ロードバイク用のサドルメーカーで、Specialized(スペシャライズド)はそのラインナップの多様さや品質から一定の地位を築いている。そのサドルの中で完成車にもよく用いられる汎用サドルがToupe(トゥーペ)サドルだ。
今回は、Toupeのミドルグレードに当たる「Toupe Comp GEL」を購入してみたので、インプレ・レビューを書いていきたい。
<目次>
0.購入動機
1.Toupe Comp GELのスペック
2.インプレ
3.用途別の向き/不向きは?
4.これからの運用
0.購入動機
Toupe Comp GELの購入動機だが、今まで使っていた完成車付属のスペシャライズドのサドル「Phenom Comp」のノーズ部分の形状が気に入らなくなったからだ。(↓)いまはMTB用サドルになっている
PhenomシリーズはスペシャライズドのMTB用ラインナップのサドルだが、同社のエンデュランスバイク「Roubaix(ルーベ)」の完成車には付属することが多かった。僕のもその1つで、完成車で購入してからずっと使い続けてきた。(2020年の現行モデルのPhenomとは別物で、形状がかなり異なっている。僕がここで話しているのは2016年モデルの完成車に付属していたPhenomのこと。)
しかし、乗り込んでいくにつれて徐々にポジションや乗り方が変化し、前乗りにしたり前傾をきつくしたりと様々な使い方にをするようになった。
Phenomで気になっていたポイントが、サドルのノーズ部分(先っぽの方)の中央に溝がないこと。ここに溝がないと、前乗りにした際や前傾をきつくした際に尿道が圧迫され、痛みや違和感に繋がってしまっていたのだ。
そこで、おおよその形状が似通っていて、ノーズ部分までしっかりと溝の入った「Toupe Comp GEL」を購入することにした。
1.Toupe Comp GELのスペック
さて、まずはカタログスペックの部分からご紹介。
・サイズ:130㎜、143㎜、155㎜
・重量:257g(130㎜)、262g(143㎜)、267g(155㎜)
・カラー:ブラック
・レール素材:中空クロモリ
現在サイズは143㎜と155㎜の2種類の展開となっていて、僕が購入したのは143㎜の方。サドル幅は坐骨幅を測ることで決められる。測り方はスペシャライズドのこちらのページを参考にどうぞ。
サドルの座面はこんな感じで、緩いカーブを描いてはいるがほぼ平面。
Toupe Compはスペシャライズドのロードバイク用サドルの中では「リラックス」に当たる。前傾がさほどきつくないポジションを想定して設計されているためだろうか?
(以下、スペシャライズドオンラインストアのスクリーンショット)
サドル中央部分に掘られた溝は前後に長く、かつそれなりに深い(下の写真で見るよりも溝がある)。左右のパッドにも適度な硬さがあるので、座るとこの溝がつぶれてしまって……なんてことにはならなそうだ。
主にお尻が当たる部分にはディンプル加工がされているが、果たして滑り止め等の効果がどれだけあるかは不明。
レールは中空のクロモリ。ポジション調整がしやすいように1㎜単位のメモリが印字されている。(シールはポジションのメモとして貼っているもの)
同じToupeシリーズでも上位グレードになると軽量な中空チタンやカーボンになるのだが、サドルバックなどのアタッチメントを取り付けることが多い僕にとっては、耐久性に優れるクロモリが一番嬉しい。(笑)
裏面にはスペシャライズドお得意のSWATマウント用のネジ穴が切ってある。とはいえ、SWATマウントを使いたくても専用品が在庫切ればかりで買えず意味がないので、個人的には何とかしてほしいところ…。(笑)
2.インプレ
さて、バイクに取り付けたら早速実走を。
ファーストインプレッションとしては、「まあ普通に良いかな?」という感じ。もともとPhenomが合っていたので、それから違和感なく乗れているという事は凄く良いことだ。今でのPhenomと見た目の形状が似ているのもあるのだろうか。
Phenomよりもややサドルのクッションが硬い感じと、一番しっくりくる骨盤の角度が寝た感じがしたけれど、慣れれば問題なさそうな範囲。
パッドそのものの硬さは以前のPhenomよりも硬くなっているけれど、パッドを支える台座の部分が結構しなるので、そのしなりで衝撃を吸収している感じがする。手で押し込んでもぐにっとしなるくらいだ。
骨盤の角度については以前のPhenomの情報がないから何とも言いづらいけど、あまり骨盤を立てると圧力がお尻の一部分に集中しすぎる気がする。イメージとしては、クロスバイクに乗るような角度だとイマイチ。逆にロードバイクのブラケットポジションがちょうどいい具合だ。
購入の動機となった前方の溝については、悪くないものの期待通りという程ではなかった。
前乗りして上体を伏せたときの快適性は上がったので、登りの多いコースでシッティングを多用する時には楽に走れるようにはなった。例えばこの400㎞/6,000mUPのライドでは、1日でかなり登ったことになるけど不快感は無かった。(↓)座面適度にしなるお陰もあってか、あまり路面が良いとは言えないコースでもお尻の痛みはゼロ。
しかし、TTポジションのようにかなり低い前傾姿勢をとると、尿道の圧迫感があり快適とは程遠い感触だった。100㎞くらいまでならまだ我慢できるけど、150㎞を越えてくるとちょっと辛い。
全体としてPhenomより僕にマッチしてはいるけど、全ての走り方をカバーするのは無理がありそうだ。やはり「リラックスポジション」を謳うサドルで、DHバーの運用をするのは無理があったか……。
3.用途別の向き/不向き
僕なりの使用感をもとに用途別に「向き」「不向き」をまとめるとこんな感じ。
*あくまで個人の意見なので、一つの参考までにして頂ければと思う。僕がそう思うというだけで、もちろんここで「向いていない」という場面で使ってもいいし、「向いている」場面でも駄目かもしれない。
・ツーリング
・ロングライド
⇒それなりに前傾姿勢はとるけど、空力を意識したポジションはほぼ取らない
⇒座り位置を道によって変えたい
・比較的短距離のレース
・ヒルクライム
⇒空力重視のポジションを取る
⇒座り位置の変更が必要ない
⇒サドルの軽さが求められる
良く言えば「汎用的」で「大きな欠点がない」んだけど、速さとか軽さとか、何かを極めるような走り方にはちょっと物足りないかな……というのが正直な感想。ツーリングやロングライドで使うならその対応幅の広さがメリットになるけど、裏を返せば決め手に欠ける。
この記事で話題にしているのは「Toupe Comp GEL」という上から3番目のグレードなので、例えばS-Worksならまた話は別だろう。それにサドルは相性がものを言うので、乗り手によっては異なる意見になる可能性は十分にある。
4.これからの運用
順次インプレ記事を公開していく予定だけど、僕は今スペシャライズドのサドルをPower ARC、Romin Evo、旧Phenom、新Phenom、Toupe Comp GEL、Toupe Sportと持っている。
その中で、Toupe Comp GELを使うのは「山岳の多い(100㎞あたり獲得が1,500m~)300㎞以上のロングライド」だろうか。200㎞少々ならより前傾をとれるPower ARCやRomin Evoを使うけど、300~400㎞となると後半姿勢を上げた方が楽に走れる。そして、山岳が多いとサドルの座り位置を変えるシーンも増える。
ポジションは日々変わっていくのでこの運用の仕方も今後変化していくとは思うけど、現状の僕なりのインプレはこんな感じだ。少しでも、この記事がサドル選びの参考になればと思う。
おわり