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MTBやグラベルロードの林道ツーリングの安全対策について【スキル・準備・遭難対策】

MTBやグラベルロードでの林道・トレイルライドは、非日常な楽しさがある反面、大きな危険も孕んでいる。近年のグラベルロードブームでオフロードサイクリングを楽しむ方も増えていると思うが、気軽に山に遊びに入ることは命取りになる可能性すらある。

今回は、僕なりのオフロードサイクリングの安全対策についてまとめていきたい。

<目次>
0.オフロードに潜む危険
1.乗車スキルの練習
2.出発前チェック
3.遭難対策

0.オフロードの危険

本題に入る前に、林道やトレイルなどで行うオフロードサイクリングに潜む危険について。安全を求めるなら、まずは危険を知るところからだ。

オフロードサイクリングも大枠での「サイクリング」なので、ロードバイクやクロスバイク等でのオンロードサイクリングと共通の危険もある。例えば交通事故に遭うとか、バイクにトラブルが発生するとか、体調が悪くなるとか。しかし、それらが発生したときの危険度は、圧倒的にオフロード(特に山奥の林道やトレイル)の方が高い。特に人気のない森の中では、簡単に遭難してしまうからだ。

例えばアクシデントで走行不能になった場合、オンロードなら助けを呼ぶ・助けてもらう・自力で脱出するなど、全ての対応が比較的容易だ。携帯で助けを呼んだり、通行人に助けてもらったり出来るし、徒歩でも舗装路は移動しやすい。一方でトレイルの場合、人が少なく、携帯が圏外なことはザラなうえ、走行不能な状態で山を脱出するのが困難だ。仮にすぐ助けを呼べても、山中で実際に救助されるまでは時間がかかる。

普段のライドなら「ちょっとしたアクシデント」でも”こと山の中で”となると命に関わる。

さらに、普通のオンロードサイクリングでは起こらない道迷い」による遭難や、「急な天候変化」による遭難「動物・植物による被害」もある。当然オフロード=未舗装路を走る訳だから、走ることそのものの難易度だって上がる。

世間一般的に「登山は危ない」みたいな認識があると思うが、林道やトレイルツーリングにもおおよそ共通のことが言えると思う。たとえ距離が短くとも、所謂ゆるポタ感覚で走れるものではない。

要するに、オフロードサイクリングは『リスク要因が多く、事態が悪化しやすい』という特徴があり、決して楽しいだけの趣味とは言えないのだ。

とはいえ、『オフロードサイクリングは危険すぎてとても楽しめる趣味じゃない』という訳でもない。種々のリスクに適切に対処すれば、十分趣味として成立するものだと僕は思う。そのためにどんな対策が必要か?というのを、この先僕なりに書いていきたい。

 

1.乗車スキルの練習

まずは、乗車スキルの練習についてから。「え、そこ?」と思う方も多いかも知れないが、僕が実際に林道やトレイルに赴き、初めに後悔したのが『もっと練習しておけばよかった』ということだった。

日本の林道は急坂(オンロードではあり得ない斜度)が多いうえ、目の粗い砂利や岩、木の根などが路面を覆う。急な登りは押すしかなく、下りはタイヤを取られて止まることさえおぼつかない…そんな道もたくさんある。「乗車率=全行程のうち自転車で走行できた割合」という言葉があるくらい、林道やトレイルの全てを乗りこなすのは難しいのだ。

そこで、乗車スキルの練習が必要になる。スキルがないまま難しい道を走れば事故を起こしてしまうし、折角の自転車に乗れる時間も短くなってしまうからだ。逆に、スキルの高い人は安全に林道やトレイルを走れるうえ、乗車率も上がるのでツーリングが楽しくなる。

以下は、僕なりに初心者目線で必要と思われるスキルを挙げたものだ。スキルと言っても超初歩的なものだけど、それらが出来るか出来ないかが結構大きな差になったり。。

 

スキルの練習

・スタンディング、超低速走行

・逆脚停車&発進(左右出来るように)

・急ブレーキ(特に下り坂)

・急坂走行(停車や発進も含めて)

・段差の飛び越え

 

・スタンディング、超低速走行

初歩的なスキルのスタンディングスティルや超低速走行だが、出来るとライドの安心感が大きく上がる。トレイルではかなり慎重に走る場面もあり、ゆっくり・正確に狙ったコースを走れるかは大きな差になるのだ。スタンディングは家の中でも練習出来るし、バイクの挙動を掴むのにももってこいだと思う。(スタンディング練習をした記事はこちら

・逆脚停車&発進

また、停車時に「いつも自分が付いていない方の脚で着地する練習」もしておくといい。僕はロードバイクでは左足のクリートを外して着地するので左足は慣れているが、右足をつくのは全くの不慣れだった。林道やトレイルライドでは、脚の付きやすい側が常に左(右)とも限らないので、両足で違和感なく着地&発車できるとよい。

・急ブレーキ

そして、急ブレーキも意外と見落としがちだった。ロードバイクとMTBではポジションやタイヤ幅、重量が違うので、急ブレーキの際の感覚も異なる。滑りやすい砂利道かつ下り坂はなおさらなので、練習は是非オフロードで。トレイルライドでは予期しないことも起こりやすいので、いざという時に備えて急ブレーキの練習は必要だ。下りのコーナーの先が崩落していた…なんてことも割とある。

・急坂走行

日本の未舗装路は急な坂が多いので、ロードバイクでは走れないような急坂でのトラクション管理やバランスが求められる。登り切れず(下り切れず)急坂の途中で停車してしまった場合、そこから押し歩きに移行するのも、前述の通り両脚で出来た方が安全だ。練習場所が難しいが、河川の土手なんかはちょうどいいと思うので、周りや法面への影響に配慮しつつ練習してみるのもいいだろう。

・段差の飛び越え

最後に、段差の飛び越え。ホッピングで越える技術があれば言うことはないけど、それはなかなか難易度が高い。最低限のラインとしては、丸太や大きな岩などの段差をクリアできることだと思う。ある程度抜重をしたりフロントを上げられれば大丈夫だけど、それが出来ないと前転したり吹っ飛んだりしかねない。

もちろん、林道やトレイルライドでの基本は『無理して走らない』だから、恐怖心があったり自信がなかったりするなら押し歩きが基本。必要となる技術も道次第なので、必ずしも「~が出来なきゃ走っちゃダメ」とか「~が出来れば完璧」というものでも無い。

ただし、多少は練習しておかないと「自分は何が出来て何が出来ないのか?」すら分からないので、無自覚に無謀な走りをしかねない。安全のため、最低限の練習はしておいた方がいい。

 

2.出発前チェック

続いては出発前のあれこれを。前述の「乗車スキルがあるか?」にも共通するが、山に行く際の安全度は家を出た時点でかなり決まってしまうと思う。準備の内容を理解し、チェックをして出発することが求められる。

どれも当然と言えば当然…なことだけど、やっぱりその当然のことが大切だ。林道やトレイルライドは(特にハードなライド程)登山と同じく、一つのミスが重大な事故につながりやすい。

 

出発前チェック

・メンテナンス(バイク&装備)

・忘れ物チェック(リストを作っておくと◎)

・天気予報チェック(前の日も含めて)

・計画共有(山域、コース、帰宅時間)

 

・メンテナンス

バイクの整備はもちろん、装備の状態にも気を配る。せっかく装備を持って行っても使えなければただのゴミだし、「使えると思っていたものが使えない」というのは計画が狂うので危険だ。特にバックアップ用のものほど要注意。例えば、救急キットや携帯ポンプ、予備のチューブなど、普段は使わないものほど劣化していても気が付かない。僕も「携帯ポンプのパッキンが吹っ飛んでパンク修理が出来なくなった」という経験があるので、定期的なメンテナンス&チェックが大切だ。

・忘れ物チェック

持ち物はExcelなどでリストを作っておくとミスが減る。これはオフロードツーリングに限った話ではなく、装備の多くなるロングライドやキャンプツーリングでも便利な方法。計画時に必要と思しき装備をリストアップしておいて、出発前にリストを参照しながらチェックするのだ。ライドの間隔が空いて「あれ?いつもなに持って行ってたっけ?」となっても、記録を残しておくと役に立つのでおススメ。

林道やトレイルライドの時の装備については、こちらの記事にまとめているのでよろしければ合わせてどうぞ。

・天気予報チェック

山の安全性は天候にかなり影響されるので、天気予報はしっかり見ておいた方が良い。天候が悪化する予報なら装備も計画も変わってくるし、基本的には天気が悪いときは走らない方が良い。また、大雨のあとは土砂崩れの危険もあるし、森の中の道は乾きにくい。当日だけでなく、ライドの前日や前々日を含めてのチェックが大切だ。

・計画共有

また、計画を家族や友人等に知らせるのも大切。山に入らない人に詳細なルートを説明するのは難しいが、大まかな場所と帰宅予定時刻は伝えておかないと、もしもの際に捜索すらされない可能性がある。登山なら常識な「登山届」に似た感覚だ。つい面倒に思う作業だが、山岳遭難・救助の事例を見ていくと、いかに計画の共有が大切かが分かる。

特に林道やトレイルは人が少ない場所なので、いざという時に頼れる人はすぐ周りに居ない。もちろん複数人でパーティーを組んで走るのは有効な手だが、そうだとしても山の外にも頼れる人を作っておくと良い。

 

3.遭難対策

さて、いよいよ行動時の注意を。行動時の注意は、基本的に「遭難対策」になる。

「遭難」というと、多くの方が「道迷い」を連想するように思うが、もともと遭難の意味は「災難に遭うこと」で、登山等のアクティビティで用いる際には「命にかかわる災難に遭うこと」だ。これには道迷いの他にも、怪我や体調不良、装備不良、落車、天候悪化などがある。

 

遭難対策

・パーティーを組む

・道迷い防止(GPS・地形確認)

・怪我の防止(速度・スキル)

・情報入手(人や動物の気配・天候変化)

・行動中の判断(余裕の確保・下りに注意)

 

パーティーを組む

先ほども少し触れたが、安全確保のためパーティーを組み複数人で行動するのはとても有効だ。いざという時に助け合ったり、トラブルに対処したりと複数人である事のメリットは非常に大きい。特に落車などで怪我をした場合、周りに助けてくれる人がいるかいないかは雲泥の差になる。パーティーを組める環境なら、出来るだけパーティーで走った方が良いだろう。

ただし、パーティーがバラバラになったりメンバーを過信したりすると逆に危険に陥るので、人任せにしないこと、ルールを共有することは必須だ。

・道迷い防止

道迷いへの対策として、GPSを用いるのは有効だと思う。たとえ進むべき道が分からなくなっても、来た道のログさえあれば確実に出口までたどり着ける。

特に、ある程度確実に「道」として整備されている登山とは異なり、林道やトレイルツーリングでは予想外な通行止めに出くわすことも多く、下調べでは見つからなかったわき道や分岐が現れることもしばしばある。それにより、意図せず予定外のルートを通ることも多い。だからこそ、「現在位置」と「確実に脱出できるルート」である自分の軌跡を表示してくれるGPSは貴重だ。

専用のGPS機器がない場合でも、スマホの登山用アプリは優秀なのでぜひご活用を。山間は圏外も多いが、オフラインマップをダウンロードしておけば、十分遭難防止になる。

また、事前にある程度その山域の地形を把握しておくと安心。どっちの方角に街があるとか、尾根がどう伸びているかとか。実際に森の中にいるときに、その情報だけで正確に移動するのは困難だが、「ひょっとしてこっちに行ったらヤバイ?」という貴重な気づきのきっかけになる。

・怪我の防止

登山の遭難事例で最も多いのは「道迷い」だが、それに次ぐのが「転倒」や「滑落」だ。サイクリングに置き換えて言うなら「落車」となるだう。基本的に道らしい道しか走らない(走れない)サイクリングは、登山に比べて道迷いのリスクはやや低い反面、この落車による怪我のリスクは高いと思われる。

先ほども書いたが、まずは無理して乗らないことやスピードを出し過ぎないことが大切だ。ついついテンションが上がってスピードを出したくなるけど、それは専用のMTBパークでやるべきこと。他の利用者がいて、不確定要素で満ち溢れている林道やトレイルでは、何重にも余裕を持った走りを心掛けるのが基本であり最優先事項となる。

それでも、交通事故が無くならないのと同じように、落車のリスクをゼロにすることは出来ない。最低限ヘルメットや等の基本装備と怪我をしにくい服装を選んだうえで、プロテクター類があるとなお良いと思う。

・情報入手

山の中では、細かい情報も役に立つ。例えば路面に残る轍から車両の出入り・ルートを推測したり、登山者用のテープを辿ったり、熊の痕跡に注意したり…。それらが分かったからといって、直接的にメリットがあるとか安全になるとかではないけど、そういう細かい情報の積み重ねが判断ミスを防いでくれる。

また、山中では天候の影響を受けやすい。登山者が落雷で亡くなる事故も起こっているし、地面がぬかるむと走行が困難になるうえ、雨量が多ければ土砂崩れも起こりやすい。天気予報が晴れでも、山の天気は変わりやすく局地的に崩れたりするので、気を配っておく必要がある。

・行動中の判断

最後に、行動時の判断について。全て計画通りに進めばその場で判断することは何も無いが、道の状態は行ってみなければ分からないし、行動のしやすさもケースバイケースで変わってくる。「このまま進むか、引き返すか?」「見つけた支線に迂回するか?」という様な判断は、林道やトレイルライドではつきものだ。

このとき必ず注意すべきことは『余裕を確保する』ことと『安易に下らない』こと。楽しさにテンションが上がっていたり、アクシデントで焦っていたりと、無自覚に冷静でない状態になっていることが多い。だから、判断する前にいったん落ち着いてこの2つを考える。

まず、行動には余裕を持たせる。行動終了までの時間、水や補給食の量、体力、知識や技術など、全てにおいてそうだ。山の中では大抵何らかアクシデント(良いことも悪いことも)が起こる。そのための余裕分はいつも考慮しておくが吉。

そして、山の中では安易に下ってはいけない。下りは楽だし楽しいので、ついヒョイヒョイ下ってしまうが、その行動が命取りになる。考えてもみてほしい、登るのがどれだけ大変だったのかを…。

簡単に下りられる道でも、簡単に登れるとは限らない。下りるのが難しい道は、たぶん登り返せない。だから、降りた先が行き止まりだったり、道迷いをしたりするとどうなるかを、降りる前によく考えなくてはならない。特に沢地形は、遠くからは一見走る(歩く)のが楽そうに見えるが、滝のような断崖や大きな岩・藪に当たることが多く、左右を急斜面に囲まれて迂回すらできないという最悪な状況に陥りやすい。

もちろん100%正しい訳ではないが、この2つは忘れてはならない。

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以上、僕なりに思うMTBの林道・トレイルライドの安全管理についてまとめてみた。至らない点はあるかも知れないが、MTBライドや登山を通して学んだ事を書いているので、少しでも皆様の参考になれば幸いだ。

関連記事として『初心者がMTBを買って林道やトレイルライドを楽しめるのか?』『MTBの林道・トレイルライドの装備』というのも書いてみたので、遊び場所探しやルール問題・必要な装備について悩んでいる方は是非。

おわり

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