『自転車でオフロードを走りたい』
今年に入ってから、僕は想いを抑えられずにいた。オフロードを走るには、基本的にそれ専用の自転車が必要になる。例えばMTBやグラベルロード、ファットバイク等…
しかし、僕はそのようなバイクを1台ももっていない。家にあるのはロードバイクだけ…。絶賛オフロードバイクの購入検討中なんだけど、そもそもロードバイクでオフロードの走行は出来ないのか?という根本的な疑問がわいてきた(笑)
それに、例えばMTBを買ったとして、どこに走りに行くのか?というのも重要な問題だ。
その探索もかねて、ロングダートで有名な御荷鉾スーパー林道にロードバイクで行ってみることにした。
ルートはこんな感じ。
まずは自宅の横浜から高崎の近くまで120kmを自走で走り、そこから御荷鉾スーパー林道へ。
御荷鉾スーパー林道は全長約60kmの長い林道で、そのうちダート区間は15kmほど。調べたところ、ダートは山の尾根沿いに走っているから、アップダウンはそこまで多くない。荒れ具合はロードバイクでギリギリ走れるか、微妙なところだ。
装備
使った装備はこれ。
・バイク:Specialized Roubaix SL4 Disc
⇒カーボンフレーム、油圧ディスク、グラベルキング26c
・フロントバック:モンベル フロントバック
⇒補給食、財布、スマホ、ごみ入れ
・フレームバック:ブラックバーン アウトポストフレームバックM
⇒ドリンク(1.5Lほど)、バッテリー類
・サドルバック:ブラックバーン アウトポストシートバック
◎バイクについて
使用するバイクはロードバイク。
つまりはオフロードの利用を想定されていないという事。設計上想定されていない使い方をしているから、メーカーやメカニックの方から怒られそうだ。さて、どこまで耐えてくれるだろうか?
オフロードを走るとなると、タイヤの太さがものをいうらしい。グラベルロードだと35~40c、MTBだと2インチ前後。それに対し、ロードバイクが履けるタイヤはせいぜい25cだ。今回使用するタイヤは、パナレーサーのグラベルキング26c。
⇩グラベルキングには通常モデルとグラベル特化のSKがある。僕が使っているのは左の通常モデル。
タイヤ自体はグラベル(砂利道)も想定されているけど、普通にオンロードのロングライド用に購入し使用しているものだ。26cの太さでどこまで耐えてくれるのかが不安なところ。
そして、ダート走行をする際にはタイヤから跳ねた石によるフレームへのダメージも考慮しなくてはならない。最近話題のグラベルロードにも、カーボンモデルにはBB下に保護プレートが付いている。
フレームをダメにしたくはないので、こんな感じでフレームにウレタンゴムを巻いてみた。
100%守ることはできないだろうけど、ないよりはマシな筈。
◎装備について
実は今回のライドは御荷鉾スーパー林道だけでなく、途中テントで1泊し渋峠かビーナスラインを走って帰る予定。その装備をいれるため、大型サドルバックを持ってきた。
左から、黄色いのがマット(SEA TO SUMMIT U.L.マット)、その上がグランドシート(モンベル)、青いのがシュラフ(モンベル ダウンハガー#5)、緑のが軽量テント(モンベル U.L.ドームシェルター1型)、その下の緑の長いのは付属のテントポール、黒い袋がレインウエア(モンベル トレントフライヤー)、その他は右上がコッヘルとガス・ガスヘッド、バッテリー、チューブ、替えのインナー。
これを入れても余裕があるんだから、ブラックバーンのサドルバックはいいサイズ。
フロントバックとフレームバックは、林道の無補給区間を走り切るための水と食料を入れるためのもの。持っていく食料は
・水4L
・パン1000kcal分
・羊羹6つ
・おにぎり2つ
・お菓子300kcal分
四国での教訓もあるから、補給は多めに持っていく。
特に今回は真夏。近隣の熊谷が全国の歴代最高気温を更新し、41.1℃を記録した週末だ。いくら標高が1400mとはいえ、暑いものは暑い。山中で水分が切れたら終わりだ。4Lでも少ないくらいかも知れない。
林道の入り口まで約900m登るから荷物は出来るだけ少なくしておきたいところだけど、水や食料は僕自身のライフに相当するものだ。HPは減らしてはいけない。
いよいよ実走!
林道へ向けた登り初めは07:00頃。
さて、いよいよヒルクライムスタートだ!
始めは舗装道路だけど、林道らしく急登で道幅は狭く、路面は荒れている。ここで消耗してはいけないから、インナーローでのんびり登る。
とはいえ、この時間からすでに暑い。ヒルクライムでは走行での風が来ないから、体に熱がどんどんたまってしまう。汗が全身からにじみ出て、ウエアの端からポタポタと垂れていく。自転車のフレームは既に汗でびっしょり…。
御荷鉾山の山頂付近まできて、いよいよ御荷鉾スーパー林道に近づいてきた。
目標としている場所の看板が出てくると、一気にテンションが上がる!
ここからは勾配が緩やかになり、じわじわと標高を上げる道。うるさいくらいのセミの鳴き声を聞きながら、西へ西へと走っていく。
そしてついに今回のメインディッシュ、ダート区間の始まり!!
始めは御荷鉾スーパー林道の管理棟まで2kmほど登り区間が続く。
斜度はそこまできつくはないが、ダートの登りとなると話は別だ。荷物が重いせいもあって、舗装路の2倍くらい力を込めて踏まないと進んで行かない。速度が遅いとバランスを崩しやすいので、体幹に力を込めて慎重に。
このあたりのダートはたまに大ぶりの石があるものの地面は締まっていて硬いので、26cでも十分に走れる。タイヤの空気圧を下げておけば、そこそこグリップもしてくれた。急にトルクをかけるとリアタイヤが空転してしまうから、一定の力でじわじわ回す。
オフロードは疲れるけど、ただ走るだけじゃなくテクニックを意識するから登りも刺激的だ。超ド素人の僕だけど、うまくコントロールできた感覚があると、すごく楽しい。(もちろん、オンロードのヒルクライムでも技術はいるけど)
御荷鉾スーパー林道の管理棟に着いたが、管理棟はシャッターが閉まり人はいなかった。
まあ、何か用があった訳じゃないからそれはそれだ。小休憩して、先に進む。
ここで気が付いたことなのだが、この一帯はスズメバチが異常に多い。
ダート区間に入ってからというもの、写真撮影などで立ち止まると、僕の周りを数匹のスズメバチがブオーンという音を立てながらぐるぐる旋回していた。この旋回行為は警戒している証で、巣が近くにあるからさっさと立ち去るのが無難。
しかし、どれだけ進めど、立ち止まるとすぐにスズメバチ達がぐるぐる回りだす。これは参った…。とはいえ、走っている限りは大丈夫。注意しつつ、先へ進む。
やっぱりダート区間は楽しい…!
辺りの木々からの木漏れ日が美しい。セミの声や小鳥の鳴き声がする。ああ、夏だな。
ダートは徐々に浮いた砂利に変わっていき、26cタイヤが埋まったり滑ったりするようになった。
それでも、スピードを出さなければ落車するほどではない。
これがMTBだったら、もっと楽しいのだろうな。ロードバイクにこの装備では、出せるのはせいぜい15km/h程度だろうか。MTBなら気兼ねなく駆けられるのだろう。
ダートはまだまだ続く。
舗装道路の15kmはすぐそこだけど、ダート区間となるとかなり長く感じる。細いタイヤで走っていたから、余計なのかもしれないけど、体への疲労も大きい。
ダートの後半は下り基調になってきて、ペダルをこがなくていい分、バイクコントロールに神経と体力を消耗した。
バイクに取り付けている装備については、全く問題なく機能してくれた。
振動でバックが緩んだり、落ちたりする事も懸念していたが、そんなことはなかった。流石はMTB系のメーカーのブラックバーンである。キャットアイのライトとサイコン、ガーミンのeTrexも落下はなし。
身体はどんどん疲労していくけど、この美しさに癒される。
自然の美しさを感じたいのなら、きっとオフロードに限るのだろう。
真っ黒なフレームとバイクパッキングって、こういうグラベルに映える。
程なくして、森の中を出た。
標高が高いことを忘れていたが、アップダウンがありつつも常に1300m越えである。辺りの木々がなくなると、一気に視界がひらけ晴れ間が広がった。気温も程よく風が心地よい。
スズメバチのせいで、立ち止まってゆっくりできないのが残念だが。
そして、御荷鉾スーパー林道の一つの名所となりつつある、林道の崩落地点へ。
道がすっぱりと崩落しなくなっていて、そのおかげかとてもいい眺めだ。ロードバイクでここに来た人、何人いるんだろう?
ここまででダート区間は終わり。走り切った達成感にひたり、御荷鉾スーパー林道の出口へと向かう。
ダート区間が終わったとはいえ、林道は続く。ダウンヒルは慎重に。
オーバーランして落ちたらシャレにならないし、対向車が来ないとも限らない。先日あった、道志のロードバイクとバスの接触死亡事故。そんなことは、もう起こしてはならない。
スピードと落下物に気を付けながら、下仁田の町へと降りていった。
ダウンヒルが完了し、一息。
標高が400mを切ったあたりから一気に空気が熱くなり、猛暑の世界へと一気に戻された。ふう、疲れた疲れた。
総評
ロードバイクでどこまでダートを走れるのか試したかったが、予想以上に走れることが分かった。
ダート区間約15kmで、乗車率100%、落車0回、パンク1回。ダウンヒル中に大きな段差があり、リアをリム打ちでパンクさせてしまったのが痛手だったが、逆にそれだけで走り切れたのは正直驚きだ。バイクにこれといった傷もつかなかったのもうれしいところ。
26cのタイヤでも、砂や泥のようなタイヤが沈むところや、10cm以上の石などの段差がなければ、何ら問題なく走ることが出来る。天候が悪かったりするとかなり厳しいだろうが、環境を選べばオフロードの世界に触れるくらいは問題なさそうだ。
しかし、走りが慎重になって走行の爽快感を味わえなかったから、やはりオフロードバイクがほしくなる。下りでの振動はかなりのものだから、バイクへのダメージを考えても、あまり長距離を使いたいとは思えないし、オススメもできない。ロードバイクでも軽いダートなら「一応走れる」程度に考えて頂けると、理解が正確になると思う。
それにしても、オフロードは楽しい。
自然の中を自転車で走る気持ちよさと、バイクコントロールをする気持ちよさ。それはきっと、オフロードの世界にかないものだろう。まだまだ知らないことだらけだけど、さっさとバイクを買って、あちこちを走ってみたい。
自転車の世界、まだまだ楽しみは奥が深そうだ!
おわり