ロングライドでは、体力や走行技術と同様に、計画や準備もとても大切になる。とはいえロングライドを始めたての頃は「どんな風にルートを決めればいいの?」「走行計画ってどんな感じ?」「ライド1日の流れって?」と疑問が尽きなかった。
そういった過去の自分の疑問にこたえるべく、僕なりのロングライドの計画&ルートのコツについて書いていきたい。出来るだけ詳しく・分かりやすくを意識して書いているので、記事自体はかなり長めになってしまった。走り慣れている方は、必要な部分だけでも流し読みして頂ければと思う。
ロングライドは距離が伸びるにつれて個人のスタイルが確立されていくものだと思うけど、一つの参考になれば幸いだ。
<目次> 1.計画のしかた 2.ルート作成のコツ 3.計画の例 4.前日~当日の流れ
1.計画のしかた
まずは、ロングライドの計画の全体像から。細かいポイントや装備については後述するとして、大まかな流れはこんな感じだ。
①目的や目標を決めよう
②自走?輪行?車?それとも泊まり?
③細かいルートを作成
④タイムテーブルを意識
⑤日程&天気予報をチェック!
⑥装備のチェックへ!
では、それそれのポイントや注意点を見ていこう。
①目的や目標を決めよう
「ロングライド」といっても、その中身は様々だ。絶景を求めるライドから、グルメを巡るライド、未知の距離に挑戦するライド、写真を撮るライド、中にはアニメなどの聖地巡礼や、帰省ついでに400㎞走ってみた、みたいなのまである。さて、今回はどんなライドにしようか…?
この目的や目標は何でもいいけど、いちばん大切なのは『自分が純粋にワクワクすること』だと思う。「この写真の景色見てみたい!」とか「300㎞走ったら凄くない?」とか。距離が長く、獲得標高が高くなるほどに、ロングライド中に辛い場面も出てくる。「あれ?俺なんでこんな辛いことしてるんだっけ?」と思った時に「いやいや、やっぱり○○したい!」と頑張れるモチベーションがあるといい。
ちなみに、僕はもっぱら景色と達成感を求めて走っている。SNSで惹かれる写真を見つけては、その場所をGoogleマップにピンを打って保存しておき、そのピンをつなぐようにルートを引いていく。大抵の僕のモチベーションは「あそこからの景色を見たい」と「このコースをクリアしたい」の2つ。(笑)
②自走?輪行?車?それとも泊まり?
目的や目標が決まったら、どう走るかを決めていく。起点となるのは「絶対に走りたい場所は家から何㎞?」という距離。Googleマップの「経路」の検索が便利で、大雑把だが最短でのルートを教えてくれる。その距離が自走できるなら全て走ってしまうのもいいし、辛そうなら輪行(自転車を分解して電車で持って行くこと)や車で移動をしたり、目的地付近で一泊してしまうのもアリだ。
例えば「東京から乗鞍(日本で最も標高が高い道路)に行きたい」といった場合、
・自走:往路 300㎞/獲得6,500m
・自走:復路 300㎞/獲得3,500m
となる。SR600並みのハードコース…(笑)。流石にきつそうなので、
・輪行:往路 東京⇒松本3時間+70㎞/獲得3,000m
・輪行:復路 70㎞/獲得800m+松本⇒東京3時間
にすれば、かなり現実的だろう。もっと余裕を持ちたいor電車の時間に間に合わない場合は1泊してしまうのもいいし、逆に刺激が足りなければ往路自走&復路輪行というのもいい。こんな風に、ざっくりでいいので往路と復路の選択肢を挙げれば、あとは組み合わせで大まかな行程が決められる。
*絶景の乗鞍はこちら(↓)
③細かいルートを作成
自走区間が決まったら、そこを具体的にどんなルートで走るか決めていく。ルート作成にはいくつかポイントがあるので、それについては次項で詳細を。
「走りながら適宜googleマップを確認してルートを決めていく」という様な方法もアリだけど、僕はあまりお勧めしない。というのも、以前は僕もそのスタイルで走っていたけれど、ルートミスが多かったり疲れている時のルート確認が面倒だったり…と走行中のストレスが何かと多かった。
一期一会的な走りが出来るというメリットはあるけれど、無計画で走るよりは「基本となるルートはバッチリ決めておいて、気分でちょっとだけ逸れる」くらいにしておいた方が、ライド全体としての満足度が高いと僕は思う。
②のざっくり計画はGoogle マップ、③の詳細ルート作成にはRide With GPSが便利。また、走行中はスマホをハンドルに固定するか、GPSナビのサイコンがあると超便利。
④タイムテーブルを意識
ルートを引いたら、「大体何時ごろに、どこを通過するか」というタイムテーブルを確認する。そんなに厳密である必要はないけれど、これをしないと意図せず通勤ラッシュと被ったり、真っ暗な山道を走ったり、ご飯を食べる予定の店が開いていなかったり…という悲劇が起る。
逆に言うと、「幹線道路は交通量の少ない早朝にする」「ご飯の予定地にお昼ごろ着くようにする」という風に、通過時間が快適になるように調整する。そのためには、例えば0時~3時の深夜発もアリだ。
タイムテーブルは、『自分のグロスペース(休憩を含んだ平均速度)』を元にすると作りやすい。グロスペースは過去のロングライドを振り返って、スタートからゴールまで何㎞で何時間かかったかで計算できる。大体のサイクリストは15㎞/h~25㎞/hのあいだ、特に20㎞/hの辺りに集中していると思う。
この時の注意点は、『グロスペースは実績よりちょっと遅めに見積もる』ということ。過去のベストタイムが25㎞/hだからといって、次のライドでも同じペースで走れる保証はない。
ロングライドは、いい景色やご飯に出会うといったいいアクシデントから、悪天候や体調不良といった悪いアクシデントまで、ペースダウンの要素を多分に含んでいる。ギリギリの計画は楽しみを削ってしまったり苦しくなったりしてしまうので、最低でもグロスペースで-2㎞/hくらいは余裕を持った方がいいと思う。
⑤日程&天気予報をチェック!
走りたい場所やコースが見えてきたら、自分の休日のタイミングと天気予報をチェック。ロングライドは仕事や学校の都合がいいときに思いっきり楽しみたいが、天気がいいかどうかも超超超・重要なのを忘れずに。
天気予報で見るべきは「天気(晴れ・曇り・雨)」「気温」「風」の3つ。雨が降るかで雨装備の有無が決まるし、気温次第でウエアも変わってくる。また、初心者のうちに見逃しがちなのは風だと思うが、風向きと風速も同じく重要。向かい風か追い風かで全く異なるコースになるので、なるべく追い風になるときと選ぶと良い。
参考にする天気予報はお好みでよいが、峠や市町村ごと、時間ごとに細かくみられるものが良い。僕が使っているのはYahoo!天気とSCW – 天気予報 / 観測情報の2つ。秋~春は峠の凍結もあり得るから、よく天気予報で出る街の天気だけじゃなく、山間部や標高の高い場所も個別でチェックしておくのが良い。
⑥装備のチェックへ!
おおよその走行計画がまとまったら、装備のチェックをしていく。バイクの整備はもちろん、ウエアを何にするかとか、バッテリーはいるか、輪行袋は持って行くか…etc.
必要になる装備の例は、詳しくはこちらの記事ご紹介しているのでそちらへどうぞ。僕は割と細かく装備を考える方だけど、面倒くさいという方は、最低限「お金・スマホ・携帯工具・輪行袋・防寒着」の5点セットをもてばOK。窮地に陥っても、この5つがあれば大体は何とかなる。(笑)
忘れ物を防止するためには、Excelでチェック表を作ったり、パッキングする前に床に全部並べて写真を撮ったりするのがおすすめ。ロングライドで忘れ物はかなり痛いので、抜かりなくチェックする。
2.ルート作成のコツ
さて、続いてはルート作成のコツをあれこれと。①~⑥まで、6つのコツを挙げてみた。
①距離と獲得標高が基本
②交通量と信号の量は?
③補給の間隔は何㎞?
④路面環境は?
⑤曲がる回数は少なく&分かりやすく
⑥エスケープルートを確保する
こちらも同様に、それそれのポイントや注意点を。
①距離と獲得標高が基本
まずは何と言っても距離と獲得標高。距離が同じでも、平坦メインか山岳コースかで難易度や準備が全く異なる。僕的な基準としては、距離100㎞あたりの獲得標高が
・500m~:平坦 ・1,000m~:普通 ・1,500m~:山多め ・2,000m~:ほぼ登りor下り ・2,500m~:変態
という感じ。日本国内であれば、距離200㎞くらいのルートを引くと大体獲得1,500~2,500mくらいになるはず。この位の登りの割合のグロスペースを把握しておくと、幅広く計画に使えるので便利だ。
200㎞で獲得5,000m以上となると、意図的に坂道だけを走らない限り逆に難しい。エベレスティング(獲得標高8,848mまで1つの峠を登り返すチャレンジ)なんかは100㎞で3,000m強が多いが、もはやそれはロングライドというよりヒルクライムチャレンジだ。
*蛇足だが、獲得標高は計算するアプリによってかなり変わってしまうもので、2020年5月現在では殆どの場合実際より高く計算される。僕が使っているRide With GPSも獲得標高が盛られて計算される傾向にあるようだ。特にトンネルや橋で実走よりも上乗せされる傾向にあるので、ストイックに走りたい方は注意。Garminなど高度計付きのサイコンがあると、そのあたりの差も肌感覚で分かってくるので便利だ。
②交通量と信号の量は?
続いて重要になるのが、交通量と信号の数。交通量が多いと事故の可能性が増えるし、渋滞やライド中のストレスにもなる。また、信号も「信号峠」といわれたりするほど、ロングライドのペースを落とす要因になる。
知らない土地の道路状況を予想するのは難しいけど、googleマップのストリートビューでなんとなく道の状況を把握したり、交差点が多い=信号が多い、といったあたりを付けたりすると、快適なライドをしやすいのでお試しあれ。
③補給の間隔は何㎞?
ロングライドでは食べ物や飲み物といった補給が欠かせない。ルート作成の時には、必ず補給ポイントをチェックしておく。
補給はコンビニが便利で、Googleマップで「コンビニ」と検索すれば付近のコンビニの位置が分かる。30㎞毎くらいにコンビニを通過するルートにしておくと、慣れないうちも安心だ。
走りたい場所によっては、「コンビニが100㎞以上ない」なんてこともある。何の準備も無しに無補給100㎞は厳しいので、補給ポイントは必ず調べて、ルート上で把握しておくこと。
④路面環境は?
主要な道路を走るうちはあまり気にしなくていい部分だけど、地方の山奥を走ったりすると「国道ならぬ酷道」という凸凹の道路や、未舗装の県道に遭遇することがある。
ロードバイクでも多少のグラベルは走れるけれど、距離が長くなるとタイヤのサイドカット等のトラブルや心身の疲労にもつながる。田舎のマイナーな道をルートに組み込むなら特に、googleマップのストリートビューで確認しておくと安心。
⑤曲がる回数は少なく&分かりやすく
ロングライドでは、最短ルートよりも走りやすいルートを選んだ方が、結果的に速く・楽しく走れることが多い。「走りやすいルート」というのは、ここまで挙げた要素では「交通量と信号の量が少なく、路面がいい道」だが、それに加えて「曲がる回数が少ない&曲がる場所がわかりやすい」というのも大切だ。
交差点に到達するたび、いちいちルートを確認していてはそれだけで疲れてしまうので、なるべく何も考えずにまっすぐ走ればいいルートがおススメ。曲がるにしても、わかりやすい目印や補給ポイントにするとか、T字路の突き当りにするとミスが減る。
⑥エスケープルートを確保する
最後に、エスケープルート(=トラブル時の逃げ道)のチェックを。体調不良やメカトラブルの際にも、安全に家に帰る為の逃げ道だ。
例えば、「峠をショートカット出来るようにしておく」「輪行できる駅をピックアップしておく」「頼れる知人に連絡しておく」など。自信のない初心者の方におススメなのは、電車の線路沿いにルートを引くこと。補給ポイントとエスケープルートがほぼ自動的に確保できるので、簡単に安心なルートが引ける。
3.計画&ルート作成の例
ここまでコツをいろいろ書いてきたけど、実例があった方がわかりやすいと思うので、「僕がルートを見ながらどんなことを考え、計画を立てるか?」をスクリーンショット多めにご紹介していきたい。
例に挙げるのは、先ほども登場したこのルート。仙台駅を起点に、走りたいと思っていたgoogleマップのピンをもとにつないだ状態だ。実際に走ってきていて、ライドの記録はこちら。
計算では約400㎞の獲得6,500m(例によって高めなので、実走では6,000m)。このルートを見たとき、第一印象は「長い…山多い…」という感じ。
走り切るには適切な計画が必要だし、もし天候や体調が悪かったらまず無理だ。「どうやったら走り切れるか?」と「ショートカット出来ないか?」を同時に考える。
前半と後半は輪行でカットしても良いなぁ。。とか
補給ポイントと道路状況を見るに、注意点はこんな感じ。交通量的に走行に適した時間が明確。
また、気温を考えても「気温が低い山間部=日中」「気温が高い平野・都市部=夜間」が都合がいい。ライド全体をとおして、自分が体感する気温をなるべく一定に保つと楽に走れる。
少し余談だが、気温は標高100m上昇するたび0.6℃下がり、風速1m/sごと体感気温が1℃下がると言われている。そんなことも頭に入れて天気予報とルートを見ると環境が想像しやすい。
ルートは周回コースだけど、日が昇る・沈む時間を考えると反時計回りがよさそう。森の中は日が落ちるのが早く、山あいや山脈などの東側ではそれが顕著だ。
山間部は安全性の観点から明るい時間に走った方がいいし、朝焼けや夕焼けも見られるかも知れない。
エスケープルートはざっくりこう。黒まるの部分は山に囲まれているから、山を越えないと脱出できないキツい部分。しかも無補給でグラベル区間もある。なにそれ楽しそう…!
という感じで、最終的な選択肢は2つ。
・400㎞フルで走る:深夜発の20~24時間コース。反時計回り。
・輪行で250㎞のみ:始発輪行&終電帰宅。無理なら深夜の国道でスピード帰宅。
あとはライド予定日の天候と体調で最終決定!となる。
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蛇足だけど、僕の脚力じゃこのコースは結構キツイ…けど走りたいので、装備面でもいろいろ考えた。
走行性能と補給運搬を意識した形。ロングライドは、この記事で書いた「走行計画」の他に、走るための「装備」、実走での「走行技術」(あと、いちばん大事な「健康な体と前向きな心」)がポイントになる。実際に400㎞走ってみても、この装備構成はとても良かったと思う。
ロングライド用のバイクのカスタムや細かなおススメ装備については、こちらの記事に詳しくまとめてある。よろしければ併せてどうぞ。
4.前日~当日の流れ
さあ、計画と準備が整ったら、あとは実際に走るのみ!ということで、最後に前日~当日の流れを、参考程度にまとめておきたい。
①天気予報でルートとウエアを決定
②装備チェック
③よく寝る
④楽しく安全に走る!
⑤簡単に振り返り
①天気予報でルートとウエアを決定
天気予報は日々刻々と変わるので、僕はライド前日に天気予報の最終確認&ルートの最終決定をしている。
どうせ走るなら安全で走りやすい方が良いし、例えば「いい景色が見たい!」と思って計画したとき、天気が午前晴れ⇒午後曇りなのに、目的地に午後到着の予定では意味がない。そんな時は、ルートの往路と復路を入れ替えたり、逆回りにしたり、ショートカットしたりして微調整する。天気がいいか細かくチェックしたいときは、ルート計画時に立てたタイムテーブルを参考に、その地点を通過する時間の天気をピンポイントで見ると完璧。
また、ウエアも予定していたものでいいかをチェック。最低気温や雨の可能性は、最低限確認しておくのがおススメだ。
②装備チェック
大枠でも書いた通り、装備の状態や忘れ物が無いかを要チェック。繰り返しになるが、Excelでチェック表を作ったり、床に並べて写真を撮ったりしておくと記録が出来るし忘れ物が減るのでおすすめ。
③よく寝る!
そして凄く大事なことが『良く寝る』こと。前日の睡眠は本当に超超超・重要。寝ないと十分なパワーが出ないし、ライドの後半で眠くなったり体調を壊したりと良いことが何もない。ひどいときは安全な走行にも支障をきたしかねないから、本当に良くない。
僕は寝不足でロングライドに出掛けたことがあるけど、もう二度としないと心に誓った。参考までに…その時のツーリング記はこちら(↓)。記事では優し目に書いているけど、実際は過去のライドで一番?というくらい辛かった。
④楽しく安全に走る!
さていよいよ当日。ロングライドのコツはいろいろあるけれど、突き詰めていくと『楽しむ』と『安全に走る』の2つに尽きると思う。
とはいえ、楽に・速く走るためにはペース配分や補給の仕方など、いろいろなコツがあったりする。そんなロングライドの走り方のコツはこちら(近日公開予定)に書いてあるので、ぜひリンク先へどうぞ。
⑤簡単に振り返り
そして、ライド後には簡単な振り返りを。別にこれはしなくてもいいんだけど、走ったルート・天候・装備が良かったor悪かったくらいは記録しておくと、次回以降のライドにすごく役に立つ。ネットに転がる情報よりも自分が獲得した経験値は価値のあるものなので、アプリのログやSNSの投稿でもいいから、何かしらの記録を残しておくのがおススメ。僕はライドそのものはSTRAVAに、詳細はこのブログにまとめている。
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以上、僕なりのロングライドの計画&準備のコツを書いてみた。ロングライドのスタイルは千差万別であり、正解は自分で決めるものなので、あくまで僕個人の一例として捉えて頂ければと思う。
疲れない走り方のコツやバイクのカスタム等、他の観点からの「ロングライドのコツ」については、この記事でまとめているので併せてどうぞ。
この記事が、皆様のロングライドがより楽しくなる助けになれば幸いだ。
おわり