グラベルロードの登場で今や需要が少なそうだけど、MTBのドロハン化にも楽しさがあると思う。しかし、パーツの互換性やら奥の手やら知識関係が非常に面倒くさい。
そこで、僕なりに調べたor試した方法を備忘録としてまとめておきたい。この記事では、自信をもって書けるシマノ11速・ディスクブレーキに絞って書く。ひょっとすると他のコンポを使っている方にも参考になる情報があるかも知れないので、そのあたりはご自身で読み解いていただきたい。なお、記事の内容は主にシマノ公式互換表2019-2020を基にし、適宜引用している。
また、あくまで僕は素人だ。適当なことを書いている訳じゃないけど、こういう邪道なことは現物合わせの要素が強く、結果に関して何ら保証は出来ないので悪しからず…。
<目次> 1.コンポのグレード・型番 1-1 ロード用 1-2 MTB用 2.ブレーキの互換性 2-1 レバーとホース、キャリパー 2-2 キャリパーとローター 2-3 互換性外の組み合わせ例 3.リア変速機の互換性 3-1 ロード用コンポに統一する方法 3-2 STIでMTBのRDとスプロケを使う方法 3-3 STIに拘らない方法 4.フロント変速機の互換性 4-1 STIに拘らない方法 4-2 シムを噛ませてFDを運用 4-3 フロントシングルという選択肢 4-4 その他の方法 5.ポジションの問題 5-1 リーチ計算 5-2 サスペンションとの相性
1.コンポのグレード・型番
まずはコンポのグレードとその型番の整理から。ここからは型番での表記を多用するので、それが分からないと読みづらいから簡単にまとめておく。また、油圧ディスクはちょっと昔のノーグレードモデルも存在しているのでそこも記載する。中古でパーツを探したりする際に役立てていただければいいが、もう知ってるという方は読み飛ばしていただいていい部分。
自分の使っているパーツの型番はパーツを見れば書いてあるのでそこからご確認を。また、型番で検索すればシマノの公式サイトから対応しているパーツや規格を調べることが出来る。
1-1ロード・MTBに共通の表記
型番は適当に付けられている訳じゃなく、ちゃんと意味のある記号だ。まずはそこから。
下の表はシマノの公式互換表から引用した。↓
必要な部分を抜粋すると、
・(CS)-カセットスプロケット
・(FD)-フロントディレイラー
・(RD)-リアディレイラー
・(ST)-STI
・(SL)-シフトレバー
・(BL)-ブレーキレバー
・(BR)-ブレーキキャリパー
・(RT)-ディスクローター
・(BH)-ブレーキホース
あたりだろうか。頭文字を取ったような感じになっているから覚えやすいと思う。
1-1ロード用
この記事では11速について扱うので、基本的に話題にしているのは
・(Dura-ace)-9000系、9100系
・(Ultegra)-6800系、R8000系
・(105)-5800系、R7000系
番手が下がるほどグレードが下がる。そして、ロード用コンポに初めて油圧ディスクが登場したときのノングレードモデル
・ST-RS785(DI2)、RS685(紐)、RS505(紐)
・BR-R785、RS785、RS505
がある。注意点は、ST-RS405とBR-RS405という10速モデルの組み合わせも同時期に発売されている点。こちらはTiagra相当とされているモデルで、上記11速系と互換性がない。
1-2 MTB用
MTB用も同じく基本11速モデルのみ扱う。最新モデル(M9100、M8100、M7100系)は既に12速化してしまっているので、その点にもご注意を。
・(XTR)-M9000系
・(Deore XT)-M8000系
・(SLX)-M7000系
・(Deore)-M6000系
1世代前のXTRからSLXまでが11速モデルなので、基本的にそこからパーツを選ぶことになる。ただし、Boost系のMTBでは10速のDeoreグレードのモデルも一部互換があるので一応記載した。
また、MTBはロードと異なりシフターとブレーキレバーを別にすることができる。例えば、変則系はM7000系のSLXにしつつ、ブレーキ関係は低グレードのM400系にする、といった具合だ。廉価な完成車ではこのような構成も多いのではないだろうか。シフターとブレーキレバーを一体にするにはi-sppecという規格があり、適合するもの同士を選べばセットに出来る。詳しい説明はドロハン化に関係ないので省略。
2.ブレーキの互換性
さて、本題へ。まずはブレーキ関係から。
油圧ディスクブレーキにも互換性があって、基本的にはMTBレバー(BL)にはMTBのArgentaブレーキ(BR)、STIにはロード用のブレーキ(BR)が必要。そしてちょっと面倒なのが、ブレーキホース(BH)とブレーキローター(RT)も適合するパーツ・しないパーツがあること。そのあたりを分けて記載していきたい。
機械式についても適合するものを選ぶ必要があるようで、適応外のものを使った場合どうなるのかは不明。
2-1レバーとホース、キャリパー
❶油圧式ディスクブレーキの場合
油圧式の場合オイルライン系統(STI、BH、BR)は変速機系と同じようにセットになっていて、基本的に同グレードのものと合わせて使うことになる。互換表を見て頂ければ分かるが、ここに関してMTB用とロード用の互換性はない。よって、ドロハン化に伴いSTIを使用するなら、BHもBRもロード用のものにセットで交換する必要があるのだ。
BRについてはフレームへの固定方法に注意。MTBは普通「ポストマウント」、ちょっと古いモデルは「インターナショナルスタンダード」になっているが、ロード用には「フラットマウント」が登場してきている。現状のロード用モデルには同グレードに「ポストマウント」と「フラットマウント」の2種類が展開されているので、フレームの規格に合うものが必要。
もし異なる規格ものを使いたい場合や、ローター径を変えたい場合は各種アダプタを噛ませることで使用可能になる。例えばポストマウントフレームにフラットマウントのBRを付ける、など。わざわざそんなややこしいことをする必要はなさそうだが、最近のロード規格はフラットマウントに寄っているので、それも見越してフラットマウントを買うのもアリかも…?(笑)
油圧式で組む場合、先述の通りホースもきちんと互換のあるものを選ぶ必要がある。ホースは硬さと両端の規格で種類分けされており、きちんと決まっているので適当なものを選んではいけない。
硬さには「高」と「スタンダード」があって、MTB用が「高」でロード用が「スタンダード」だ。これはレバーを握ったときの制動力の上がり方につながる。MTB用の方がホース剛性が高いので軽い力でも高い制動力を発揮するが、裏を返せばコントロール性に劣る。詳しくは2-3で後述するが、STIで「高」のホースを使うと指一本で簡単にホイールロックできるようになる。(笑)
「バンジョー」とか「ストレート」というのが末端の形状だ。「バンジョー」というのは輪っかのような器具をホース先端に取り付けてBRに固定するタイプで、「ストレート」というのはそのまま差し込むこんなやつ。ここが違うとそもそも取り付け出来ないので間違えてはいけない。
❷機械式ディスクブレーキの場合
因みに機械式のディスクブレーキを使う場合は、普通にインナー・アウターワイヤーを用意すればOK。シマノの互換表を基にすると、適応するのは
・BR-CX77
・BR-R517
・BR-R317
・BR-RS305
価格はBR-RS317で4000円くらい、BR-CX77で7000円くらいだ。BR本体の価格は油圧式と大差ないが、油圧式の方がSTI、BHと高価だし、持っていない場合はブリーディングキットも必要になるので機械式にした方が安く収まる可能性が高い。
ベースのMTBが油圧式とか、手持ちのパーツに油圧式が多いとかなら油圧で組んでもいいかも知れない。因みに僕は後者なので油圧で統一している。性能的にも油圧がいい。
2-2キャリパーとローター
BRとRTについて一応互換性がある。一覧はこんな感じ。
パーツ選びの度に確認するのは面倒だが、基本的に11速のグレードのBRはどのRTを使っても大丈夫なので今使っているMTB用RTもそのまま使えるはずだ。
ここでいう互換性はRTが「ナロー」と「ワイド」の2種類あることで発生している。「ナロー」と「ワイド」は、この図を見れば分かるはず。
で、使えない組み合わせが
・BR「ワイド」-RT「ナロー」
のみだ。ロード用のBRとMTB用の高グレードはすべて「ナロー」なので、MTB用の廉価グレードのBRを流用する場合のみ問題になる。
*ローターを買い替えるときは、固定方法にシマノに良くあるセンターロックと6ボルトがあるのでご注意を。
2-3互換性外の組み合わせ例
ちらっと触れたが、僕は互換性がない組み合わせで使用している。この記事でも紹介しているけど、
・ST-RS505 / BH90-SBM / BR-M7000
というミックスをしている。これを選ぶ経緯はいろいろあったのだが、ちょっとした勘違いと予算でこの組み合わせになった。
互換性はないはずだけど、一応普通に使えるし冬季北海道ライドにも耐えてくれた。動作を見ていると、たぶん油圧の場合STIとBLでレバー比に大差がないんだろうと思う。
ただしBHをMTB用の「高」剛性のものを使っているので、ブレーキングが凄くピーキーだ。MTB用の太いタイヤとサスペンションのお陰で路面の摩擦を稼いでいるから慣れれば使用に問題ないが、あまり人にはおススメ出来ない。僕の場合ドロハン化は冬季北海道のような雪道を想定していて、分厚いグローブで握力が吸収されるからこのくらいでもむしろ使い勝手がいいが、そういう極端な使い方じゃないなら普通にロード用のBR・BHをセットで使うべきだろう。
3.リア変速機の互換性
続いてはリアの変速関連を。
残念ながら、リア変速に関してMTBとロードでは全く互換性がない。互換表がそもそも「MTB用」「ロード用」で分けて作られており、シマノ側でもこれらをミックスする方法を想定すらしていないのだろう。順当にいけばホイールも含めたコンポ総入れ替えになる。
そうなる理由は、
・STIとSLのレバー比が違う
・RDの対応ギアが違う
・CSの幅が違う
の3つ。レバー比が違う(STIの1クリックで巻き取るワイヤーの長さ < SLでの1クリックで巻き取るワイヤーの長さ )のでSTIでMTB用RDは動かせない⇒ロード用RDに交換⇒RDの対応ギアが違う⇒ロード用クロスレシオCSに交換⇒CSの幅が違う(ロード用11速CSの幅 > MTB用11速CSの幅)のでフリーホイールにCSが入らない⇒フリーホイールorホイール交換、という流れだ。
これだともはや新しいグラベルロードを完成車で買った方が安いし楽なレベルなので、もっと安価にできる方法をいくつかご紹介したい。
*Di2については、旧モデル・新モデルの互換に注意すればロード用・MTB用のミックスが可能だ。ただし既にDi2製品を使っていない限り、フルセットでそろえる必要があり超高くつく。(笑) 使い勝手もいいはずだけど、僕は知識に乏しいのでこの記事では詳しく書くのは避けておく。
3-1リアメカをロード用に統一する方法
❶CSHG800を使う
たぶん一番簡単なのがこれ。ロード用のロングケージRD(RD-R9100-GS、R8000-GS、R7000-GS)を購入し、CSは11速ながらに幅がMTBと同じCS-HG800(11-34T)を使う。これならシマノの互換性の範囲内で、MTBホイールをそのまま流用できる。ロード用RDといっても上記のもの以外の旧タイプは対応ローギアが32Tまでで対応外なので注意。
僕も最初この組み合わせでドロハン化をしたが、互換性の範囲内なので動きもいいし安心感があってよかった。ただし、リアのギア比が少ないのがネック。オンロードメインorフロントダブルで使うならこのくらいでも何とかなるが、僕は雪道をフロントシングルでつかったので、もっとローギアが欲しくなった。
当然CS-HG800はそのままロードバイクにも使えるので、手元に11速のロードバイクがあってワイドレンジ化もしたいという方には一石二鳥でいいやり方かも知れない。組むのも楽なのでギア比さえよければおススメできる。
❷Wolftoothのロードリンクを使う
Wolftoothからロードリンクという商品が出ていて、これを使うとロード用RDでもワイドレンジのスプロケを使用できる。RDがダイレクトマウント(RD-9100、R8000、R7000)系ではMAX42T、それ以外(RD-9000、6800、5800など)ではMAX40Tまで対応している。
これもCS以外のコンポはロード系で統一できるし、ネット上での下馬評はそこそこいい。最大ギアが昨今のフロントシングルMTBで主流の46Tや50Tを使えないのがネックと言えばネックだが、ドロハン運用するような環境では最適解かも知れない。
ただし、RDのガイドプーリーがCSからかなり離れることになるので、変速レスポンスが悪くなるのは必至だ。
3-2 STIでMTBのRDとスプロケを使う方法
そもそも問題の発端となったのが「STIとSLでレバー比が違う」ということだった。ならばと「レバー比を変換するアダプター」なるものがWolftoothから発売されている。それがTanpan(タンパン)という商品だ。
径の異なるホイールにワイヤーを巻き取ることでレバー比を調整してくれる商品だ。単品でみるとちょっと高いが、これを使えばRDもCSもホイール等も全部そのまま使えるので安価に済む。
詳しくはこちらの記事でWolftoothのTanpan導入を書いているのでどうぞ。11-46Tのワイドレンジで使っているが今のところ使用感も良く、最適解なんじゃないかなと思っている。難点は入手性が悪いことで、僕はオルタナティブバイシクルズさんから購入した。Amazonや楽天で売っていることもあるが値段が変動しやすいので、購入の際は↓からチェックしてみていただきたい。
因みに「シフトメイト」なる商品もあって、同じくロードとMTBのRD変換をしてくるアダプタがある。構造は同じで、シマノ11速以外にも「シマノ+カンパニョーロ(通称シマニョーロ)」という組み合わせでつかうためのアダプタなんかも売っている。
3-3 STIに拘らない方法
最後に「そもそもSTI使わなくてもいいんじゃない?」という話を。
ドロハン用のBLを使い、シフト操作を別で行えば変速系をいじらずに使用することも可能だ。例えば
・アダプタでSLをドロハンに移植
・バーコンを使う
・サムシフターを使う
などがある。基本的にドロハンの径は23.8㎜でフラットバーの径が22.2㎜なので、ドロハンに直接SLを取り付けることは出来ないが、サイコンやライトマウント、DHバーの径は大体22.2㎜なのでそれらを介してSLを取り付けることができる。サイコンやライトのマウントは試していないので分からないが、DHバーなら固定もしっかりしているし一応操作はできた。
TTバイクでお馴染みのバーコンも、ドロップハンドルのバーエンドに取り付けて使うことができる。Trekが出している海外モデルのアドベンチャーバイク(Trek 920の旧モデル。日本には未展開)もドロハン+バーコンを採用していたし、インスタなどではちょくちょく見かける方法だ。
サムシフターはググっていただくのが早いが、バーの途中に取り付けるバーコンのようなもの(こんなやつ)。バーコンとは異なり、取り付け場所をバーエンドに限定されない運用が可能にはなる。価格はそれなりにするので趣味の世界だろう。。
いずれの方法もシフト操作の度に手をブラケットから離す必要があるしワイヤーの取り回しが面倒ではあるけど、自分の手持ちのパーツや運用の仕方によってはアリだと思う。
【2019.11.23追記】
Twitterにて情報をいただきました。
初リプ失礼します。
変速ならgevenalleもありですよ。手をハンドルから離さず変速出来るのでバーコンより楽です。 pic.twitter.com/sxPdQXFtnp— Tomy (@Tomy_viajar) November 22, 2019
gevenalleというブレーキレバーを用いて、バーコンをブレーキレバーと併用できるようです。機械式ディスクやリムブレーキ限定ですが、Vブレーキやカンチブレーキを使っている方にも良さそうです。油圧式やスラム12速対応のものもありました。本国のサイトはこちらです。
4.フロント変速機の互換性
フロント変速に関する互換性は、11速に関してはリア変速と同じく無い。それは
・レバー比が異なる
・チェーンラインが異なる
から。レバー比が異なるためSTIでMTB用のFDを操作することが出来ず、チェーンラインが異なるためロード用FDをポン付け出来ないのだ。チェーンラインって何?等はここで説明していると長くなるので割愛。結論からいうと、ロードよりもMTBの方が外側にFDを配置し動作させる必要があるということだ。
オフロードではフロントシングルが主流になりつつあるし、頑張ってフロント変速機能を維持する必要があるのか考える必要があると思うが、ツーリング目的ならやはりフロントも2枚欲しいところだろう。僕が実際に試した方法ではないので、確実性は低い情報であるが悪しからず。
4-1 MTB系に統一する方法
RDのときと同じく、最も簡単なのがコンポを統一すること。ただし、こちらはロード用ではなくMTB用で統一する。
クランクとFDはMTB用をそのまま流用し、シフト操作にRDで紹介した
・アダプタでSLをドロハンに移植
・バーコンを使う
・サムシフターを使う
等の方法を取ればよい。SNSで一番見かけるのはバーエンドにバーコンを使う方法。一番ハンドル周りがすっきりするし、フロント変速ならそこまで頻度も高くないのでバーコンでも良い気がする。ベースのMTBがフロントダブルの場合、手持ちのパーツも生かせるのでコストがかかりにくいのも嬉しい。バーコンをフラット部分に取り付けるアダプタも存在するので、あとからハンドル上部への取り付けも可能だ。
ワイヤーの取り回しも、↑画像で左下ハンに付いているサスペンションのロックアウトレバーのような感じで取りまわすといい感じ。ただフロントバックによっては干渉する可能性もあるからケースバイケース。
使えるバーコンやサムシフターはシマノ純正からはおそらく発売されていなくて、microShift社からいろいろ出ている。Amazonでも売ってるし、サークルズのオンライショップでもいろいろ選択肢はありそう。例によってロード用バーコンはロード用RD・FDに対応しかしていないので、MTB用FD・RDを動かすならそれに対応したレバー比のものが必要。また、購入の際は対応しているバンド径(フラットバーの多くは22.2㎜、ドロップハンドルは23.8㎜)も確認しないといけないのでご注意を。
4-2シムを噛ませてFDを運用
これはチェーンラインの問題を解決し、ロード用FDをMTBフレームでも使えるようにする方法だ。成功すれば当然STIで操作可能なので、使い勝手は凄く良さそう。ただし情報が少ないのと、個人レベルの加工になるからすべて現物合わせにしかならず、やってみないとうまくいくかは分からない。
方法を簡単に説明すると、
・サイズ違いのバンドFDに偏心アダプタを噛ませる
・直付けFDの台座にスペーサーを噛ませる
など。偏心アダプタの方法は(28.6㎜や31.4㎜のシートチューブの場合)34.6㎜のバンドタイプのFDを購入し、偏心アダプタを噛ませてFDを外側に取り付けるというもの。ただし外側へのオフセット量が限られるのでフレームのチェーンラインに合うかは不明。その点スペーサーの方法は任意の距離FDを外側にずらせるので良さそうだ。
しかし、いずれの方法も入手しやすい商品を見つけられなかった。工作機械を持っている方はいいかも知れないが、ややハードルが高く感じる。一応偏心アダプタはこんな感じだ。↓
その他、MTBはフレームによってFDのワイヤーを引く方向がまちまちという問題もある。ロード用FDは下引きなので、ベースのフレームが上引きの場合は
・フルアウターにして無理やり下引きにする
・アダプタで上引きにする(こういうやつ)
という方法を取らなければならない。これに関してもフレームの形状次第で上手くいくものが変わってきそうなので、フレームを見て判断するしかない。
4-3フロントシングルという選択肢
最後に、冒頭でも触れたフロントシングルという選択肢について。最近のMTBだとそもそもFDの取り付けが出来ないモデルも存在するくらいなので、これからMTBをドロハン化しようという方にはむしろ一般的な方法なのかも知れない。
因みに僕もフロントシングルだが、現状そこまで困ることもない。それは11-46T のワイドレンジギアを使えば、カバーしているギア比の範囲はロードと大差ないからだ。となるとフロントダブルのメリットは、ギアをより細かく選択できることにある。オンロードメインで走るならフロントダブルのメリットが大きいと思うけど、オフロードの割合も多いならフロントシングルでもストレスはさほど感じない気がする。
もし新たにフロントシングルにするなら、チェーンリングはちゃんとナローワイドのものを使った方がいい。理由について詳しくはこちらの記事で紹介している。
4-4 その他方法いろいろ
実は上記以外にもいろいろ考えられる方法はあって、例えば
・(スクエアテーパーBBを使って)軸長調整でチェーンリングを内側に寄せる
・フロントトリプルの外側をつぶして内側2枚で運用+ロード用FD
・Shiftmate#7で「STI+MTB用FD」
などなど。BBやクランク側でチェーンラインをFDに合わせる方法はスクエアテーパーBBが主流だった8速や9速あたりで使っている方は結構やっている方法らしい。その世代はまだロードとMTBのコンポを混ぜても非公認だけど意外と使えたとかなんとか…。今はチェーンラインが基本的に変えられないホローテックⅡが主流だがら11速でやっている方は見たことがないが、理論上可能だろう。ただし、むやみにチェーンラインを短くするとクランクやチェーンリングがフレームに干渉する可能性が高い。特にチェーンステーとチェーンリングの干渉が懸念される。
ShiftmateはWolftoothのタンパンのようなもので、いろいろな組み合わせに対応したアダプタを販売している。使用感は不明…。
【2019.11.23追記】
Twitterにて情報をいただきました。
初リプ失礼します。
変速ならgevenalleもありですよ。手をハンドルから離さず変速出来るのでバーコンより楽です。 pic.twitter.com/sxPdQXFtnp— Tomy (@Tomy_viajar) November 22, 2019
gevenalleというブレーキレバーを用いて、バーコンをブレーキレバーと併用できるようです。機械式ディスクやリムブレーキ限定ですが、Vブレーキやカンチブレーキを使っている方にも良さそうです。油圧式やスラム12速対応のものもありました。本国のサイトはこちらです。
5.ポジションの問題
最後になるが、MTBをドロハン化するにあたって考慮すべき項目はコンポの互換性だけではない。MTBとロードバイクでは要求されるポジションが異なるため、MTBをドロハン化したからと言ってロードバイクと同じポジションを得られるとは限らない。「ドロハンMTBはカッコいいから至高」とか「そんな細かいこと気にしないよ(笑)」という方は読み飛ばしていただいて構わないが、性能面を考慮しつつMTBをドロハン化する方は留意されたし。
5-1リーチ計算
まず問題となるのがリーチ。簡単に言うと、ドロハン化すると「ハンドルのリーチ+STIのブラケット長」だけリーチが伸びる。今乗っているバイクのリーチを確認していただければ、MTBをドロハン化したときにリーチが適合するか分かるはずだ。
リーチ問題を解決するためには、①ショートリーチのハンドルを使う、②ステムを短くする、がある。ただしMTBのステムは基本ロードバイクより短いのでそれ以上短くするのが難しい場合も多い。よってなるべくショートリーチのハンドルを購入するのが現実的だろう。
有名どころだとDIXNAのバンディーなんかが超ショートリーチで60㎜だ。ぼくが今使っているのはリッチーのVentureMax。グラベル向きのフレアハンドル(末広がりのやつ)は一覧にしてこの記事にまとめているので、良ければご参考に。
5-2サスペンションとの相性
MTBをドロハン化するとき、僕はサスペンションとの相性も考えるべきだと思う。
まず1つ目に、コラムからブラケットが遠いとサスペンションフォークが動いたときの挙動に違和感が生まれやすい。これはあくまで僕の体感だが、サスが良く動くときは前につんのめる体勢になりやすく、ロードに慣れている身からするとブラケットからの操作感があまりよくない。気にするほどのことではないかも知れないが、、一応留意事項として。手の位置はあまりコラムから離さない方が無難だと思う。
2つ目は、リモートロックアウト機能がある場合は22.2㎜のクランプができる場所が必要ということ。リモートロックアウト機能がそもそもなかったり、ロックアウト機能をなくしてしまうなら無関係だが、リモートロックアウトをそのまま使うならレバーをクランプ出来る場所がいる。僕ははじめはDixnaのバンディーハンドルが下ハンの径が22.2㎜なのを利用して下ハンにとりつけ、今はDHバーの径が22.2㎜なのを利用してDHバーに取り付けている。
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以上、MTBをドロハン化するにあたっての互換性や注意点を僕なりにまとめてみた。あくまで現時点で僕が知っている情報ベースではあるが、これを読めばシマノ11速ならドロハン化できるはずだ。
面倒なこともあるけれど、機械いじりが好きな方や自分だけのバイクを組み立てたいという方はきっと楽しいと思う。興味がある方の参考になれば幸いです。
おわり