うんうんこの感じ、僕の求めていた冬山成分だ……!
この冬はちゃんとした登山が出来ていなくて、ちょっと持て余していたところだった。このワクワク感を久しぶりに思い出し、一人興奮する。
スノーシューかスキーで歩くのが普通なので、つぼ足(ワカンやスノーシューなどを何もつけない状態)で歩く僕はトレース(踏み固められた足跡)を辿ってもかなり沈みこみラッセルになる。
それでも、やはり楽しい。むしろ体力は余っているので、変なリミッターを外して雪遊びが出来て楽しい。道路上はどうしても気を遣う部分が多いから、気兼ねなく突っ走れる気持ちよさがある。
確かにおじさんの言う通り、上からの景色は良好。
折角なので山頂まで行ってやろうかと思っていたけど、天候が一気に怪しくなってきたので頂上の1㎞ほど手前で引き返した。
明日は北海道全域が荒れ模様なので、何かあるとまずいし天気は夕方から下り坂なはず。そもそも予定外の登山、大事をとりすぎるくらいじゃなきゃダメだ。
1時間弱、約3㎞のスノーハイク。思いがけず楽しいイベントが追加され、ツーリングのいいスパイスになった。
4.快活クラブへ
先ほども書いた通り、今夜から天気は崩れて明日は荒れる予報。
別に一晩過ごすだけなら雪の中でも構わないけど、雪かきが面倒臭いからできれば避けたい。それに、凍った結露でどうしてもシュラフが濡れて保温力が落ちていってしまうから、ここらで一度乾かしておきたいというのもある。
となれば、向かう先はネットカフェ。1つのエスケープパターンとして用意しておいた北見の快活クラブがあるから、今晩はそこを寝床にすることにした。
雪景色に沈んでいく夕日を眺めつつ、のんびりと走る。明日も午前中は停滞だろうから時間は十分にあるし、逆に天気のいい今のうちに走っておきたい。
寄り道したり写真を撮ったり……ぶらぶらと時間をつぶしながら、少し物思いにふける。
自転車趣味に出会って、僕の人生は変わったなぁと。自分の興味のままに走り/書き/撮ってきたけど、今僕は提供して頂けたバイクや装備に跨っている。とても有難く嬉しい一方で、まだよく理解できていないフワフワ感すら残っている。
きっと何でもそうだけど、想いが叶うときは意外とあっさりと、驚くほどスムーズにいってしまうものなんだろう。そして一歩進めた今、次に僕に出来ることは何だろうかと考える。
そうこうしているうち、気が付けば快活クラブに到着していた。
ここは鍵付き完全個室があって、しかもシャワー無料、朝食無料、ランドリー完備と、至れり尽くせりな店舗。ありがたく使わせていただこう。
パッキングしている荷物を部屋へと移動し、湿ったシュラフを広げて乾かす。貴重な暖かい部屋だ、存分に使わないと。
シャワーを浴び、洗濯をし、天気予報をチェックし……。「明日は最悪1日停滞かぁ」とゴロゴロしていたら、僕は深い眠りに落ちていた。
つづく