先日の北海道一周ツーリングで、僕は「北海道の海や空の『青』は、本州のそれとは全く違った」という旨をたくさんtweetしブログにも書いています。
色は景色を楽しむロングライドや登山において欠かせない要素ですし、新緑の輝きや秋の紅葉など、うつろう色を楽しむ事が主の場合だって珍しくありません。僕もその色の違いを楽しむ人間の一人です。
しかし、僕が見ている色は皆さんが見ている色とは違うみたいです。今回は、僕が抱える色覚異常という障害について、サドルの上で思ったことを書きます。
<目次> 1.色覚異常という障害 2.僕の世界はセピア色? 3.小さい頃から青が好きだった 4.僕にしか見えない世界
1.色覚異常という障害
まずは「色覚異常」という言葉を聞いたことのない方へ、それが何かを簡単にご説明。色覚異常とは「色弱」や「色盲」とも言われる、色が正確に見えない障害のことです。
目には視力とは別に色を認識する器官があって、通常人間は「光の三原色=赤・青・緑」を認識する器官が、その色ごとにあります。色覚異常というのは、その器官の働きにバラツキがあって、通常人間が見ている色とは異なる色の見え方をする傷害のことです。器官の働きのバラツキには個人差があるので、ほぼ白黒に見えている人から若干色味が異なる程度の人まで、見え方の程度は様々です。(詳しくは「色覚異常」でググってくださいっ!)

実は色覚異常はとてもポピュラーな障害で、日本人男性の5%=20人に1人=1クラスに1人は色覚異常と言われています。この日本、実は自覚症状のない色覚異常者だらけです。
僕自身もたまたま受けた色覚検査で発覚したから自覚しているものの、たぶん検査を受けなければ自覚のないまま一生を終えていたでしょう。
2.僕の世界はセピア色?
先ほど「バラツキには個人差があるので、ほぼ白黒に見えている人から若干色味が異なる程度の人まで、見え方の程度は様々です。」と書きました。では、僕はどんな風に見えるタイプなのか?
僕は1型2覚という類らしく、赤がよく見えていません。警告や注目の意で良く用いられる赤ですが、僕には最も目立たない色です。イメージはこのサイトの記事の写真、真ん中です。(僕には左と真ん中の違いが良く分かりません。逆に真ん中と右は全然違います)

僕は色覚異常の程度としては平均的?みたいですが、「日常生活で困るか?」と言われると、僕は正直そんなに困りません。(笑)
別に視力は普通だし、運転免許だって取れるし。色が正確に分からないので、待ち合わせで「○色の服着てるよ!」といわれたり、「〇色を選んでください」みたいな問題を出されない限り、生きていけます。今の僕の感覚としては、『暑がりの人もいれば寒がりの人もいるように、全色がよく見える人もいれば赤が見えない人もいる』くらいのものです。

…とはいえ、最初に自分が障害者だといわれた時には、結構ショックでした。「あなたは健常者ではありません」って認定されたら、やっぱりちょっと凹むじゃないですか。(笑)
それが、サドルの上でいろんな景色を見るうちに、むしろ僕にしか見えない世界があるのが幸せにも思えてきたんです。
3.小さい頃から青が好きだった
幼い頃の記憶は殆ど残っていませんが、お決まりの質問「好きな色は?」の答えはいつも「青」だったのは覚えています。当時は素直に選んだのでしょうが、今となっては納得です。赤と緑が混同して見える僕の世界で、唯一よく見える色が青だった…。
実は色覚異常を補正する特殊レンズというのがあって、以前縁あってそのレンズを体験したことがあります。
その時思ったのは、赤系の色も緑系も色も、僕の見ている色とは全く異なっていたということ。赤はいつもの数倍輝いて見えたし、緑はとても暗くて深い色でした。
唯一、いつもと殆ど変わらずに見えたのが、僕の好きだった「青色」です。補正レンズを通してもなお、青は同じく輝いていました。そのときはじめて、青が好きだった理由が分かりました。
正常な色覚で見る青色より、僕の色覚で見る青色の方が圧倒的に綺麗なんです。
4.僕にしか見えない世界
さて、『僕の色の見え方が正常ではない』というのは事実は、二つの解釈ができます。
①赤系や緑系の美しい色が見られない。ex.紅葉、夕焼け、新緑
②青系の色を細かく識別できる。ex.空の色、海の色の違い
最近まで僕は、①のことばかり意識していました。「色覚の違いなんて感覚の違いでしかない」とは言ったものの、自分が見ているはずの美しい景色を普通の人より美しいと感じられないのは、やっぱり悲しいことです。
それが、日本全国を自転車で走り回ってサドルの上でいろいろな空や海の青色を見るうちに、それぞれが違って綺麗だという事に気づきました。
北海道の知床の青しかもその綺麗さに言及している人は、殆どいない。
空の色も海の色も、地域によって違いがあるし、季節によっても違います。きっと正常な色覚の人も、その違いは見えているはずです。でもそれを細かく感じて感動している人は、少数なんじゃないでしょうか?
無意識のうちに違いに気づいて、綺麗だと感動できる自分は少しラッキーかも知れないと、サドルの上でぼんやりと思いました。きっと普通の色覚の人が見逃してしまって記憶にも残らない美しさを、僕は知っているからです。

それにこれはロングライドの助けになります。違う場所に行くだけで、違う青に感動して楽しめる僕はコスパ最強です。←(笑)
まあ冗談はさておき、自分の障害も楽しみに変えられて、僕は幸せだと思っています。すべての物事はとらえ方次第ですが、理屈ではなく感覚的に違うとらえ方が出来るようになるのは、容易ではありません。

それに気づかせてくれた自転車ツーリングが僕は大好きだし、そういう楽しみ方があるという事を、知って頂けたら嬉しいです。僕のように色覚異常の人もそうでない人も、自分なりの『色』の楽しみ方があるんじゃないかなと思います。
きっとこれからも新しい発見が、サドルの上で待っているのでしょう。それが楽しみで僕はまた、愛車と何処かへ出かけてしまいます。
おわり