北海道一周5日目。(4日目はこちら)
ここまでの走行距離は1,190㎞。8~9日で走り切るペースで来ているから、今日が丁度折り返し。そろそろ体に疲れが見えてきた。
走るコースは網走から天に続く道、知床峠、開陽台と、綺麗な景色で有名な場所。さらに、嬉しいことに天気予報では1日中晴れ!ここまでの道のり、晴れ予報でも毎日雨に打たれているので期待は薄いが、晴天を願って出発だ。
<目次> 1.雨上がりの美しさ 2.天に続く道~知床峠 3.開陽台 4.根室手前で就寝
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明るくなる前に起きるのが習慣になってきた。いつも通り04:00に目覚ましをかけて寝たが、先に起きるのでその目覚ましがなることはない。
しかし起きたからといって、すぐに動ける僕ではなかった。普段から僕は朝はのんびりしたい派。なんとなくスマホをいじりお気に入りの音楽をかけながら、買っておいたお菓子をつまむ。こうしてだんだん、目を覚ます。
はじめは無駄を省くことに躍起になっていたけど、それだけでは長期間は持たないことに気づいた。切り捨てない方がいい無駄もあるようだ。

嬉しいことに、出発早々に太陽が顔を覗かせてくれた。
昨晩雨に打たれてずぶ濡れになった記憶が、だんだんと上書きされていく。「ああ…。北海道、すごく気持ちがいいじゃないか!」僕はとても単純だ(笑)
路面はみるみる乾き、走り心地が良くなっていく。左右に広がる黄緑色の牧草地が、青空にひと際映えた。晴の日はこんなにも気持ちよかったのか。
写真を撮ろうとバイクを立てかけ、ローアングルを試してふと気が付いた。水たまりをのぞき込むと、一面に青空が広がっている!!

この宙に浮いている感じ、堪らない。水たまりはたちまち干上がってしまうから、水たまり+青空はあまりないと思う。
昨晩辛かった僕へのご褒美だ。お気に入りの世界を見つけて、僕の走りは羽が生えたように軽くなった。
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続いて向かうのは、バイカーやチャリダーに人気の「天に続く道」。
一直線に続く起伏のある道が、まるで天に続くように見える様から、その名前が付けられているらしい。Googleで画像検索をすると、綺麗な写真が沢山出てくる。もうこれは、行くしかない。

ゆるゆるとした登りをこなすと、こんな看板が。
そしてこの看板から振り返ると、天に続くように見えるらしいのだが…

おお!!
これは確かに、天に続いている。そして物凄く、綺麗だ。
どうか、上の写真の10倍綺麗な景色を創造してください。それで僕の見た景色に近づきます。こういう起伏のある直線路は北海道にたくさんあるけど、この道は立地上、他よりも数段格上です。
それにしても晴れてくれて本当に良かった。この道は、青空だからこその気持ちよさな気がする。

景色を堪能し、海岸線に復帰。次は知床峠を目指す。
にしても青い。波が作り出す白い泡が、海の色に負けて浮いてしまっているようだ。海の青さに見とれながら東に進むと、最東端の町「宇登呂」を抜け知床峠のヒルクライムが始まった。

登り初めは非常に快調。天気が良く、景色もよかった。
斜度は恐らく5%前後とかなり緩め。疲労を気にしないなら、アウター縛りでも十分登っていけるような雰囲気がある。獲得標高も700m台なので、ぼーっとしていれば超えられるはずだ。
いつもの「登りで休む」法則を取り入れ、インナーを駆使しタラタラ登る。このゆっくり感がまた良かったりするのだ。
しかし山頂付近は非常に濃い霧と強風で、視界30m程度。やはり標高が高い場所で景色を求めるなら、早朝を狙って走るしかない。山は昼になるとガスりやすいもの。
こんな状態だというのに、当然のごとく無灯火で飛ばす車が多くて驚いた、というか恐怖でしかなかった。悪い意味で、頭が逝かれているとしか思えない。本当にやめてほしい。

前後を爆光点滅でアピールしながら、さっさと山頂に到達。写真を撮ってすぐにダウンヒルを開始した。
知床峠は北側よりも南側の方が圧倒的に気持ちよさそうで、次走るなら南側からヒルクライムしたいなと思った。ガードレール等があまりないのが怖いが、森が開けていて海が見えるつづら折り。最高だ。
ダウンヒル中に一瞬だけ霧が晴れて、急いで写真を撮った。
曲がりくねった道、広がる低木地、遠くに見える青い海…。これを見ながらのダウンヒルは、言葉では言い表せない心の高ぶりをもたらす。
バー―ッという音と共に、全身に風を感じる。下ハンを持つから目線が路面に近づき、体感速度は車やバイクのそれ以上だ。コーナーで適度に減速して、タイヤのグリップを感じながら車体を倒して曲がる。Vittoria Corsaは路面の食いつきも良くて、安心してバイクを倒せた。その時チラッと見える目下のつづら折りと遠くの海が、僕の興奮に追い打ちをかけるのだ。
もう、堪らない。
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ダウンヒルを終えると、再び海岸線に戻る。山頂のガスが嘘のように晴れ、またあの異様に青い海と空が広がった。

しばらく南下したのち、内陸部に上り返し次なる景勝地「開陽台」を目指す。
開陽台もバイカーやチャリダーに人気のスポットで、簡単にいうと草原の広がる小高い丘だ。出発前の下調べでも、行きたいと思っていた場所の一つである。
海岸線を離れてから、ダラダラと微妙な坂を上っていく。坂というには物足りないような斜度だが、バイクが重いので細かなアップダウンが速度に響く。
それでも、眺めがいいからさして辛さはない。少し前乗りを意識したポジションで、北海道の空気を堪能しながら淡々と距離を稼いでいく。しばらく走ったのち、ついに開陽台の入り口に到着した。

開陽台の入り口の坂は結構な斜度だった。
道路の切れる端には青い空に白い雲。これぞ本当の「点に続く道」なんて思ったり。なんだかこのまま空に発射しそうな眺めだ(笑)
そして登り切ったところで左を見ると、凄い景色が広がっていた。

一面の緑。日光を遮る雲が、その広がりの中に影を落としている。
風に吹かれてみるみるうちに変化するその影が、不思議な模様を描き出す。これはまた、美しい眺めだ。
反対側はこんな感じ。遠くまでよく見渡せる。
うん、こりゃ有名になるわな。
標高はたったの270mなのに、この眺めはすごい。ヒルクライムが嫌いな方でも、本州の本格クライムより0が一つ少ないのでオススメです。
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ここまで、写真を撮ったり景色を眺めたりとタイムロスが重なってしまった。風も少なく穏やかで、走行中もついついゆったりとした気持ちになる。巡行スピードが知らず知らずのうちに落ちていたらしい。
まだ200㎞そこそこしか走っていないのに、もう夕焼けになってきた。これはまずい。
綺麗な夕日の写真も沢山撮りたかったけど、このままでは大幅な遅れが生じてしまうので先を急ぐ。ナイトライドは好きだけど、寝床の根室付近も場所によってはヒグマの出没確率の高い区域だ。特に根市街の少し西側では、直近でも目撃情報があったから余計である。
ゆっくり走ったせいで脚には余裕がある。下り基調の直線を、厚床に向かって飛ばしていった。

全力で飛ばすも、寝床に着く前に辺りは真っ暗になってしまった。
このあたりはクマ目撃情報はないものの、やはりおっかない。Volt800+Volt400×2をマックスにして、持てる限りの明かりを確保して走った。路面の段差で鳴り響く、ハンドルバーに着けた鈴の綺麗な音色に、クマが出ない祈りを込める。
こんな時にもヘルメットにライトを付けられると便利で、左右の茂みをいつでも照らせるのは安心感があった。

無事に寝られそうな場所に到着。テント設営をして、マットの上で一息ついた。
折り返しの今日走ったのは260㎞ほど。景色に見とれすぎて、少々ペースダウンしてしまった。だが逆に、体力的にも精神的にも回復。いい景色の中を走れると、満足感があるしとても楽しい。
さあ、残りはあと1000㎞を切っている。明日も頑張ろう。
距離 267.4㎞|獲得標高 2,439m|グロスタイム 13時間40分
つづく