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ロングライド用DHバーの選び方とおススメの考察

TTバイクやトライアスロンでよく見かけるDHバー(エアロバー)。空気抵抗削減をしてくれるこの道具、実はロングライドでも大きなメリットがあり、僕はもう手放せなくなってしまったほどだ。

しかし、DHバーにも形状や材質といった違いが製品ごとにあり、どれを選んでいいか分からなくなる。そこで、僕がこれまでロングライドでDHバーを活用してきた経験から、おすすめできるモデル・そうでないモデルについてあれこれ書いていきたい。

<目次>
1.はじめに
2.エクステンションバーについて
2-1.バーの形状
2-2.左右独立or一体
2-3.アルミorカーボン
3.アームレストについて
3-1.素材
3-2.調整のしやすさ
3-3.跳ね上げ式はどうか?
4.その他の機能性
4-1.バーの出る位置
4-2.オプションパーツ
4-3.サイコン・ライトとの共存
4-4.フロントバックとの共存
5.おすすめモデルはこれ

1.はじめに

この記事は趣味ロングライダーである僕がDHバーをいろいろ試してきた経験をもとにしているので、競技志向の方とは視点が違うだろうし、内容が合う人/合わない人がいらっしゃると思う。DHバー使用者が周りに居ないので、基本的にソースは僕だけ…。ポジションや運用の仕方によっても理想形は変わると思うから、一つの参考程度に捉えて頂ければ幸いだ。

そして、DHバー(エアロバー)の各部の名称を。

DHバーを構成するパーツは大きく分けて3つで、①エクステンションバー、②アームレスト(肘置き)、③ブラケット(ハンドルクランプ)。

メーカーや製品によってこれらが全て分解できるものと一部が合体しているものとがあるが、概ねこのような構成だ。この記事ではこれらのパーツごとに分けて、種類や特徴について書いていく。

 

2.エクステンションバーについて

では早速本題に。まずはエクステンションバー(棒の部分)についてから。エクステンションバーは形状と材質で様々な種類がある。因みに、バーは各社ともにΦ22.2㎜なので互換性があり、バーのみ買い足したり交換したりも可能。

2-1.バーの形状

最も重要になるのがバーの形状で、大きく分けて①ストレート、②Sベンド、③スキーベンド、④ドロップベンド、の4種類。ざっくりな図で申し訳ないけど、横から見るとそれぞれこんな感じ。

DHバー大手ブランドのプロファイルデザインのモデル名でいうと、①ストレート(該当なし、3Tのstraightシリーズなど)、②Sベンド(T2/V2)、③スキーベンド(T1/T4/T5/35a/50a/AirStrike)、④ドロップエンド(T3/45a)あたり。

おススメのされ方や選び方はいろいろな意見があるけど、多数派の意見は大まかにいうと

①ストレート/②Sベンド⇒短距離パワー向き

③スキーベンド/④ドロップベンド⇒リラックス向き

という感じ。僕はSベンドとスキーベンドを使っていて、この区分けと同意見だ。つまり、ロングライドに使うなら③スキーベンドか④ドロップエンドがいいと思う。

画像上がSベンド、下がスキーベンド。

バーの形状によって変わるのは、手の位置と手首の角度、そして前傾度合い。①ストレートと②Sベンドは手が低い位置で、拳が下を向き手首に角度がつく。逆に③スキーベンドと④ドロップベンドは手が高い位置で拳は上を向き手首の角度が緩やかだ。

①ストレートや②Sベンドが短距離パワー向きと言われるゆえんは、バーを手前に引きつけるように力を掛けやすく、エクステンションバーの位置がサドルより低く前傾がキツいポジションと相性が良いから。短時間に最高速度を出し切る走りにはピッタリだ。

しかし、ロングライドを想定するならその逆のポジションが求められる。手首は自然な角度で、かつ前傾がキツ過ぎない楽な姿勢がいい。これが実現できるのが、③スキーベンドと④ドロップベンドなのだ。

 

2-2.左右独立型?一体型?

エクステンションバーには、左右のバーが分かれているもの(写真左)と、一体型のもの(写真右)とがある。僕的なおススメは左右が分かれているタイプ。

理由は、手の位置・角度とアームレストの幅を自由に変えられるから。例えばスキーベンドを使った場合、バーを少し回転させて固定すれば、手の高さと内側~外側への角度を幅広く調整できる。また、左右が分割されていれば、アームレストの幅を自由に変更し、腕の角度(内向き~平行)も調整できる。

一体型のものはこれらの調整が基本的に出来ないので、細かな調整が効かない。短距離しか使わないならさして問題はないと思うけど、ロングライドで長時間使用するならこういう細かい調整が出来た方が絶対に良い。

エクステンションバーには「ショートバー」といってバーの突き出しがブラケットと同じくらいの短いものもあるけど、レースやPBPなど「DHバーはブラケットを越えない長さまで」というルールがある場合に主に用いられる印象。

また、小型軽量というメリットはある一方、長時間使用での快適性はロングバーの方が上なので、補助的な使用をするだけならいいかな?という感じ。長いバーは必要に応じてカットできるので、まずは普通の長さ(350~400㎜程度)を買うのが僕的なおススメだ。

 

2-3.アルミ?カーボン?

材質にはアルミとカーボンとがある。僕はどちらも持っているけど、正直なところカーボンであるメリットは感じないのでアルミでいいと思う。

メーカーや製品によるものの、カーボンの方が軽いのかと思いきや、エクステンションバーのみカーボンにしたところで重量は大して変わらない(というか、プロファイルデザインの最新モデルはカーボンの方が重い。アームレストまでカーボンのモデルは100gほど軽いが数万円~)振動吸収性などは手に荷重することがまずないから関係ないし、アタッチメントの自由度(後述)に関してもアルミの方が気を遣わずに済む。自分でカットするときもアルミの方が楽だ。

アルミとカーボンで価格差が2倍になったりするので、まずはアルミを買うのがおススメ。

 

長々と語ったが、エクステンションバーについてまとめると、

エクステンションバーのおススメ

・スキーベンドorドロップベンド

・左右独立型のバー

・材質はアルミでOK

 

 

3.アームレストについて

さて、続いてはアームレスト(肘置き)についてのおススメを。といっても、アームレストはエクステンションバーほど選択肢がないので、ポイントを絞って書いていきたい。

 

3-1.樹脂製のアームレストは微妙?

大手ブランド(プロファイルデザインや3Tなど)のアームレストはほぼ全てアルミかカーボン製で、樹脂製でもかなりカチカチだが、Amazonなどの安いDHバーにはアームレストが柔らかい樹脂製のものがある。結論から言って、柔らかい樹脂製のアームレストは良くない。僕はメルカリでおまけとして貰ったメーカー不明の樹脂製アームレストを持っていたけど、ローラーで使った感触から実走で使う気はなくなった。

アームレストにはそれなりの体重がかかって、かつ路面の凹凸の衝撃も受ける。万が一アームレストが壊れでもしたら否応なく顔面から落車する羽目になる。DHバーを使っている時は高速走行をしているので、無傷では済まないだろう。信頼できないものは使ってはいけない。

 

3-1.選ぶなら「調整のしやすさ」

もしいくつかのDHバーが候補に挙がっていて、アームレストの形状が異なるなら、「調整のしやすさ=固定ボルトへのアクセス性」を考えてみて欲しい。

先ほど書いた通り、DHバーはいかに自分好みに調整できるかが1つのポイントになる。そして、構造上は調整可能でも、実際には固定ボルトが奥まっていて、簡単には調整できなかったりするのだ。

例えば、アームレストの固定ボルトにアクセスするには一度パッドを外さなくてはならないが、パッドをベルクロで付けるだけのタイプと裏側のベルトで縛るタイプとでは、作業性が雲泥の差である。同じようなことがエクステンションバーの取り付けボルトやハンドルクランプのボルトにもあって、大変なのだとバーをいじるにはアームレストを外さなきゃいけないとか、ハンドルのクランプ角度や位置を変えるにはバーが邪魔になるとか…。

DHバーのポジション出しは実際に乗ってみないと分からないし、実走中に屋外で微調整するのが一番早くベストポジションを見つけられると思う。この微調整がいちいち面倒だとやる気を失うので、なるべく調整しやすそうなものを選ぶと良いと思う。

 

3-3.跳ね上げ式はどうか?

プロファイルデザインのエアストライクというモデルは、アームレストが跳ね上げ式になっているユニークなDHバーだ。

この跳ね上げ式のメリットは「ハンドルのフラット部分(上ハン)を使えること」DHバーを取り付けるとアームレストが邪魔して上ハンを握れない場合が多いが、跳ね上げ式ならDHバー使用中以外はアームレストが中央に寄ってくれるので今まで通り上ハンも使えるという訳だ。

僕は最初に買ったDHバーはこのエアストライクで、跳ね上げ式のメリットを感じた。その一方で、通常のアームレストのDHバーも購入し、今は通常のアームレストを使うことが多い。

理由は①走行振動でカタカタ煩い②着脱が面倒臭い③通常のアームレストも握れる、の3つ。跳ね上げ式はギミックがあるせいで振動でカタカタ音がなってしまうし、アームレストの着脱にやや手間が掛かってしまう。輪行の際にも飛び出やすいので、いちいちとるのが面倒だ。また、上ハンの様にはいかないものの、通常のアームレストもガシッと鷲掴みにしてしまえばそれなりに握れる。手の小さい方には厳しいかも知れないが、僕個人的にはこれでOKと思っている。

確かに跳ね上げ式は便利だが、高価なうえ一長一短なので、「普通のアームレストが使い勝手が悪いと感じたら導入する」くらいがちょうどいいかもしれない。

 

アームレストについてまとめると、

アームレストのおススメ

・アルミorカーボン製

・調整のしやすさが大切

・跳ね上げ式は通常のものを使ってみてから

 

4.その他の機能性

ここまで、メインパーツであるエクステンションバーとアームレストについて、僕なりのおススメを書いてきた。DHバーの機能は概ねこの2点で決まるが、『ロングライドで使う』という前提に立つと、他にも重要になるポイントがいくつかある。

それは以下の4つ。

4-1.バーの出る位置

DHバーには、エクステンションバーとハンドルの位置関係で3種類がある。ハンドルの①上から出るもの、②真ん中(同じ高さ)から出るもの、③下からでるもの(へたくそな絵ですみません…)

②真ん中から出るものは比較的安価だが、バーをカットしないと突き出し量を調整出来ないので、あまりお勧めできない。①上から出るものと③下からでるものでは、後述するオプションパーツやフロントバックとの共存の観点から①上から出るものが最も使い勝手が良いと思う。ただし、サイコン/ライトの使用のみ考慮するなら③だ。

 

4-2.オプションパーツ

バーがハンドルの上から出るタイプ限定ではあるが、DHバーの高さをハンドルよりも高くするオプションパーツや、ライトマウント、ボトルマウントなどが発売されている。例えば、プロファイルデザインのこんなやつだ。

特にDHバーの高さを調節できるパーツは便利。楽なエアロポジションは少し高めのセッティングになることが多いが、その高さがハンドルバーと同じ高さとは限らないからだ。ベストなハンドルポジションをそのままに、適切な位置にDHバーを取り付けるためにはこういったオプションパーツが便利なので、オプションパーツが選択可能なDHバー(大手ブランドの①上からバーが出るタイプなら使用可能)を購入することをお勧めする。

 

4-3.サイコン・ライトとの共存

ロングライドなら当然、ライトやサイコン、GPSナビなどをハンドル周りに取り付けるだろう。DHバーはこれらの取り付け場所と被るので、どう共存させるかは1つの問題だ。

CATEYEのライトを使用しているなら、Volt50用のブラケットを流用することや、純正ブラケットを改造することで対応できる。詳しくはこちらの記事にまとめているので、リンク先をご覧いただきたい。

もし僕のようにDHバーにライトやサイコンを取り付けるならバーの形状はお勧めしているスキーベンドかドロップベンド、バーの出る位置は③ハンドルの下の方が良い。理由は下の図の通り、ライトやサイコンに腕が当たらないようにするためだ。スキーベンドでバーが下から出れば、より腕との間に空間ができる。

 

4-4.フロントバックとの併用

ライトやサイコンと同じく、フロントバックを併用する場合も取り付け位置や方法に一工夫必要になる。

下は、ハンドルを真横からみた図だ。左のように固定金具でDHバーと被るものは使用不可能で、右のようにDHバーの下側に取り付けるタイプなら使用できる。この時、フロントバックをハンドルの他にエクステンションバーにも固定しておくと、バックが垂れ下がってタイヤに擦る危険やが減り、着脱も楽になる。

図の赤い線の取り付け方は、こちらの記事内の写真に登場しているので、参考になれば…

前述したとおりだが、フロントバックなどをDHバーに取り付けることを考えるとカーボンバーよりアルミバーの方がいい。また、バーの出る位置が③ハンドルより下だと、フロントバックの位置が更に下がってしまうのが分かる。アクセス性が低下するだけでなく、フロントタイヤに擦ってしまう可能性もあるので、バーは上から出るものの方が勝手が良い。

最近のアドベンチャーロングライドでDHバーの使用者が増えているのを受けてか、バイクパッキングの有名ブランドのアピデュラやリストラップの最新モデル(アピデュラ:レーシングシリーズRestrap:The Adventure Race Range)は、DHバーの使用を前提とした設計のフロントバックを発売している。DHバーへの固定や上部からのアクセス性など、非常によく考えられている。今後はもっとこういった製品が増え、DHバーとフロントバックとの併用に悩まずに済むようになるかもしれない…?

 

その他のおススメ

・バーがハンドルの上からor下から出るタイプ

・オプションパーツが使えた方が良い

・ライト/サイコン/フロントバックとの併用に一工夫

 

 

5.おすすめモデルはこれ

ここまで長々と「ロングライド向きDHバーの条件」を書いてきた。いま発売されているDHバーで、これらの条件に当てはまるものをピックアップしてみたので、参考になれば。

 

①プロファイルデザイン:50a

プロファイルデザインのスキーベンド、エクステンションバーは上から出るタイプ。アルミ製で、最大50°の大きな反りがあるのが特徴。高い位置も握れるので、ポジションによってはバーが下から出るタイプのアームレストに変更するのもアリだと思う。最新のアームレストで調整幅が広いらしく、使い勝手も良さそうだ。(↓)の様なライザーキットでの高さ調整も可能。

②プロファイルデザイン:45/25a

最近の海外のグラベル系やウルトラ○○系レースでよく見る形。僕も使っていて、かなり気に入っている。

アルミ製でアームレストは上で紹介した50aと同じ。Sベンドに見えるが、握り位置が高く腕のポジション的には緩やかなスキーベンドに近いリラックス系。このバーは内側に若干傾いてもいて、マルチポジションなうえセッティング次第でいろいろな使い方が出来る。

・プロファイルデザイン:Air StrikeⅡ

跳ね上げ式アームレストの新型。バーはアルミ製スキーベンド、ハンドルの下から出るタイプ。ハンドルのフラット部分が使用可能になる。旧式(Ⅱでないもの)もまだ発売されているけど、アームレストの調整幅が異なるので買うなら新型がおススメ。

先ほど書いた通り、僕としては跳ね上げ機能は欲しくなったらでも良いと思うけど、フラット部分へのこだわりがある方はこれがベストだと思う。

他にも、

Zipp:ALMINA EVO 110 BELOW

3T:CLIP ON with WRIST COMFORT BEND PRO

なんかも、定価15000円前後のアルミDHバーで、高さ調節も可能なモデル。しかし、ネット通販では入手性が低いので、もし手に入れば…という感じ。あとあとアタッチメント類を購入することを考えても、なるべく入手性の高いプロファイルデザインがベターかなと思う。

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以上、僕なりにロングライド向きなDHバーについての考察を書いてみた。僕はこの考えである程度固まったけど、バーとの相性は各々のポジションや好みによるだろうから、どこまで皆さんにも共通するか分からない。この記事がDHバー選びの参考になれば幸いだ。

おわり

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