長距離・長時間のサイクリングを楽しむロングライド。
景色やご飯、達成感など様々な魅力があるが、「疲れないで走る技術」があると、その楽しみを倍増させることが出来る。この記事では、それらの『走行に関するノウハウ』について、僕なりにコツをいろいろ書いていきたい。
なるべく詳しく・漏れなくを意識して書いたので、結構な長文になってしまった。気になるトピックスだけでも、流し読みして頂ければ幸いだ。
<目次> 0.はじめに 1.走行ペース ー歌えるくらいのペースで ー登りは休み、平坦と下りで回す ーグロスペースを意識する ースムーズに走ろう 2.ダメージの蓄積を防ぐ ー肉体的ダメージ対策 ー精神的ダメージ対策 ー疲労や睡魔でどうしようもないときは 3.最後にワンポイント!
0.はじめに
・スタイルは千差万別
この記事では「ロングライドを楽に走るコツ」を僕なりにまとめてみた。内容は基本的な部分も多いけど、僕が試し効果があったものを書いている。ロングライドに絶対的な正解はなく、僕のスタイルに合う/合わないが個々人あるはずなので、参考程度にどうぞ。
・準備や計画も大切!
『ロングライドのコツ』という大きな枠で話をすると、出発前の計画や装備も大事になる。1つの記事にまとめるとかなり長くなってしまうので、冒頭の通りこの記事では「走行に関するノウハウ」のみに絞って書き、その他全体的な話はこちら、準備に関する話はこちらからどうぞ。
1.走り方・ペース
さて、まずは基本となる走行ペースについてから。どんなに脚力のある方でも全力ギリギリじゃロングライドは厳しいし、逆にダラダラ走りすぎても時間がかかって逆に疲れるorゴールが出来なくなる。
理論的には「速すぎず遅すぎない、ちょうどいいペース」が理想になるんだけど、初めからそれを見つけるのは難しい。あくまで僕の経験だけど、勝手が分からないうちにそのちょうどいいペースを目指そうとすると、往々にしてハイペースになりすぎて後半苦しむ。しかも、次のライドもどこまでペースを落とせばいいか分からず仕舞いだ。
だから逆に、まずは『自分が絶対に疲れないペースを見つけて、スピードを求めるときはそれ+αの速度にする』というのが一番いい方法だと思う。
ここで、走り方・ペースのコツとしてご紹介するのは…
⑴歌えるくらいのペースで
⑵登りは休み、平坦と下りで回す
⑶グロスペースを意識する
⑷スムーズに走ろう
の4つ。
⑴歌えるくらいのんびりと
スピードの話題になるとつい「サイコンの表示がいま何㎞/hか」を意識してしまうけど、実はそれはあまり意味がない。速度そのものは、斜度や路面、風向きなど外部環境に大きく左右されてしまうからだ。
重要なのは「速度(㎞/h)」ではなく「パワー(出力:W)」のほう。僕は速度には拘らず、自分が無理なく一定の力でペダリングを続けることを意識している。
とはいえ、高価なパワーメーターでも買わない限りリアルタイムのパワーをモニタリングすることは出来ず、かく言う僕もパワーメーターは持っていない。そこで、僕が意識しているのは「歌を歌っても辛くないペース」。登りでも下りでも息が上がる速度は出さない。(さすがに長い登りは息が乱れるけど、それでも会話が出来るくらいの余裕は確保する)
「足つき無し」みたいな縛りをする必要はないし、ロングライドでSTRAVAのセグメントを気にする必要もない。マイペースが第一。
⑵登りは休み、平坦と下りで回す
ロングライド界隈でよく言われる『登りは休む』という言葉。はじめは意味不明だと思っていたけど、今はその表現がしっくりくると思っている。
「休む」というと自転車を降りる休憩のようなイメージを持つかも知れないが、そうではなく『登りは平坦よりのんびり走り、補給や上半身のリフレッシュに充てる』という意味だと僕は解釈している。
ロングライド全体のパワー配分として、登りの部分は相対的に緩く走り、身体全体の回復パートにするのだ。補給食を食べるのも、低速で上半身が起きる登りの方が食べやすいはずだ。
逆に、平坦や緩い下りではテンポよくクランクを回し、ライド全体のペースを底上げする。
速度が速いほ空気抵抗を意識してエアロに走った方が低パワーで速いので、平坦と下りは特に、辛くない程度に頭を下げてエアロポジションで走るのがおススメだ。よりエアロになりポジションが増やせるので、(↑)の画像のようなDHバーも有効。
*疲れない登り方
「んなこと言ったって、登りは辛いよ!」という方へ、僕なりの疲れない登り方をご紹介。
まずギア比はなるべく低く選択し、足りない様ならスプロケットを変えてしまうのがいい。僕はインナー×ローは34×34T(ロードバイクでは女性もほぼ使わないくらい軽いギア)を使っているし、辛いと感じたら無理に走らず写真を撮りながら休憩&ストレッチをする。
「辛くなったらギアを落とす」は知らず知らずのうちに無理をしてしまうので、初心者の方は「登りはじめでインナー×ローに落として、軽すぎると感じなくなるまで1枚ずつギアを上げる」という方法がおすすめ。
走るコースも割と大事で、他の交通の迷惑や危険にならない程度に、斜度の緩いラインや路面のいいラインを走る。それだけでもかなり楽になるはずだ。
ペダリングについてあまり上手いことは言えないけど、シッティングなら①サドルの前に座る、②胸を張って視線は前へ、③おへその下の力でペダリング、④ケイデンスはやや高め、が楽に走れる。
ダンシングなら、①体重をペダルに乗せる、②リズムよく走る、③身体をリラックスさせる、という具合だ。
僕なりのコツをザックリまとめるとこんな感じ。何か1つでも参考になればと思う。
⑶グロスペースを意識する
サイクリングではよく「タイム」や「平均速度」という言葉を使うが、それらには2種類あることを忘れてはいけない。
①自転車に乗って動いている時だけの「ネット:Net」
②信号待ちや休憩も含めた全体の「グロス:Gross」
普通のサイクリングではネットの方が注目されがちだけど、ロングライドで重要なのはグロスの方。例えばロングライドの代表的存在のブルべはグロスタイムが制限時間だし、「今日中に帰れる距離は何キロか?」というのもグロスタイムが指標になる。
そのグロスタイムを速くするためには、ネットの平均速度を求めるより、休憩時間などの「走っていない時間」を減らすことに専念した方が効果的だったりする。
ここで一つの例をご紹介。僕が何度か走った横浜→仙台400㎞TTでは、最も飛ばして走った(ネットの平均速度が一番速い)ライドが、ゴール時間(グロスタイム)では最も遅い。グロスタイムが最も遅かった時と早かった時の、ネットの平均速度とグロスタイムは以下の通り。
・Av.27.8㎞/h(最速)→24時間(最遅)
・Av. 26.4㎞/h(2番目に速い)→18時間(最速)
どちらも同じ道を通っているけど、前者はペースを上げてガシガシ走る代わり疲労で頻繁かつ長時間休憩(辛くて昼寝もした)、逆に後者は「ちょうどいいペース」が維持できて、かつ停止時間をなるべく削って走った。単純な例だけど、疲れて公園やコンビニでダラダラする時間をなくせば、多少速度を落としてもこれだけ「速く」走ることが出来るのだ。ゴール後の疲労感も後者の方が圧倒的に少なく、走り切った後もそれなりに元気だった。
少し本題とは逸れるが、本気でグロスペースを上げるなら補給や休憩時の時短術も侮れない。例えば、コンビニで買うものを決めておくのはもちろん、棚の配置を覚えておいたり、キャッシュレスを使ったり、食べるのにかかる時間も計算して食品を選んだり…。それらの時短術を実行するためにも、ヘロヘロにならない方が良い。
⑷スムーズに走る
続いては、見落としがちだけど重要なポイントを。それは、ライド全体において「スムーズさ」を追求することだ。
例えば、バイクの走らせ方をとことんスムーズにする。急加速・急減速をしないのはもちろん、荒れた路面のラインを避け・抜重を駆使し、ブレーキを可能な限り使わずに走る。走行中のバイクの動きを、とことん滑らかにするイメージだ。
ちょっとした路面の荒れでも、避けられるなら避けて、無理なら抜重(ハンドル・サドルへの荷重を減らして、衝撃が身体に伝わらないようにすること)する。はじめは面倒でも、これが無意識に出来るかは大きな差になる。
ロングライドはいかに少ないエネルギーで走るか?というのが課題なので、減速と無意味な加速は敵だ。信号待ちで停車するときは必ずギアを数枚落として加速にパワーを使わないようにし、体重を使って緩やかに加速する。
「ブレーキを使わない」というのも、意識するだけで走りが結構変わる。赤信号の前のひと踏み、コーナー前の減速のタイミング、周りの車両への対応…etc.。結局ブレーキを使うなら踏まずに流しても同じなので、無駄なエネルギーを消費せずに済むし、結果的により安全な走りが出来るようにもなる。
・歌えるくらいのペースを維持する
・登りで回復、平坦と下りで回す
・ネットではなくグロスペースの最適化を目指す
・スムーズに走る(抜重/ライン取り/ブレーキ使わない)
2.ダメージの蓄積を防ぐ
速度のコントロールが適切に出来たとして、次に問題となるのが「ダメージの蓄積」だ。
ロングライドでは乗車時間が長くなるから、たとえ楽なポジションで走っていたとしても、負荷を一か所に集中させてしまうと身体に痛みが出やすい。また、ライドそのものを楽しめなくなってくると走る気力がなくなり、肉体的にはまだ大丈夫でも精神的なダメージで走れなくなってしまう。
そこで、⑴肉体的、⑵精神的な両面からダメージの蓄積を防ぐ。
(↑)北海道一周では300㎞×8日の連続ライドをした。嫌でも疲労が溜まり続ける中、僕がたどり着いた走法をもとにこの記事を書いている。
⑴肉体へのダメージ対策
ロングライドで良く話題になるのが、身体の痛み。特に、膝、腰、お尻、手のひらはその代表格だろう。痛みを防止するには、適切なポジションを設定する、自分に合った道具を使う…etc.、という装備面での対策も大切だ。その部分についてはこちらの記事(近日公開予定)に書いているので、併せてご覧いただければと思う。
さて、この記事では「走りかた」、つまり走り始めたあとの話を。ここで詳しく書いていきたいのは、①ポジションを変えること、②暑さと寒さに注意すること、③休憩やストレッチを用いること、の3つ。
①ポジションや踏み方を変える
まずは①ポジションを変えること。オフィスでも1日中座りっぱなしが良くない様に、同じ姿勢を取り続けること自体が身体に良くない。そこで、意図的にポジションやギア選択などを変えて、負荷のかかる場所を分散させる。
上体や骨盤を起こしたり/深く倒したり、軽いギアを回したり/重いギアをゆっくり踏んだり/ダンシングをしたり…。自分の基本となるポジションや踏み方を確立したうえで、時々そこから意図的にはみ出した走り方をしてみる。すると調子が戻ったり、負荷が分散されて痛みが起こりにくくなったりする。
(↑)アップダウンのある山間部は負荷を分散させやすい。ずっと平坦より適度に登った方が疲れない。
常に「今はどの筋肉を使っているんだろう?」とか「負担がかかっているのはどこか?」というのを想像しながら、負担をたらい回しにしていくイメージだ。
手の痛みが出そうならハンドルの握り位置や握り方を変え、お尻が気になるならダンシングを多用したり座り位置や骨盤の当て方を変えたりする。手やお尻の負担を減らすのにギアを重くして体重をほぼペダルだけに預けてもいいし、逆に軽くして脚の筋疲労を抜いても良い。
少々余談だが、バイクのセッティングもかなりシビアで、数㎜や数°の違いが大きな差になって終盤に現れる。
ロングライド用のポジションが固まっていないときは、4㎜や5㎜の六角レンチをポケットに入れておいて、走りながらポジションを微調整していくのもおススメだ。腕が苦しいならハンドル角をほんの少ししゃくり、お尻が辛いならほんの少しおくってみたり、膝が辛いときサドルを1㎜下げたりするだけで、声を上げて感動するほど楽になることもある。
*初心者に多いミス
僕が初心者の頃ありがちだったのは、STIのブラケットばかりを強く握り、がっちり肩に力が入っている状態。無意識に上半身に力が入り、同じポジションばかりを続けて更に身体が硬直、自ら疲労困憊へまっしぐらだった。苦しいと感じている時ほど、余計な力が入ってしまったりするから、余裕がなくなってきた時こそ一呼吸おいてストンと肩の力を抜いてみる。ペダリングに使う筋肉以外はとにかくリラックス。
ポジションやギア比は、特に平坦のみのコースで固定しすぎてしまいやすい。僕は、ド平坦でない限り1回のライドでハンドルの全ての部分(上ハンorDHバー、下ハン、ブラケット)・すべてのギア比を使うように意識したら身体の凝りが減った。リラックスポジションからエアロポジションまで、地形や風向きに合わせて試すと良いだろう。
②暑さと寒さに注意する
ロングライドとなると、単純な筋疲労と同じくらい、暑さや寒さによる体へのダメージが大きくなる。普段なら「ちょっと暑いor寒いかな?」くらいの気温でも、その中で長時間運動し続けるとなると話は別だ。我慢できるくらいの不快感でも、放置すると後半痛い目をみるから体温調節はこまめに。
ちなみに僕の経験則では、暑さと寒さでは寒さの方が圧倒的にヤバい。寒さは筋肉の硬直→パフォーマンス低下&関節の痛み、内臓の冷え→腹痛&補給不能、といった致命的な問題を引き起こすからだ。冬に限らず、真夏でも寒さによるダメージは侮れない。山間部や海・川の近くは街中より確実に気温が低いから、備えがおろそかになりがちでもある。長袖と半袖で迷ったら、僕は絶対に長袖を持って行く。
サッと体温調節をするために、腕まくりできる長袖アウター(アームカバーもいいかも知れない)や、薄いネックウォーマー、ロンググローブなど、着脱が楽なものは重宝する。夕方の信号待ちやダウンヒルの手前で装着するとGood。
③休憩やストレッチを用いる
休憩やストレッチを用いることで、蓄積した疲労を減らすことが出来る。たまってきた疲労ゲージをちょっと下げるイメージだ。
休憩は回復しやすいものの、先ほど「走行ペース」の部分で書いた通り、グロスペースへの影響を考えるとむやみに休憩を多用するのはNG。特に疲れ切ってからの休憩はダラダラ長時間休んでしまいがちなので、休憩は疲れ切ってしまう前に、時間を決めて計画的に。
もちろん、ロングライドの目的の場所でゆっくりしたり、写真を撮ったり、偶然の出会いを大切にしたりと、休憩を兼ねた様々な楽しみ方もある。必ずしも先を急ぐことや時間を厳守することがすべてではなく、あくまでも「無駄に消費してしまう時間」を無くすのがポイントだ。
その点、ストレッチは長時間を要することは稀なので、サクッと回復することが出来る。ストレッチの種類によっては信号待ちや乗りながらでも行うことが出来るので、僕はとても重宝している。(必ず周囲の安全や自分の走行技術をしっかり確認し、危険がない範囲で行う)。ロングライド中のストレッチについては、こちらの記事(近日公開予定)にまとめているので、併せてどうぞ。
ストレッチとペース配分を駆使しながら、「走る→休む→走る…」ではなく、「走りながら回復」がポイント。
・ポジションと踏み方を意図的に変える
・暑さと寒さは放置しない
・休憩とストレッチを効率よく
⑵精神的なダメージ対策
肉体的なダメージ対策をご紹介してきたが、続いては精神的なダメージについて。
実際問題、その気になれば身体はまだ動かせても、辛いという気持ちが優先してDNFしてしまうこともある。せっかくのロングライドなんだから、厳しい状況であってもポジティブに、心の中では笑っていられるように。
コツは①目標は明確に、②自分を褒める、③20%ウォーミングアップ/10%クールダウン、の3つ。
①目標は明確に
まず大切なのは「きちんとした目標を持つこと」。例えば距離や獲得標高でもいいし、○○からの景色が見てみたいとか、○○を食べておきたいとか。辛いときの心の支えは目標と「やりたい」という意思のみだ。この計画編でも触れたけど、自分がワクワク出来る目標が大切になる。
目標は達成不能と分かったときに一気にやる気がなくなってしまうので、前提として達成可能なように、景色なら天気を、グルメなら営業時間等を、ある程度下調べしておくのがおススメ。
②自分を褒める!
距離が長く、獲得標高が増えるほど、ライド中に苦しい場面に遭遇することも多くなる。「なんでこんな事してるんだっけ」「もうやめようかな」「こんなの走れないわ」…etc.。せっかくのロングライドを辛いだけの記憶で終わらせるのは勿体ないし、ネガティブ思考だと走りもどんどん悪くなって悪循環に陥る。
だから、無理やりにでも自分を褒めるのも大事。「もう50㎞走った!凄い!」「雨の中走ってて偉い!」「あれ?俺いま超速いんじゃない?」みたいな(笑)。実際どうであるかはさておき、無理やりポジティブに持って行くと意外と頑張れる。どうせ心の声は誰にも聞こえないので、自分をおだててあげるといい。(山の中は誰も居ないので声に出してもいい)
③20%はアップ、10%はダウン
これはペース管理でもあり、精神的にポジティブであるためでもあるけど、初めの20%の距離はウォーミングアップ&最後の10%はクールダウンのつもりで走るとオーバーペースが無くなるし、気楽に走れる。例えば200㎞を走るなら「スタートの40㎞はアップとしてゆるゆる、ラストの20㎞はクールダウンとしてまったり、頑張るのは残りの140㎞だけ」みたいな感じ。
・0~40㎞:今日の調子はどう?辛いor楽なポジションは?
・40~110㎞:前半戦。目的地まで無理せずに。
・110~180㎞:後半戦。集中力切れや補給、筋肉の張りに注意。
・180~200㎞:今日も1日お疲れ様。いざシャワーとお布団へ!
大抵、いちばん辛いのは後半戦の真ん中あたり。集中力が切れて事故も起こしやすいし、補給不足や疲労の影響が出てきやすい。僕はだいたいこの後半戦の真ん中くらい(150㎞)で休憩をとって、気持ちを切り替えて次のゴール(180㎞)まで注意して走る。ラスト10%になれば、経験上どんなに辛くても家に帰りたい一心で走り切れるので大丈夫。(笑)
これを計画の時から意識すると補給ポイントに困らないし、400㎞のコースでも「なんだ実質280㎞じゃん!余裕っしょ!泣」となんだか自分にもできる気がしてくる。苦しい道のりほど、ときには多少自分を騙して楽観的になるのも大切だと思う。
・目標と楽しみでポジティブに走る
・自分を褒める!
・20%はアップ、10%はダウンとして走る
*疲労や睡魔でどうしようもないときは
…と、ここまで理想的な対策を書いてきたけど、実際のロングライド(特に300㎞以上)では予想が外れたり体調がイマイチだったりと、イレギュラーが良く起こる。時には疲労でボトルを取ることすら億劫だったり、睡魔で走りながら寝てしまう危険が発生したりする。
そんな時は、潔くDNF(Do Not Finish=リタイア)するか、仮眠を含む長時間休憩をとるのがいい。極度の疲労状態での走行は、危険であるばかりかペースもガタ落ち。要は何もいいことがないからだ。
DNFする気がないor地理的に不可能なときは、早急にビバークで仮眠を。疲れすぎるとバイクを停めるのも降りるのも面倒でダラダラ走ってしまったりするが、そのまま更なる奥地へ進むと余計に危険だ。場所を見つけられたら即バイクを降りた方がいい。
逆に、仮眠をとるとパフォーマンスが上がり安全かつペース良く走ることが出来る。仮眠時間はすぐ走りたい・寝る環境が整っていないなら15分くらい、ちゃんと寝たいなら2時間くらいがおススメ。
仮眠休憩をとるときは、グローブ、シューズ、ヘルメット、キャップ等取れるものは全部取り、身体をフリーにして休める。そして、出来る限り身体を温め、血流をよくするのがポイント。
睡眠時は体温が下がり寒くなるから、着替えがあるなら着替えて、必ず上着を羽織り、輪行袋やエマージェンシーシートを被る。また、仮眠姿勢もなるべく血流が阻害されないように。そうでないと、回復が遅れるばかりか目覚めたときに身体が硬直して動かなくなる。長時間寝るなら、仮眠まえに水分とエネルギーの摂取も忘れずに。
僕が昔やっていた空身での野宿旅ノウハウにもヒントがあるので、より詳しく備えたい方はこちらもどうぞ。
3.最後にワンポイント!
ここまでいろいろなコツを書いてきたけど、総括的なコツが『常に1時間後の自分を想像する』こと。
はじめは少し難しいかも知れないけど、なんとなく「脚が疲れてきちゃうかな」とか「お尻が辛くなっちゃうかも」「お腹が空いてくるな」みたいな予測が立てられるはずだ。その予測に基づいて、速度を落としたりストレッチをしたり補給をしたり…と先手を打って対策をしていけば、結果的にゴールまで疲労を最小限にして走り切ることが出来る。
脚力の限界、疲労、痛み、空腹…etc.。どれも一度発生してしまうと、回復するまでそれなりに時間が掛かってしまう。例えば今日中に走り切る、みたいな計画の場合は、苦痛を伴いながら残りの距離を走らなくてはならない。だから、いろいろな問題が起こる前に、先手を打っておくのがとても重要。
はじめは上手くいかなくても、予測をする癖をつけておくだけで「~を放置すると、~になる」みたいな経験則を獲得できる。そういう自分なりの知識を蓄え対策していくことが、「ロングライドで疲れない走り方」を見つける一番の近道だと思うし、自分に合った走りが出来るようになるはずだ。
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以上、僕なりのロングライドの走り方のコツを書いてみた。記事中にも書いた通り、ロングライドは個人個人のスタイルに合わせて最適化させていくのが一番だから、あくまで僕個人の一例として捉えて頂ければと思う。
準備・計画や補給の仕方、バイクのカスタム等、他の観点からの「ロングライドのコツ」については、この記事でまとめているので、よろしければ合わせてどうぞ。
皆様のロングライドが、より楽しくなる助けになれば幸いだ。
おわり