冬といえば登山!ということで、年始の休日に岩手山登山に行ってきた。
折角の機会なので、自転車でのアプローチ&帰宅という楽しみも追加してアタック。天候は良いとは言えないが…冬はそんなもんだろう。厳冬期の岩手山やいかに。
<目次> 1.自宅~登山口 2.登山開始! ー3合目でトレース消失 ー5合目からの急登 ー避難小屋へ ー山頂へアタック! ー下山 3.仙台までの帰宅ライド200㎞へ
1.自宅~登山口
仙台の自宅からは、登山口へ最寄りの滝沢駅まで輪行。今回の登山は岩手山の東側の尾根を登る「柳沢ルート」を選択。
90Lザック+輪行袋という巨大な荷物の組み合わせはめちゃくちゃ大変で、乗り換えがしんどかった。2つ合わせて約30㎏という重量と、周りに荷物をぶつけないかという心配もあって余計に辛い。(笑)
電車を乗り継いで、やっと滝沢駅に到着。気温はマイナス2度くらいでそんなに寒くはない。自転車を駅前で組み立てていると、通りすがりのおばさんがコンビニで差し入れを買ってきてくれた。
「寒ぃし天気も良くないから気をつけてね~」
岩手特有の訛りが印象的だった。訛りといっても青森みたいな聞き取れないものじゃなくて、イントネーションが違う程度。優しい印象の訛りだった。
事前にライブカメラでチェックしておいた通り、路面は基本ドライ。多少の雪がある場所もあったけど、32cのブロックタイヤでも十分走れるレベルだった。予定の地点まで順調に走る。
柳沢ルートの馬返し登山口は、冬季は手前の岩手山神社の辺りで除雪区間が終了する。流石にここからは走れないので、自転車をデポして登山スタイルに切り替え。
ここからは登山口まで3.5㎞雪上を歩く。ラッセルになるかと思っていたけど、ハッキリとしたトレースがあってサクサク歩けた。
21:00頃に馬返し登山口に到着し、休憩所のベンチで就寝。シェルターも持ってきていたけど、普通に寝られそうだったのでマットだけ敷いて寝ることにした。
シュラフの中で天気の確認。登山開始は明日(1月4日)の朝。午前中の天気が悪そうなのが気がかりだけど…午後から回復する見込みなので多分大丈夫だろう。
岩手山は標高2,038mなので、MAXでも風速20m/s、気温-15℃くらい。岩手山は「南部片富士」と言われ、富士山と同じく風が強い。
実は、僕は岩手山に登るのは今回が初めて。気を引き締め直して眠りについた。
2.登山開始!
翌朝、準備を済ませて06:00に登山開始。
この時期は夜明けが06:30ごろなので、まだまだ真っ暗だ。ヘッドライトの明かりを頼りに登っていく。
天気予報通り雪が降ってきて、積雪もそこそこありそうだった。これはこの先大変かも…。
嬉しいのはうっすらとトレースが残っていることで、道迷いの心配もないし歩きやすい。トレース上なら雪が締まっていて、靴が埋まる程度の積雪だった。
2合5勺の、新道・旧道の分かれ道。トレースは消えかかっているものの、旧道の方に若干の踏み跡が見えたので旧道を選択した。この辺りから斜度が増していくので、雪面を蹴りこんでステップを作りながら歩いていく。
3合目でトレース消失&晴れ間
3合目辺りからは、トレースがなくなり真っ新な雪道になった。積雪量は膝くらい。
雪化粧の木々が美しい。何処かへ吸い込まれて行きそうで、ワクワクと恐怖が渦巻く。
野ウサギ?の足跡が登山道にずっと残っていて、道しるべのようであり、なんだか誘われているようでもある。不思議な気分にさせる道だった。
旧道に入ってすぐは頭上も木々で覆われていて、時折ザックをひっかけてしまい枝に積もった雪をかぶる。それでも木々のお陰で風が全くなく、凄く静かな山歩きだ。僕の吐息とウエアの擦れる音が聞こえるのみ。
樹林帯を抜けようというとき、ふと空を振り返ると雲の切れ間から朝日が顔を出していた。朝焼け色に染まる空が、雪化粧の木々の間に映える。
…思わず笑みがこぼれる。これを見られただけでも、登ってきた甲斐があるというものだ。
あぁ、いい景色だ。
この時だけは展望も開けて、馬返しまでの林道もはっきり見えた。僕のトレースもくっきりと残っている。雪山独特の、振り返ったときに自分の足跡が見えるこの感覚が好きだ。
そして僕の進む先は真っ新な雪面…最高じゃないか。ラッセルを嫌う人も多いらしいが、僕は気分が良いのでむしろ好きである。
5合目からの急登
朝焼けを楽しめたのも束の間、数分の間にみるみる周囲は雲に覆われて風も強くなってきた。予報ではこの天気が正しいので驚くことではないが、少し残念ではある。
5合目辺りから特に斜度がきつく、7合目まで急登が続く。僕はそれに加えて途中の岩場区間を数mミスコースしたらしく、えらく大変な道のりになってしまった。中間層以下は雪の締まりが悪く、下手すると腰まで雪に埋まる急斜面。正規ルートに戻るまでの標高100mに相当時間を要してしまった。
地形を覚えてGPSを持っていても、微妙な判断はその場でつけるしかない。初見の山で視界が悪いと、こういう間違いが起こるので良くないな…。
体力の消耗が激しかったので、何度かザックを下ろして休憩した。ピッケルでバケツを掘って(雪の斜面に休憩用の穴を掘ること)ザックをぶち込む。
行動予定は日帰りだが、念のため予備日用に2日分の食料&シェルター類も持ってきている。おかげで重量が20㎏くらいあって、もっと身軽にすればよかったと反省。心配性が災いした結果だ。
中間層を踏み抜くと、こんな感じに穴が開き腰まで埋まる。ザックが軽ければ脚を抜くのもそんなに大変じゃないんだけど…現状だと20㎏くらい背負って片足スクワットをするようなもの。結構しんどい。
こんな雪質でも、地形的に雪崩は起きにくいのが救いだろうか。
ふと横を見ると、結構な斜度を登っていることに気が付く。尾根が狭いので直登するしかない。
標高を上げるにつれてどんどん視界が悪くなっていった。この様子だと山頂に行けるか怪しいなぁ…。ひとまず8合目の避難小屋を目指す。
8合目避難小屋へ
7合目を越えると一転しフラットな地形になるので、視界が悪い今みたいな状況では道迷いが怖い。登りor下りなら方向が定まるが、平坦だと方向感覚が分からなくなるのだ。晴天では考えられないことだが、実際にここで道迷いした方もいるらしい。
10:00前に避難小屋へ到着。
幸いホワイトアウトするほどではなかったし、避難小屋が大きな建物だったから迷うことなく小屋にたどり着けた。表側の扉は閉鎖されているので、裏口の冬季用入口から入る。
しかし扉が凍り付いて簡単には開かなかった。ピッケルでドアの周りの氷を砕いたがびくともしない。あんまりに開かないので、本当はカギが掛かっているんじゃないか?と思ったくらいだ。(笑)
10分近い格闘の末、最終的には何度かタックルを決めてやっと動いた。よかったよかった。
山頂へアタック!
時刻は10:30。背中の重たいものを小屋にデポして、ビバーク装備だけ持って山頂へアタック。今日の風向きは西風で、8合目小屋付近は風裏になっているお陰か比較的穏やかだった。
それでも、9合目にさしかかるにつれ一気に風速が増す。正規ルートは横風にあおられる形になるので、小屋からお鉢を直登するルートで歩いた。
晴れていたらシュカブラが綺麗だったんだろうなぁと思いながら、先へ進む。時折ガスが薄くなって視界が確保できたので、それを頼りに方向を定める。
お鉢に到着。現在標高約1,900m、この先に2,038mの山頂がある。
やはりお鉢の上は凄い風だ。予報では20m/sくらいだったが、最大瞬間風速はもうちょっとあるんじゃないか?という感じ。地鳴りのような轟音を立てて、空気の壁が僕に襲い掛かる。
もし風に煽られたらお鉢に滑落するのだろう、一層気を引き締め一歩ずつ踏みしめた。幸いにもアイゼンが良く効いたので足元は確かだ。アイゼンを研いできたのは正解だったな。
そして、登頂!!!
時刻は11:30。凍り付いた看板をピッケルで掘り起こし記念撮影だ。「えびのしっぽ」と呼ばれるこの雪塊も大きく成長していて、ピッケルを振る度看板が大きく揺れた。
風が強いせいか全然ピントが合わず苦戦したが、なんとか写真に収めた。さぁ、あとは下山するだけ。
晴天の下山
8合目避難小屋に戻ってきたのが12:00。登山口から約6時間と、ここまで予定以上に時間をかけてしまっている。もし下方の天候が悪化していたら、小屋に泊まっても良いかなと思っていた。手早く補給し、パッキングを済ませて再出発。
…と、小屋を出るとさっきまでが嘘のように天候が回復していた!
吹雪の中の下山も覚悟していたので、これは嬉しい誤算である。天気予報は当たるもんだな。
人の居ない凍りついた世界…。やっぱり冬山は綺麗だ。
岩手山は標高約2,000mだが、それにしては景色に高度感があるなと思う。下界の街並みのよく見えて展望がいい。
登るときもこんな景色だったらなぁと愚痴りながらも、内心あれはあれで楽しかったとも思ったり。この景色は登りを頑張った自分へのご褒美だ。
13:30。馬返し登山口に到着。
実は下山途中、3人の登山者と会った。近くに住んでらっしゃる方々だそうで、この時期常連となっているらしい。僕は登山者はそう居ないと思っていたので驚いたが、会うなり「自転車の方ですよね!??」と、逆に自転車で来ている僕の方が驚かれてしまった。(笑)
3.帰宅ライド200㎞へ
14:45。
自転車をデポした地点まで戻って登山パートが終了。ここからは自転車で仙台までの帰宅ライド200㎞が始まる。
景色が良くてテンションが高かったお陰か、サクサクッと下山できて総合タイムも悪くない。自転車に乗る体力も残っている。
と、その前にザックを宅急便で送ってご飯を食べなくては。次の楽しみの為の準備がある。記事も長くなってきたので、楽しいナイトライド編は次回ご紹介!お楽しみに。
つづく