ツーリング記

厳冬期:羊蹄山のソロ登山に挑戦!ー冬北海道ライド&登山②

2020年1月、冬季北海道ライドの2日目に羊蹄山へのソロ登山に挑戦した。

ルートは喜茂別コース。天候は『ランクC:登山に適さない』と怪しいが、安全を確保できるところまででも登っていく。果たして僕は登頂することが出来るのだろうか…?

<目次>
1.シェルターでの目覚め
2.登山開始
3.終わらないラッセル
4.ホワイトアウト
5.明日への用意

1.シェルターでの目覚め

昨日のうちに登山口に移動しておいて、シェルターを張っておいた。

夜半一度目が覚めたくらいで、とても快適な夜。久しぶりの雪中キャンプで少し不安もあったけど、なんとなく感覚が戻ってきた。

起床は03:30。

周囲はそれなりに寒いので、シェルターの壁一面に結露が凍っている。ヘッドライトの明かりを反射しキラキラして綺麗だ。(笑)

シュラフに包まりながらモゾモゾと体を動かしご飯を食べる。朝ご飯は簡易的に昨晩買っておいた菓子パンやお菓子など。きちんとシュラフに入れて温めておいたので普通に美味しい。これを外に出して一晩過ごしてしまうと凍って不味くなる。

 

2.登山開始

重たい荷物は自転車の場所にデポしていくので、シェルターだけはそのままに。あとの装備はすぐ撤収できるように片付けてまとめておいた。

登山開始は04:30。

「てんきとくらす」の登山ランクは昨日から今日・明日にかけてずっとCだった。登頂するなら行動時間が長くなりそうだし、積雪が読めないのでなるべく余裕をもって出かける。

夜明けまでまだ2時間くらいはあるので真っ暗。天気も良くないらしく星は見えない。ライトの明かりを頼りにして前に進んでいく。

積雪は思っていたほどなく、スキーの方々のものと思われるトレースが複数あった。やはりこの時期の羊蹄山は、バックカントリーを楽しむ方が多いのだろう。僕みたいなワカンのトレースは1つも見当たらない。(手前が荒れているのは僕がうろうろした跡)

はじめの斜度が緩い辺りは雪が浅くて、登山靴が埋まる程度。今年2020年は記録的に雪が少ない年なので、その影響だろうか?羊蹄山は初見なのでどのくらいが普通かは分からないが、快適に歩くことが出来て有難い。

07:30、約3時間歩き続けると、朝日が登って辺りが明るくなってきた。景色には期待していなかったけど、樹林帯で迎える朝はやはりとても綺麗だ。

積雪は徐々に増していき、トレースが曖昧になる。幸いルートはさして難しくはないので順調に標高を上げていった。斜度が急になるにつれて、かき分ける雪の量が増えるのでラッセルがきつい。

積雪量は概ね膝か膝下くらい。スキーやスノーシューを履いている方はもっと沈まないんだろうけど、ワカンの僕だとこれくらいになる。

 

3.終わらないラッセル

冬山は基本パーティーで登るものだから、先頭交代をしていくのが一般的だ。

しかし僕はソロなので先頭交代も何もない。自分のペースでひたすら登り詰める。積雪と斜度がさらにきつくなってきたので、スコップを取り出し脚の負担を減らす。

時刻は09:00。そろそろ疲れも見えてきた。

お腹も空いてきたので、バケツを掘ってザックをぶち込み休憩。これだけ雪があれば、適当にザックを下ろしてもザックが滑り落ちていってしまう可能性が低いので良い。アイスバーンのようになると、ザックが落ちるのが怖くてあまり悠長に休憩できない。

ふと振り返ると、そこには少しだけ青空が広がっていた。

いやぁ…美しい。

まだ標高1,300mくらいだけど、低層雲の上に出られたみたい。この雲を抜ける瞬間が大好きだ。

このまま晴れていてくれたら嬉しいんだけど、東の空以外は雲に覆われているし、時間とともにガスも上がってきてダメだろう。向かう先の山頂付近は既に真っ白で何も見えない。

足元を振り返ると、僕のラッセルの跡。こうしてみると意外と雪が浅く見えるけど、歩くとそんなことないんだよなぁ…(笑)

ラッセルは大変なので嫌う人も多いけど、僕はむしろ好きだ。確かに体力的にはダメージがあるが、自分で登っている感があって楽しい。そして真っ新な雪面に自分の足跡が付いていくのも好きだし、なんだか気分がいい。

 

4.ホワイトアウト

山頂を目指してさらに標高を上げていく。だんだんと風が強くなってきて、雪が舞い視界も悪くなってきた。

冬空の突き抜けた青が、太陽に光る粉雪で覆い隠されていく。なんというか幻想的だが、この先が不安で内心穏やかではない。

風速は山頂付近でも15㎜/s程度の予報だったから風自体はそこまで問題ないが、視界不良となると話は別だ。GPSも持っているから道迷いはしにくいものの、初見の冬山だし慎重な行動が求められる。どうしたものか。

案の定、みるみるうちに視界がなくなっていく。足元はまだ見えるけど、正直方向感覚は殆どない。羊蹄山は単独峰だから登りは迷わないけど、この中を下るのはちょっと怖い。もちろんトレースはすぐに消える。

アイスバーン帯に出てしまえばラッセルがなくって、ソロであることの不利が解消される。だからラッセルさえ終わらせてしまえば…と思っていたものの、これは少々厳しいかもしれない。

時刻は10:30。標高1,600mを超えると、もはやホワイトアウトで視界ほぼゼロ。一応スマホを取り出してなんとなくその辺に向けて写真を撮ったが、当然何も映らない。

ちょうど積雪が少なくなりワカンからアイゼンに切り替えようという辺り、行くなら履き替えるし、行かないならそのまま後戻りだ。

…少し考えたのち、撤退を決断した。

待っていれば状況が好転しないかな?とも思ったけれど、風は一向にやみそうにない。何より初見の山であるというのもあって、この先標高差300m近い道程を、安全に登頂し下山する自信がなかった。斜度もそこそこあるので、滑落したらマズイ。GPSだけを頼りに歩けなくもないけど、GPSはあくまで補助的なもの。そんなリスクは冒せない。

後から確認すると撤退したのは標高1,613mだったらしい。山頂まではまだまだ足りない、やっぱり難しいなと思う。

200~300m下ると、状況はかなり穏やかになって街並みも時折見えた。あぁ、いい景色だ。こういう景色を見ると「もうちょっと頑張れば本当は登れたんじゃないか?」とか「あと50mだけ進んでみたら何か違ったんじゃないか?」という風にいろいろ考えてしまう。もちろん、そんな「もしも」は存在しないんだけど。

危険地帯を抜けたとはいえ、ぼーっとしていると危ないので今は下山に集中しろと自分に言い聞かせる。一度そうと決めたらやり抜くしかないのだ。降りると決めたら降りる。

山頂を振り返ると、依然として真っ白な世界に包まれている。一人でずっとラッセルし続けるほど、僕は登りたかったのだ。それでも冷静に引き返したお前は偉いぞと、ひとまず今は自分を褒めてやることにした。

青空はすぐに見えなくなってしまって、結局、下山中も大体こんな感じだった。

 

5.明日への用意

13:45に下山が完了して、登山口付近のデポ地に戻ってきた。疲れがどっとこみあげてくる。登頂が叶わなかったので、精神的にも疲労感MAXだ。

とはいえ、そんなことも言っていられない。この冬季北海道ライドはまだ序盤だし、明日からまた距離を稼ぎつつ走って行かなくてはならないのだ。まだそんなに遅い時間ではないので、さっさと撤収してザックを次の斜里岳へ送ってしまわないと…。

…と思っていたら、シェルター内で寝落ちしていた。(笑)

自分で思っている以上に疲れてるんだなと、諦めて今晩もここで寝ることに。今の状態で走るのも危ないし、日暮れからまた雪が降る予報なので、そんな中ナイトライドはするべきじゃない。

下山はしているけど、冬山らしく雪から水を作る。今回初めてジェットボイルを使ってみて、お湯を沸かすのはもちろん雪を解かすのも早くてよかった。ガス缶も軽く小さくできるし、インスタント系の食事でお湯をメインに使うなら便利な道具だなと思う。

夜ご飯はα米いろいろとカレー。携行性もさることながら、ゴミも少なくて済むのが僕としては嬉しい。

僕は一度に3袋くらいは食べてしまうので多少高価な夕食だが、お腹が空くと寒いしリラックスできないのでお腹いっぱい食べる。うん、凄く美味しい。

シェルター内から見る愛車もなかなか良いものだ。真っ黒なバイクが雪景色に映える。これを見るのが好きで、僕はテント泊し続けている部分もあると思う。(笑)

そろそろ真っ暗になってしまう。明日のライドに備えてゆっくりと眠ることにした。

つづく

冬季北海道ライド&登山の各日の記録/まとめ↓

 

2020/02/10:追記

僕の登ったのと同じ羊蹄山喜茂別コース上にて、遭難していた男性の遺体が発見されたようです。亡くなった方のご冥福をお祈りするとともに、捜索・救助に尽力された方に感謝し、登山者として事故防止にいっそう努めていこうと思います。

 

 

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