ディスクブレーキのロードバイクは、登場時から「リムブレーキに比べて重い」と言われてきた。僕の愛車であるディスクロードも、例に漏れずヘビー級である。
しかし、その「数値的な重量」以上に、バイクが重いと僕は感じていた。特に加速やダンシング等の場面で、バイクの振りが重く、もっさりとした感触が強いのだ。
今回は、その「感覚的な重さ」にフォーカスし、STIの軽量化が与えた影響をまとめていきたい。
<目次> 1.ディスクロードは走りが重い? 2.僕のバイクに抱いていた不満 3.諸悪の根源は「油圧/機械変速STI」かも
4.機械式ディスクで軽量化 5.驚くほど走りが軽くなった 6.なぜ効果が大きかったのか?
1.ディスクロードは走りが重い?
ディスクブレーキのロードバイクは、リムブレーキに比べて重量が増加しやすい。お金が無限ならいざ知らず、現実的な予算では軽量なモデルがほぼ選べないのは、長らく言われている問題だろう。
しかし、実際のところ、「ディスクロードが重い」のは、計測された車重だけではないと思う。バイクに跨って走らせた時の「走行感の重さ」は、また別の問題だ。
例えば、秤の上では同じ7.8Kgのリムブレロードとディスクロードがあったとして、走りの軽快さはきっと同じにならないだろう。恐らくディスクはリムより軽快さに劣る場合が多く、この問題に嘆く声をSNS上でしばしば目にする。
この『走ったときの「感覚的な重さ」でも、ディスクロードが重い』というのが、この記事の出発点だ。
2.僕のバイクに抱いていた不満
僕の愛車は、SpecializedのRoubaix SL4 Disc 2016。
ディスクブレーキ創世記のバイクで、今どきのバイクよりも更に重いだろう。ペダルやサイコン等を全て除いても、車重は約8.6Kgだった。
そのせいもあってか、「とにかく走りに軽快さがない」というのが悩みだった。ダンシングや信号ダッシュでは常にもっさりとした感じあったし、機敏な挙動を取るのは苦手だった。
他のロードバイクに乗る経験が浅かったため、今まではさしてそれを問題と感じてはいなかった。
しかし、様々なバイクに試乗などで乗るにつれ、同じロードバイクとは思えない軽快な動きに驚くことが増えた。確かに車重面で劣ってはいるけれど、例えば積載を増やして重量を同じにしたところで、その挙動は全く異なったままだったのだ。
「これがフレーム性能の差というやつか…」なんて思っていたけれど、どうも腑に落ちない部分があったりもした。
3.諸悪の根源は「油圧/機械変速STI」?
そんな中、見つけたのが「東京大阪キャノンボール研究」運営者のばるさんの記事だ。
ディスクロードの納車から、バイクの走りをよくするためのカスタムの記録と結果が綴られている。その中で今回の話と強く関係しているのが、『油圧ディスクロードの走りのモッサリ感は、重たい油圧/機械式変速STIが原因だった』というもの。
R8000系アルテグラの油圧/機械変速のSTIを、9000系デュラのリム用STI+機械式ディスクブレーキに変更したら、そのモッサリ感が見事になくなったとのことだった。
「ひょっとしたら同じカスタムで変わるかも?」という希望が見えた。
思えば、自分が試乗で軽快さを強く感じたバイクも、リムブレーキか電動変速だったなと…。そのあたりを踏まえ、ばるさんに倣って『機械式ディスクブレーキを用いたSTIの軽量化』に踏み出したわけだ。
4.機械式ディスクで軽量化!
僕のバイクについていたSTIは、シマノが一番最初に出した油圧ディスクのモデル「ST-RS685」。実はDura-AceとかUltegraとかのグレードのない、型番だけの製品があって、その時代のものだ。
旧型なだけあって、左右セットの重量は公称649gと超重量級。現在のDura-Ace(ST-9270)が350gなのを考えれば、かなり重たいのがお分かりいただけるだろう。
それを、機械式ディスクブレーキを使用し、一般的なリムブレーキ用のSTIに交換するというのが、今回の作戦だ。
使うことにしたのは、2世代前の11速アルテグラ「ST-6800」。左右セットでの重量は428g。
ST-RS685が649gだから、左右セットで221gの軽量化となる。普通にロードバイクを200g軽量化するのも結構なカスタムだけど、今回はそれがSTIに集中しているのが異質である。
そして、今回のカスタムの要となるのが、この機械式ディスクブレーキキャリパーの「Growtac:Equal(グロータック:イコール)」。
制動力が油圧に大きく劣るといわれている機械式ディスクブレーキのなかで、かなり高い制動力を実現してるモデルだ。しかも、最近のディスクロードで主流となっているフラットマウントにも対応していて、重量も油圧モデルと変わらずかなり軽量、引きもめちゃくちゃ軽い。
ほぼ油圧一択となった市場の中で、機械式でありながら高スペックのレアなブレーキだ(細かい使用感については、追ってレビュー記事を投稿したい)。
4.驚くほど走りが軽くなった
さて、STIを221gほど軽量化して何が起こったかというと、とにかく走りが軽くなった。
特に、ダンシングや走り出しなどバイクを振る場面で、差は大きく表れた。乗りなれた愛車とはまるで違う感触に、正直感動を通り越して困惑するほど。笑
たかが221g、車重全体でみればボトルの水が1/3減ったくらいだし、ハンドルに限定してもサイコンとライトを取り外したのと同じくらいの差でしかない。
しかし、それらを行った時とはまるで違うバイクの挙動で、圧倒的にバイクの軽快さが増した。流石に試乗した最新のハイエンドモデルのようにはならなかったけど、そこで感じた軽快さの一端を感じられる程度にはなった。
5.なぜ効果が大きかったのか?
ではなぜ、これほどまでにSTIの軽量化が、軽快さの向上につながったのだろうか?
僕自身も完全にわかっているわけではないけれど、感覚をもとに紐解いていくと、こんなことかなと思っている。
『サイコン・ライトの重量より、STIの重量が大事な理由』は、この動画を見て納得をした。
ステム部分とハンドル末端では、動き(特に上下運動)が全く違う。
*基本①で走っています https://t.co/1GRhtDQmH2
— S.K. (@r0adbike_sk) May 23, 2022
動画をご覧いただければわかる通り、ダンシングではSTIの移動量が大きい。普段ライトやサイコンをつけているハンドル中央部と比べると、その差は歴然である。
ダンシングでシートポストやサドルの重量差がよく分かるように、STIの重量差もよく分かるのかも知れない。個人的な体感では、サドル周りの200gよりもSTIの200gの方がよく分かるとすら思う。
「走りの軽快さ」という、かなり感覚的な話だから、同じカスタムをしても同様に感じられるかはわからない。きっと、走り方(バイクの振り方)や、バイクそのものの重量バランスなど、細かい条件によっても感じ方は異なるだろう。
しかし、油圧/機械変速のディスクで同じ悩みを抱えているなら、ぜひ試していただきたいと思う。
おわり
