「自転車で、1日㎞走れるんだろう?」
サイクリストなら誰しも、そんな疑問を1度は抱くと思う。200㎞だろうか?いや300㎞?はたまたそれ以上……?僕も自分に対してそんな疑問を抱き続け、1つずつ距離の壁を乗り越えてきた。
そしていよいよ、今回500㎞の壁に挑戦。苦しい場面もあったが、無事に20時間切りの好タイムで500㎞を達成することが出来た。この記事では、達成に至った計画・補給・機材・ウェアなど、実走以外の情報をまとめていきたい。
<目次> 1.準備と計画 2.補給 3.機材と装備 4.ウェア
1.準備と計画
ロングライド……特にファストロングとなると、計画が非常に重要となる。以前「ロングライドは出発した時点でほぼ結果は決まっている」と書いたけど、スピードを求めるとよりその傾向が顕著になるだろう。
今回のコースは盛岡をスタートし、東京(日本橋)をゴールとする536㎞(上のルートではどこかでダブって引かれていたらしく、実際は14㎞短かった)。獲得標高は2,500m程とかなり低い平坦コースだ。
基本的にはひたすら国道4号線を走り続けるルートなので、バイパス迂回以外は道迷いの心配はないし補給地点となるコンビニも豊富。逆に峠の様な目印が少ないのもあり、今回は補給地点のコンビニを分かりやすい100㎞おきに設定し、それぞれに到達目標の時間を書いておいた。
少し余裕を持って、グロス(休憩や信号待ちも含む)Av.24.0㎞/hを目標に計算。これだと約1時間のバッファを設けられる。達成ギリギリのペースはAv.23.0㎞/hなので、何としてもこれを切ってはいけない。
ライド中にいつでもチェックできるよう、これをスマホのロック画面にスクリーンショットを設定し随時確認しながら走った。
グロスAv.を気にする上で最も重要なのが『補給のコンビニ停車をいかに短くするか』だ。グロスAv.を保つには数時間にわたって耐え抜く必要があるが、たったの10分停車するだけで簡単にAv.1.0㎞/hくらいは下がってしまう。それを戻すには再度グロスAv.+5㎞/h程度で3~4時間走り続けなくてはならず、これまた骨の折れる苦労である。
今回は、グロスタイムに拘るので休憩はゼロに設定、コンビニ停車も10分以内と決めて走った(実際は5分で足りた)。
ファストロングライドでは、風向きも非常に重要。今回は「東京盛岡間を走ろう」と決めたのち、1日を通して北風が吹いていたので盛岡から南下する方向で走ることに決めた(上の画像はライド当日ではなく、記事執筆時点のもの)。
風速は0~2m/sと決して強くはないが、向かい風はほぼゼロだし、主要国道なので昼間は車の走行風で+1~2m/sくらいは追い風になる。参考にしたサイトはSCW天気予報。
なお、530㎞前後の距離を24時間で走るチャレンジとして有名なものに「東京大阪キャノンボール」がある。これは文字通り東京大阪間を24時間以内に走り切るチャレンジで、この「キャノンボール」という名称を引用した「○○キャノボ」もいくつか存在する。ただ、キャノボという名称を濫用すると「なんでもキャノボじゃん」みたいに際限がなくなるし、ひとによって理解の異なる言葉を用いるとややこしいので、今回は『東京盛岡24時間チャレンジ』と直球な名前にすることにした。
ともあれ、500㎞越えのファストロングライドという今回のチャレンジの性格は東京大阪キャノンボールとも類似しており、計画段階で東京大阪キャノンボールのノウハウを参考にさせて頂いた。
最も参考になるサイトはこちらの『東京大阪キャノンボール研究』さんで、キャノボ・ブルべに精通している「ばる」さんの運営するサイトだ。クリティカルで忖度のない装備レビューも非常に参考になる。
2.補給・休憩
500㎞越えを走れば、消費するカロリーも尋常ではない量になる。今回の東京盛岡536㎞では、STRAVAによれば1万㎉を越えるエネルギーを走行だけで消費していたらしい。これに基礎代謝も加わると、もはや12,000㎉……(笑)
体内の脂肪を燃焼させたり、もともと蓄えられていたエネルギーを消費したりも出来るから12,000㎉を摂取しなくてはならないわけではないが、少なくともその60%くらいは摂取し消化する必要がある。つまりは約7,200㎉、24時間で割ると300㎉/1時間。
僕が走ったときのレシートはこちら。走行前に持参したものを合わせて、実際に走りながら消費したものが以下の通り
・おにぎり:13個 ・満足バー系:14本 ・エナジージェル:6本 ・メントス:4本 ・ウイダー:2個 ・とろける杏仁豆腐:1個 ・飲むヨーグルト:ミニサイズ1つ ・缶コーヒー:1本 ・ポカリスエット:500ml ・水:約4.5L
ざっくり言うと、おにぎり1個で160㎉、満足バー1本200㎉、エナジージェル1本100㎉なので、それを参考に1時間区切りで300㎉は最低摂取するように補給した。上記の補給の総カロリーも、おおよそ計画通り7,000㎉くらいになっているはず。
普段のロングライドでは、僕はカップ麺や弁当などでまとまった食事をとることが多い。しかし今回はその余裕がないので、ご飯をおにぎりで代替するイメージで食べている。
1回のコンビニ補給は、停車~買い物~パッキング~再スタートまで5分。計画では余裕を持って10分で計算したが、トイレを含めても5分で完結可能だった。
後半ほど固形物が苦しくなるかと思っていたが、300㎞で食欲がなくなったのの口に押し込めば飲み込めたので、固形物メインのままフィニッシュ。どうしても固形物を食べたくないときには持参したエナジージェルを飲んでご褒美とした。
実は300㎞あたりで購入したウイダーを飲んでからお腹が痛くなり、ウイダーを見たくなくなったので固形物ばかりにせざるを得なかったというのもある。
休憩は計画段階から無しのつもりでいて、実際に休憩ゼロで走り切った。上記の腹痛で予定外にコンビニに寄り10分トイレに籠ったが、それ以外は腰を下ろしたり立ち止まったりはしていない。
3.機材と装備
バイクはいつものロードバイク:スペシャライズドのルーベSL4Disc。詳しくはこちらの記事に愛車紹介を書いているので、そちらをご覧いただきたい。
装備構成はこんな感じ。補給食と水を抜くと、重量は12.6㎏だった。使っているのは
・プロファイルデザイン:4525a(レビュー記事はこちら) ・キャットアイ:Volt800、Volt400(予備バッテリー×2)、tight ・ガーミン:eTrex30x ・R250:防水トップチューブバック(レビュー記事はこちら) ・ウルフトゥース:ポンプバック(レビュー記事はこちら) ・フェアウェザー:コーナーバック(レビュー記事はこちら) ・OGK:ツール缶ショート ・オーストリッチ:L-100輪行袋 ・オルトリーブ:サドルバックL ・ウルフトゥース:B-RAD4(ボトル位置ずらし。レビューはこちら) ・ブラックダイヤモンド:スキーストラップ(輪行袋を縛るベルト。レビューはこちら)
どれも今までの僕のロングライドを支えてくれた信頼のある装備たちだ。
全体として積載量の多い構成だが、輪行用のウェア等も含んでいるのと、気温5℃まで対応できるように防寒着がかさんでいるのが主な理由。冬用のアウタージャケットを除くとサドルバックはスカスカだし、フレームバックは90%補給食用のスペース。
1つのポイントはDHバーで、今回の様に平坦コースだと重量よりも空力が大切になる。同じ出力でもDHバーの方が速度が出せるので、ファストロングライドでは有効な機材である。
僕が4525aを使っている理由はレビュー記事や、ロングライド向けのDHバーの考察をしたこの記事をご覧いただきたいが、適度にリラックスできて、かつポジション調節がやすいというのが主な理由。
前傾をきつくしたポジションで長時間走るとなると、サドルの形状や相性も重要だ。僕が使ったのはスペシャライズドのPower ARCサドル。尿道へのダメージが少ないサドルで、536㎞走っても全く違和感がないほど優秀だった。詳しくはこちらのレビュー記事へどうぞ。
ライトは、フロントがVolt800と400の2灯体制、リアはtight1つ+ヘルメット尾灯。できればリアにもう1つライトが欲しいところだが、スペースの都合で1つにしている。その代わりおにぎりリフレクラ―とスポークリフレクター追加し、自分は反射ベストと両脚に反射材をつけている。
コンビニでの停車時間を短くする工夫として、ワイヤー錠をこんな風にサドルレールに引っ掛けた状態で走っている。今回に限らず僕はいつもこうしているけど、いちいちバックから取り出すのに比べて早くて簡単なのでおススメだ。
タイヤはコンチネンタルのGP5000(25c:クリンチャー)を選択。空気圧は前後ともに7barに設定。やはり転がり抵抗が少なく、こういったライドでは重宝する。前作の4000SⅡよりも乗り味がマイルドなので、500㎞を越えても振動が気になるという事は無かった。
ギア比は50-34×11-28の11速。インナーもロー側もほぼ使っていないので、チェーンリングを大きくするか11-25のスプロケでも良かったなと思っている。
4.ウェア
今回の500㎞ライドは10月末の東北。走行する場所と時間を勘案すると、気温は天気予報で5~16℃だった。
普段のロングライドなら『寒い方に合わせる』というウェア選びを基本にしているので、0~15℃の想定で準備をするところ。しかし、今回はとにかく速度重視で計画したため10℃をベースに最低5℃まで耐えられる構成にした。
着ていたものはこんな感じ。
<上半身> ・おたふく手袋:3dファーストレイヤー(レビューはこちら) ・モンベル:ジオラインM.W. ・カペルミュール:半袖ジャージ ・モンベル:フレネイパーカ(寒いときのみ) ・R250:反射ベスト(レビューはこちら) <下半身> ・モンベル:ジオラインM.W.タイツ ・おたふく手袋:ボディータフネス保温タイツ(レビューはこちら) ・dhb:ハーフサイクルパンツ ・中厚手ロング靴下 ・シマノ:RX8(レビューはこちら) <その他> ・チネリ:サイクルキャップ ・Buff:メリノウールL.W.(レビューはこちら) ・モンベル:指切りサイクルグローブ ・モンベル:トレールアクショングローブ
このウェア構成でどうだったかというと、夜間は天気予報よりも気温が下がり、DNFを考えるほど過度な消耗を招いた。冷え込みは道路の表示で1℃が続き、路肩の車はフロントガラスに霜が降りるほど。
「5℃までならギリ耐えられるかな」という攻めたウェア選びをしての1℃前後なので、当然寒すぎる。幸いなことに夜明けまでハイペース走行で体温を上げしのぐことが出来たが、やはり天気予報よりも余裕を持った防寒が必要になると感じた。
夜が明け5℃を越えるようになってからは非常に快適に走行できたので、想定に対するウェア構成は完璧だったと思う。温度帯別で僕がどんなウェアを着ているのかは、こちらの記事に詳しく書いている。
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以上、計画や装備、補給など、走行に関する情報をまとめてみました。実際に走っている時に意識したことやその様子などはこちらの記事に書いているので、よろしければ併せてどうぞ。
おわり
ロングライドのコツを網羅的にまとめたシリーズはこちら(↓)