ツーリング記

【横浜-仙台TT】400㎞新記録更新!19時間35分

昨今Twitterを賑わせている東京-大阪キャノンボール。

約540mの道のりを、24時間以内に自転車で走りきるという挑戦だ。特別な認定機関があるわけでもなく、達成したからといって何かが貰えるわけでもない。しかし、一筋縄ではいかないその難易度から、ファスト・ロングライドの一つのステータスのようになっていると感じる。

 

僕はというと、ロードバイクに乗り出した2年半前、Twitterをのんびり眺めていると「540㎞を24時間で走り切った」という投稿を目にし、驚きと興奮、強いあこがれを感じた。1日150㎞でヘロヘロになっていたそのころの僕は、到底無理だと感じながらも、いつか達成してみたいと胸の内に秘めた思いがあった。

ロードバイクを買って1年たった夏、実家の仙台に自転車で帰省しようと考えた。今の自宅の横浜~仙台はちょうど400㎞程度。何時間あるいは何日で走れるのか見当もつかないまま、ベストを尽くそうと一生懸命走った。結果、24時間ちょうど。キャノンボールにはまだほど遠いけど、その尻尾が見えた気がしてうれしかった。

それから帰省のたびに愛車にまたがりタイムを更新していき、ベストタイムは21時間30分まで縮まっていた。

*** *** * *** ***

そして、今回。

山岳部での立山登山から間もない出発だったから、正直タイムは狙えないだろうと思いながら、気楽にスタートした。

 

・天気:曇り→雨

・気温:15~22℃

・風向:主に西~北1〜2m/s(向かい風)

郡山付近70㎞は南3m/s(追い風)

 

スタート時刻は1:11。

深夜スタートが都心の混雑を回避しやすく、ラストスパートの白石~仙台も交通量が少なくなるため僕の一番好きな時間だ。今回は22:00くらいから雨の予報だったため、なるべく雨に打たれる時間を短くする狙いもあって、睡眠時間を削っての出発となった。

都内は深夜に限る

もう何度も通っている道だから、特に迷うことなく上野へ向かい4号線に入る。

深夜で交通量が少ないとはいえ、流石は大都会東京、ビルは輝きタクシーがあちこちを走っている。お客さんの急な要望があるのかも知れないけど、追い抜いてすぐに左に寄って路上駐車してくるドライバーも多いから注意が必要だ。

荒川を越えて埼玉へ

無事信号とタクシーの峠を抜け、埼玉県に突入。

ここまでのタイムはいつも通り3時間くらい。登山の疲れから信号待ちの後加速ができなくて、信号に引っ掛かりまくった割には早かった。

 

川越のあたりのセブンで最初の補給。400㎞走るときは大体50~60㎞置きに補給をとることが多い。おにぎりが100円セールになっていたのでおにぎりをいくつか購入し再出発。

ここからTTモード

埼玉県も終盤に差し掛かり春日部市街を抜けると、国道4号線が新道と旧道に分かれる。

新道はいわゆるバイパスなので昔は旧道を通っていたが、新道にあるバイパスの側道の存在を知ってからは、いつも新道を通っている。この側道がかなり優秀で、信号がほとんど無いうえに超フラット区間、交通量ほぼゼロという好条件だ。長さは約70㎞で、途中途切れたり東北自動車道のIC迂回があるがタイムをがっつり稼ぐことができる。

この区間が追い風だと最高なのだが、今回は残念ながら弱向かい風。

ここで、最近導入した新兵器、DHバーが大活躍した。いつもは下ハンを握って走るのだが、DHバーに持ち替えると明らかに空気抵抗が減り風を体に受けなくなった。空気抵抗をもろに受ける向かい風では特にその恩恵が大きく、楽に巡航速度を+3㎞/h程度することができた。

DHバーが良い感じ

バイパスの側道は宇都宮の手前で終わっており、ここまで大体150㎞。

ここからは中間地点である200㎞の那須へと向かう。那須のあたりから若干のアップダウンが現れるが、緩い斜度なのでDHバーのままでも十分走れた。そのおかげか、那須を通過したタイムは10時間30分。単純に2倍すると21時間となり、記録更新ペースだ。

意外と脚も疲れておらず、むしろ温まってきた感じさえあった。これはいけるかもしれないと密かな期待を抱きつつ、先を急いだ。

次の町は白河で30㎞程度で到着するのだが、ここで眠くなってきたので仮眠をとっておくことにした。

いつもは300㎞の手前あたりで眠くなるが、寝不足の影響か睡魔が先に襲ってきた。眠いまま走っても効率が悪く先も長いため、20分ほど仮眠。ついでに100円セール中のおにぎりを詰め込んでおいた。30分以上寝てしまうと本当に寝てしまい再出発時も眠気を引きずったままになるので、ちょっと休憩程度の気持ちで寝るのがよい。

 

仮眠をして気分がよくなったところで再出発。

次は郡山、福島を目指す。郡山は市街地を通ると信号が多いので、国道4号を基調に側道を使いつつ通過する。この区間は交通量が多く走りづらい反面、信号が少ないので流れに乗ってしまえばタイムを伸ばせる。今回はこの辺りが3m/sほどの気持ち良い追い風で、うまく仮眠分を取り戻すことが出来た。

そのままの勢いで丘を越え福島に入る。福島駅の近くを通過すると、残りがちょうど80㎞程度になるのだが、そこを通過したのが17:30過ぎ、つまり約16時間半が経過したときだった。

早くも空は雨模様に

ここで、一筋の希望が見えた。

残り80㎞を3時間半以内走り切れば、20時間切りの大台に乗ることが出来る。追い風はいつしか向かい風に代わってしまったが、予報では無風に転じる見込みだ。最後の仙台駅付近での信号峠を考慮すると、グロスで25㎞/h以上のペースが必須となる。

300㎞以上走ってきてそのペースは少々キツイものがあるが、タイムを更新できるとなれば突き進むほかない。

今でも不思議だが、そのとき僕にはなぜか絶対にいけるという自信があった。過去の走りから考えるとかなり厳しいはずだったが、DHバーにしがみつき、ひたすら回し何とか30~35㎞/hをキープ。普段はまだ80㎞以上あるうちにこのスピードは出さないが、その根拠のない自信から躊躇わずに回し続けた。

白石を越えればあと少し

天候は予報よりも早く雨に変わり、辺りは霧模様に。状況はなかなか好転しないが、体力ゲージが減っている感覚はそんなにない。残りが60㎞、40㎞…と減っていくにつれ、根拠のない自信は確信へと変わっていった。

 

そして…仙台駅に到着!

タイムは19時間35分。大台の20時間切りを達成できた!

福島からのラストスパートがかなりの好タイムで、最後の80㎞を3時間くらいで走ったことになる。ラストの頑張りで疲労感はあるものの、まだ走れる感じも残っていて余裕をもって実家へと向かうことが出来た。

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家で風呂に入りながらあれこれ考察。

パワーメーターはないから、実際のところの走力はわからないというのが少し惜しい。休憩は仮眠含め計6回。平均1回5分*6回+仮眠20分=50分で、過去のベストタイムの時よりも30分程度少ない。それを除いても1時間半のタイム短縮が何に起因するのか気になるところだ。

走力がついたと素直に喜びたいところだけど、DHバーによる体力温存効果は大きかったのではないかと思う。あくまで体感だが、DHバーのおかげで普段よりも1~2割程度脚が疲れない印象だった。それに伴い巡航速度も上がっていて、AV. 26.0㎞/hだった。

FTPが20時間近いロングライドに対してどれほど影響するのか不明だが、直近のFTPはさほど上がっておらず、前回のベストタイムを出した時のほうが5%高い値になっている。今回のタイム更新は「単純な脚力アップ」ではないといえそうだ。

天候に関しては、前回は1日中小雨が降っていて肌寒かったので、今回のほうが走行に適していたのは間違いない。それも後半への体力温存に寄与していそうだ。ただし、風向きに関して今回は向かい風の区間が長く、その分ペースダウンを迫られた。

まとめると、早くなった要因は

・DHバー導入

・走りやすい天候

が体力温存につながり

・休憩時間の短縮

に加え巡航速度の向上を生み出した、という感じか。

また違うライドでもいろいろ試してみて、効果的な方法を探っていきたい。

 

総じて、20時間を切れたことは僕にとって非常に大きなことだが、平坦400㎞ならこのタイムで走る人はザラにいるし、冒頭で紹介した東京ー大阪キャノンボール達成には程遠いタイムだ。まだまだ速くなれることを信じて頑張ろう。

おわり

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About the author

S.K.

ロングライド&グラベル系自転車乗り。その他キャンプ、登山など。
・身長177㎝/体重68㎏
・北海道一周2,400㎞/8日2時間
・国道4号(536㎞)/21時間37分
・グラベルエベレスティング達成
・冬季北海道1,000㎞……...etc.

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