『おしいち』の名で有名になった牡鹿半島一周。リアス式海岸が織りなす海と山のコラボレーションが魅力だが、夜に走るとまた違った顔も見せてくれる。
今回は、晩秋の牡鹿半島へ、星々の輝くナイトライドへと出かけてみた。
<目次> 1.ざっくり準備と出発 2.真っ暗な牡鹿半島 3.満天の星空 4.牡鹿半島コバルトラインで帰宅
1.ざっくり準備と出発
牡鹿半島は以前にも走っていたものの、それらは全て日中だった。というのも、牡鹿半島は街灯のない山道が殆どで、補給地点も少なく動物の気配は濃厚と、夜走るのはそれなりにリスクもあるからだ。
しかし、今回はあえてナイトライドに的を絞って出発。特別狙っていたとかじゃないんだけど、前日の夜に見た天気予報が決め手となった。「雲一つない快晴かつ月も出ない」という星空を見に行くにはもってこいのシチュエーション……これは行くしかないだろうと、いつもの装備でサクッと家を出る。
自宅から牡鹿半島までは70㎞ちょっと。日が傾きだすころ出発し、牡鹿半島の入り口である石巻を目指す。
道中の松島は観光地らしく賑わっていて車も多い。新型コロナの影響もあるかと思っていたが、GOTO効果はやはり高いようだ。いつもなら日暮れ前に距離を稼いでおきたい衝動に駆られるが、今日はそもそもナイトライドの予定なので何のことはない。
快晴よろしく、夕焼けも美しい。これを牡鹿半島で見るのも良かったかなあと思いつつ、バックミラーに映る赤く染まった空を眺めた。
11月中旬にもなると夕暮れから風が冷たく、ピリッとした空気が肺に流れ込んでくる。ペースを微妙にコントロールしながら、汗をかかない程度に踏んでいき身体を温めた。
2.真っ暗な牡鹿半島
牡鹿半島に足を踏み入れた頃合いには、既に日は完全に落ちていた。さていよいよ、ここからが本番である。
先ほども書いた通り、夜の牡鹿半島は真っ暗だ。道の大部分は街灯の類はないし、周囲が木々に覆われているのもあり見通しが悪い。
車通りもほぼ無いので、自分のライトが照らす範囲だけが明るく、それ以外は文字通りの「闇」である。
しかも、牡鹿半島はその名の通り(?)鹿が多い。心地よいアップダウンが続くけど、いつもの様に下りで回すと路上に出てきた鹿と衝突して事故を起こしてしまう。
港町の住宅街であっても気は抜けなくて、普通に民家の横をうろうろしていたり。上の画像で真ん中の看板のすぐ左に映るのも鹿の親子で、かなりギリギリのタイミングで飛び出してきたので危なかった。いつでもフルブレーキ出来る用意はしつつ、速度は30㎞/hくらいまでに抑えて走る。
と、ここまでネガティブなことばかり書いてきたけど、実のところ僕は気分上々で走っていた。
そう、スマホのカメラじゃ映らない美しい空が、肉眼では見えていたからだ。今までは一眼を持っていなかったので「真っ暗な写真ですみません」なんて言っていたけど、今回は違う。星空撮影タイムの始まりだ!
3.満天の星空
夜の牡鹿半島に広がっていたのは、正しく『満天の星空』だった。
星空に包まれながらのサイクリング、この気持ちよさをなんと表現しようか……?
開けたコーナーを走っていると、まるで星空にダイブするような感覚になる。
あぁ……最高だ。
場所を変えつつシャッターを切りまくる。半島らしく、海と島々のコラボも面白い。
やっぱり人が入ると画になるなぁとか。星空を横目にアップダウンを駆け抜ける。
テールライトも消すと、完全に星明りだけの世界……。木々もバイクも全てシルエットになる。
こうしていると、より暗闇に目が慣れて星が綺麗に見える。ぼんやりと空を眺めていたら、ふと流れ星が横切った。
4.牡鹿半島コバルトラインで帰宅
撮影に夢中になるが、バッテリーが無くなり良い時間にもなったので帰路に就く。今度は海沿いではなくコバルトラインを走ってみた。
こちらも延々とアップダウンが続くが、空を見上げる余裕が生まれるのでむしろ嬉しい。ダンシングでリズムを作りながら、木々の陰に切り取られた星空を眺める。
海沿いよりもやや標高があるお陰か、視線の横にも星が広がり星々に足元から包み込まれる様だ。
牡鹿半島を抜けると、街灯や街明かりがちらほらと出てきた。それでも綺麗な星空ではあるけど、やはりあの降り注ぐような空は終わってしまったらしい。
あとは、空いている深夜の国道を快走して自宅へ。今まで残したいと思ってきたナイトライドの美しさを、1つ形に出来た喜びを胸に帰宅した。距離は200㎞ちょっと、サクッと楽しいライドとなった。
避ける方も多いであろうナイトライドだけど、夜にしかない魅力がそこにはある。この世界感は体験しないと分からないもの、自転車を始めて良かったと改めて思った。
おわり