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ZwiftのFTP計測が誤差がありすぎて全くあてにならない件

今やサイクリストの間に知れ渡っているバーチャルサイクリング『Zwift』。その機能の一つに、「パワーメーターがなくても指定のローラーを使えばパワーの概算値を出し、パワートレーニングができる』というものがある。

しかしそのパワーの概算値が、タイヤドライブローラーの場合、条件によって大きな誤差が出ることを発見した。この記事ではそれについてまとめていきたい。

<目次>
1.誤差を見つけたいきさつ
2.誤差が出る理由
3.条件を変えて実験
4.まとめ
5. ちょっと気になること

1.誤差を見つけたいきさつ

我が家の使用環境

Zwift自体は1年以上前から使っており、個人のトレーニング用として活躍していた。使用しているローラーはミノウラのLR760でタイヤはVittriaのホームトレーナー。これまで特に問題なく使ってこれた。恐らく、個人で利用しているだけならこの誤差に気がつくことは無かっただろう。

我が家のローラー環境

 

走力逆転事件

去年の暮れごろ友人がZwiftを始め、Zwift上で一緒にサイクリングをする機会が出来た。その友人とは何度か(現実の)サイクリングもしていて、お互いの脚力はある程度把握している。彼の実走の走力は、僕よりも少し遅い。

また、僕が使っている環境で、一度Zwiftの体験でFTP測定もしている。その際の彼のFTPは190W(PWR2.9)で僕は230W(PWR3.5)。現実の走力感とも合致していた。

一緒に走るのは楽しい

しかし、その彼とZwift上でサイクリングした時、彼の早さに驚いた。現実では僕が千切られることはまず無かったのだが、Zwiftでは瞬殺で千切られた。聞けばFTPは270W(PWR4.2)以上だったという…。もちろん、彼の使用したローラーはZwift対応のものだし、負荷設定も適切、タイヤもちゃんとローラー用のタイヤだ。

ローラーを変えただけで、実に80W(PWRで1.25)もの差が生じたことになる。流石にこれはおかしいんじゃないかな、とそこで気がついた。

 

2.誤差が出る理由

誤差の原因は?

はじめは上記の差が「使用ローラー機種による誤差」だと思っていたが、流石にそれだけではない気がしてあれこれ考えた。Zwiftのパワー計算式がそんなに適当な訳がないだろう、と。

そして見つけたのが「ローラー台とタイヤの摩擦の差」である。ミノウラの固定ローラーは、ロードバイクをセットした後にタイヤにローラー部分を押し付けるのだが、この押し付け度合いの違いで、タイヤの摩擦力に大きな差が出るようだ。

この押し付け具合

ミノウラの説明書には「タイヤが3〜4mm凹むくらいローラーを押し付けてください」と書いてあるのだが、構造的に真横からタイヤの凹みを確認出来ないのでmm単位の測定は出来ない。正直よく分からなかったので、取り敢えず絶対にスリップしない位置で締め込み使用していた。

タイヤへの圧着が強ければ、当然ローラーとタイヤの摩擦力は大きくなり、走行抵抗が増す。パワーメーターやスマートトレーナーでない場合、Zwiftは後輪の回転速度でパワーを概算し、それを表示する仕組みになっている。よって、圧着が強ければタイヤは早く回りZwiftでは大きなパワーが、逆なら小さなパワーが表示されるのだ。

 

なぜ気付かなかったか?

この「ローラーをセッティングする」という作業が面倒だった僕は、今までロードバイクをローラー台にセットしたまま、空気圧だけチェックして乗っていた。

負荷はいつも3

ローラーを圧着させるネジはそう簡単には緩まない構造なので、それだとローラーとタイヤの圧着度合いは一定だったのだろう。

そのせいか、今までは毎回のZwiftトレーニングでパワーの誤差を感じることは無かったし、そもそもZwift上の一定の計算式で算定されるパワーに、同じ条件で大きな誤差があるとは思わなかったのだ。

 

3.条件を変えて実験

さて、ローラーのタイヤへの圧着度合いでパワーに誤差が生じるのが分かったので、実際に自分が条件を変えてZwiftでFTP測定をし、どれほどの誤差が出るのが実験してみた。条件は下記の通り。

条件

ローラー : ミノウラLR760(タイヤドライブ式固定ローラー)

・タイヤ : vittria ホームトレーナー

・空気圧 : 7.0bar

・ZwiftのFTPテスト(shorter)使用

*タイヤの圧着のみ変更する

テスト①⇒いつも通りのタイヤ圧着

テスト②⇒圧着ネジを1/2回転緩める

 

テスト①

いつも通りの負荷⇒FTP236W(PWR3.6)

当然ながらいつも通りの結果で、走行感もいつも通り…。限界のその先を目指して走ってるので、もうフラフラだし偶に吐くし、FTPテストって本当に辛いから嫌いだ。

 

テスト②

圧着ネジを1/2回転緩める⇒FTP287W(PWR4.4)

フラフラで撮ってるのでブレブレ…

こちらは驚くほどパワーが出た。300Wで踏んでもそんなに辛くないなんて、なんか自分が自分でないみたいで楽しかった(笑)。まぁ自分自身は何も進化していないので、これはZwift上のただの幻なのだが

ペース配分がよく分からず前半踏みすぎたので、もうすこし上手くやればあと数ワットは上げられると思う。

果たしてこれは何㎜凹んでいる?

テスト①と②の差は、FTPで実に51W、PWRで0.8に相当する。FTPの51Wがどれだけ大きいのかはパワートレーニングをしたことがある人じゃないと分からないと思うが、もう天と地ほどの差がある。全くの別人レベルだと考えてもらって間違いない。

2020/01/16:追記
記事を書いたときには気がつかなかったけど、僕の環境だとどんなにぶん回しても380Wまでしか表示されないことが分かった。Stravaの登りセグメント結果やパワメ搭載の方と走った感じでもMAXで380Wぽっきりというのはあり得ない。この現象についてはこちらの記事にまとめている。

 

2020/05/07:追記
例の「最大パワーが380W問題」は、実はもっと多くの固定ローラーで起こっている可能性が高くなった。この事実はZwiftの公式サイトにも記載されていないし、ワークアウトやミートアップに影響を及ぼすことだ。この現象についてはこちらの記事にまとめている。特に今からローラーを買う・ミートアップに参加しようと思う、という方には目を通して頂きたい。

 

4.まとめ

上記の実験をまとめると、固定ローラーのタイヤ圧着ネジを1/2回転変えるだけで、ZwiftのFTPが51W、PWRが0.8上がったことになる。

この「ネジ1/2回転」は、ローラー台をパッと見ただけではよく分からないレベルだが、Zwift上では大きな差になるのは間違いない。毎回ローラー台からバイクを外す運用をするなら、このネジは印でもつけて常に一定にしないとパワートレーニングの意味が全くなくなってしまうだろう。

パワトレの醍醐味

「固定ローラーでパワーメーターなしのZwift」というかなり限定された条件ではあるものの、これ程の差が簡単に出てしまうのは如何なものかと正直思う。

Zwiftを個人の走力向上ツールとしてのみ使うならそう悪くはない。条件さえ合わせれば、そこそこ正確なパワートレーニングや自分の走力推移の認識が出来ることは実証済みだし、僕はその目的が大きい。

誰かと走るならパワメが欲しい

しかし、Zwiftはオンラインサイクリングでもあって、友人とオンラインで走ったりスピードを競ったりもするものだ。そういった使用をする場合、この誤差は致命的だと思う。ローラーによって簡単な誤差が出ることを認識していればまだ良いが、そうでない場合無意識に機材チートをしてしまう事になる。現実だって使用バイクによって差はつくけれど、こんな別人レベルの走力アップにはならない。

基本トレーニングは一人でするものだろうけど、誰かと一緒に走るのはモチベーション管理や高め合いにはとても有効。遠隔地であってもそれが出来るZwiftは素晴らしいサービスだと思うけど、この誤差があると結局「勝った負けた」に全く信憑性がなく、一緒に走る必要さえあやふやになる。非常に勿体ない。

 

結論としては

①個人の走力向上ツールにするなら、利用条件(特にタイヤとローラーの摩擦)に気を配る。

②オンラインサイクリングがしたい/Zwiftの機能を最大限に使いたい なら、パワーメーターかスマートローラーを買う。

 

だろう。パワーメーターも今は4iiiを始め数万円で買えるものがあるし、スマートローラーだって海外通販で半額近く安くなってる事も多い。僕は現状①で使ってはいるが、それは事情があってお金がないから。お金がたまれば間違いなくパワーメーターを買う。

海外通販だとスマートローラーも超安い。欲しい。

Zwiftは厳密なパワーで管理されている世界なので、その根底があやふやだと楽しみきれない。Zwift自体はいいサービスだと思うし、ちょっとした空き時間に運動が出来るのも非常に良い。それを最大限に楽しむ為にも、今から始めようという方には是非後者をお勧めしたい

おわり

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