それを自信に、次の目的地である日本最北端 : 宗谷岬目指してひたすら北上する。今日は最低でも150㎞は走っておきたいから、なるべく距離を稼ぐスタイルで。さて、その道程はいかに。
〈目次〉 1. 凍ったおにぎり 2. ひたすら先へ… 3. 吹雪は急にくる 4. 音威子府に到着
1. 凍ったおにぎり
02:00起床。
昨日は早めに寝られたので、さっさと起きて準備をする。冬の北海道は3日目だが、今までとは一線を画す寒さを感じた。今いったい何℃だろう。

いつも通りシュラフから身を乗り出して朝ご飯を食べようとしたとき、昨晩のミスに気が付いた。いつもは朝食が凍らないようにシュラフの中に入れて寝るんだけど、枕もとに置いたまま寝てしまったのだ。
おかげで朝食のおにぎりはガチガチに凍っている…。凍ったご飯の味はいかようにも表現しがたいが、とにかく不味い。しかし非常食を除いて朝食はこれしかないし、食べなければ走れないので無心でほおばった。

どうしても不味いし寒かったので、ガスバーナーを付けてお湯を沸かした。沸かしたお湯でおにぎりを溶かしながら食べたが、それでも残念ながら美味しくはならなかった。
口直しにインスタントのココアを飲んで、撤収。

テント内でガスを付けるととても暖かいのだが、テント内の結露が溶けるのが厄介でもある。撤収でもたつくとテントポールの結合部がガチガチに凍ってしまい、体温と摩擦熱でジョイント一つ一つを溶かしてバラすという苦行を強いられるのだ。真っ暗な寒空の下、一人でこれをやるのは結構しんどい。
2. ひたすら先へ…
さっさと撤収を済ませて出発した。天気予報は相変わらず「曇り時々雪」で、今朝(?)も綺麗な星空は見られそうにない。

雪はひっきりなしに降っていて、走行抵抗も強くなっていく。どこまでも、ただただ真っ白だ。
実は、雪は非常に音を吸収する物質なので、雪が降っている日はとても静かになる。深夜の04:00、ただでさえ静かな時間だが、この天気のおかげでその静けさが際立っていた。
この、淡々と走っていく感じも好きだ。

交通量が多いことが懸念された旭川市街を、予定通り夜明け頃に通過。
ルート自体も中心部は避けてはいたが、ほぼ誰にも会わずに通過できたのはとても上出来。そう、今日はとにかく走りたい。

朝方になって気温が上がってきた感じがしていたが、道端の気温表示は氷点下7度。
記念にとその電光掲示板を写真に収めていたら、近くにいたおばさんに声をかけられた。
「どこまで行くのー?」
僕「宗谷岬です」
「あら大変ね~今日は暖かいから頑張ってね~」
僕「はーい!(?)」
まあ、確かにこの辺りは冬は氷点下二ケタが普通だから暖かいのだろうけど…実際に素直に「-7℃が暖かい」と言われると、感覚の違いに衝撃を受けた。
3. 吹雪は急にくる
早くに出たとおかげで、時間的には余裕を持って走ることが出来ていた。

午後からは思いのほか天気が回復し、時折青空も見られたり。青と白のコントラストが美しい。
はじめての「青空+雪道」の画が見られて、夢中でシャッターを切った。

風もほとんどなくて本当に穏やか。天候には全く期待していなかっただけに、喜びも大きい。
程よいアップダウンとアイスバーンの感触を楽しみながら、雪景色を眺め走るのは本当に気持ちよかった。

このまま日暮れも見られたら良いのになと、淡い希望を抱いたりもした。
が、そんなに上手い様にはいかないのがツーリング。綺麗な時間は数十分で終わり、またあの灰色の空に戻ってしまった。

さらに、それだけでは飽き足らず、風と雪も同時に強くなっていった。
そう、吹雪の気配である。よろしくない。

予感は的中し、吹雪の様になった。
これまでも基本的にずっと雪に打たれていたけど、吹雪いたのは初めて。出発前から懸念していた、事故のリスクが格段に高まる。
幸い視界はまだそこそこあるが、それでも走るのは怖い。歩道に非難しつつ、吹雪をやり過ごす。
ああ、あの青空が嘘のようだ。

天気は時間で変化するのもあるけれど、その場所に依存する場合も多い。軽い峠を越えるだけでも天気は大きく変わる事もある。
だから、歩道や路肩に非難しつつも、完全な停滞よりも先へ進む事を選んだ。最悪ビバーク想定して用意・計画はしているものの、敢えて選ぶことはない。

雪道でのライドについて
こういう写真を挙げると、決まって『ライトや反射板があっても自転車は見えない』から『冬に自転車に乗るのは悪いことだ』という批判が集まる。状況次第ではあるものの、その意見もある意味ごもっともだとも思う。
ただ歩道をのろのろ進みながら思ったのは『相対速度20km/hの僕の事を視認・回避出来ないなら、相対速度40km/hの路上にある障害物や野生動物・事故の残骸等には、100%衝突し事故になる』よなぁ、ということ。

*写真は実際よりも酷い状態に見えます。視界100mはあります。
だからといって、その地域で生活している方々には移動は欠かせないから、一概に反論・批判したい訳じゃない。日本の道路事情的に、車vs自転車は不可避だ。お互い、迷惑をかけていないとは言い切れないから理解出来る。
だけど『お前は見えない』=『他のものはもっと見えてない』だという事を、声を大にして公言するのは、あまりに残念な主張だと思う。
4. 音威子府に到着
あれこれ考えながら歩いたり走ったりしていると、今日のMAXの目的地である音威子府に到着。
時刻は15:30。暗くなる前に辿り着けたのが嬉しい。

音威子府といえば、北海道で1番小さな村。人口わずか831人(2013年)。
それでも、きちんと町としての機能があるのだから凄いと思う。大好きなセイコーマートもあるので、いつもの100円パスタを夜ご飯にした。

何だかんだで今日は172km。結構走ったが、雪道でもアップダウンが少なければこの位はそんなに辛くはない事がわかった。
これなら、明日のうちに宗谷岬に行けるかもしれない。
寝床は道の駅おといねっぷ。管理人のおばさんには「死なないでね」と心配されてしまった。笑

冬はテントを立てるにも一苦労で、雪を踏み固めて整地するところから始まる。しかもテントポールが折れるというハプニングもあって、就寝が遅れてしまった。ストレッチを済ませて眠りに就く。明日はどんな日になるだろうか…?
走行距離:172km / 獲得標高840m