ロードバイクのレインウェアは、防水性・透湿性ともに高いレベルが求められる。それでいて軽量コンパクトであって欲しいのだから、本当に悩ましい。
そこで見つけたジャケットが、Gore-Texの中で最も透湿性が高いメンブレンと言われる『Gore-Tex Active』を使用したウェア。昨今注目を集めるブランド『7Mesh』が手掛けていることもあり、かなり期待の高いレインジャケットだった。
実際の使用感はいかほどか、あれこれとレビューしていきたい。
<目次> 1.スペック 2.各部詳細 3.使用感 3-1.Gore-Tex Activeの性能 3-2.ライド中も快適なデザイン 3-3.手首のベンチレーションが良い 3-4.携行性はそれなり 3-5.フードの有無について 4.まとめ
1.スペック
まずは商品のスペックから。
7Mesh(セブンメッシュ)は、もとは登山系ハイブランド「アークテリクス」の実力者だったTYLER JORDAN氏が、サイクリストにスポットを当てて立ち上げた比較的新しいブランドだ。
アークテリクスを彷彿させるスタイリッシュなデザインと最新の高機能素材、斬新なアイディアを盛り込んだ注目のブランドとなっている。
・重量:220g(レディースM実測200g)
・耐水圧:未公表(Gore-Tex Active)
・透湿性:未公表(Gore-Tex Active)
・価格:50,000円前後?
この「Re Gen Jacket」は、Gore-Texの中でも激しい運動に向けて開発された「Gore-Tex Active」を使用している。
ちょっと詳しい話をすると、Gore-Tex Active(アクティブ)は、3レイヤーのGore-Texの中で、最も軽量かつ高い透湿性を誇るシリーズらしい。13~30Dという細い糸を使用し、メンブレンも最も薄く、耐久性よりも激しい運動での着用感を優先している設計だ。
Gore-Tex Activeは、サイクリング用のジャケットの他、トレラン用にもよく用いられている。
*メンブレンが表に出ている「Gore-Tex Active SHAKEDRY(シェイクドライ)」とは別ものなので注意。製品総体としての透湿性は、シェイクドライが圧倒的に高いが、メンブレンが表に出ているので耐久性に乏しい。
実測重量は200g。サイズの影響もあるだろうけど、公称よりも軽量なのは嬉しい。
Gore-Tex(あるいはそれに準ずる性能)のレインジャケットでは標準~軽量な部類だろうか。背面にポケットを付けたり、ベンチレーションジップを付けたりしているのを考えると、結構頑張っていると思う。
ただし、現在の市場を見渡すとGre-Tex Shakedryなんかで120g程度のレインジャケットもあるので、軽さだけで言うと何ともいえないところ。そういった超軽量ジャケットは耐久性に不安が残るのに対し、Gore-Tex Activeは表地も裏地も備える3レイヤーなので、耐久性を気にせず使用できるのがメリットだ。
◎サイズ感について
続いては7Meshのサイズ感について。
実はこのジャケット、たまたまレディースのMが新古品で転がっていたので、かなり安く購入したもの。(定価じゃとても買えない泣)
僕は身長177㎝体重67㎏、胸囲89㎝、ウエスト74㎝。
7Meshのサイズチャート通りに選んでもレディースだとMなので、問題は無いかなと買ってみたけど、特にきつくも緩くもない。
シルエット的な話をすると、レディース故に若干肩幅が小さく、腰回りに余裕があり、腕を伸ばすと若干袖が短い。腰回りの余裕はバックポケットを使用するとちょうどいいし、全体としては概ね気に入っている。
2.各部詳細
では、Re Gen Jacketの詳細を見ていこう。
全体はブラックでシンプルなデザイン。左胸にセブンメッシュのロゴ。
袖口に付いているのは反射素材だ。
7とMが山の様になっている7Meshのロゴ。個人的にかなり好きだ。
このロゴも再帰性反射になっている。
背中もシンプル。
腰には、左右にジャージのバックポケットにアクセスするための切込みがある。また、右腰にはジッパー付きの小さめポケットが1つ。
切れ込みはこんな感じ。特にジッパーやベルクロがある訳じゃないけど、フラップが付いているので雨が入り込むことはない。
ジャケットをめくらなくとも荷物を取り出せる面白い工夫だ。
袖口にも面白いギミックが。こちらは短いジッパーが付いていて、袖の締め付け具合を変えられる仕組みだ。
開けておくとベンチレーションの役割も果たす。
内側。さらさらでパリッとした質感。
裾はゴムっぽく滑りにくい素材で、ウェアのずり上がりを防止している。
3.使用感
では、実際に使用してみての感想を。
3-1.Gore-Tex Activeの性能
やはり気になるのは、Gore-Tex Activeの性能だろう。「最も薄く透湿性が高い」と謳われるメンブレンの実力とはいかほどか、僕も興味深々だった。
豪雨から晴天までいろいろなシチュエーションで着用してみた結果、かなり透湿性の高いウェアだと感じている。
あくまで個人的な感覚だけど、透湿性50,000g/m²/24hのミレー:ティフォンSTジャケットにそん色ない蒸れにくさ。いや、ティフォンよりもウェア内の換気はしにくいから、測り方によってはもう少し高い数値なのかも知れない。
雨の中を高強度で走っても、不快な感触にはならないのに驚いた。
Gore-Tex Activeのコンセプトには、「激しい運動に耐える透湿性」のほかに「冷たい外気をシャットアウトする」というのもある。
200gの薄いウェアであるにも関わらず、冷たい雨が降るときも身体を冷やさずに済むのが、このジャケットのお気に入りのポイントだったり。事実、同程度の重量である2.5レイヤーのレインジャケット「モンベル:トレントフライヤー」よりも、防寒性や保温力という観点では明らかに高い。
どんなレインウェアだって、強い雨に降られれば、汗や結露でウェア内部が濡れてしまうものだ。
しかし、そんな時でも体温の低下を防いでくれるため、ウェアが濡れているデメリットを最小限にとどめてくれる。雨が上がれば、その高い透湿性で着たままでもすぐ乾く。このジャケットを評価するうえで、無視できない重要なメリットだと感じている。
3-2.ライドが快適なデザイン
レディース用でシルエットが若干合わないとはいえ、ライドが快適な設計をしたウェアなのに違いはない。
前傾姿勢を取ったとき身体に綺麗に沿うのはもちろん、口元や袖口、裾といった箇所の素材や作りが心地よい。程よくフィットし、水の侵入を防ぎ、走行の妨げになる要素がない。
個人的にかなり気に入っているのが、珍しい機能の「手首のベンチレーション」。
これが予想以上に効果的に体温を調節してくれて、しかも扱いやすい。
手首の内側には太い血管が通っており、首・脇の下・内腿に次いで身体の冷却効果の高い部位だ。
脇の下のベンチレーション(通称ピットジップ)は効果的にウェア内の換気を出来るけれど、走行風が当たる部分ではないから、体温を下げる効果はあまりない。登山ウェアでは最適解でも、サイクリングとなると効果が半減してしまうのだ、
一方で手首のベンチレーションは、ウェア内の換気よりも身体の冷却に効果的だった。走行風が血管を冷たくしてくれるお陰で、蒸れの原因である汗の発生を抑えてくれる。
個人的には、他のサイクリング用ジャケットにも付けたいくらい気に入っている。
3-3.もう少しコンパクトにしてほしい
厚手ウィンドブレーカーとしても優秀なのでもっと使用機会を増やしていきたいのだけど……ちょっと嵩張るのが弱点だ。
この性能のレインジャケットとして考えれば文句のない重量・サイズだけど、やはり普段150g前後のウェアを持ち歩いている身からすると、持っていくのを躊躇してしまうシーンもある。
贅沢言うなと言われそうだけど、「この性能をあとちょっと小さく収納出来れば、もっと幅広く活用できるのに……」という惜しい気持ちが、素直な感想だ。
3-4.フードの有無について
ちなみにこのRe Gen ジャケット、レインウェアながらにフードが無い。
他のブランドのレインジャケットでもフードが無いものは結構あって、レーシーな設計のもの程オミットされている印象がある。
僕は初めて「フードの無いレインジャケット」を着たけれど、まぁ無いなら無いなりかなぁと思った。
恐らくフードの必要性は走り方に依存するもので、長時間低強度なら欲しくなるし、短時間高強度ほど無くても良いと思う。フードは頭からの水滴を防ぐから当然雨に強くなるし、保温効果も高いから寒い夜の雨なんかでは重宝するものだ。
だけど被っていない時はパラシュートの様に空気抵抗になって邪魔だし、強度を上げるにつれて頭に汗をかく原因となって結局無意味だったりもする。
例えば「ずっと雨の400㎞」みたいなライドなら欲しいと思うし、「雨と曇りの200㎞」なら無い方がいい。要するに適材適所ということだ。
4.まとめ
以上、7MeshのRe Genジャケットをレビューしてみた。
Gore-Tex Activeの性能は確かで、冷たい雨と風をブロックし、高い透湿性でウェア内部を快適に保ってくれる。
7Mesh独自の工夫(手首のベンチレーション、バックポケットへのスリット等)も調子がよく、素材としてもブランドとしても気に入った。
重量面でいえば、やはりGore-Texのシェイクドライに敵う素材が現状は無く、このGore-Tex Activeのジャケットも重いと言わざるを得ない。とはいえ荷物の擦れを気にせず使用できることはシェイクドライに無いメリットだし、一長一短だろうか。
おわり