お役立ち記事

寒くて寝られない夜に、少しでも体力を回復する方法(野宿・キャンプ・ビバークの緊急時)

秋~冬~春の屋外泊では、しばしば防寒が不十分で寒さに震える夜を過ごすことがある。

キャンプでは単純な準備不足で、あるいは登山やサイクリングにおける緊急時の避難・一夜を明かすビバーク等で、そんな悲惨な状況に追い込まれる。

この記事では、僕の知識と経験に基づいて『今寒くて寝れないんだけど、どうしたらいい?』という状況で使えるあれこれをまとめていきたい。

<目次>
1.寝られない夜は超つらい
2.睡眠時には体温が下がる
2-1.体温変化のリズム
2-2.長時間睡眠はあきらめる
3.断熱と保温に全力を注ぐ
3-1.床と空間の断熱を考える
3-2.首を固めて保温層を作る
4.体温を上げれば数時間寝られる
4-1.食事は有効
4-2.筋トレとストレッチ
5.睡眠と行動を臨機応変に使い分ける

1.寝られない夜は超つらい

既に「今寒くて寝られない」方やそんな夜を経験済みの方はすっ飛ばして頂いて構わない部分だが、『震える夜は超つらいよね』という話を少しだけ。

恐らく装備不足や緊急時のビバークを経験していない方は「ふ~ん」程度だと思うけど、疲労困憊な状況なのに寒くて寝られない一夜を過ごすのは本当に辛い。夜明けが待ち遠しく、闇の時間が永遠の様に思える。太陽が出るのはまだかと時計を見ては、5分しか経っていないことに絶望をする……。そんな時間だ。

夜が明ければすぐ帰れるキャンプならまだしも、旅を続けたり自力で脱出しなければならないときは、翌日の為に体力を少しでも残しておく必要がある。さらに、登山など厳しい状況下では、緊急時にビバークのつもりがそのまま低体温症で帰らぬ人に……という事故もある(特に高齢者に多いらしい)。行動不能な体力を安全に回復させる方法は非常に重要だ。

この記事では、苦痛を和らげるほか、少しでも体力を回復できる僕なりの方法を書いていきたい。

 

2.睡眠時には体温が下がる

「そもそも、動いているときは暑かったのになんで寝る時に寒くなるのか?」という話を。寒さの原因を知るだけでも、今自分の身体に起こっていることを客観的に捉えることが出来て気持ちが楽になる。

 

2-1.体温変化のリズム

寝ようとするときに寒くなる理由は大きく2つあって、①身体が静止するため筋肉が熱を発しなくなる、②体温変化のリズム的に体温が下がる、だ。

運動らしい運動をしていなくとも、起きて活動をしているだけで筋肉が発熱してくれるので体温はそれなりに保たれる。それが寝る時にはじっとして全身が脱力するから、体温が下がってしまうのだ。

そして、人間の生理的なメカニズムとして睡眠時には体温が下がるというのがある。この体温が下がる現象は、逆に意図的に体温を下げて睡眠導入するのにも使えるんだけど、寒い夜には寝られない原因となる厄介な仕組みだったりもする。

 

2-2.長時間睡眠はあきらめる

正直なところ、寒くて寝られない=十分な保温が出来ない時点で、長時間の睡眠は不可能だと思う。工夫をすれば「まだマシ」にはなるけど、翌朝までぐっすり……という魔法の様な方法はないので、長時間の安眠は諦めて腹をくくった方が楽だ。(笑)

ただしそのうえで、1~2時間でも睡眠をとることが出来れば体力を回復出来るし、寒くて辛い時間をスキップすることが出来る。保温装備が十分でないときには、1~2時間の睡眠を1つの区切りとして、それを夜明けor行動開始までに何回するかを考えるのが良いと思う。

 

3.断熱と保温に全力を注ぐ

で、その「1~2時間の睡眠」を確保するために、まず取り掛かるのは保温と断熱だ。今自分が寝ている場所から使っている装備まで、思考をフル活用して0.1℃でも暖かくなる環境を考える。

 

3-1.床と空間の断熱を考える

まず考えるべきは、自分が寝ているその場所だ。風通しの良い場所に居たり、冷たい地面に直接寝ていたりするのならば、今すぐ場所を変えた方がいい。

環境の断熱は①床、②空間、の2つに分けて考えると分かりやすい。

初心者の方で盲点なのが①床で、地面からの底冷え対策を怠りがちだ。熱伝導率は圧倒的に気体(=空気)より固体(=地面)の方が高いので、あっという間に体温が吸い取られて行ってしまう。更に、体重でロフト(ウェアやシュラフの空気の層:保温効果が最も高い部分)がつぶれてしまうから、どんなに着込んだところで床からの底冷えは効果が薄い。

そこで重要になるのが「いかに床から離れるか」。もしマットや厚みのあるタオル、着替えを持っているならそれを敷くのがいいし、もし枯れ葉などがあるならそれを敷き詰める等するのもいい(危険な虫がいないか注意だけど)。人工物がある場所なら、ベンチの上に寝転がるだけでかなり寒さは緩和されるだろう。

この断熱性能を考えるとき、頭に入れておくべきは『R値』。R値は熱抵抗値のことで、簡単に言うと数値が高いほど断熱性能が高くて暖かい。ざっくりいうと、アルミ:0.0005、コンクリ:0.06、石膏ボード:0.45、木:0.7、という感じ。僕の経験上も寝るなら木製ベンチがベストなんだけど、数値的に見ても納得だ。

②空間に関しては、なるべく狭くて風通しの良くない場所を選ぶ。

最低3辺、出来れば4辺囲われたスペースがあるとGood。たとえ今は無風でもこれから風が出てくる可能性があるし、空気の動きが少しでも制限された方が暖かい。雪なら壁を作ったり穴を掘ったり、街ならバス停・無人駅・道の駅など、壁を確保できる環境が最適。登山なら岩や倒木を利用したり、ツェルト(簡易的なテントとタープの中間の様なもの)を使用したり……。

もし4辺の壁と天井も確保できるなら、そこは最適解と言っていいだろう。空気を閉じ込めておくことが出来れば、自分の体温で徐々に室温が上がるので快適性が増す。

 

 

3-2.首を固めて保温層を作る

次に重要なのが、『今自分が使えるものをフル活用すること』。別に服は何枚重ねまでとか、これは服じゃないとか、そんな些細な常識は捨て去って使えるものは何でも使う。

着替えは惜しまず着た方がいいし、ザック(リュック類)、ゴミや袋、シート、タオル、草……etc.なんでもいい。使えそうなものがあれば、四の五の言わずにとにかく使う。一度シートなどに包まってしまうと、もう一度シートから出て着換えるのが億劫で仕方なくなるけど、その価値はあるので面倒くさがってはいけない。

ここでのワンポイントが、『保温の基本は断熱層=空気の層を確保すること』の意識。身体の近く程ふんわりと分厚い空気の層を作り、外側に風を切り熱を反射するシート系を配置する。

重ね着は基本的に有効だけど、このとき空気の層=ロフトを潰してしまうと効果が一気に薄くなってしまうから、ウェアのサイズや特性にも気を配る。フワフワなインナーやフリース、ダウンは内側に、ウィンドブレーカーやレインウェア、シートなどは外側に。

当然、濡れた服はロフトを潰してしまうし水はR値が低いので脱いだ方がいい。ただし着替えがないなら臨機応変にすべきだし、着ながらにしてゆっくり乾いてくれる高性能素材(登山用のインナーやフリース+ゴアテックスなら、湿っぽくても寝ている間に乾く)は、その限りではない。

そして、『首を固める』『頭まですっぽり覆う』と言うのも大事。

太い血管が皮膚の近くを流れている場所ほど体温調節に大きな影響を与えるので、「首」「手首」「足首」と言った首系から、「内股」「脇の下」を温めると効果が高い。

また人間は脳が発達しているから頭部の血行が良く、それゆえ発熱量も逃げる熱量も大きい(指などと違って冬山で皮膚を晒しても凍傷になりにくく、組織が壊死しないのもそのため)。だから頭まですっぽり覆うことで、その熱を逃がさずに再利用することが出来る。

逆に血行が悪くなり体温が下がりやすいのが手足で、ここを温めることで体感の寒さが和らぐ。足先はザックや袋に突っ込むことで、手はポケット(できればズボンのポケットに入れて内股の血管付近)で温めると、寒い辛さが少しは和らぐはず。

 

 

4.体温を上げれば数時間寝られる

先ほどもちらっと書いた通り、睡眠のポイントは体温管理にある。どうせ数時間と持たず体温が下がりすぎて目が覚めてしまうだろうが、1~2時間でも寝られれば体力は回復できるし、辛い時間をスキップできるから寝た方がいい。

寝付くためには体温を上げて寒くないと感じる必要があり、その状態から外気で自然に体温が下がることで睡眠導入され寝付きやすくもなる。つまり、寒くてどうしようもない状況から体温を上げるのが必要なわけだ。

 

4-1.食事は有効

体温を上げるのに、食事はとても有効だ。夕ご飯や補給食の残りがあれば、今後の行動に支障がない範囲で食べると良い。胃腸が活動しだせば身体の中から暖められるし、寒さで消費されるエネルギーの補給にもなる。僕はすぐ血糖値が上げられる糖系の補給食を頬張ることが多い。

もし近くに自販機などの温かい飲み物を飲める場所があるなら、今すぐ直行して入手するべきだ。暖かい飲み物は湯たんぽとして超役立つし、飲めば体温を上げるほか、ほっと一息ついて冷静さを取り戻せる。

もちろん、食事用のガスストーブがあるなら、それを使ってテント内等を温めるものいいだろう。火器を使う際は寝落ちに注意(一酸化炭素中毒で永遠の眠りにつく。事故例もあるし僕も1度やらかしかけた)。

登山やサイクリングでは軽い脱水症状になっていることも多く、その際には血流量が落ちてしまうから電解質(ざっくりいうと塩分)を含む水分を積極的に摂って、体内の水分量と血流量を復活させるのも手だ。(筋肉が攣りそうになっているときや、尿の色が濃いときは往々にして脱水状態)。脱水状態を緩和させておくと、よく眠れなくても行動を開始したときに身体が良く動く。

食事でひとたび体温を上げて寒くない状態を作れれば、僕の経験ではそこから1~2時間は寝られるはず。仮眠としては十分だし、がっつり寝たいならそれを数回繰り返せば待望の夜明けを迎えられる。

 

 

4-2.筋トレとストレッチ

身体から発熱させるには、①血行を良くする、②筋肉を動かす、の2つが有効。

①血行を良くするは疲労回復にも役立つので結構大事で、ストレッチや身体のもみほぐし、適度な運動がこれに当たる。いざ寝ようという状態でするならストレッチか、末端の刺激(手足の指先グーパー、さすったりして動かす)が有効だと思う。なるべく構築した保温状態を解かずに、可能な範囲で全身の血行を促進させると良い。

もし筋力・体力に余裕があるなら、②筋トレは手っ取り早い。身体をシートなどで覆った状態で出来る体幹や腕立てなどの筋トレを軽くすると、みるみるうちに体温が上がる。

ただし、ここで汗をかいてしまうと逆に汗冷えするし、筋トレそのものが無駄なエネルギーや体力の消費になりかねない点に注意。キャンプなんかならバリバリに筋トレすればよいと思うけど、登山やサイクリングでのビバークなら適度にするかやめておいた方がいい。

 

 

5.睡眠と行動を臨機応変に使い分ける

ここまで『寒くて寝られない夜に睡眠や体力回復する方法』を書いてきた。それらも重要である一方で、夜の間の過ごし方の計画も重要である。

例えば、「何時間(or何クール)寝て何時ごろ出発するのか」「数十分の仮眠だけしてエスケープしてしまうのか」など、悩む計画ポイントはいろいろある。実のところ、辛い夜を夜明けまで過ごすよりは、最低限の睡眠と休息を取ったらすぐに自分がより快適に過ごせる場所へ移動してしまった方が合理的だったり。気温が最も下がる夜明け前は、既に行動しておいた方が楽にもなるはず。

ここでも『自分の置かれた状況を冷静に受け止める』というのが大切で、最寄りのネットカフェやホテル、コンビニはどこか、自分の装備で何時間持つのか、この後何㎞なら走れるのか……etc.、しっかり確認しておくのが良い。

 

また、寝ようとしても震えが止まらないとか低体温症の危険が大きいと感じるときは、多少無理をしてでも行動した方が良いときもある。序盤で挙げた通り、山岳遭難でビバークのつもりが低体温症死……なんてこともあるから侮れない。食料があれば15分の仮眠と行動を繰り返して先へ進める(それはそれで辛いけど)。それで標高を下げたり朝日が昇るまで耐えたりするのも選択肢の一つだと思う。

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以上、僕なりの「寒くて寝られない夜の過ごし方」をまとめてみた。かなり個人の経験に依存した内容なので皆様がどれだけ楽になるかは分からないけど、少しでも辛さを和らげることが出来たら幸いだ。

おわり

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