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『自転車で登山に行く』のはどうか?夏山・冬山を試して分かった楽しみとテク

自転車と登山は共通点もある趣味で、両方を楽しんでいる方も多いと思う。

僕もその一人で、あるとき『自転車と登山の組み合わせってアリ?』という疑問がわいてきた。そこで実際に、自転車で登山口までアプローチし、自転車をデポして登山を楽しむ遊びを実験。

『自転車も登山も両方楽しむ!』をモットーに、そこで発見した楽しみと、自転車と登山を組み合わせるにあたってのテクニックをご紹介したい。

<目次>
1.自転車と登山の相性
2.計画のポイント、テクニック
ー行動時間、荷物、ルート
3.実際にやってみた例
ー軽登山、夏山、冬山
4.実際にやってみてどうか?
5.まとめ

1.自転車と登山の相性

まずは自転車と登山の相性について簡単に。結論からいうと、登山と自転車は相性のいい組み合わせだと思う。

①運動としての共通点

両方とも基本が長時間の有酸素運動なので、運動特性が似ている。つまり補給や行動の計画が立てやすく、シームレスな流れの中で登山と自転車を楽しめる。更に、トレーニング的な観点からも効率がいいし、次の「装備を共通に出来る」という利点にもつながる。

②装備を共通に出来る

実用レベルで一番良いと思うのが、登山と自転車(ロングライド)はかなりのレベルで装備を共通に出来る点だ。

冬山ギアたち

例えば登山用のウエアは汗冷えせず自転車にも適しているし、ゴアテックスのレインウエアは登山・自転車関係なく高いパフォーマンスを発揮してくれる。もちろんテントやキャンプ用品も登山用は軽量・高耐久なので自転車ツーリングにももってこいだ。逆に、サイクルジャージのバックポケットが登山で便利だったり、ライトやサングラス・補給食などの小物が登山で活躍したりもする。

そのおかげで、遊びの幅が大きい割に追加で持って行く必要のある装備が少なくて済む。

 

③渋滞/駐車場/バス時間の問題を解決

登山において一般的な車でのアプローチには、道中の渋滞や駐車場の問題がある。繁忙期の夏期は駐車場が満車になりやすいし、駐車場が遠くアプローチが長い林道だったりもする。そんなとき、自転車なら快適に登山前後の行動が出来るかも知れない。

車・徒歩では退屈な道も自転車なら楽しい時間に変えられるし、MTBなら荒れた林道アプローチも十分走行可能だ。

黒部ダムに近い扇沢駅。

電車&バス利用の方にとっても、行程を全て自分のペースに出来る・時間に縛られず遊べるというのは、大きなメリットだと思う。自転車は輪行(自転車を畳んで電車に乗せること)も可能なので、行動計画はぐんと広がる。

ただし、当然ながら林道にしろ駐車場にしろ、自転車侵入の可否等ルールを確認し遵守する必要はある。自転車もれっきとした「車両」であり、何でも許される訳でないことを忘れてはならない。

 

④楽しい時間が長くなる!

これは相性とは少し違うかも知れないが、僕は自転車も登山も超楽しいと思うし、この記事をご覧になっている方にも同じ様な方が多い筈だ。

登山に行くだけなら登山の時間だけが楽しみだが、自転車で登山に行けばその行き帰りの時間も楽しみの1つになる。「登山に行くのにその道程も楽しくなるなんて、もうそれだけで最高じゃないか!」と。(笑)

 

2.計画のポイント

続いては登山+自転車を計画する上でのポイントを。やはり登山と自転車の両方を楽しむには、それなりに要点を抑えた計画が必要になる。そのポイントを4つ挙げていきたい。

①体力レベルから考える

まずは言わずもがな『体力レベルに合った計画にする』だ。自転車も登山も体力を使うアクティビティだし、疲れ果ててしまっては楽しめないどころか滑落・交通事故の危険性も増してしまう。

何時間行動し続けられるか?

こればっかりは個人の体力次第なので「~がおススメ!」みたいな基準はないが、最低限『登山と自転車トータルの行動時間が何時間になるか?』をよく考えていただきたい。因みに、僕の体感では自転車より登山の方が疲労が大きいので、そこも考慮して計画をするようにしている。

特に荷物が重くラッセルもある冬山では、登山の体力消費が激しい。登山の実際行動時間×1.5くらいを目安に、登山+自転車の行動時間の計画を考えるのが現実的だと思う。

 

②荷物をどうするか?

恐らく登山と自転車を同時に楽しむ最大の問題は「大量の荷物をどうするか?」だ。

自転車での行動時はなるべく身軽な方が楽しいのはもちろんのこと、手持ちのバイクによってはそもそも積載不能という場合だってある。登山装備の運搬方法として、考えられるのは以下の3パターン。

 

⑴ザックをそのまま背負う方法

まずは最もシンプルな「背負う」方法。メリットはお金と手間がかからないこと。デメリットは体力消費が激しく体を痛める可能性があること。

冬山用90L(写真の状態で70Lくらい?)。このサイズは厳しい。

ザックを背負って走れるかどうかは、ザックそのものの形状・重量に左右されるのはもちろん、乗車姿勢やバイクの特性にもよる。ざっくりした目安としては、ザックのサイズは30Lくらいまで、乗車姿勢がアップライドなMTBやクロスバイクなら走れなくもないと思う。逆に冬山等で70L以上背負う場合や、ロードバイク等の前傾姿勢のポジションの場合かなりキツイ。

僕の周りを見ているとザックを背負って走れるかは個人差もあるらしく、50Lくらいのザックを背負ってロングライド(200㎞前後)を走れる強い人もいる。僕は逆に背負うのが苦手で、正直なところ1Lたりとも背負いたくない(笑) 何か背負うと腰や肩がすぐ痛くなるし、走っていて楽しくない。

 

⑵バイクに括り付ける方法

次は「バイクに括り付ける」方法。メリットは体が楽なこと、デメリットはバイクが重くなり積載に工夫が必要なこと。

旅人に多いキャリアスタイル。積載は余裕。

例えば↑こんな感じなら左右のパニアで40L+キャリア上に20Lくらいは積載できる。キャリア上にパッキング状態でザックをそのまま括り付けることもできるけど、ザックの脱落や紐の巻き込み事故などに注意。もしそのまま括り付けられるなら、登山前の再パッキングが不要なのでベストかも知れない。

↓こういうバイクパッキングも可能。メリットは車重バランスをコントロールできる(そしてカッコいい!)ことで、デメリットは積載量が減りお金がかかるうえ、パッキングに時間がかかること。

これで35Lくらい。夏山ならいける。

いずれの方法でも行程をすべて自己完結できるし、体が痛くなることもない。

しかし、当然バイクの重量は登山装備+積載用器具の分だけ重くなる。自転車の走行距離が長ければそれなりに疲労はするので、体力計算には余裕を持っておいたほうがいいだろう。

 

⑶郵送する方法

最後に僕的には一番おすすめな方法を。それが「登山口の最寄りまで郵送する」だ。もし宅急便サイズで送れるならコンビニ受け取りにして事前に送っておけばいいし、160サイズ以上でも営業所止めで送れば営業所での装備受け取りが可能。

簡単な養生てOK

これならライド中は最低限の装備で済み、バイクが重くなることも体が痛くなることもない。登山口までのライドで疲れないし帰りも楽々、非常に理にかなった方法だ。

デメリットはお金がかかること、帰ってすぐに装備のチェックやメンテが出来ないこと。地域にもよるけど、送料は片道2,000円~で、到着まで中1日以上はかかる。(例えばヤマト便の場合こんな感じ各社の料金なども載せると長くなってしまうので、詳しくは別の記事でまとめている。とはいえ、交通費やガソリン代などを考えれば送料は割安なので、トータル金額はそんなに変わらないはず。

 

③ルート選択・行程

自転車で登山に行くと、ルート選択等にも影響が出る。まず、自転車を登山口にデポするため登山ルートはピストンか周回ルートが基本になる。車の場合も同様ではあるが、公共交通機関ならそれに縛られない計画が立てられるのでその点はデメリットだろう。(自転車をデポせず担いで山歩きをする「山岳サイクリング(通称:山サイ)」なんてジャンルもあるが、未知で特異な世界なのでこの記事では割愛する)

バイクをデポする

登山口とはいえ長時間バイクを放置することになるので、何かしらのカギは必要だ。僕としては小物類も一緒にロックできる長いワイヤー錠がおススメ。ワイヤー錠はワイヤーカッターに弱いが、登山口にワイヤーカッターを持ってくる人は稀だと考えて、出来心を防止する方が優先だと思う。

行動計画はケースバイケースだけど、本格的な登山の場合は登山口で仮眠する計画が安心だと思う。登山口までのライドに余裕が生まれるし、疲れた状態で登山をするのを少しでも避けるためだ。特に疲労状態だと判断力が鈍るので、入山前の天候確認や装備チェックをライドからワンクッション置くメリットはあるはずだ。

 

④自転車の種類

自転車の種類に「~でなければならない」という絶対は存在しないが、向き不向きはある。

登山での利用を前提とするなら、僕は軽量なフルリジットMTB・グラベルロード・クロスバイクのいずれかが良いと思う。重たい荷物と多少の悪路に対応できて、乗車姿勢がアップライドなものが何かと楽なはずだ。お金があればEバイクもいいかも知れない。

…とはいえ僕はもっぱらロードバイクを使っているし、要は好きなバイクで走ればいい。(笑)ロードバイクでもポジション調整でいくらか楽にも出来る。

因みに自転車に乗る際のシューズだが、これもお好みで良いと思う。ロードバイク等で一般的なビンディングシューズなら登山靴と履き替える必要があるし、フラットペダルなら登山靴そのままで乗れる。僕は両方試したが、特に決定的な差はなかった。

乗り手が安全に楽しく走れればそれで良いので、自分なりのスタイルで走っていただきたい。

 

3.自転車+登山の例

ここまでは計画時のポイントをまとめてきたが、「登山」や「自転車」といってもいろいろある。ここでは実際の組み合わせ例を4つご紹介!

*1登山メインの方からするとライド距離が少々現実味がないかも知れないけど、僕は自転車界隈では凄くもなんともない一般人なのでふーんくらいに読み飛ばしていただきたい。
*2説明文の「CT」はコースタイム=一般的な休憩を含まない行動時間の略。僕は天候が悪くなければ休憩込CTの0.7倍くらいで歩く。

①軽登山-磐梯山 ver.

軽登山としては、福島県で有名な磐梯山に登った。

磐梯山

・登山:八方台~磐梯山ピストン(CT 3h30m)

・自転車:福島~山形~仙台(344㎞、6,668mUP)

・期間:36時間(約2日)

・スタイル:バイクパッキング積載

・バイク:カーボンロード

・詳しくは行動記録へ⇒記事はこちら

 

友人と共に出かけた福島ヒルクライム巡り。その一環として、磐梯山への軽登山も計画に盛り込んでみた。自転車でのロングライドがメインだが、その過程で登山も楽しんでみた形だ。

装備はこんな感じ。登山用のシューズやサロモンのバックパックは自転車には全く使わないが、どちらもハンドルバーバックに詰め込んだ。サドルバックに入れるのは自立式シェルターとマット、シュラフ。山中でのビバークも可能。すべて基本的にウルトラライト装備なので、ロングライドにも全く支障はなく、登山・ロングライドともに楽しめた。詳しい記録はこちら

 

②夏山-丹沢 ver.

関東圏で有名な丹沢にも行ってみた。

丹沢

・登山:大倉~丹沢ピストン(CT 9h40m)

・自転車:横浜~大倉往復(120㎞、1,000mUP)

・期間:約16時間(日帰り)

・スタイル:キャリア&積載

・バイク:アルミロード

・詳しくは行動記録へ⇒記事はこちら

 

山岳部の山行の1つ。丹沢はアクセスのよい山だが、だからこそ普通に行ったらつまらないなと思い自転車で行くことにした。バイクへの積載はキャリア方式。

本来はもっと軽装でOKだが、山岳部の後輩の初陣で後輩の分のウエアやら装備やらがあり、この量に。この量の積載ならアルプス系の夏山も行けるので、そういう意味での参考にもなるはずだ。

バイクが重く帰宅時はかなり疲弊した記憶がある。笑(記事はこちら

 

③冬山-富士山 ver.

実は冬富士に登った際も横浜から自転車で行っている。

冬富士

・登山:御殿場口~浅間大社東宮(夏CT 9h40m)

・自転車:横浜~御殿場口往復(210㎞、3,500mUP)

・期間:約48時間(2泊3日)

・スタイル:バイクパッキング積載

・バイク:ドロハンMTB

・詳しくは行動記録へ⇒記事はこちら

 

2度目の冬富士だったので「海から自分の脚力で登ってやろう」と意気込んで決行。NEWバイクのシェイクダウンも兼ねたライドだった。

ドロハン化MTBはタイヤが太く多少の凍結路も走れるが、その分車重が重くアプローチが非常に苦しかった記憶。また、行きは多少荷物を入れたザックを背負って走ったが、それが辛すぎた。軽くとも背中に荷物があると苦しいことが良く分かった。

富士山は強風に苦しむも晴天で、全体としてとても楽しかった。(記事はこちら

 

④冬山-岩手山 ver.

先日登ったのがこの岩手山。東北の富士山ともいわれる山で、厳しくも登頂することが出来た。

岩手山

・登山:馬返し~岩手山ピストン(CT 9h30m)

・自転車:滝沢駅~馬返し/馬返し~仙台(225㎞、1,300mUP)

・期間:約36時間(1泊2日)

・スタイル:輪行&ザック郵送

・バイク:激安アルミロード

・詳しくは行動記録へ⇒記事はこちら

 

「ザックを送る」という方式にチャレンジした回。結果的にザックの輸送計画はとてもうまくいって「登山+自転車」の中で一番楽しめたかも知れない。

多少のラッセルも含んでいたので、登山自体はかなり体力を消耗した。家に帰りつく頃には全身疲労困憊…。

それでも帰りはザックを送ったお陰で軽快な走りをすることが出来て、楽しみながら200㎞走れた。もし荷物を積載した状態だったら、かなり苦しい帰路になっていたことだろう。(記事はこちら

 

4.実践してみてどうか?

「で、実際どうなのよ?」という話をすると、登山に自転車で行くのは『非常に贅沢な遊び』だ。

贅沢というのはお金がかかるとかいう意味じゃなく、「家を出てから帰るまでの濃密さ」「長い行動時間によるボリューム感」「完全なる『自力』の達成感」があるという意味だ。

登山も自転車も、計画が重要でいながら自由さと気ままさがある、という自己責任の心地よい緊張感があると思う。登山に自転車で行くと、その時間を思う存分楽しめる。

そして登頂の達成感も格別だ。海から冬富士に登ったときの達成感には、登山や自転車単体では味わえない特別感があった。そんな帰り道に星空を眺めながらクランクを回す時間は、まさに贅沢という他ないと思う。

冬富士にて

もちろん行動計画によっては苦しさもある。体力的負担は自転車or登山だけよりも間違いなく大きいので、時には辛さと楽しさのパラメータが振り切れる。(笑)

登山も自転車も安全に気を付けるべきなので無理はいけないが、どちらも少なからず「辛さを楽しむ」部分があると思う。登山にはない自転車の利点に「途中でやめられる」というのがあって、追い込む程度を個人のスタイルや状況次第でお好みに操れるのも面白いところだ。(笑)

最後に少し話は変わるけど、僕は「道具」が好きで、自転車も「道具としての自転車」が一番好きだ。

登山という大きな制約が生まれると、使う道具=自転車にもたくさんの工夫やアイディアが生まれてきて、実際にそれらを試す楽しみも生まれる。単純に速く走ることに疲れた人や、キャンプ等で道具を駆使するのが好きな人、オリジナリティを出したい人にはもってこいなんじゃ?と勝手に思っていたりする。

 

5.まとめ

以上、長々と「登山+自転車」について書いてきたけど、結論として言いたいことは「楽しいからやってみよう」「自分の体力・経験には注意しよう」の2つ。

先に書いた通り登山+自転車は「贅沢な遊び」で、たくさんの楽しみが詰まっている。その代わりその楽しみを受け止めるだけの体力と経験が必要なのも事実で、迂闊に背伸びすると大事故になりかねない。計画に余裕をもって徐々に慣らしていくのがおススメだ。

前例が少なく僕も研究中なので、この情報を皆さんなりに解釈して、楽しみにつなげていただければ嬉しく思う。

おわり

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