北海道2日目。(1日目はこちら)
昨日はまさかのヒグマ遭遇で、目標ペースの270km/日を下回った。今日は天気も悪くはなさそうだし、ペースを回復しておきたい。まずは島牧村を通過、それから岬と峠を越えて、札幌まで走り切る。
300㎞をゆうに超えそうだけど、クマの心配はないからナイトライド覚悟出発した。
<目次> 1.ニセコパノラマライン 2.神威岬・黄金岬 3.小樽~札幌
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起床は04:00。
撤収するものも少ないから、手早く片づけを済ませた。多少無理して長い距離を走る場合、体へのダメージの他に就寝時間の遅れで生活リズムが崩れる危険がある。1週間以上連続で走るのだから、一定したパフォーマンスを出すためになるべく起床・就寝時間も一定にしたい。
その為にも、早めに走り出すのが賢明だ。明るくなった04:30に出発。
朝日は山側から出てくる。雲は多いが、そのおかげでぼんやりとした綺麗な空の色だった。
天気予報では曇り。東の風が強いから、向かい風基調である。距離を伸ばしたい今日これは辛い知らせだが、愚痴を言っても仕方ない。とりあえず走る。
まずは軽いギアを回しながら、体を温めていく。いきなり踏み込むのは厳禁だ。僕は膝を痛めやすいから、そんなことをすると一発でライド終了。ダンシングをしたり、高ケイデンス走をしたり。少しずつ身体の痛みやハリをチェックしていった。うん、今日も大丈夫そう。
一つ目の山場はニセコパノラマライン。海岸線をいったん離れ、約750mのヒルクライムをする。
向かい風をDHバーでいなしつつ数十km海岸線を進むと、ヒルクライムが始まった。750mというとそこそこ長い登り。荷物もあるバイクでは1時間くらいはかかる。急がず焦らずゆっくりと。
以前は登りが嫌いだったけれど、『登りは休憩区間』にすることでかなり楽しめるようになった。はじめのうちからインナー×ローを積極的に使い、脚に負荷をかけずに走る。その間に凝りやすい肩や首、腰のストレッチを入念にすれば、ダウンヒルをする頃には長時間の休憩をした後のように元気になっているのだ。
山頂に着くまでに、野生のオコジョを見ることが出来た。
一瞬で写真を撮る時間がなかったが、とてもかわいい奴だった。昨日見たクマとは大違いだ。そんな発見や出会いもあるから、山は嫌いじゃない。
ダウンヒルの最中には、キツネにも出会った。キツネは野生動物でも反応は野良猫に似ていて、警戒心は強そうだけど一目散にも逃げない印象だ。つい速度を落とし話しかけている自分が、我ながら滑稽だ。笑

登り初めはパラパラ雨に降られたけど、峠を越えるとこの景色である。
海辺の街並みはとても綺麗だ。つづら折りを下る途中、一瞬見えるこんな風景に癒される。ああ登ってよかったなと、歌を歌いながら気持ちのいいダウンヒルをした。
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町を抜けてからは、また海岸線を走る。
にしても、本当に走っていて楽しい道だ。よくこんなところに道を通してもんだと驚く。ごつごつした岩々が、すごい迫力である。
景色がいいおかげで向かい風にも何とか耐えられる。
向かい風というのは登りと違って、ご褒美の景色もダウンヒルもない。はっきり言って走る障害にしかならないとさえ思う。空気抵抗の増加分を考えたら、風速1m/sにつき巡行を3.6km/h上げているのと同じことだ。考えれば考えるほど、理不尽な話…。
イライラしても余計に辛いので、何も考えずにクランクを回す機械と化す。さっきのヒルクライムでストレッチしたおかげで、長時間のTTポジションもあまり苦ではない。
意識を飛ばしていたのであまり道中の記憶がないが、有名な景勝地である神威岬(かむいみさき)に到着した。
が、予想していたよりも多い観光客の数。特に、中国からの観光客が目立った。中国人が嫌いという訳では全くないし、いい人にもたくさん会ってきたけど、こういう集団の観光客となると残念ながらいい思い出は一つもない。問題はどこにあるのだろう?日本人ツアー客も、同じ目で見られることがあるのだろうか。
居てもストレスになるので、さっさと退散。
僕が求めているのは、こんなものじゃない。さあ、走ろう。
続いて黄金岬。向かい風のせいでグロスペースが下がっていたから、ここは入り口まで。
ここからは小樽・札幌へと向かう。
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小樽に近づくにつれて、どんどん交通量が増えていった。
といっても、普通の地方都市と同じくらいだ。寧ろここまでが少なすぎたのかもしれない。500kmぶりに車のストレスを感じる。
小樽も、the観光地という場所だった。ゆっくり見て回るにはきっといい街なのだろう。港近くの倉庫群は趣があったし。
今の僕には縁のない話なので、さっさと札幌へと向かった。日はだんだんと暮れてきている。寝る時間を確保したいから、早く寝床の予定の道の駅まで走りたかった。
こういうところが、旅とロングライドの根本的に異なるところだと思う。
『北海道一周します!』っていうと『○○(有名な観光地)行くの?』とか『そういう旅っていいよね~』なんて言いわれるけど、そうじゃないんだよなあと。これはきっと、なかなか人には伝わらない感覚である。
西の空もすっかり暗くなるころ、ようやく札幌駅前に着いた。ここまでがちょうど300kmくらい。
話には聞いていたけど、札幌駅はすごく大きな建物だった。そして札幌という街も、非常に都会であった。流石は北日本の中心地。全国ほぼすべての都市を走ってきたから、なんとなくその規模感や雰囲気が分かる。予想していた通りの大型地方都市の姿だった。
今日の寝床予定地は、ここからさらに北の方に25kmほど走ったところにある。向かい風でもうヘロヘロだし、そろそろ眠くなってきて気づくと巡行速度が落ちている。一刻も早く寝たい一心で、クランクを回し都市部を離れていく。
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夕飯を済ませ、寝床に着いたのは20:30頃。
バイクで日本一周中の方が先客で、既にテントを張っていた。挨拶をして、僕も近くの空きスペースにテントを設営。
早く寝るために、早く準備を済ませる。パッキングをほどき、シートを敷き、テントを張って、マットを敷き、着替えをして、ストレッチの後シュラフに包まる。この先1週間の、僕のルーティンである。
スマホを充電しながら、明日のコースと天気予報を確認。
稚内までが約300km、ひとまずそこが目標だ。天気は相変わらずの曇りで、風は追い風基調らしい。予報が変わらないことを祈って、僕は目を閉じた。
距離 323.5㎞|獲得標高 2,564m|グロスタイム 16時間03分
つづく