初めてのレースでクリテリウムに出場し、なんと優勝してしまった僕。
楽しめた半面、「ビギナー」クラスのレースの速度や落車事故、集団走行の仕方など、出場して初めて分かったことが沢山あった。この記事では、そんなあれこれを初心者目線でまとめていきたい。
<目次> 1.人生初のレースに出てみた 2.ビギナーの平均速度ってどのくらい? 3.クリテリウムで落車が起きた 4.危険走行を知っておこう 5.初心者へのハードルは高い
1.人生初のレースに出てみた
詳しくはこちらの記事とこちらの動画にまとめているけど、第41回宮城クリテリウムのビギナーカテゴリに出場しみた。
結果はなんと1位。
右も左も分からないなりに、そこそこ走れたのかなとは思う。
しかし、それでも「想像とのギャップ」とか「初めて分かったこと」が沢山あって、勉強になってばかりだった。
そこで、レースに出る前の自分が抱いていた疑問や不安をもとに、レース出場を通して感じたこと・考えたことをあれこれ書いていきたい。
2.ビギナーの平均速度ってどのくらい?
まずやっぱり気になるのは、「レースの速度」だろう。
自分は付いていけるかなぁ?とか、逆に余裕だったりして、とか…。僕はあれこれ考えていたし、恐らく多くの方もそうだと思う。
で、実際どうだったかというと、いわゆる「ロードバイク初心者」のスピードでは全くない。
今回僕が出場したレース(クリテリウム)は距離が短いのもあるだろうけど、距離は11.4㎞で平均速度が約40㎞/h。ゴール前の数百mは45~50㎞/hくらいだったと思う。
恐らく、ロードバイクを購入して1年に満たない様な初心者の方の多くは、このペースを維持できないのではないだろうか。
もちろん、集団で先頭を交代しながら走るので、1人で走るよりは圧倒的に楽。
走行中の抵抗は、30㎞/hで約8割が空気抵抗と言われている。速度が上がれば、そのぶん空気抵抗が2次関数的に増えていくので、レース中の抵抗は殆どが空気抵抗と考えても良いだろう。
集団で走行すると、前の人が風よけになって空気抵抗が大幅に減るから、実際に必要になるパワーはかなり少なくて済む。40㎞/hの集団で走るのに、40㎞/hの単独走行が出来る脚力が必要な訳ではない。
しかし、だ。
いくら楽とは言っても、だいたい35㎞/h弱くらいの単独走行が出来ないと、40㎞/hの集団で走り続けるのは難しいだろう。コーナーの後やアップダウンがある場所ではパワーが必要になるし、ゴールが近くなればスピードは更に上がる。
レースのカテゴリがいう「ビギナー」は、「ロードバイク初心者」という意味のビギナーではなく、「レース初心者」という意味のビギナーだと感じた。
もし自分が出場するレースに目星が付いているなら、そのレースの過去のリザルトを見てみると良いと思う。検索すれば、大体は出場選手のタイムが掲載されていて、平均速度を計算できるはずだ。
目安になるか怪しい位ざっくりだけど、平均速度マイナス5㎞/hくらいをそのコースで単独で維持できるなら、集団にも付いていけるんじゃないだろうか。
3.クリテリウムで落車が起きた
レース中、実際に集団後方で落車が起きた。
幸い、僕はずっと先頭付近を走っていたから巻き込まれずに済んだけど、後方で「ガシャン」と大きな音がしたので落車があったのは分かった。
別カテゴリでは、もっと深刻な落車があった。運ばれてきた方の介抱を少し手伝ったけど、意識朦朧で記憶障害もありそうなレベル。そのまま救急車で運ばれていった姿を見て、クリテリウムの危険性を強く感じた。
「そんな頻繁に落車なんて起きるのか?」と半信半疑だった僕だけど、実際にクリテリウムに出てみて、確かにコースに関わらず落車は起こるのだと理解した。
というのも、当初僕は、落車の原因はコーナーでのスリップやオーバーランでラインが乱れて、接触等を引き起こすことだと思っていたから。
しかし、実際は違った。なんの変哲もない道でも、集団内で無意識に行われる相対的な速度変化やラインの変化、位置取りが起因して、あっさりと落車が起きてしまうのだった。
4.危険走行を知っておこう
僕なりの理解だと、落車の原因は以下の通り。
①無意識にふらふらしている
②フロントを前走者のリアに差し込む
③斜行&ダンシングで若干下がる
①無意識にふらふら
たぶん落車の多くに絡んでいるのが、この無意識なふらふら。
誰も落車を引き起こそうなんて思っていないし、危ない走りは避けているはずだけど、練習しておかないと無意識にふらふらが出てしまう。恥ずかしながら僕自身、レース中はしっかり走っているつもりでも、車載カメラの動画を見返すとふらふらしている場面があった。
「ふらふら」と言われても、何が「ふらふら」なのか分かりにくい。
恐らくは、「道に対して同じラインを走れない」のではなく、「集団の走行ラインに対して同じ位置をキープ出来ない」ことだと思う。
普通?の感覚だと、自分の回り数十cmくらいは自分のスペースだと思いやすい(図の左側:点線の〇くらい)けど、その範囲で少し動くと、集団の走行ライン(図の右側:オレンジの点線)から結構外れてしまう。
この左右への微妙な移動が、周りから見ると「ふらふら」に見える。
偶々タイミングよく隣り合った選手がふらふらすると、簡単に接触をおこしてしまう。
そしてこの「ふらふら」は、次からの落車にも大きく影響する。
②フロントを前走者のリアに差し込む
周りのバイクがふらついたとき、フロントタイヤを前走者のリアタイヤに差し込んでいると、落車のリスクは一気に高まる。
というのも、ロードバイクはリアを擦られる分には転ばないけど、フロントを当てられると高確率で落車してしまうから。
上の図の場合、青いバイクにフロントを差し込んでいたオレンジのバイクが落車する。
「ちょっと前に出ようかな~」みたいな感じで、抜く訳でもなく中途半端に前に出てしまうと、こんな風に事故を起こす原因となってしまうのだ。
前走者がラインを変えてスペースが空いたと思っても、それが誤解だった場合(ただふらついていただけ)、自分は否応なく落車してしまう。
前に出るなら一気に出ないとダメだし、出ないならフロントタイヤを差し込んだ状態には絶対にしない方がいい。
③斜行&ダンシングで若干下がる
レース前にも特に注意を受けていたのが「斜行」。
字のごとく集団を斜めに横切る走り方の事で、他のバイクと接触を起こす確率が高く危険な行為だ。
例えば、オレンジの選手が前に出ようとして、右前のスペースに無理やり割り込めば、青の選手と接触して事故になる。
もちろん、青の選手は接触しない様に多少移動するはずだけど、それもお互いに周りが見えているかや、声掛けが出来ているか、合意がとれているかによるだろう。
そして、実はダンシングをする瞬間、若干減速するのも見落としがちな注意ポイントだろう。
ギア選択などを的確に行えば避けることもできるけど、安易にダンシングを挟むと、加速するつもりが逆に一瞬の減速を生み、後ろのバイクに接触しかねない。
同様のことが、下りでの脚止め等でも起こりうる。無自覚の減速をしているシーンは意外と多いので要注意だ。
*実際はもっとカオス
ここまで使ってきた図は綺麗な2列だったけど、ビギナークラスのクリテリウムだと、実際はもっとぐちゃぐちゃだった。
たとえば、集団というとこんな感じ。
2~3列でごちゃっとまとまり、各々が前後左右に少しずつふらふらする。そもそも集団内における自分の位置が曖昧だから、自分が走るべき正しいラインが分からない。
コーナーともなると尚更で、全然理想的なラインで走れていないうえ、無用な減速とブレーキングが連鎖し、バイク同士の接触もありうる。当然、落車のリスクが凄く高い。
レベルの高いレース動画を見ると、こんな風に綺麗な列をなしているものが多かった。先ほどの図とバイクの数は同じだけど、スムーズに流れて走れるのが容易にイメージ出来る。
もちろん状況次第で「絶対に正しい」とか「間違い」というのは無いだろうけど、隊列の組み方で安全性は大きく変わるはずだ。
そして重要なのは、『全員で意識共有が出来ていないと意味がない』ということ。
僕自身を含め、全然ちゃんと走れていない人が多かったと思うし、だからこそ落車が起こってしまった。怖いと思ったら、先頭数名をキープするほかないのかも知れない。
5.初心者にはハードルが高い
総じていうなら、「本当のロードバイク初心者」がクリテリウムに出場するのは相当ハードルが高いということ。
いや、もちろん先ほども書いたとおり、各々のスキルや脚力はロードバイクに乗り始めた期間では全く語れない。余裕で走れちゃう人もいるだろうし、そうでない人もいるはずだ。
ただそれを踏まえて考えても、あの環境を楽しんでレースを展開できる人は、「ロードバイク初心者」にはほぼいないだろうと僕は思うのだ。
偉そうなことを言っている僕だけど、全然まだまだ下手くそだし、脚力だって大したことない。
でも、それなりに限界を越えながら5年くらいは乗ってきたし、500㎞でも10,000mUPでも、普通に1日で走れるくらいにはなった。実際のビギナーのレースも、速度自体はかなり余裕があって、だからこそ何とか走れたと実感している。
もしそれが、速度がギリギリで集団に揉まれるとなると……かなり怖いなというのが正直な感想だ。
もちろんレース自体は楽しいので、興味があるなら是非チャレンジしてみて頂きたいと思う。ただし、それなりに練習と勉強をしたうえで出場するのがおススメだ。
初心者なりの意見だけれど、これからレースに出ようと思う方の参考になれば幸いだ。
おわり